182 / 247
第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第179話 魔傀儡師探しへ
しおりを挟む
「あぁ、いくら他国の介入や訪問を受け入れていないとはいえ、国使となればさすがに門前払いは出来ないだろうしな。少しだけでも面会が出来れば、きっと話を聞く気になる。ラフィージアにしても、おそらく『聖女』の話は聞かない訳にはいかないだろ」
そう言ってニッと笑ったヴァド。
「なるほど……国使としてか……確かにそれなら面会しない訳にはいかないだろうな」
イーザンが呟いた言葉に、皆が頷く。
「その代わり、俺の父にも『聖女』の話はしてもらうことにはなるがな」
「うん、それは仕方ないよね。ラフィージアに面会申請の書状なんてものを書いてもらうなら、ガルヴィオ国王にも説明しないといけないことは分かってる」
ヴァドに頷いて見せた。
「しっかし、今度はラフィージアか! なんだか本当に世界中の旅になってきたな!」
そう言ってディノが私を見て笑う。
「そういえば子供の頃にディノと約束したのは世界中を旅して回るって言っていたものね」
お互い顔を見合わせ笑った。まさかガルヴィオだけでなく、本当にラフィージアにまで行くことになろうとは。ディノとの約束とは旅の目的が少し違うけれど、それでもやはり違う国を見られる、ということはワクワクする気持ちが高まる。
「じゃあとりあえず面会申請の書状については城に帰ってからになるから、魔傀儡師探しに先に行くか?」
ヴァドが私たちに向かい言う。私たちは顔を見合わせ頷いた。
「はい! 魔傀儡師探しに行きたい!」
リラーナが勢いよく手を挙げ宣言する。その姿に皆が笑った。
「よし、じゃあ魔傀儡師探しに行くか! って、森なんだよな」
思い出したかのようにヴァドが言う。そういえば魔石屋のおじさんが魔傀儡師の居場所を教えてくれた。それは王都近くの森のなかと言っていたのを思い出す。
「森には魔獣がいるからな、それなりに備えていったほうが……、ってお前らなら大丈夫か、アハハ」
少し考えながら言ったかと思ったヴァドは、私たちを見回し笑った。確かにディノとイーザン、オキといて、さらにはルギニアスがいる。ヴァドの戦闘能力はどれほどのものかは分からないが、エルシュからの船に乗っていたときの、クルフォスとドグナグーンとの戦闘を見る限り、ヴァドも相当なものだと思う。ある意味戦力過多?
男性陣がお互い顔を見合わせニヤッと笑い合っているのを、私とリラーナは苦笑しながら眺めた。
そういう訳で、結局特に備えをするでもなく、私たちは王都の外へと向かった。大聖堂がすでに街外れにあるため、街を出るには早かった。魔石屋のおじさんに教えられた森を目指し、ヴァドが先頭を歩く。私たちはそれに続き、歩いて行くと、平原の向こうに鬱蒼とした森が見えて来る。
「あの森だな」
ヴァドが指差し、皆は前方に見える森に目をやった。なんの変哲もない森ではあるが、なぜ魔傀儡師はこんなところに住んでいるのだろうか。
鬱蒼とした森を進む。木々が多く茂り薄暗くはあるが、しかし、まだ陽が高いため、木洩れ日が差し込み、明るさはほどほどにある。途中、何度か魔獣に遭遇し、魔石も確保出来た。ヴァドは魔石精製は初めて見るらしく、精製している間、感心しっぱなしだった。
「そういえば魔獣と獣人の区別ってなんだ?」
ディノがおもむろに聞いた。その言葉を聞いて、確かに、と考える。獣人も獣の姿にもなるし、魔法が使える。魔獣も獣の姿のみではあるが、魔法のようなものを吐き出す。その差はなんだろう。
「ん? 遥か昔の大元はもしかしたら同じなのかもしれないが、基本的に魔獣とは意思疎通が出来ないな」
「意思疎通?」
「あぁ。俺たちも完全獣の姿にもなれるが、獣姿のままでも人語は話せる。意思疎通が出来る。しかし魔獣は完全に獣の鳴き声しか持っていない。俺たちと意思疎通は出来ないからなぁ。だから襲っても来るし、俺たちにとっても倒す相手ではある」
「へぇ、そういうものなのね」
そんなことを話していると急にルギニアスが風を巻き上げ大きくなった。
「え!?」
そしてルギニアスが大きく手を振り上げると、私たちを覆うように大きなドーム型の光の膜が現れた。障壁結界!?
「な、なに!?」
全員が驚いた顔となり、ルギニアスを見る。
障壁結界を展開させたままルギニアスは一点を睨んでいた。その方向の障壁結界に激しい爆発音と共に衝撃が走ったのだった。
そう言ってニッと笑ったヴァド。
「なるほど……国使としてか……確かにそれなら面会しない訳にはいかないだろうな」
イーザンが呟いた言葉に、皆が頷く。
「その代わり、俺の父にも『聖女』の話はしてもらうことにはなるがな」
「うん、それは仕方ないよね。ラフィージアに面会申請の書状なんてものを書いてもらうなら、ガルヴィオ国王にも説明しないといけないことは分かってる」
ヴァドに頷いて見せた。
「しっかし、今度はラフィージアか! なんだか本当に世界中の旅になってきたな!」
そう言ってディノが私を見て笑う。
「そういえば子供の頃にディノと約束したのは世界中を旅して回るって言っていたものね」
お互い顔を見合わせ笑った。まさかガルヴィオだけでなく、本当にラフィージアにまで行くことになろうとは。ディノとの約束とは旅の目的が少し違うけれど、それでもやはり違う国を見られる、ということはワクワクする気持ちが高まる。
「じゃあとりあえず面会申請の書状については城に帰ってからになるから、魔傀儡師探しに先に行くか?」
ヴァドが私たちに向かい言う。私たちは顔を見合わせ頷いた。
「はい! 魔傀儡師探しに行きたい!」
リラーナが勢いよく手を挙げ宣言する。その姿に皆が笑った。
「よし、じゃあ魔傀儡師探しに行くか! って、森なんだよな」
思い出したかのようにヴァドが言う。そういえば魔石屋のおじさんが魔傀儡師の居場所を教えてくれた。それは王都近くの森のなかと言っていたのを思い出す。
「森には魔獣がいるからな、それなりに備えていったほうが……、ってお前らなら大丈夫か、アハハ」
少し考えながら言ったかと思ったヴァドは、私たちを見回し笑った。確かにディノとイーザン、オキといて、さらにはルギニアスがいる。ヴァドの戦闘能力はどれほどのものかは分からないが、エルシュからの船に乗っていたときの、クルフォスとドグナグーンとの戦闘を見る限り、ヴァドも相当なものだと思う。ある意味戦力過多?
男性陣がお互い顔を見合わせニヤッと笑い合っているのを、私とリラーナは苦笑しながら眺めた。
そういう訳で、結局特に備えをするでもなく、私たちは王都の外へと向かった。大聖堂がすでに街外れにあるため、街を出るには早かった。魔石屋のおじさんに教えられた森を目指し、ヴァドが先頭を歩く。私たちはそれに続き、歩いて行くと、平原の向こうに鬱蒼とした森が見えて来る。
「あの森だな」
ヴァドが指差し、皆は前方に見える森に目をやった。なんの変哲もない森ではあるが、なぜ魔傀儡師はこんなところに住んでいるのだろうか。
鬱蒼とした森を進む。木々が多く茂り薄暗くはあるが、しかし、まだ陽が高いため、木洩れ日が差し込み、明るさはほどほどにある。途中、何度か魔獣に遭遇し、魔石も確保出来た。ヴァドは魔石精製は初めて見るらしく、精製している間、感心しっぱなしだった。
「そういえば魔獣と獣人の区別ってなんだ?」
ディノがおもむろに聞いた。その言葉を聞いて、確かに、と考える。獣人も獣の姿にもなるし、魔法が使える。魔獣も獣の姿のみではあるが、魔法のようなものを吐き出す。その差はなんだろう。
「ん? 遥か昔の大元はもしかしたら同じなのかもしれないが、基本的に魔獣とは意思疎通が出来ないな」
「意思疎通?」
「あぁ。俺たちも完全獣の姿にもなれるが、獣姿のままでも人語は話せる。意思疎通が出来る。しかし魔獣は完全に獣の鳴き声しか持っていない。俺たちと意思疎通は出来ないからなぁ。だから襲っても来るし、俺たちにとっても倒す相手ではある」
「へぇ、そういうものなのね」
そんなことを話していると急にルギニアスが風を巻き上げ大きくなった。
「え!?」
そしてルギニアスが大きく手を振り上げると、私たちを覆うように大きなドーム型の光の膜が現れた。障壁結界!?
「な、なに!?」
全員が驚いた顔となり、ルギニアスを見る。
障壁結界を展開させたままルギニアスは一点を睨んでいた。その方向の障壁結界に激しい爆発音と共に衝撃が走ったのだった。
1
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる