70 / 163
第3章 噛み合わない歯車
第9話~愛するが故に~
しおりを挟む
ジャックは何かにとり憑かれたかの様だった。
叶子の必死の願いも聞き入れず、ただ自分の欲望を満たす為だけにスカートの中を弄る。悲しげな表情を浮かべ、ただ黙ってジャックを見つめる叶子に、ほんの少しだけ残っていた正常な思考がジャックの頭の隅を掠めて行った。
(……僕は一体何をしているんだ? こんな事をして彼女の気持ちを取り戻せるとでも思っているのか?)
それでも、今自分が犯している罪を止める事が出来ない。
彼女を誰にも渡したくない。自分でも理解し難い激しい嫉妬感がジャックを苦しめた。
今まで女性に対してこれ程までの感情を抱いた事は無かった。叶子に対する気持ちが大きすぎたせいか、ひとたび裏切りを感じた途端にそれは狂気に変わり果て、頭の中は支配欲の塊と化す。やがてそれが陵辱紛いの行為へと駆り立てた。
彼女の唇にキスを落とす度に、彼女の肌に手を滑らすほどに――。彼女が今自分の目の前に居て自分のモノだけになろうとしている。そう思うと、自分が犯している罪が少しづつ形を消し、その内その罪そのものも跡形も無く消え去るのだと、この時のジャックはそう信じでいたのだった。
「ねぇ、貴方はこれで満足なの? ……これで誤解は解けるの?」
黙っていた叶子が眉を顰めながらそう言うと、劣情の世界に入り込んでいたジャックが現実の世界に引き戻される様にその手の動きをピタリと止めた。
「誤解が解けたとしても、私はどうなるの? あなたに対する不信感はどうやって消すの?」
「不信、感……?」
「こんな……レイプまがいの事をして。この先貴方の事を信用していけると思う? 貴方は満足かもしれないけれど、私には不信感しか残らないよ」
叶子のその言葉に愕然とした。
愛し合いさえすれば今のこのもやもやとした気持ちは互いに晴れるとジャックは思っていたが、叶子はそうではないのだと知る。
「そんな、ただ僕は不安……そう、不安なだけで。君が僕の手から離れて行くんじゃないかって、そう思うと」
「こうする事で貴方のその不安が解消されるのね?」
ジャックは黙って頷くと、叶子は諦めた様子で目を伏せた。
そして、意を決したかのように大きな目を開くと、迷いの無い目でジャックを見つめ返した。
「……わかった。でも、これは取って頂戴。私に対する侮辱としか思えない」
――逃げないから。
念を押すかのように拘束された両手首をジャックの顔の前に差し出すと、鋭い眼差しでそう言った。ジャックは「わかった」と一言だけ呟き、手首を締め付けていたネクタイをスルスルと解き始める。解放された手首を擦っている叶子を見ても傷つけてしまった事を気に掛ける様子も無く胸元へと手を伸ばす。と、身を捩ってかわされた。
「待って。……自分で、脱ぐから」
上体を起こした叶子は、ジャックに背中を見せた。乱れていた衣服を脱ぎ捨てていく。その行為は僅かではあるがジャックへの反抗を示すと共に、“自分はただ黙って抱かれているだけの奴隷ではない、ちゃんと自分の意思で抱かれるのだ”と言う事を訴えかけているかの様に思えた。
「……」
肌に触れているもの全てを脱ぎ捨てると、両手で腕を抱きしめるようにしてそのままベッドの上に座っている。そんな叶子の肩を抱きそっとベッドに横たわらせると、胸の上で交わった腕がゆっくりと開かれていく。
叶子の真っ白な肌が姿を現すと、既に見たことがあると言うのについ息を呑んでしまうほど、ジャックは興奮していた。
「――? ……っ」
ふと、叶子の手首にうっ血した痕を見つけ、ジャックはハッと我に返る。うっ血した所から視線を逸らせないでいると、組み伏せた叶子の視線を感じた。その叶子へ視線を下ろした時、一際冷静な顔でただ自分を眺めているだけの叶子に酷く動揺した。
その表情から、そうよ、貴方がやったのよと言われている様で、一気に罪悪感に苛まれた。
(僕は何て事を……)
後悔しても、もう遅かった。
「カナ、僕は君を愛している。ただそれだけなんだ」
ジャックの目をじっと見つめたまま、叶子は黙ってコクリと頷いた。
「今から僕がする事を許して欲しい。早くこの不安から解放されたいんだ」
うっ血した手首に口づけると、そのまま彼女に溺れていった。
「……っ、」
叶子の上でジャックが上下する。
苦しそうに顔を歪め、何かに耐え忍んでいるような叶子を見るのが辛いのか、首筋を嬲る振りをしてそんな叶子を見ないように彼女の顔の横で自身の顔を埋めていた。
「カナ、カナ。……何処にも行かないで」
その呼びかけに小さく頷く彼女がその時何を考えていたのかなど、全く理解しようとはしなかった。ただ自分の中に渦巻く嫌な感情を落ち着かせたいが為に、壊してしまうんじゃないかと思うほどに、無我夢中で何度も彼女を抱いた。
叶子の必死の願いも聞き入れず、ただ自分の欲望を満たす為だけにスカートの中を弄る。悲しげな表情を浮かべ、ただ黙ってジャックを見つめる叶子に、ほんの少しだけ残っていた正常な思考がジャックの頭の隅を掠めて行った。
(……僕は一体何をしているんだ? こんな事をして彼女の気持ちを取り戻せるとでも思っているのか?)
それでも、今自分が犯している罪を止める事が出来ない。
彼女を誰にも渡したくない。自分でも理解し難い激しい嫉妬感がジャックを苦しめた。
今まで女性に対してこれ程までの感情を抱いた事は無かった。叶子に対する気持ちが大きすぎたせいか、ひとたび裏切りを感じた途端にそれは狂気に変わり果て、頭の中は支配欲の塊と化す。やがてそれが陵辱紛いの行為へと駆り立てた。
彼女の唇にキスを落とす度に、彼女の肌に手を滑らすほどに――。彼女が今自分の目の前に居て自分のモノだけになろうとしている。そう思うと、自分が犯している罪が少しづつ形を消し、その内その罪そのものも跡形も無く消え去るのだと、この時のジャックはそう信じでいたのだった。
「ねぇ、貴方はこれで満足なの? ……これで誤解は解けるの?」
黙っていた叶子が眉を顰めながらそう言うと、劣情の世界に入り込んでいたジャックが現実の世界に引き戻される様にその手の動きをピタリと止めた。
「誤解が解けたとしても、私はどうなるの? あなたに対する不信感はどうやって消すの?」
「不信、感……?」
「こんな……レイプまがいの事をして。この先貴方の事を信用していけると思う? 貴方は満足かもしれないけれど、私には不信感しか残らないよ」
叶子のその言葉に愕然とした。
愛し合いさえすれば今のこのもやもやとした気持ちは互いに晴れるとジャックは思っていたが、叶子はそうではないのだと知る。
「そんな、ただ僕は不安……そう、不安なだけで。君が僕の手から離れて行くんじゃないかって、そう思うと」
「こうする事で貴方のその不安が解消されるのね?」
ジャックは黙って頷くと、叶子は諦めた様子で目を伏せた。
そして、意を決したかのように大きな目を開くと、迷いの無い目でジャックを見つめ返した。
「……わかった。でも、これは取って頂戴。私に対する侮辱としか思えない」
――逃げないから。
念を押すかのように拘束された両手首をジャックの顔の前に差し出すと、鋭い眼差しでそう言った。ジャックは「わかった」と一言だけ呟き、手首を締め付けていたネクタイをスルスルと解き始める。解放された手首を擦っている叶子を見ても傷つけてしまった事を気に掛ける様子も無く胸元へと手を伸ばす。と、身を捩ってかわされた。
「待って。……自分で、脱ぐから」
上体を起こした叶子は、ジャックに背中を見せた。乱れていた衣服を脱ぎ捨てていく。その行為は僅かではあるがジャックへの反抗を示すと共に、“自分はただ黙って抱かれているだけの奴隷ではない、ちゃんと自分の意思で抱かれるのだ”と言う事を訴えかけているかの様に思えた。
「……」
肌に触れているもの全てを脱ぎ捨てると、両手で腕を抱きしめるようにしてそのままベッドの上に座っている。そんな叶子の肩を抱きそっとベッドに横たわらせると、胸の上で交わった腕がゆっくりと開かれていく。
叶子の真っ白な肌が姿を現すと、既に見たことがあると言うのについ息を呑んでしまうほど、ジャックは興奮していた。
「――? ……っ」
ふと、叶子の手首にうっ血した痕を見つけ、ジャックはハッと我に返る。うっ血した所から視線を逸らせないでいると、組み伏せた叶子の視線を感じた。その叶子へ視線を下ろした時、一際冷静な顔でただ自分を眺めているだけの叶子に酷く動揺した。
その表情から、そうよ、貴方がやったのよと言われている様で、一気に罪悪感に苛まれた。
(僕は何て事を……)
後悔しても、もう遅かった。
「カナ、僕は君を愛している。ただそれだけなんだ」
ジャックの目をじっと見つめたまま、叶子は黙ってコクリと頷いた。
「今から僕がする事を許して欲しい。早くこの不安から解放されたいんだ」
うっ血した手首に口づけると、そのまま彼女に溺れていった。
「……っ、」
叶子の上でジャックが上下する。
苦しそうに顔を歪め、何かに耐え忍んでいるような叶子を見るのが辛いのか、首筋を嬲る振りをしてそんな叶子を見ないように彼女の顔の横で自身の顔を埋めていた。
「カナ、カナ。……何処にも行かないで」
その呼びかけに小さく頷く彼女がその時何を考えていたのかなど、全く理解しようとはしなかった。ただ自分の中に渦巻く嫌な感情を落ち着かせたいが為に、壊してしまうんじゃないかと思うほどに、無我夢中で何度も彼女を抱いた。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
【R18】十六歳の誕生日、許嫁のハイスペお兄さんを私から解放します。
どん丸
恋愛
菖蒲(あやめ)にはイケメンで優しくて、将来を確約されている年上のかっこいい許嫁がいる。一方菖蒲は特別なことは何もないごく普通の高校生。許嫁に恋をしてしまった菖蒲は、許嫁の為に、十六歳の誕生日に彼を自分から解放することを決める。
婚約破棄ならぬ許嫁解消。
外面爽やか内面激重お兄さんのヤンデレっぷりを知らないヒロインが地雷原の上をタップダンスする話です。
※成人男性が未成年女性を無理矢理手込めにします。
R18はマーク付きのみ。
性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する
如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。
八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。
内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。
慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。
そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。
物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。
有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。
二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる