201 / 247
第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第198話 周辺調査
しおりを挟む
「とりあえず海側のほうも確認しておくか」
ディノが言った言葉にイーザンが頷く。
「そうだな、出来ればその横穴に見張りと、湖の見張りを立てたいところだが……連絡手段がないな……」
「あぁ、それなら通信用魔導具を持って来たから大丈夫だ」
ヴァドが鞄のなかから小さな魔導具を取り出した。掌に乗るそれは小さな四角い箱のようなものだった。
「これに魔力を送ると、相手側に声が伝わる」
ヴァドの手には同じ魔導具が二つ。対となったその魔導具で声を届けるわけね。オキの持っていた国王と通信していた魔導具と似たようなものかしら。そう思いチラリと視線をオキへと向けると、それに気付いたオキがヒラヒラと手を振った。
「俺が持っているのは支給されたやつだが、もっと高価なものだな」
「高価……」
「ん? オキも持ってるのか? まあ、俺が持っているこれは、近距離でしか使えないやつだからな」
「近距離……」
「あぁ、精々遠いところといってもここから王城くらいまでしか無理かな」
「へぇ、通信用にも色々あるのね」
ダラスさんと一緒に行っていた魔獣の森で、騎士の人たちと通信する魔導具は腕輪型だった。あれも確かあの森の広さでくらいしか使えない。オキの持つ通信用魔導具は海を渡った他国へ来ていても通信出来る。
「魔導具に埋め込んだ魔石の力や魔力の強さによって通信出来る距離は変わってくるわね」
リラーナがヴァドの持つ通信用魔導具を眺めながら言った。
「オキの持つ、海を渡ってまで通信出来る魔導具となると、相当力のある魔導具だと思うわ」
そう言ってリラーナもチラリとオキを見た。オキは自分に注目が集まったことに焦ったのか。慌てて両手をひらひらと振る。
「いや、あれは支給品だからね。俺のじゃないし。相手が……まあ、あれだしな……」
そう言い苦笑する。その言葉に私たちも苦笑するしかなかった。国王ならば確かにとんでもない魔導具も持っていそうだ。そんな相手に命を狙われているってのもなんだかね……。
「まあ、とりあえず通信は可能だってことだな。じゃあ、海側の横穴を見に行ってみるか」
ディノが仕切り直したところで、皆が頷き、海へと向かう。
湖から森を抜けしばらく歩くと、岸壁に出て来る。その崖沿いに歩いて行くと、海側へと降りることが出来る細い道が現れた。
横穴からは少し離れているらしいが、海に降りられるのはこの道しかないのだそう。細く急な坂を下りて行くと、砂浜が広がっていた。その砂浜から崖を見上げると、かなりの高さがあり、湖の森の木々は全く見えない。湖の深さがどれほどのものかが分からないが、この崖の高さほどの深さがあるのだろうか、と、ふと考える。もしそうだとするとかなりの深さだ。
ヴァドは地図で示した通りの場所を目指して歩く。私たちもそれに続いた。しばらく砂浜を歩いて行くと、崖っぷちに大きく波が渦巻く場所が見えた。そこには崖に大きな横穴が開いてあり、その入り口に当たる波が、激しくうねりを上げているのだ。
「あそこだ」
ヴァドが指を差す。
近くまでは砂浜が続いていたが途切れているせいで、その横穴の元までは行く術がなかった。
「砂浜近くは比較的浅いんだが、少し進むと一気に深くなるんだ。だから、あの横穴の辺りはかなりの深さがあると思う。サパルフェンは巨大な魔魚だから相当目立つとは思うんだが、あまりに深く潜られてしまうと海上からは見えないかもしれない」
「うーん、じゃあここで見張っていても意味ないか?」
「どうだろうな……一人くらいは見張っているほうが、湖に入り込んだと連絡をもらえるとやはり助かるしな」
「そもそも海で見付けたらこっちで倒せば良いんじゃないのか?」
ディノが首を傾げながら聞いた。確かに湖に来たかどうか確認するより、海にいるときに見付けたら、その場で倒すほうが楽なんじゃ……。
「まあ、それもありなんだが、サパルフェンは警戒心が強いし、素早いから、海で狙っても逃げられる可能性が高い。しかも万が一失敗すると、あの湖には二度と現れないかもしれないしな」
「なるほど……なら、やはり湖に入り込んだところを横穴に逃げられないようにしつつ、倒すほうが無難な訳か……」
ふむ、と考え込むディノとイーザン。ルギニアスもなにやら考え込んでいるような。
「とりあえず一人ここで見張る奴がいるほうが有難いのは確かだし、かと言ってディノやイーザンが見張ると戦力が落ちるしな。だから、潜水艇を運んで来る、うちの作業員を見張りにするか」
あっけらかんと言ったヴァドに皆が唖然とした。
「え、いいの? そんなこと頼んで」
「あぁ、潜水艇を運んで来る奴らは、いつもなにかしら手伝わせているしな」
そう言ってアハハと笑うヴァドに全員苦笑した。
ディノが言った言葉にイーザンが頷く。
「そうだな、出来ればその横穴に見張りと、湖の見張りを立てたいところだが……連絡手段がないな……」
「あぁ、それなら通信用魔導具を持って来たから大丈夫だ」
ヴァドが鞄のなかから小さな魔導具を取り出した。掌に乗るそれは小さな四角い箱のようなものだった。
「これに魔力を送ると、相手側に声が伝わる」
ヴァドの手には同じ魔導具が二つ。対となったその魔導具で声を届けるわけね。オキの持っていた国王と通信していた魔導具と似たようなものかしら。そう思いチラリと視線をオキへと向けると、それに気付いたオキがヒラヒラと手を振った。
「俺が持っているのは支給されたやつだが、もっと高価なものだな」
「高価……」
「ん? オキも持ってるのか? まあ、俺が持っているこれは、近距離でしか使えないやつだからな」
「近距離……」
「あぁ、精々遠いところといってもここから王城くらいまでしか無理かな」
「へぇ、通信用にも色々あるのね」
ダラスさんと一緒に行っていた魔獣の森で、騎士の人たちと通信する魔導具は腕輪型だった。あれも確かあの森の広さでくらいしか使えない。オキの持つ通信用魔導具は海を渡った他国へ来ていても通信出来る。
「魔導具に埋め込んだ魔石の力や魔力の強さによって通信出来る距離は変わってくるわね」
リラーナがヴァドの持つ通信用魔導具を眺めながら言った。
「オキの持つ、海を渡ってまで通信出来る魔導具となると、相当力のある魔導具だと思うわ」
そう言ってリラーナもチラリとオキを見た。オキは自分に注目が集まったことに焦ったのか。慌てて両手をひらひらと振る。
「いや、あれは支給品だからね。俺のじゃないし。相手が……まあ、あれだしな……」
そう言い苦笑する。その言葉に私たちも苦笑するしかなかった。国王ならば確かにとんでもない魔導具も持っていそうだ。そんな相手に命を狙われているってのもなんだかね……。
「まあ、とりあえず通信は可能だってことだな。じゃあ、海側の横穴を見に行ってみるか」
ディノが仕切り直したところで、皆が頷き、海へと向かう。
湖から森を抜けしばらく歩くと、岸壁に出て来る。その崖沿いに歩いて行くと、海側へと降りることが出来る細い道が現れた。
横穴からは少し離れているらしいが、海に降りられるのはこの道しかないのだそう。細く急な坂を下りて行くと、砂浜が広がっていた。その砂浜から崖を見上げると、かなりの高さがあり、湖の森の木々は全く見えない。湖の深さがどれほどのものかが分からないが、この崖の高さほどの深さがあるのだろうか、と、ふと考える。もしそうだとするとかなりの深さだ。
ヴァドは地図で示した通りの場所を目指して歩く。私たちもそれに続いた。しばらく砂浜を歩いて行くと、崖っぷちに大きく波が渦巻く場所が見えた。そこには崖に大きな横穴が開いてあり、その入り口に当たる波が、激しくうねりを上げているのだ。
「あそこだ」
ヴァドが指を差す。
近くまでは砂浜が続いていたが途切れているせいで、その横穴の元までは行く術がなかった。
「砂浜近くは比較的浅いんだが、少し進むと一気に深くなるんだ。だから、あの横穴の辺りはかなりの深さがあると思う。サパルフェンは巨大な魔魚だから相当目立つとは思うんだが、あまりに深く潜られてしまうと海上からは見えないかもしれない」
「うーん、じゃあここで見張っていても意味ないか?」
「どうだろうな……一人くらいは見張っているほうが、湖に入り込んだと連絡をもらえるとやはり助かるしな」
「そもそも海で見付けたらこっちで倒せば良いんじゃないのか?」
ディノが首を傾げながら聞いた。確かに湖に来たかどうか確認するより、海にいるときに見付けたら、その場で倒すほうが楽なんじゃ……。
「まあ、それもありなんだが、サパルフェンは警戒心が強いし、素早いから、海で狙っても逃げられる可能性が高い。しかも万が一失敗すると、あの湖には二度と現れないかもしれないしな」
「なるほど……なら、やはり湖に入り込んだところを横穴に逃げられないようにしつつ、倒すほうが無難な訳か……」
ふむ、と考え込むディノとイーザン。ルギニアスもなにやら考え込んでいるような。
「とりあえず一人ここで見張る奴がいるほうが有難いのは確かだし、かと言ってディノやイーザンが見張ると戦力が落ちるしな。だから、潜水艇を運んで来る、うちの作業員を見張りにするか」
あっけらかんと言ったヴァドに皆が唖然とした。
「え、いいの? そんなこと頼んで」
「あぁ、潜水艇を運んで来る奴らは、いつもなにかしら手伝わせているしな」
そう言ってアハハと笑うヴァドに全員苦笑した。
2
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる