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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第195話 女神の意思
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「ラフィージアの王からの返事は期待しないほうがいいとして……」
「返事がないならどうしたら……」
「無視して行けばいい」
「えっ」
国王の言葉にヴァドは苦笑し、私たちは茫然。
「え、無視って……そんな勝手に行って良いんですか?」
ガルヴィオ国王の書状があろうがなかろうが、結局は門前払いになるってこと? それなら強行突破ってことなのかしら、と苦笑する。
「まあ冗談はさておき……」
「じょ……んぐっ」
冗談て! と、突っ込みそうになり慌てて口を噤む。その姿を見てまたオキが噴き出してるし……。
「さっき送った書状には聖女に関してのことだ、とも記した。だから返事はなくとも必ず君たちを受け入れるはずだ。それに君たちと会って話を聞いたなら、きっとラフィージアの王も協力するだろうよ。ルーサ嬢がなぜ聖女として生まれなかったのか、ということに興味を持つだろうしな」
そう言ってニッと笑った国王。
「確かにルーサが聖女ではなかった、というのにはなにか理由があるかもしれないよな……」
ヴァドが呟いた言葉に全員が私を見た。
「聖女ではなかった理由か……」
私自身は魔石精製師で良かったとは思っているが、聖女からは聖女しか生まれないのが普通なのだとしたら、私がただ単に出来損ないだったのか、それともなにか意味があるのか……。
「神託で能力を授かる、ということは女神の意思ってことよね。なら、ルーサが聖女じゃなかったというのは、やっぱり意味があるんじゃない?」
リラーナが顎に手をやり考えながら言った。
「確かにな……私たちは自身で能力を選べる訳ではない。努力しても神託以外の能力ではなかなか開花しない。それならばこの世において聖女が生まれなかったということ、ルーサが魔石精製師だったということは、なにか意味があるのかもしれない」
イーザンもリラーナに続く。そして、皆が頷いた。
「それらを知るためにもルーサ嬢は今の聖女、君の母上に会うべきだな」
国王の言葉に全員が顔を見合わせ、そしてもう一度頷き合う。
そのとき部屋の扉が叩かれ、ラオセンさんが戻って来た。ラオセンさんは国王に入室を許可され、部屋へと入る。そして立ったまま、私たちをチラリと見回し、そして国王に向き直り報告をする。
「確認して参りましたが、やはり今のままではラフィージアへたどり着くのは難しいかと……」
「「「「「えっ!?」」」」」
全員が驚きの声を上げ、そして国王は溜め息を吐く。
「やはりか……」
どういうことだ、と国王の顔を見るが、国王は苦笑し、ヴァドがハッとする。
「浮力か」
チッと舌打ちをするヴァド。一体なんのことだ、と皆顔を見合わせる。そんな私たちの視線に気付いたヴァドは溜め息を吐きつつ、説明してくれた。
「ラフィージアに行くにはかなり高度の高いところまで飛ばないと行けないんだ。ラフィージアへ行けるだけの高度を上げられる飛行船があるから、それで行くつもりにはしていたんだが……その飛行船の浮力が今現在足らない……らしい」
らしい、という言葉にキョトンとしていると、ヴァドはラオセンさんを見た。そしてラオセンさんも溜め息を吐くと、ヴァドに続いて説明をしてくれる。
「先程、その飛行船の確認をして来たのですが、長く使用していなかったため、修繕が必要であるということと、さらに飛行船の浮力を保つための魔石が足らないのです」
「魔石……」
「はい、飛行船の魔石……というか、普通に飛行するだけでなく、ラフィージアへ行けるほどの浮力を発動させるために必要な魔石が、今現在手元にないのです」
「どんな魔石なんですか? って、聞いたら駄目なのかな」
国の機密事項なのだとしたら聞いては駄目なのかもしれない、と焦る。それには国王もヴァドも笑った。
「ハハ、いや、魔石自体は機密とかではないから気にしなくて大丈夫だ。飛行船の構造などは見せられないがな」
国王のその言葉にリラーナがちょっぴり悔しそうなことに笑いそうになった。
「その魔石がなぁ……ちょっと面倒なんだよな……」
「面倒?」
ヴァドが溜め息を吐く。
「かなりの浮力を必要とするから、魔石も強力なやつなんだが……それに対応出来る魔石は湖底にいる魔魚のものでな……」
「湖底の魔魚!?」
「返事がないならどうしたら……」
「無視して行けばいい」
「えっ」
国王の言葉にヴァドは苦笑し、私たちは茫然。
「え、無視って……そんな勝手に行って良いんですか?」
ガルヴィオ国王の書状があろうがなかろうが、結局は門前払いになるってこと? それなら強行突破ってことなのかしら、と苦笑する。
「まあ冗談はさておき……」
「じょ……んぐっ」
冗談て! と、突っ込みそうになり慌てて口を噤む。その姿を見てまたオキが噴き出してるし……。
「さっき送った書状には聖女に関してのことだ、とも記した。だから返事はなくとも必ず君たちを受け入れるはずだ。それに君たちと会って話を聞いたなら、きっとラフィージアの王も協力するだろうよ。ルーサ嬢がなぜ聖女として生まれなかったのか、ということに興味を持つだろうしな」
そう言ってニッと笑った国王。
「確かにルーサが聖女ではなかった、というのにはなにか理由があるかもしれないよな……」
ヴァドが呟いた言葉に全員が私を見た。
「聖女ではなかった理由か……」
私自身は魔石精製師で良かったとは思っているが、聖女からは聖女しか生まれないのが普通なのだとしたら、私がただ単に出来損ないだったのか、それともなにか意味があるのか……。
「神託で能力を授かる、ということは女神の意思ってことよね。なら、ルーサが聖女じゃなかったというのは、やっぱり意味があるんじゃない?」
リラーナが顎に手をやり考えながら言った。
「確かにな……私たちは自身で能力を選べる訳ではない。努力しても神託以外の能力ではなかなか開花しない。それならばこの世において聖女が生まれなかったということ、ルーサが魔石精製師だったということは、なにか意味があるのかもしれない」
イーザンもリラーナに続く。そして、皆が頷いた。
「それらを知るためにもルーサ嬢は今の聖女、君の母上に会うべきだな」
国王の言葉に全員が顔を見合わせ、そしてもう一度頷き合う。
そのとき部屋の扉が叩かれ、ラオセンさんが戻って来た。ラオセンさんは国王に入室を許可され、部屋へと入る。そして立ったまま、私たちをチラリと見回し、そして国王に向き直り報告をする。
「確認して参りましたが、やはり今のままではラフィージアへたどり着くのは難しいかと……」
「「「「「えっ!?」」」」」
全員が驚きの声を上げ、そして国王は溜め息を吐く。
「やはりか……」
どういうことだ、と国王の顔を見るが、国王は苦笑し、ヴァドがハッとする。
「浮力か」
チッと舌打ちをするヴァド。一体なんのことだ、と皆顔を見合わせる。そんな私たちの視線に気付いたヴァドは溜め息を吐きつつ、説明してくれた。
「ラフィージアに行くにはかなり高度の高いところまで飛ばないと行けないんだ。ラフィージアへ行けるだけの高度を上げられる飛行船があるから、それで行くつもりにはしていたんだが……その飛行船の浮力が今現在足らない……らしい」
らしい、という言葉にキョトンとしていると、ヴァドはラオセンさんを見た。そしてラオセンさんも溜め息を吐くと、ヴァドに続いて説明をしてくれる。
「先程、その飛行船の確認をして来たのですが、長く使用していなかったため、修繕が必要であるということと、さらに飛行船の浮力を保つための魔石が足らないのです」
「魔石……」
「はい、飛行船の魔石……というか、普通に飛行するだけでなく、ラフィージアへ行けるほどの浮力を発動させるために必要な魔石が、今現在手元にないのです」
「どんな魔石なんですか? って、聞いたら駄目なのかな」
国の機密事項なのだとしたら聞いては駄目なのかもしれない、と焦る。それには国王もヴァドも笑った。
「ハハ、いや、魔石自体は機密とかではないから気にしなくて大丈夫だ。飛行船の構造などは見せられないがな」
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「その魔石がなぁ……ちょっと面倒なんだよな……」
「面倒?」
ヴァドが溜め息を吐く。
「かなりの浮力を必要とするから、魔石も強力なやつなんだが……それに対応出来る魔石は湖底にいる魔魚のものでな……」
「湖底の魔魚!?」
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