2 / 35
プロローグ
② だって「よくってよ」と言ってしまいましたの
しおりを挟む
『おーほっほっほっほ。よくってよ! よくってよ!! ワタクシ、世界が生んだ令嬢の中の令嬢、エリザベースでございます!』
なんもよくない! 1行目から引いてしまうんですけど!
「気長になってピコ……」
『お家は子爵位でそこそこですわ』
わりと謙虚……。
『わたくし、フリージ伯爵家のラインホルト様と婚約しておりまして、結婚秒読みですの~。ラインホルト様とは社交界のパーティーで出会ったのですけど、落としたハンカチーフを拾っていただいたところからご縁が…。お互い一目で恋に落ちたってことですの~~!』
おのろけご馳走様です。
「のりえがそのラインホルト様と結婚できるピコよ。ラインホルト様は金髪碧眼の美形貴族だピコよ」
「そりゃイケメンは大好物だけど、私、帰国子女で金髪碧眼なんて見慣れてるから厳しいよ」
「あ、エリザベースのところにラインホルト様がやってきたピコ!」
「なにっ!?」
私はゲーム画面にかじりつくため、身体を乗り出した。
「いやあああ超美形~~!!」
「乙女ゲームには乙女の夢が詰まってるピコ。彼女を選んで転生すれば、この彼の逞しき腕も逞しき胸も逞しきちょめちょめも、全部のりえのものだピコ!」
「ニクタイのことばかり言いなさんな……。それにしてもこのエリザベース、どの辺が悪役令嬢なの? 高飛車なだけだと思うけど」
『あら、ごきげんようラインホルト様。今日はどういったご用件でこちらへ?』
これエリザベース冷静を装ってるけど、絶対「明日にでも結婚しよう! いや今すぐ結婚しよう!!」って彼に迫られるの期待してるよね。そわそわしてるもん。
『エリザベース、実は君との婚約を白紙に戻したいんだ』
『えっ? ……ええっ??』
『わけは聞かないでくれ』
『どうしてですの!? 私、何も落ち度はございませんわよね!?』
聞かないでって言われてもそりゃ聞いちゃうよね。ていうか早速なに、この展開。
『君は今、社交界で噂になっているのだよ』
『私の美しさが、ですか?』
『いや。君の美しさは噂になってもおかしくないレベルだけど、49日は持たない程度だから』
褒めてるの? 貶してるの?? あと75日って言って!
『はっ! まさか! 私の美しさを妬んで、ありもしない私の不義理を面白おかしく捏造して悪評を流した輩がいるのですね!? そうなんでしょう? そんなのはただの……』
『エリザベース。君、先日下々のためのバザーに出ただろう?』
バザー? 慈善事業のための、市場みたいなのだよね。人が集まるから他のイベントとかもやってて――……。
『なななな、なぁんのことかしらららぁ?』
エリザベース、隠し事できなさそう。
『そこで君は演劇に出演した! そう、君は素晴らしく演じて魅せたのさ! 地球の平和を乱すノットリホウダイ軍の総帥、悪役カビローンロンを!!』
『!!!』
子どもたちに何かを啓蒙しそうな劇だねそりゃ……。
『もちろん、慈善事業に携わることは良いことだ。しかし嫁入り前の娘が、さすがにカビローンロンは……』
うん、カビローンロンはないよねうん。劇見てなくても分かる。エリザベース、きっとノリノリでやったんだろな。
『両親もこの結婚には反対するようになってしまった。どうしてそんな劇になど出たりしたんだい?』
『もう隠し立てできませんわね……実は、通りすがりの老人がバザーの催しの担当者だったのですけど、カビローンロン役の役者が急に腹痛で劇が始められなくて困っていると……。通りすがりの私を頼ってきて断り切れず……』
なんとも通りすがりと通りすがりによる運命の出会い!!
『当たり役に出会えて良かったな。まったく残念だよエリザベース。……しかし、それでなくても』
『?』
『もしかしたら、私の運命の相手は他にいるのではないかと、そう感じてしまったのだ』
『えええ~~??』
「ああ、ラインホルト様行っちゃったピコね……」
「ナニコレ――! 悪役令嬢じゃなくて、ただの頭が悪い令嬢ってだけじゃん!」
「頭悪いって言っちゃだめピコ! 頭弱いとかちょっと残念とか、他にマイルドな言い方あるピコ!」
「この子に生まれ変わったら、この地頭で生きていかなきゃいけないの?」
これじゃいいとこのお嬢に生まれかわって左団扇で暮らす~なんて無理でしょ!
「じゃあ、村娘の序章を見てみるピコよ」
こっちも頭ゆるふわだったらどうしよう……。
なんもよくない! 1行目から引いてしまうんですけど!
「気長になってピコ……」
『お家は子爵位でそこそこですわ』
わりと謙虚……。
『わたくし、フリージ伯爵家のラインホルト様と婚約しておりまして、結婚秒読みですの~。ラインホルト様とは社交界のパーティーで出会ったのですけど、落としたハンカチーフを拾っていただいたところからご縁が…。お互い一目で恋に落ちたってことですの~~!』
おのろけご馳走様です。
「のりえがそのラインホルト様と結婚できるピコよ。ラインホルト様は金髪碧眼の美形貴族だピコよ」
「そりゃイケメンは大好物だけど、私、帰国子女で金髪碧眼なんて見慣れてるから厳しいよ」
「あ、エリザベースのところにラインホルト様がやってきたピコ!」
「なにっ!?」
私はゲーム画面にかじりつくため、身体を乗り出した。
「いやあああ超美形~~!!」
「乙女ゲームには乙女の夢が詰まってるピコ。彼女を選んで転生すれば、この彼の逞しき腕も逞しき胸も逞しきちょめちょめも、全部のりえのものだピコ!」
「ニクタイのことばかり言いなさんな……。それにしてもこのエリザベース、どの辺が悪役令嬢なの? 高飛車なだけだと思うけど」
『あら、ごきげんようラインホルト様。今日はどういったご用件でこちらへ?』
これエリザベース冷静を装ってるけど、絶対「明日にでも結婚しよう! いや今すぐ結婚しよう!!」って彼に迫られるの期待してるよね。そわそわしてるもん。
『エリザベース、実は君との婚約を白紙に戻したいんだ』
『えっ? ……ええっ??』
『わけは聞かないでくれ』
『どうしてですの!? 私、何も落ち度はございませんわよね!?』
聞かないでって言われてもそりゃ聞いちゃうよね。ていうか早速なに、この展開。
『君は今、社交界で噂になっているのだよ』
『私の美しさが、ですか?』
『いや。君の美しさは噂になってもおかしくないレベルだけど、49日は持たない程度だから』
褒めてるの? 貶してるの?? あと75日って言って!
『はっ! まさか! 私の美しさを妬んで、ありもしない私の不義理を面白おかしく捏造して悪評を流した輩がいるのですね!? そうなんでしょう? そんなのはただの……』
『エリザベース。君、先日下々のためのバザーに出ただろう?』
バザー? 慈善事業のための、市場みたいなのだよね。人が集まるから他のイベントとかもやってて――……。
『なななな、なぁんのことかしらららぁ?』
エリザベース、隠し事できなさそう。
『そこで君は演劇に出演した! そう、君は素晴らしく演じて魅せたのさ! 地球の平和を乱すノットリホウダイ軍の総帥、悪役カビローンロンを!!』
『!!!』
子どもたちに何かを啓蒙しそうな劇だねそりゃ……。
『もちろん、慈善事業に携わることは良いことだ。しかし嫁入り前の娘が、さすがにカビローンロンは……』
うん、カビローンロンはないよねうん。劇見てなくても分かる。エリザベース、きっとノリノリでやったんだろな。
『両親もこの結婚には反対するようになってしまった。どうしてそんな劇になど出たりしたんだい?』
『もう隠し立てできませんわね……実は、通りすがりの老人がバザーの催しの担当者だったのですけど、カビローンロン役の役者が急に腹痛で劇が始められなくて困っていると……。通りすがりの私を頼ってきて断り切れず……』
なんとも通りすがりと通りすがりによる運命の出会い!!
『当たり役に出会えて良かったな。まったく残念だよエリザベース。……しかし、それでなくても』
『?』
『もしかしたら、私の運命の相手は他にいるのではないかと、そう感じてしまったのだ』
『えええ~~??』
「ああ、ラインホルト様行っちゃったピコね……」
「ナニコレ――! 悪役令嬢じゃなくて、ただの頭が悪い令嬢ってだけじゃん!」
「頭悪いって言っちゃだめピコ! 頭弱いとかちょっと残念とか、他にマイルドな言い方あるピコ!」
「この子に生まれ変わったら、この地頭で生きていかなきゃいけないの?」
これじゃいいとこのお嬢に生まれかわって左団扇で暮らす~なんて無理でしょ!
「じゃあ、村娘の序章を見てみるピコよ」
こっちも頭ゆるふわだったらどうしよう……。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる