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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第172話 王都到着!
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「降りるぞ!」
獣人がそう叫ぶと、開けた場所なのだろう、暗くてよく見えないが規則正しく灯りが灯された場所へと降りていく。
構えていると、着地したのだろう、身体への衝撃を感じ、そして停止するための圧力を感じる。激しい音と共に無事に着陸出来たのだと分かる。
「お疲れさん! 王都到着だぞ!」
獣人がそう言い、私たちは飛行艇から降り立った。外は真っ暗で周りにはこの平地を示すためだろうか、規則正しい灯りが並んでいる以外はなにもなかった。
街から少しばかり離れているようで、遠目に街の灯りが見える。
「魔導車に乗るぞー」
ヴァドは獣人に挨拶をすると、荷物を持ち歩いていく。私たちもそれに続くと、ゼスドルで乗った魔導車よりも大きい魔導車らしきものがあった。
「よお、ヴァドさん、おかえり」
「おう、ただいま。宿まで頼む」
「あれ? 帰らないの?」
「あー、まだ、な。ちょっと用事があってな。こいつらと色々行くところがあってさ」
魔導車の運転手なのだろうか、傍にいた獣人に話す。
帰らないの、とは……そうか、ヴァドは王都の人だと言っていたしね、そりゃ家があるはずよね。
「ヴァド、私たちは自分たちで宿を探すし、ヴァドは家に帰ってくれて良いよ?」
獣人と話しているヴァドに声を掛けると、なぜか獣人が「え?」といった顔となった。そしてヴァドの顔を見ると呆れたような顔となる。ん? なにかしら。
「おい、ヴァドさん……」
じとっとした目で見た獣人になぜかたじろぐヴァド。一体なんなんだろう。
「いやぁ、俺はまだお前たちと大聖堂や魔傀儡師に会いに行くのを付き合うって約束だっただろ? 家へはそれが終わってから帰ればいいから問題ないさ」
なんだか怪しい。じぃっとヴァドを見詰めると、なにやらたじろぎ目を逸らす。
「ちょっと、なんなの? なにか隠してる?」
そもそもヴァドが何者かなんて知らないんだけどさ。しかし今まで行動を共にしてきて、ヴァドが悪い人ではないことは、もう十分に分かっている。
「オキといい、ヴァドといい、秘密主義なの?」
じとっと二人に視線をやると、突然話を振られたオキが「え?」といった顔となった。
「なんで俺まで。俺は今関係ないじゃん。そもそも俺は隠密行動を主にしてるんだから、秘密があって当たり前でしょ」
「開き直った」
「開き直ったわね」
「開き直ったなぁ」
しらっと言い切るオキに私とリラーナとディノの突っ込みが入る。
「ちょっ、だから! 俺は今関係ないだろ!? ヴァドのことが聞きたいんだろ!?」
ぐいっとヴァドを引っ張り、自分から話題を逸らそうとするオキ。あたふたとするヴァド。
「アッハッハッ。なんかよく分からんメンツだが、とりあえず街に行くか」
獣人が声を上げて笑い出し、埒が明かないからさっさと移動しよう、ということになった。なんだかなぁ。色々腑に落ちないまま、仕方がないので魔導車に乗り込む。
魔導車はゼスドルで乗ったときのものよりも大きく、全員が乗り込める大きさだった。そしてただ真っ直ぐ走るだけではない、ということで、ここの魔導車は運転手がいるようだ。
獣人は運転席らしきところに乗り込むと、ハンドルを握り、横にある魔石に手を翳した。ゆっくりと動き出した魔導車は、ゼスドルで乗ったときのものよりも、速度が上がり、さらには真っ直ぐだけでなく、左や右に曲がったりと自由自在な動きを見せた。
「自分で運転出来ないのは残念だけど、これはこれで面白いわねー!」
リラーナが声を上げ、楽しそうにあちこち見回している。ヴァドとオキはやれやれといった顔をしていたが。
魔導車は暗闇の平地を抜けると次第に街の中心地へと向かって行く。街へと入っていくと、夜だというのに煌々と灯りが灯り、昼間のように明るい。アシェルーダの王都も夜は灯りがたくさん灯るが、それ以上に明るい気がする。
「凄いわね。灯りの数が多いのもあるけど、なんだか灯りそのものがとても強い光を放っている?」
リラーナが街灯や部屋に灯されている灯りを見ながら言う。確かになんだかひとつひとつがとても明るい気がする。魔石感知を行ってみても、それほど強い魔石が使われている感じはしないのに。
「魔石というよりも、魔導ランプの構造で魔石の力をより強く伝導させている感じだな」
「魔石の力をより強く……くっ」
リラーナがめちゃくちゃ悔しそう。そうか……魔石の力が強くなくとも、それを上手く活用する方法があれば、より強く発動させることが出来るということか。うーん、魔導具もなかなか奥が深いわね。リラーナの悔しい気持ちがよく分かる。私も魔石をそんな方法でさらに強く発動させることが出来るなんて知らなかった。
魔導車は街の中心部なのか、大きく開けた場所へと到着した。石畳の道に高い建物。煌々とした灯りに、数多くの店。そして遠目に巨大な城らしきものが見えた……。
獣人がそう叫ぶと、開けた場所なのだろう、暗くてよく見えないが規則正しく灯りが灯された場所へと降りていく。
構えていると、着地したのだろう、身体への衝撃を感じ、そして停止するための圧力を感じる。激しい音と共に無事に着陸出来たのだと分かる。
「お疲れさん! 王都到着だぞ!」
獣人がそう言い、私たちは飛行艇から降り立った。外は真っ暗で周りにはこの平地を示すためだろうか、規則正しい灯りが並んでいる以外はなにもなかった。
街から少しばかり離れているようで、遠目に街の灯りが見える。
「魔導車に乗るぞー」
ヴァドは獣人に挨拶をすると、荷物を持ち歩いていく。私たちもそれに続くと、ゼスドルで乗った魔導車よりも大きい魔導車らしきものがあった。
「よお、ヴァドさん、おかえり」
「おう、ただいま。宿まで頼む」
「あれ? 帰らないの?」
「あー、まだ、な。ちょっと用事があってな。こいつらと色々行くところがあってさ」
魔導車の運転手なのだろうか、傍にいた獣人に話す。
帰らないの、とは……そうか、ヴァドは王都の人だと言っていたしね、そりゃ家があるはずよね。
「ヴァド、私たちは自分たちで宿を探すし、ヴァドは家に帰ってくれて良いよ?」
獣人と話しているヴァドに声を掛けると、なぜか獣人が「え?」といった顔となった。そしてヴァドの顔を見ると呆れたような顔となる。ん? なにかしら。
「おい、ヴァドさん……」
じとっとした目で見た獣人になぜかたじろぐヴァド。一体なんなんだろう。
「いやぁ、俺はまだお前たちと大聖堂や魔傀儡師に会いに行くのを付き合うって約束だっただろ? 家へはそれが終わってから帰ればいいから問題ないさ」
なんだか怪しい。じぃっとヴァドを見詰めると、なにやらたじろぎ目を逸らす。
「ちょっと、なんなの? なにか隠してる?」
そもそもヴァドが何者かなんて知らないんだけどさ。しかし今まで行動を共にしてきて、ヴァドが悪い人ではないことは、もう十分に分かっている。
「オキといい、ヴァドといい、秘密主義なの?」
じとっと二人に視線をやると、突然話を振られたオキが「え?」といった顔となった。
「なんで俺まで。俺は今関係ないじゃん。そもそも俺は隠密行動を主にしてるんだから、秘密があって当たり前でしょ」
「開き直った」
「開き直ったわね」
「開き直ったなぁ」
しらっと言い切るオキに私とリラーナとディノの突っ込みが入る。
「ちょっ、だから! 俺は今関係ないだろ!? ヴァドのことが聞きたいんだろ!?」
ぐいっとヴァドを引っ張り、自分から話題を逸らそうとするオキ。あたふたとするヴァド。
「アッハッハッ。なんかよく分からんメンツだが、とりあえず街に行くか」
獣人が声を上げて笑い出し、埒が明かないからさっさと移動しよう、ということになった。なんだかなぁ。色々腑に落ちないまま、仕方がないので魔導車に乗り込む。
魔導車はゼスドルで乗ったときのものよりも大きく、全員が乗り込める大きさだった。そしてただ真っ直ぐ走るだけではない、ということで、ここの魔導車は運転手がいるようだ。
獣人は運転席らしきところに乗り込むと、ハンドルを握り、横にある魔石に手を翳した。ゆっくりと動き出した魔導車は、ゼスドルで乗ったときのものよりも、速度が上がり、さらには真っ直ぐだけでなく、左や右に曲がったりと自由自在な動きを見せた。
「自分で運転出来ないのは残念だけど、これはこれで面白いわねー!」
リラーナが声を上げ、楽しそうにあちこち見回している。ヴァドとオキはやれやれといった顔をしていたが。
魔導車は暗闇の平地を抜けると次第に街の中心地へと向かって行く。街へと入っていくと、夜だというのに煌々と灯りが灯り、昼間のように明るい。アシェルーダの王都も夜は灯りがたくさん灯るが、それ以上に明るい気がする。
「凄いわね。灯りの数が多いのもあるけど、なんだか灯りそのものがとても強い光を放っている?」
リラーナが街灯や部屋に灯されている灯りを見ながら言う。確かになんだかひとつひとつがとても明るい気がする。魔石感知を行ってみても、それほど強い魔石が使われている感じはしないのに。
「魔石というよりも、魔導ランプの構造で魔石の力をより強く伝導させている感じだな」
「魔石の力をより強く……くっ」
リラーナがめちゃくちゃ悔しそう。そうか……魔石の力が強くなくとも、それを上手く活用する方法があれば、より強く発動させることが出来るということか。うーん、魔導具もなかなか奥が深いわね。リラーナの悔しい気持ちがよく分かる。私も魔石をそんな方法でさらに強く発動させることが出来るなんて知らなかった。
魔導車は街の中心部なのか、大きく開けた場所へと到着した。石畳の道に高い建物。煌々とした灯りに、数多くの店。そして遠目に巨大な城らしきものが見えた……。
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