230 / 247
第5章《旅立ち~天空の国ラフィージア》編
第227話 神殿へ!
しおりを挟む
確かに神殿へ行ったところで素直に会わせてもらえるとは限らない。そんな簡単に会わせてもらえるなら、私が追われる必要だってなかったはずだし……。
それに無事に会えたとしても、もしお母様が結界の守護から離れられないとしたら……。そうよ、そもそも私が『聖女』ではなかったせいで、お母様がこんなに長く拘束されることになったのなら……私が会いに行ったところでお母様が解放されるはずがない……。
どうしたらいいの……。
「そんなもの、会ってみなければ分からないだろう。その後のことは会ってから考えればいい」
皆が不安気な顔で押し黙るなか、ルギニアスがきっぱりと言い切った。
「なにを躊躇う必要がある。お前はずっと母親に会いたかったんだろう? 理由はそれだけだろうが。ならば会えばいい。それ以外のことなど後回しでいい」
ルギニアスは私の目を真っ直ぐ見詰め言った。なにを迷っているんだ、とそう言ってくれている。
「そう、だね……うん。私はお母様に……両親に会いたかっただけ。会ってなにがあったのかを聞きたかっただけ。お母様が結界から離れられないというなら、そのときは……」
「皆でその結界をなんとか出来ないか考えたらいいだろ!」
ディノがニッと笑いながら言った。リラーナもイーザンも頷いてくれている。ヴァドもオキも同じだ。うん、そうよ。そんなときはどうすべきか、どうすれば誰も犠牲にならずに済むのか……皆はきっと一緒に考えてくれるはず。
「うん。結界がどんなもので、どうしたらいいのかなんて今考えても分からない。実際に見てみないと、お母様にも会ってみないと、なにも分からない。だから……」
オルフィウス王を真っ直ぐに見詰めた。オルフィウス王も私の答えを待つように、真摯な目を向けてくれている。
「だから、私はやっぱり神殿に行きます!」
きっぱりと宣言した。じっと真っ直ぐに見詰めていたオルフィウス王は、視線を外したかと思うと目を伏せた。そして口角を上げる。
「フッ。まあそう言うだろうとは思っていた」
目を伏せながら笑ったオルフィウス王は、ゆっくり顔を上げ、改めて目を合わせると、ニッと笑った。
「では、私も共に行こう」
「え!?」
予期せぬ言葉にルギニアス以外の全員の声が重なった。驚き目を見開いていると、オルフィウス王はフフッ、となにやらそれこそ魔王のような……悪そうな笑みを浮かべていた……。
横に立っている側近らしき人が大きな溜め息を吐いているわ……。
「私も色々と気になるからな。頑なに結界の場所を隠しているのも意味が分からん。今現在結界はどうなっているのか、聖女が今後いなくなったとしたらどうなっていくのか、と、知りたいことは色々ある。それに……」
チラリとルギニアスを見たオルフィウス王はさらに悪そうな顔になり……
「かつて魔王と呼ばれていた者が今ここにいると知れば、大穴が開いた原因が元はと言えば人間のせいだと知れば、本来、魔物と戦う必要などなかったのだと知れば、大司教がどんな顔をするのか見ものではないか?」
うわぁ……な、なんかめちゃくちゃ悪い顔になってる……。オルフィウス王って冷静沈着な人なのかと思っていたら……なんというか……こっちが素なのかしら……。
明らかにルギニアスに向けて言ったのだろう、ということは容易に想像がついた。チラリとルギニアスを見ると……うわぁ……魔王が二人に……。二人して悪い顔してる……。
二人して目を合わせながら「フッフッフッ」とか笑い合ってるし……。
私たちは顔を引き攣らせながら乾いた笑いとなり、側近の人は額に手をやり大きな溜め息を吐いてるし……アハハハ……。
「まあ、それ以外にもアシェリアンの目的も知りたいところだしな」
オルフィウス王はひとしきり悪そうな顔をした後、再び冷静な顔となり言った。
「アシェリアンの目的?」
「あぁ。異世界に転生していた初代聖女の元にルギニアスが共に行った理由はなんなのか、そしてなぜわざわざルーサをこちらの世界に転生させてまでルギニアスを連れ戻したのか……」
「…………」
ルギニアスと顔を見合わせた。それはお互い分からないことだった。アリシャの転生と共にルギニアスがアリサの元へと行くことになった理由。私が死を迎えてまでこちらの世界に転生する必要。それはルギニアスをこちらの世界に連れ戻したいからだったのか。それが理由ならばなぜ連れ戻す必要があったのか。
「ルーサ、ルギニアス、君たちはそれを知る権利がある」
オルフィウス王は私とルギニアスを見たかと思うと強い視線を向け、そして皆も力強く頷いた。
ルギニアスと私は頷き合い、そして強く手を握り合った……。
その後、オルフィウス王からはアシェルーダの王の動きも気になるから、少し待て、と言われ、私たちは数日の間、ラフィージア城で滞在することとなった。
その間、ヴァドもガルヴィオ王に報告をしていたらしく、ラフィージア、ガルヴィオ、それぞれの王は、お互いの情報を共有し合い、なにやら画策しているようだ、と教えてもらった。
そして数日の時間を経て、ついに大聖堂から神殿へと向かう日がやって来た。
第5章 完
それに無事に会えたとしても、もしお母様が結界の守護から離れられないとしたら……。そうよ、そもそも私が『聖女』ではなかったせいで、お母様がこんなに長く拘束されることになったのなら……私が会いに行ったところでお母様が解放されるはずがない……。
どうしたらいいの……。
「そんなもの、会ってみなければ分からないだろう。その後のことは会ってから考えればいい」
皆が不安気な顔で押し黙るなか、ルギニアスがきっぱりと言い切った。
「なにを躊躇う必要がある。お前はずっと母親に会いたかったんだろう? 理由はそれだけだろうが。ならば会えばいい。それ以外のことなど後回しでいい」
ルギニアスは私の目を真っ直ぐ見詰め言った。なにを迷っているんだ、とそう言ってくれている。
「そう、だね……うん。私はお母様に……両親に会いたかっただけ。会ってなにがあったのかを聞きたかっただけ。お母様が結界から離れられないというなら、そのときは……」
「皆でその結界をなんとか出来ないか考えたらいいだろ!」
ディノがニッと笑いながら言った。リラーナもイーザンも頷いてくれている。ヴァドもオキも同じだ。うん、そうよ。そんなときはどうすべきか、どうすれば誰も犠牲にならずに済むのか……皆はきっと一緒に考えてくれるはず。
「うん。結界がどんなもので、どうしたらいいのかなんて今考えても分からない。実際に見てみないと、お母様にも会ってみないと、なにも分からない。だから……」
オルフィウス王を真っ直ぐに見詰めた。オルフィウス王も私の答えを待つように、真摯な目を向けてくれている。
「だから、私はやっぱり神殿に行きます!」
きっぱりと宣言した。じっと真っ直ぐに見詰めていたオルフィウス王は、視線を外したかと思うと目を伏せた。そして口角を上げる。
「フッ。まあそう言うだろうとは思っていた」
目を伏せながら笑ったオルフィウス王は、ゆっくり顔を上げ、改めて目を合わせると、ニッと笑った。
「では、私も共に行こう」
「え!?」
予期せぬ言葉にルギニアス以外の全員の声が重なった。驚き目を見開いていると、オルフィウス王はフフッ、となにやらそれこそ魔王のような……悪そうな笑みを浮かべていた……。
横に立っている側近らしき人が大きな溜め息を吐いているわ……。
「私も色々と気になるからな。頑なに結界の場所を隠しているのも意味が分からん。今現在結界はどうなっているのか、聖女が今後いなくなったとしたらどうなっていくのか、と、知りたいことは色々ある。それに……」
チラリとルギニアスを見たオルフィウス王はさらに悪そうな顔になり……
「かつて魔王と呼ばれていた者が今ここにいると知れば、大穴が開いた原因が元はと言えば人間のせいだと知れば、本来、魔物と戦う必要などなかったのだと知れば、大司教がどんな顔をするのか見ものではないか?」
うわぁ……な、なんかめちゃくちゃ悪い顔になってる……。オルフィウス王って冷静沈着な人なのかと思っていたら……なんというか……こっちが素なのかしら……。
明らかにルギニアスに向けて言ったのだろう、ということは容易に想像がついた。チラリとルギニアスを見ると……うわぁ……魔王が二人に……。二人して悪い顔してる……。
二人して目を合わせながら「フッフッフッ」とか笑い合ってるし……。
私たちは顔を引き攣らせながら乾いた笑いとなり、側近の人は額に手をやり大きな溜め息を吐いてるし……アハハハ……。
「まあ、それ以外にもアシェリアンの目的も知りたいところだしな」
オルフィウス王はひとしきり悪そうな顔をした後、再び冷静な顔となり言った。
「アシェリアンの目的?」
「あぁ。異世界に転生していた初代聖女の元にルギニアスが共に行った理由はなんなのか、そしてなぜわざわざルーサをこちらの世界に転生させてまでルギニアスを連れ戻したのか……」
「…………」
ルギニアスと顔を見合わせた。それはお互い分からないことだった。アリシャの転生と共にルギニアスがアリサの元へと行くことになった理由。私が死を迎えてまでこちらの世界に転生する必要。それはルギニアスをこちらの世界に連れ戻したいからだったのか。それが理由ならばなぜ連れ戻す必要があったのか。
「ルーサ、ルギニアス、君たちはそれを知る権利がある」
オルフィウス王は私とルギニアスを見たかと思うと強い視線を向け、そして皆も力強く頷いた。
ルギニアスと私は頷き合い、そして強く手を握り合った……。
その後、オルフィウス王からはアシェルーダの王の動きも気になるから、少し待て、と言われ、私たちは数日の間、ラフィージア城で滞在することとなった。
その間、ヴァドもガルヴィオ王に報告をしていたらしく、ラフィージア、ガルヴィオ、それぞれの王は、お互いの情報を共有し合い、なにやら画策しているようだ、と教えてもらった。
そして数日の時間を経て、ついに大聖堂から神殿へと向かう日がやって来た。
第5章 完
3
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる