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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第196話 作戦会議
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「あぁ、サパルフェンって名の魔魚なんだが、その魔魚が主みたいになっている湖があるんだ。湖底ではなにやら海と繋がっているらしくてな、湖自体に海流のように流れがあり、人間が潜るにはかなり苦労する。そんな湖をサパルフェンは海と行き来し、住処にしているようなんだ。そいつの魔石がラフィージアへ行くだけの浮力を発動させるだけの力を持っていてな」
ヴァドが説明をしてくれるが、皆で顔を見合わせ考え込む。
「なかなか難しそうなやつだな」
ディノが苦笑しながら言う。イーザンも顎に手をやり考え込む。
「湖底や海にいるのなら水上に出て来ることはあるのか?」
イーザンはヴァドに視線を向け聞いた。ヴァドは苦笑する。
「それがなぁ……なかなか水上には出て来ないんだよな。だからそいつで魔石を精製するにはかなり大変なんだ」
「水上に出て来ないなら、今までどうやって魔石を精製していたの?」
魔石を作るには魔石精製師が必要だし、精製するには死んだ直後でないと出来ない。水中なんかで精製は出来ないし、今までどうやって精製していたのか。
「うん、まあ無理矢理?」
そう言い苦笑するヴァド。
「無理矢理って?」
「俺たちが潜水艇で潜って刺激し、無理矢理水上まで誘き出す」
「おぉ……本当に無理矢理だな」
ディノも苦笑し、そしてリラーナの目が輝いた。ん?
「潜水艇!? そんなのもあるの!?」
「え? あ、あぁ」
「見たい!!」
リラーナが勢いよくヴァドに詰め寄り目を輝かせる。ヴァドは「またか」といった顔で苦笑し、国王とラオセンさんは目を丸くしていた。
「アハハ、お嬢さんは魔導具師だったか? 潜水艇に興味があるなら、一緒に乗り込めばいい。三人ほどは乗り込める」
「え! 良いんですか!? やった!!」
「え、ちょ、ちょっとリラーナ! そんな簡単に……」
どんな代物かも分からないうえに、そんな魔魚を刺激させに行くなんて危険なんじゃ……。そう思っていると国王がハハと笑った。
「少々危険かもしれんが……まあ、今まで失敗したことはないし、なんとかなるだろう。アハハ」
「あぁ、失敗したことはないな」
国王とヴァドは二人で笑っている……。
えー、そんな適当な……と、たじろいでいると、「この二人はこんなだから」と、オキが乾いた笑いで私の肩にポンと手を置いた。
国王とヴァドの気楽な発言に、ラオセンさんは大きく溜め息を吐いていた。な、なんだか大変ですね……と、ラオセンさんにちょっぴり同情。
「では、とりあえず魔石はヴァドルア様が用意されるのですね?」
「あぁ、だから飛行船の修繕は頼んだ」
「分かりました。手配しておきます」
そう話が落ち着くと、私たちは国王の執務室を後にした。部屋を用意してもらい、ラフィージア行きのために、王城へと泊まることになった。
飛行船の修繕と並行して、私たちはサパルフェンの魔石を精製しに行くために準備をする。
王城のなかに用意してもらった部屋はさすがというかなんというか、とても豪華な部屋で、調度品も一級品なのだろうということが容易に想像がつく。
一人ずつ部屋を用意してもらえたが、広すぎてどうにも落ち着かない。全員が苦笑していた。
夜、夕食を国王と共にと言われ、緊張しつつも、相変わらずの気さくな感じの国王で、意外にも緊張せず楽しい晩餐となった。
そしてその後、私の部屋に皆が集まり話し合い。
「とりあえず魔石の精製はルーサに任せるとして、潜水艇に乗り込むやつ、サパルフェンが水上に出て来たときに攻撃するやつ、と担当を決めよう」
皆が頷き話し合う。
潜水艇は小さく、身体の大きなヴァドが乗り込むと、他は二人しか乗ることは出来ないとのことだった。操縦はヴァドが行う。という訳で、リラーナは絶対乗り込みたい、と引かないので、一人はリラーナ、もう一人は誰が乗り込むか、という話になった。
「私が乗ろうか」
イーザンがそう呟き、皆が考える。
「いや、でもイーザンが乗り込むと魔法攻撃出来なくなるよね」
「だよな。水上ということは、俺はあんま役に立たなそうだし、俺が乗ろうか?」
ディノがそう言葉にする。
「となると、水上で待機はイーザンとオキ……、オキはでも暗器よね。毒だと死んだ瞬間って分かりにくいんじゃ……」
「あ、確かにな……」
そう話し合いながら、全員がオキを見た。オキは全く話し合いには参加していなく、ボーッとしていたのか、全員の視線が集まると「え?」といった顔をした。
「なに? 俺?」
「オキが潜水艇に乗るので大丈夫?」
「えー、俺が乗るの? めんどくさい……別にヴァドとリラーナだけでも……」
そうブツブツ言うオキに、ヴァドが苦笑した。
「まあ二人でも問題はないんだが、万が一なにかあったときのためにな」
ブツブツ言うオキは渋々ながら最後には頷いていた。翌日からその湖に行ってみようということで、この日は解散したのだった。
*************
☆次回、4月8日更新予定です。
ヴァドが説明をしてくれるが、皆で顔を見合わせ考え込む。
「なかなか難しそうなやつだな」
ディノが苦笑しながら言う。イーザンも顎に手をやり考え込む。
「湖底や海にいるのなら水上に出て来ることはあるのか?」
イーザンはヴァドに視線を向け聞いた。ヴァドは苦笑する。
「それがなぁ……なかなか水上には出て来ないんだよな。だからそいつで魔石を精製するにはかなり大変なんだ」
「水上に出て来ないなら、今までどうやって魔石を精製していたの?」
魔石を作るには魔石精製師が必要だし、精製するには死んだ直後でないと出来ない。水中なんかで精製は出来ないし、今までどうやって精製していたのか。
「うん、まあ無理矢理?」
そう言い苦笑するヴァド。
「無理矢理って?」
「俺たちが潜水艇で潜って刺激し、無理矢理水上まで誘き出す」
「おぉ……本当に無理矢理だな」
ディノも苦笑し、そしてリラーナの目が輝いた。ん?
「潜水艇!? そんなのもあるの!?」
「え? あ、あぁ」
「見たい!!」
リラーナが勢いよくヴァドに詰め寄り目を輝かせる。ヴァドは「またか」といった顔で苦笑し、国王とラオセンさんは目を丸くしていた。
「アハハ、お嬢さんは魔導具師だったか? 潜水艇に興味があるなら、一緒に乗り込めばいい。三人ほどは乗り込める」
「え! 良いんですか!? やった!!」
「え、ちょ、ちょっとリラーナ! そんな簡単に……」
どんな代物かも分からないうえに、そんな魔魚を刺激させに行くなんて危険なんじゃ……。そう思っていると国王がハハと笑った。
「少々危険かもしれんが……まあ、今まで失敗したことはないし、なんとかなるだろう。アハハ」
「あぁ、失敗したことはないな」
国王とヴァドは二人で笑っている……。
えー、そんな適当な……と、たじろいでいると、「この二人はこんなだから」と、オキが乾いた笑いで私の肩にポンと手を置いた。
国王とヴァドの気楽な発言に、ラオセンさんは大きく溜め息を吐いていた。な、なんだか大変ですね……と、ラオセンさんにちょっぴり同情。
「では、とりあえず魔石はヴァドルア様が用意されるのですね?」
「あぁ、だから飛行船の修繕は頼んだ」
「分かりました。手配しておきます」
そう話が落ち着くと、私たちは国王の執務室を後にした。部屋を用意してもらい、ラフィージア行きのために、王城へと泊まることになった。
飛行船の修繕と並行して、私たちはサパルフェンの魔石を精製しに行くために準備をする。
王城のなかに用意してもらった部屋はさすがというかなんというか、とても豪華な部屋で、調度品も一級品なのだろうということが容易に想像がつく。
一人ずつ部屋を用意してもらえたが、広すぎてどうにも落ち着かない。全員が苦笑していた。
夜、夕食を国王と共にと言われ、緊張しつつも、相変わらずの気さくな感じの国王で、意外にも緊張せず楽しい晩餐となった。
そしてその後、私の部屋に皆が集まり話し合い。
「とりあえず魔石の精製はルーサに任せるとして、潜水艇に乗り込むやつ、サパルフェンが水上に出て来たときに攻撃するやつ、と担当を決めよう」
皆が頷き話し合う。
潜水艇は小さく、身体の大きなヴァドが乗り込むと、他は二人しか乗ることは出来ないとのことだった。操縦はヴァドが行う。という訳で、リラーナは絶対乗り込みたい、と引かないので、一人はリラーナ、もう一人は誰が乗り込むか、という話になった。
「私が乗ろうか」
イーザンがそう呟き、皆が考える。
「いや、でもイーザンが乗り込むと魔法攻撃出来なくなるよね」
「だよな。水上ということは、俺はあんま役に立たなそうだし、俺が乗ろうか?」
ディノがそう言葉にする。
「となると、水上で待機はイーザンとオキ……、オキはでも暗器よね。毒だと死んだ瞬間って分かりにくいんじゃ……」
「あ、確かにな……」
そう話し合いながら、全員がオキを見た。オキは全く話し合いには参加していなく、ボーッとしていたのか、全員の視線が集まると「え?」といった顔をした。
「なに? 俺?」
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そうブツブツ言うオキに、ヴァドが苦笑した。
「まあ二人でも問題はないんだが、万が一なにかあったときのためにな」
ブツブツ言うオキは渋々ながら最後には頷いていた。翌日からその湖に行ってみようということで、この日は解散したのだった。
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☆次回、4月8日更新予定です。
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