245 / 247
最終章《因果律》編
第242話 謁見の間にいたのは…
しおりを挟む
城のなかへと入るための大きな扉。そこには二人の兵士が立っていた。案の定、その二人に止められる。まあ、それはそうよね。
「面会申請のない方は入城することは出来ません」
「まあそうだろうな。しかし、入らせてもらおう」
オルフィウス王は手に魔力を籠めた。え、強行突破?
呆気に取られている間に、躊躇うことなくとてつもない強大な魔力を手に集め出したかと思うと、オルフィウス王は手のひらを城の扉へ向けた。そして炎弾のようなものを放出した。しかし、炎弾だと思ったものは爆発するのではなく、扉へ当たった途端、激しく燃え上がり扉を溶かし出した。
「え、なにあれ、凄い」
リラーナが驚きの声を上げる。ディノたちは苦笑していた。
兵士たちは驚き、剣を構えオルフィウス王に斬りかかった。しかし、ディノとイーザンが瞬時に剣を鞘ごと抜き、二人を薙ぎ倒す。鞘のまま振り抜かれた剣は、激しく兵を叩きつけたが、死ぬことはなく気を失っているだけのようだ。
「悪いが少し寝ててくれよ」
ディノが倒れた兵士たちの様子を見つつ、鞘を腰に戻し立ち上がった。そしてオルフィウス王はフッと笑ったかと思うと、視線を城のなかへと移す。
「では、行こう」
そう宣言し、私たちは王がいるであろう部屋を目指す。
扉を抜けなかへと入ると大きなエントランスが広がり、煌びやかなシャンデリアや調度品が多く並んでいた。極彩色豊かなエントランスは目がチカチカしそうな彩りでなんだか落ち着かない。
「派手だなー」
ディノが苦笑しながら言うと、ヴァドも笑った。
「アシェルーダ王の趣味か?」
全員が苦笑しつつ、先へと進む。
「王がいるなら謁見の間とか執務室か?」
「手当たり次第に歩き回っている間に逃げられても厄介だ。だれか捕まえて連れて行ってもらおう」
オルフィウス王はニヤリとそう言うと、騒ぎを聞きつけ駆け付けた兵を捕まえ、「命が惜しかったら王の元へと連れて行け」と、なにやら悪者のような台詞を吐いていて苦笑してしまった。脅しのために強大な魔力を手に籠めながら兵の背中に手を当てている。顔面蒼白になりながら案内をしている兵にちょっぴり同情してしまった……ハハハ……。
そして連れて行かれた先は謁見の間だった。
兵によって開かれた扉、その先に見えるのは大広間に真っ直ぐ伸びる真紅の絨毯。多くの窓が並び部屋全体を明るくさせているが、天井にはこれまた煌びやかなシャンデリア。
そして正面一番奥には数段高くなった場所に王座が……。
金で出来た豪華な椅子。そこに腰かけるひとりの男。豪華な衣装に背にはマントらしきものも見える。そして頭には王冠が……。この人が国王……それはひと目で分かった。横には側近らしき人が控えている。
そしてその前にはなにやら年を取った恰幅の良い貴族らしい服装の男がいた。どうやら謁見中だったようだ。
扉が突然開かれ驚いた様子のその男はこちらにガバッと振り向き、怒りを露わにした表情でこちらを睨んだ。
「何者だ!? 今は私が謁見中だぞ!! 無礼者が!!」
恰幅の良い男は侮蔑を籠めた表情のまま怒鳴り散らす。兵士は怯えた顔のまま立ち尽くしていたが、オルフィウス王に背中を押され一歩前へ出た。
「お、王へ面会されたいそうです……」
王は怪訝な顔をし、声を上げた。
「そのような予定は聞いていない。下がれ。後日正式に謁見の申請を出すんだな。それともこの場で捕縛されたいか?」
聞こえて来た声はあのとき……オキが持っていたあの国王の声と同じだった。やはりこの人がアシェルーダ王で間違いない。
アシェルーダ王は横に立つ側近に目配せした。しかし、その側近はオルフィウス王を見て顔色が変わる。
「あ……あの方は……」
顔を真っ青にしながら側近はアシェルーダ王へ耳打ちをする。その瞬間、アシェルーダ王の顔色も変わった。
「なっ! ラフィージア王なのか!? な、なぜここに!?」
どうやら側近の人はオルフィウス王の顔を知っていたということか。ラフィージアの王ということに気付いたアシェルーダ王はあからさまに驚愕の顔となった。それは王の前に立つ恰幅の良い男も同様だった。
「な、なぜラフィージアの王が!? しかも面会の約束など交わしていないのだろう!?」
恰幅の良い男が叫んだと同時にオルフィウス王はその男を思い切り睨んだ。ひっ、と小さく声を上げたのが聞こえ、オルフィウス王はゆっくりとその男の元へと歩いて行く。オルフィウス王に強大な魔力を当てられていた兵は、オルフィウス王が離れたことに安堵し、「失礼致します!」と叫んだと同時に部屋を飛び出して行った。
「貴様、ランガスタ公爵とやらだな?」
「ランガスタ公爵!?」
私たちは驚きの声を上げた。その名は忘れるはずもなかったからだ。ローグ伯爵家が爵位返上をされた後、ローグ伯爵領を治めることになったのがランガスタ公爵だったから。
しかもこのランガスタ公爵はどこで噂を聞いてもあまり評判が良いとは思えない人だった。そのランガスタ公爵が目の前のこの人!?
「な、なぜ私を知っている!?」
「なぜかって? ハハ、元々お前のことなど調べてはいないがな。たまたまだ。彼女のことを調べるついでに出て来た副産物だ」
そう言ってオルフィウス王が振り向きお母様を見た。お母様はオルフィウス王の視線に合わせ一歩前へと出る。そしてその姿を目にしたアシェルーダ王は目を見開いた。
「お、お前は……ミラ・ローグ! なぜここにいる!?」
王座からガタッと立ち上がり睨むような顔。しかし、オルフィウス王がそんなアシェルーダ王へ冷たい視線を投げ掛けると、一瞬怯んだようにたじろいだが、しかし、すぐさま再びお母様を見た。
*********
残り2話となりました。
明日は2話一気に更新します!
「面会申請のない方は入城することは出来ません」
「まあそうだろうな。しかし、入らせてもらおう」
オルフィウス王は手に魔力を籠めた。え、強行突破?
呆気に取られている間に、躊躇うことなくとてつもない強大な魔力を手に集め出したかと思うと、オルフィウス王は手のひらを城の扉へ向けた。そして炎弾のようなものを放出した。しかし、炎弾だと思ったものは爆発するのではなく、扉へ当たった途端、激しく燃え上がり扉を溶かし出した。
「え、なにあれ、凄い」
リラーナが驚きの声を上げる。ディノたちは苦笑していた。
兵士たちは驚き、剣を構えオルフィウス王に斬りかかった。しかし、ディノとイーザンが瞬時に剣を鞘ごと抜き、二人を薙ぎ倒す。鞘のまま振り抜かれた剣は、激しく兵を叩きつけたが、死ぬことはなく気を失っているだけのようだ。
「悪いが少し寝ててくれよ」
ディノが倒れた兵士たちの様子を見つつ、鞘を腰に戻し立ち上がった。そしてオルフィウス王はフッと笑ったかと思うと、視線を城のなかへと移す。
「では、行こう」
そう宣言し、私たちは王がいるであろう部屋を目指す。
扉を抜けなかへと入ると大きなエントランスが広がり、煌びやかなシャンデリアや調度品が多く並んでいた。極彩色豊かなエントランスは目がチカチカしそうな彩りでなんだか落ち着かない。
「派手だなー」
ディノが苦笑しながら言うと、ヴァドも笑った。
「アシェルーダ王の趣味か?」
全員が苦笑しつつ、先へと進む。
「王がいるなら謁見の間とか執務室か?」
「手当たり次第に歩き回っている間に逃げられても厄介だ。だれか捕まえて連れて行ってもらおう」
オルフィウス王はニヤリとそう言うと、騒ぎを聞きつけ駆け付けた兵を捕まえ、「命が惜しかったら王の元へと連れて行け」と、なにやら悪者のような台詞を吐いていて苦笑してしまった。脅しのために強大な魔力を手に籠めながら兵の背中に手を当てている。顔面蒼白になりながら案内をしている兵にちょっぴり同情してしまった……ハハハ……。
そして連れて行かれた先は謁見の間だった。
兵によって開かれた扉、その先に見えるのは大広間に真っ直ぐ伸びる真紅の絨毯。多くの窓が並び部屋全体を明るくさせているが、天井にはこれまた煌びやかなシャンデリア。
そして正面一番奥には数段高くなった場所に王座が……。
金で出来た豪華な椅子。そこに腰かけるひとりの男。豪華な衣装に背にはマントらしきものも見える。そして頭には王冠が……。この人が国王……それはひと目で分かった。横には側近らしき人が控えている。
そしてその前にはなにやら年を取った恰幅の良い貴族らしい服装の男がいた。どうやら謁見中だったようだ。
扉が突然開かれ驚いた様子のその男はこちらにガバッと振り向き、怒りを露わにした表情でこちらを睨んだ。
「何者だ!? 今は私が謁見中だぞ!! 無礼者が!!」
恰幅の良い男は侮蔑を籠めた表情のまま怒鳴り散らす。兵士は怯えた顔のまま立ち尽くしていたが、オルフィウス王に背中を押され一歩前へ出た。
「お、王へ面会されたいそうです……」
王は怪訝な顔をし、声を上げた。
「そのような予定は聞いていない。下がれ。後日正式に謁見の申請を出すんだな。それともこの場で捕縛されたいか?」
聞こえて来た声はあのとき……オキが持っていたあの国王の声と同じだった。やはりこの人がアシェルーダ王で間違いない。
アシェルーダ王は横に立つ側近に目配せした。しかし、その側近はオルフィウス王を見て顔色が変わる。
「あ……あの方は……」
顔を真っ青にしながら側近はアシェルーダ王へ耳打ちをする。その瞬間、アシェルーダ王の顔色も変わった。
「なっ! ラフィージア王なのか!? な、なぜここに!?」
どうやら側近の人はオルフィウス王の顔を知っていたということか。ラフィージアの王ということに気付いたアシェルーダ王はあからさまに驚愕の顔となった。それは王の前に立つ恰幅の良い男も同様だった。
「な、なぜラフィージアの王が!? しかも面会の約束など交わしていないのだろう!?」
恰幅の良い男が叫んだと同時にオルフィウス王はその男を思い切り睨んだ。ひっ、と小さく声を上げたのが聞こえ、オルフィウス王はゆっくりとその男の元へと歩いて行く。オルフィウス王に強大な魔力を当てられていた兵は、オルフィウス王が離れたことに安堵し、「失礼致します!」と叫んだと同時に部屋を飛び出して行った。
「貴様、ランガスタ公爵とやらだな?」
「ランガスタ公爵!?」
私たちは驚きの声を上げた。その名は忘れるはずもなかったからだ。ローグ伯爵家が爵位返上をされた後、ローグ伯爵領を治めることになったのがランガスタ公爵だったから。
しかもこのランガスタ公爵はどこで噂を聞いてもあまり評判が良いとは思えない人だった。そのランガスタ公爵が目の前のこの人!?
「な、なぜ私を知っている!?」
「なぜかって? ハハ、元々お前のことなど調べてはいないがな。たまたまだ。彼女のことを調べるついでに出て来た副産物だ」
そう言ってオルフィウス王が振り向きお母様を見た。お母様はオルフィウス王の視線に合わせ一歩前へと出る。そしてその姿を目にしたアシェルーダ王は目を見開いた。
「お、お前は……ミラ・ローグ! なぜここにいる!?」
王座からガタッと立ち上がり睨むような顔。しかし、オルフィウス王がそんなアシェルーダ王へ冷たい視線を投げ掛けると、一瞬怯んだようにたじろいだが、しかし、すぐさま再びお母様を見た。
*********
残り2話となりました。
明日は2話一気に更新します!
4
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる