178 / 247
第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第175話 他国の大聖堂
しおりを挟む
ヴァドは私たちを怪訝な目でじろりと一瞥したが、少しの間を置くと溜め息を吐いた。
「フッ、お前たちが罪人とか言われても、信じられんがな」
そう言ったヴァドは笑った。緊張感の走った雰囲気が和らぐ。私たちはホッと胸を撫で下ろした。
「罪人とは思わんが、一体なんでそんなことになってんだ?」
ヴァドはオキを見るが、オキは肩をすくめる。
「さあねぇ、俺たちにも原因が分からないんだよねー。だから理不尽に捕まるとかしたくない訳よ。そこでヴァドに先に聞いてもらえないかなーって」
さすがオキ。しれーっと原因不明だと話している……。実はあんたが拘束しろとか言われているくせに、と苦笑する。まあなんで私が拘束されるはめになっているかはオキ自身も理由は知らないみたいだけど。
「なんかよく分からんが、うーん……、まあ、分かった」
ヴァドは怪訝な顔をしながらも協力してくれることとなった。
「しかし、万が一アシェルーダからなにか指示が入っていたらどうする?」
ディノが確認する。確かに、もしアシェルーダからなにか指示されていた場合、やはり神殿に行くことは出来ない。そうなるとどうやって神殿に向かえばいいんだろう……。
「いくら三国統一の大聖堂とはいえ、他国の介入は出来ないはずだから、まあ大丈夫じゃないか?」
ふむ、と顎に手をやり考えるヴァドが言った。神殿はひとつしかないが、大聖堂は三国全てに必ずある。それは神殿へと繋がるためだ。だから基本的には大聖堂は三国共通で統一されている。しかし、だからといって他国の大聖堂に介入は出来ない。その国の大聖堂はその国のものであるとされているからだ。そんな存在である大聖堂に他国が介入したとなれば、それこそ大問題になりそうな話なのだ。
「う、うん、そうだよね……大丈夫……かな」
「ま、そんときはとりあえず魔傀儡師探しにでも行けば良いんじゃね?」
オキがあっけらかんと言う。その姿になんだか力が抜け苦笑する。
「ハハ、そうね。とにかく行ってみないと分からないしね」
「なら、明日はとりあえず大聖堂へ向かって、俺が先に聞いてみるってことだな。で、駄目そうなら魔傀儡師探しに行くかー」
ヴァドが言った明日の予定に皆が頷いた。その後は部屋に夕食が運ばれて来て、またしても目を見開く私たちだった。
夜、眠るときにはもちろんルギニアスは小さいままでお願いしましたよ。うん、それはね、もちろんね。
翌朝、大聖堂へ向けて出発。大聖堂はアシェルーダとは違い、王城にある訳ではないらしい。
「ガルヴィオの大聖堂は王都の外れにある。せっかくだし列車に乗るか?」
ニッと笑ったヴァド。リラーナも私も、もちろん大いに頷いたのは言うまでもない。
昨夜見た列車が停車するという駅へと向かう。街の高い建物に囲まれた道は、しかし幅も広く、多くの魔導車が行き交っていた。小さい魔導車から昨夜乗ったような大きいものまで様々。店もすでに開店していて賑わっている。
獣人たちもザビーグやゼスドルで見かけた獣人よりも、なんだかお洒落なような……。人型の獣人も獣姿の獣人も、皆、お洒落な服装をしている。しかし、帽子やズボンの隙間から耳や尻尾がピコピコ動いているのが、なんだか可愛くてついつい見詰めてしまう。
駅は巨大な建物で、一階部分しかないが広い敷地に大きな屋根で覆われ、二本のレールが敷かれていた。
「このレールの上を走って行くのね?」
レールとは分けられた場所に乗客が乗り降りするための場所がある。そこからレールを覗き込み、ひたすら真っ直ぐ伸びるレールを眺めた。
「あぁ。大聖堂までは一駅しか行かないからあっという間だけどな」
一駅しかなくてもせっかくだから乗ってみたい! ということになり、私たちは停車していた列車に乗り込んだ。
乗り込んだ列車のなかは真ん中の通路を挟んで左右に座席がある。二人掛けの椅子が向かい合い、四人が座れる空間となっているようだ。天井はそれほど高くもなく、ヴァドが通るのにやっとというくらい。天井には等間隔に灯りが設置されてあり、昨夜列車らしきものから見えた等間隔の灯りは、この灯りが窓から漏れていたのだ、ということが分かった。
木造で出来た列車内部は歩くたびにギシッと音がし、木の香りが漂っている。なんだか落ち着く車内だなぁ、とほっこりしていると、頭上から余計な一言が降って来た。
「人間は面倒なことをするもんだな。移動なんぞ飛べば良いものを」
ブンッと頭を振り、ルギニアスを振り落とす。
「おい!」
転がり落ちたルギニアスをキャッチしたが、ルギニアスはぷんすかと怒っていた。
「人間はルギニアスみたいに魔力が強くないの! 飛翔魔法も空間転移魔法もそんな簡単に出来る人はいないの!」
目の前に持ち上げ、真っ直ぐに見据えて言うが、ルギニアスはプイッと横を向く。
「まあ、ルギニアスには簡単なことなんだろうけどね。羨ましい」
「今度抱いて飛んでやろうか」
ニヤッと笑いながら言うルギニアスに、あの大聖堂からの脱出時を思い出し、なんだか恥ずかしいやら怖かったことやら色々思い出し複雑な表情となってしまった。
「いい」
ムッとし、ルギニアスを鞄のなかに突っ込んだら「おい!」って怒られました。
「フッ、お前たちが罪人とか言われても、信じられんがな」
そう言ったヴァドは笑った。緊張感の走った雰囲気が和らぐ。私たちはホッと胸を撫で下ろした。
「罪人とは思わんが、一体なんでそんなことになってんだ?」
ヴァドはオキを見るが、オキは肩をすくめる。
「さあねぇ、俺たちにも原因が分からないんだよねー。だから理不尽に捕まるとかしたくない訳よ。そこでヴァドに先に聞いてもらえないかなーって」
さすがオキ。しれーっと原因不明だと話している……。実はあんたが拘束しろとか言われているくせに、と苦笑する。まあなんで私が拘束されるはめになっているかはオキ自身も理由は知らないみたいだけど。
「なんかよく分からんが、うーん……、まあ、分かった」
ヴァドは怪訝な顔をしながらも協力してくれることとなった。
「しかし、万が一アシェルーダからなにか指示が入っていたらどうする?」
ディノが確認する。確かに、もしアシェルーダからなにか指示されていた場合、やはり神殿に行くことは出来ない。そうなるとどうやって神殿に向かえばいいんだろう……。
「いくら三国統一の大聖堂とはいえ、他国の介入は出来ないはずだから、まあ大丈夫じゃないか?」
ふむ、と顎に手をやり考えるヴァドが言った。神殿はひとつしかないが、大聖堂は三国全てに必ずある。それは神殿へと繋がるためだ。だから基本的には大聖堂は三国共通で統一されている。しかし、だからといって他国の大聖堂に介入は出来ない。その国の大聖堂はその国のものであるとされているからだ。そんな存在である大聖堂に他国が介入したとなれば、それこそ大問題になりそうな話なのだ。
「う、うん、そうだよね……大丈夫……かな」
「ま、そんときはとりあえず魔傀儡師探しにでも行けば良いんじゃね?」
オキがあっけらかんと言う。その姿になんだか力が抜け苦笑する。
「ハハ、そうね。とにかく行ってみないと分からないしね」
「なら、明日はとりあえず大聖堂へ向かって、俺が先に聞いてみるってことだな。で、駄目そうなら魔傀儡師探しに行くかー」
ヴァドが言った明日の予定に皆が頷いた。その後は部屋に夕食が運ばれて来て、またしても目を見開く私たちだった。
夜、眠るときにはもちろんルギニアスは小さいままでお願いしましたよ。うん、それはね、もちろんね。
翌朝、大聖堂へ向けて出発。大聖堂はアシェルーダとは違い、王城にある訳ではないらしい。
「ガルヴィオの大聖堂は王都の外れにある。せっかくだし列車に乗るか?」
ニッと笑ったヴァド。リラーナも私も、もちろん大いに頷いたのは言うまでもない。
昨夜見た列車が停車するという駅へと向かう。街の高い建物に囲まれた道は、しかし幅も広く、多くの魔導車が行き交っていた。小さい魔導車から昨夜乗ったような大きいものまで様々。店もすでに開店していて賑わっている。
獣人たちもザビーグやゼスドルで見かけた獣人よりも、なんだかお洒落なような……。人型の獣人も獣姿の獣人も、皆、お洒落な服装をしている。しかし、帽子やズボンの隙間から耳や尻尾がピコピコ動いているのが、なんだか可愛くてついつい見詰めてしまう。
駅は巨大な建物で、一階部分しかないが広い敷地に大きな屋根で覆われ、二本のレールが敷かれていた。
「このレールの上を走って行くのね?」
レールとは分けられた場所に乗客が乗り降りするための場所がある。そこからレールを覗き込み、ひたすら真っ直ぐ伸びるレールを眺めた。
「あぁ。大聖堂までは一駅しか行かないからあっという間だけどな」
一駅しかなくてもせっかくだから乗ってみたい! ということになり、私たちは停車していた列車に乗り込んだ。
乗り込んだ列車のなかは真ん中の通路を挟んで左右に座席がある。二人掛けの椅子が向かい合い、四人が座れる空間となっているようだ。天井はそれほど高くもなく、ヴァドが通るのにやっとというくらい。天井には等間隔に灯りが設置されてあり、昨夜列車らしきものから見えた等間隔の灯りは、この灯りが窓から漏れていたのだ、ということが分かった。
木造で出来た列車内部は歩くたびにギシッと音がし、木の香りが漂っている。なんだか落ち着く車内だなぁ、とほっこりしていると、頭上から余計な一言が降って来た。
「人間は面倒なことをするもんだな。移動なんぞ飛べば良いものを」
ブンッと頭を振り、ルギニアスを振り落とす。
「おい!」
転がり落ちたルギニアスをキャッチしたが、ルギニアスはぷんすかと怒っていた。
「人間はルギニアスみたいに魔力が強くないの! 飛翔魔法も空間転移魔法もそんな簡単に出来る人はいないの!」
目の前に持ち上げ、真っ直ぐに見据えて言うが、ルギニアスはプイッと横を向く。
「まあ、ルギニアスには簡単なことなんだろうけどね。羨ましい」
「今度抱いて飛んでやろうか」
ニヤッと笑いながら言うルギニアスに、あの大聖堂からの脱出時を思い出し、なんだか恥ずかしいやら怖かったことやら色々思い出し複雑な表情となってしまった。
「いい」
ムッとし、ルギニアスを鞄のなかに突っ込んだら「おい!」って怒られました。
1
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる