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第5章《旅立ち~天空の国ラフィージア》編
第225話 歴代王たちの墓
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ルギニアスは特に表情を変えるでもなく、皆の顔をちらりと見渡した。
「それは俺たちも付いて行っていいんですか?」
ヴァドがオルフィウス王に聞くと、オルフィウス王は頷いた。
「特に面白いところでもないがな。関係があるのはルギニアスだけだ」
そう言ってオルフィウス王は、今度は私たちが入って来た扉から私たちを促すように出る。ルギニアスが関係している……といえば、おそらく双子の弟のことなのだろう……。それは容易に想像がついた。
オルフィウス王は王の間から外へと出ると、さらに城から外へと歩いて行く。そして、私たちが飛行船から歩いてやって来た方向とは違う、反対側へと歩いて行った。
ラフィージアの大地は円で広がり、中心には城がある。その周りには街が広がっているため、城を離れしばらく歩いて行くと、城を囲う城壁が現れ、城門を通り抜ける。そして、城門を通り抜けると街が広がる。街はそれほど広くはないが人々が行き交い賑やかだ。
皆、オルフィウス王が歩いているのを見掛けると、道を開け、横に退いたかと思うと頭を下げた。
そうやって頭を下げる人々の横を、長い髪とローブのような服を靡かせながら、優雅に歩いて行く。頭を下げる人々の顔は穏やかで、オルフィウス王のことを敬っているのだということがよく分かる。
そんなオルフィウス王の後に続く私たちは、不思議そうな目を向けられてはいるが、しかし、私たちが去るまでラフィージアの人々はずっと頭を下げてくれていた。
街の端まで歩いて来ると、街を囲む外壁が現れる。その一箇所になにやら扉のようなものが……。しかし、扉なのにその外壁の上から覗く先には何もない。大空が広がるだけだ。こんなところでなにをしようとしているのか。
オルフィウス王はその扉に手を掛けた。そしてその手に魔力を籠めたかと思うと、ゆっくりとその扉を開く。
するとその先には緑が広がった。
「!? なに!?」
私とリラーナが驚きの声を上げ、ディノたちも目を見開いていた。ルギニアスはひとり冷静にその状況を見詰めている。
扉を開き、その先には緑が広がって見えた。しかし、その扉の上部、外壁から見えるところには相変わらず大空が広がっているだけ……一体どういうこと!?
「強力な魔力で別の空間に繋げたな?」
ルギニアスが呟いた言葉にオルフィウス王はフッと笑った。そして、そのままその扉の向こう側へと歩いて行くオルフィウス王の姿は、その扉のなかにしか姿が見えなかった。ルギニアスの言う通り、あの扉のなかは別の空間になっているということなのか……。
私たちはキョロキョロと回りを見回しながら不思議な感覚のまま、その扉を通り抜ける。扉を抜けた瞬間、そこはとてつもなく広く、そして青々とした草花が風にそよいでいた。
大地の匂いを感じ、暖かな風が髪を揺らす。前を歩くルギニアスの長く綺麗な漆黒の髪が大きく揺らいでいた。
私たちが通り過ぎると、扉は閉じ、振り向くと草花が広がる平原にポツンと扉だけが佇んでいた。それがとても不思議な光景で、扉が閉じると、街の喧騒ですら全く聞こえなくなり、ただ風の音だけが響いていた。
「こっちだ」
オルフィウス王は私たち全員が扉を通り抜けたことを確認すると、再び踵を返し歩き出す。風が草花を揺らす音しか聞こえない、ただひたすら広い平原。それが不思議でもあり、しかしなんだかとても落ち着く。一体ここはどこなのか……。
ひたすら広い平原を歩いていると、次第に少し小高くなっていく。そしてその先には一本の大樹が根付いていた。
とてつもなく太い幹に支えられ、まるで屋根のように大きく広がった枝と葉は広く影を落とし、風が吹くたびに大きく葉を揺らしている。
ザザァ、と葉が揺れる音が響く。神秘的な雰囲気を放つその大樹がなんだかこの大地を見守っているような、そんな風に感じる。
「ここは……」
「歴代王たちの墓がある……二代目王の墓もな……」
オルフィウス王はルギニアスを見た。ルギニアスはなんとなく予想がついていたのか、特に表情を変えることはなかった。しかし、私に振り返り、手を伸ばした。
「一緒に来てくれ」
「ルギニアス……うん」
今朝のそわそわした気分など、そんなことはもう関係なかった。私はルギニアスの手を取り、グッと握り締めた。ルギニアスも私の手を握り返し、フッと笑うとオルフィウス王に向き直る。
それを見たオルフィウス王はひとつ頷くと、さらに歩みを進めた。それに続くと、その大樹を囲むように真っ白な墓石が並んでいた。
「それは俺たちも付いて行っていいんですか?」
ヴァドがオルフィウス王に聞くと、オルフィウス王は頷いた。
「特に面白いところでもないがな。関係があるのはルギニアスだけだ」
そう言ってオルフィウス王は、今度は私たちが入って来た扉から私たちを促すように出る。ルギニアスが関係している……といえば、おそらく双子の弟のことなのだろう……。それは容易に想像がついた。
オルフィウス王は王の間から外へと出ると、さらに城から外へと歩いて行く。そして、私たちが飛行船から歩いてやって来た方向とは違う、反対側へと歩いて行った。
ラフィージアの大地は円で広がり、中心には城がある。その周りには街が広がっているため、城を離れしばらく歩いて行くと、城を囲う城壁が現れ、城門を通り抜ける。そして、城門を通り抜けると街が広がる。街はそれほど広くはないが人々が行き交い賑やかだ。
皆、オルフィウス王が歩いているのを見掛けると、道を開け、横に退いたかと思うと頭を下げた。
そうやって頭を下げる人々の横を、長い髪とローブのような服を靡かせながら、優雅に歩いて行く。頭を下げる人々の顔は穏やかで、オルフィウス王のことを敬っているのだということがよく分かる。
そんなオルフィウス王の後に続く私たちは、不思議そうな目を向けられてはいるが、しかし、私たちが去るまでラフィージアの人々はずっと頭を下げてくれていた。
街の端まで歩いて来ると、街を囲む外壁が現れる。その一箇所になにやら扉のようなものが……。しかし、扉なのにその外壁の上から覗く先には何もない。大空が広がるだけだ。こんなところでなにをしようとしているのか。
オルフィウス王はその扉に手を掛けた。そしてその手に魔力を籠めたかと思うと、ゆっくりとその扉を開く。
するとその先には緑が広がった。
「!? なに!?」
私とリラーナが驚きの声を上げ、ディノたちも目を見開いていた。ルギニアスはひとり冷静にその状況を見詰めている。
扉を開き、その先には緑が広がって見えた。しかし、その扉の上部、外壁から見えるところには相変わらず大空が広がっているだけ……一体どういうこと!?
「強力な魔力で別の空間に繋げたな?」
ルギニアスが呟いた言葉にオルフィウス王はフッと笑った。そして、そのままその扉の向こう側へと歩いて行くオルフィウス王の姿は、その扉のなかにしか姿が見えなかった。ルギニアスの言う通り、あの扉のなかは別の空間になっているということなのか……。
私たちはキョロキョロと回りを見回しながら不思議な感覚のまま、その扉を通り抜ける。扉を抜けた瞬間、そこはとてつもなく広く、そして青々とした草花が風にそよいでいた。
大地の匂いを感じ、暖かな風が髪を揺らす。前を歩くルギニアスの長く綺麗な漆黒の髪が大きく揺らいでいた。
私たちが通り過ぎると、扉は閉じ、振り向くと草花が広がる平原にポツンと扉だけが佇んでいた。それがとても不思議な光景で、扉が閉じると、街の喧騒ですら全く聞こえなくなり、ただ風の音だけが響いていた。
「こっちだ」
オルフィウス王は私たち全員が扉を通り抜けたことを確認すると、再び踵を返し歩き出す。風が草花を揺らす音しか聞こえない、ただひたすら広い平原。それが不思議でもあり、しかしなんだかとても落ち着く。一体ここはどこなのか……。
ひたすら広い平原を歩いていると、次第に少し小高くなっていく。そしてその先には一本の大樹が根付いていた。
とてつもなく太い幹に支えられ、まるで屋根のように大きく広がった枝と葉は広く影を落とし、風が吹くたびに大きく葉を揺らしている。
ザザァ、と葉が揺れる音が響く。神秘的な雰囲気を放つその大樹がなんだかこの大地を見守っているような、そんな風に感じる。
「ここは……」
「歴代王たちの墓がある……二代目王の墓もな……」
オルフィウス王はルギニアスを見た。ルギニアスはなんとなく予想がついていたのか、特に表情を変えることはなかった。しかし、私に振り返り、手を伸ばした。
「一緒に来てくれ」
「ルギニアス……うん」
今朝のそわそわした気分など、そんなことはもう関係なかった。私はルギニアスの手を取り、グッと握り締めた。ルギニアスも私の手を握り返し、フッと笑うとオルフィウス王に向き直る。
それを見たオルフィウス王はひとつ頷くと、さらに歩みを進めた。それに続くと、その大樹を囲むように真っ白な墓石が並んでいた。
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