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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第170話 ガルヴィオの魔石
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ヴァドは傍に立つ獣人にお金を払い、こちらに振り向いた。
「さて、四人乗りだがどうやって別れる?」
「私、魔力を流してみたい!」
リラーナがハイハイ! と勢い良く手を挙げる。
「私も!」
慌てて私も手を挙げた。ここぞとばかりに魔石に触れておかないと! と、意気揚々と手を挙げると男性陣は笑っていた。
「てなことで、リラーナ、イーザン、オキと、ルーサ、ディノ、俺ってことでルギニアスはちっこいまま、ルーサにくっついてるんだな?」
「くっついている訳じゃない」
ルギニアスは私の肩に乗ったまま、ヴァドを睨んでいたが、全員が苦笑していた。うん、「くっついている」なんてのは言われたくはないわよね……でも事実、「くっついている」と言われても仕方がないような……と、ちらりと肩に乗るルギニアスを見たが、ぷんすかと機嫌の悪いルギニアスはそっとしておこう、と思ったのでした。
そうして各々二台の魔導車に別れ乗り込む。私は前の右側にディノはその横左側に、ヴァドは身体が大きいので一人で座っているが窮屈そう。獣人は体格が大きいため、この魔導車も比較的座席は大きいのだが、ヴァドにしてみるとそれでも小さそうだ。
私たちの後ろにはリラーナたちも乗り込み終わったようで、手を振っていた。そして、前方にある魔石に触れ、魔力を送る。
すると魔導車は『ブワン』と音を上げ、魔力が魔導車全体に行き渡ったのが分かった。行き渡ったと同時に車輪が動き出し、魔導車が前へと進み出す。
「おぉ、動いた!」
ディノが声を上げ、私も前を向くと徐々に速度が上がって行くのを感じる。
「ここみたいに一定距離を走るだけなら、もう魔石から手を放して大丈夫だぞ」
「そうなの?」
「あぁ、長距離走るなら飛行艇のようにずっと魔石に魔力を送る必要があるが、この橋を渡る程度なら、大した距離じゃないからな。生活魔導具と似たようなものだ。一度魔力を送るとこの橋を渡るまでは稼働している」
「へぇぇ」
馬車で走るのと同じくらいの速度で走る魔導車。周りの景色を見ていると、歩道と車道が分かれてあり、対面からは反対向きに走って行く魔導車が見えた。橋をのんびり渡る人もいれば、魔導車で渡って行く人もいる。そうやって様々な獣人たちが往来している。
魔石感知を行ってみると、どうやら雷系、風系、大地系の魔力を感じる。それらが強弱はあるものの全て発動し、車輪となにやら魔導車全体へと魔力を発動させているようだ。
河の反対側へと差し掛かると、自然に速度が落ちていき、ゆっくりと停車した。
魔導車から降りると、ヴァドはこちら側にいた獣人に声を掛け、その獣人はその魔導車を反対側へと向きを変えていた。
私たちがそれらを眺めていると、リラーナたちも続くように到着する。目を輝かせたリラーナが、勢い良く降りて来ると、声を上げる。
「楽しかったぁ!!」
それを皆で笑った。
「帰りはヴァドと一緒に乗ってくれ」
げっそりとしたオキがヴァドの肩を掴み言った。
「ん? なんかあったのか?」
ヴァドは首を捻りながらオキの顔を見た。
「これはもっと速度は出ないのか、とか、車輪を動かしている構造は、とか、自走じゃない魔導車は造りが違うのか、とか、めちゃくちゃうるさかった……俺は知らねえっつうの!」
若干イーザンまでもが苦笑している。アハハ……想像がつく……。
「だって、オキはなんか色々ガルヴィオに詳しいじゃない。知ってるのかと思うじゃない」
「ねぇ?」といった顔でこちらを見たリラーナ。うーん、確かにオキって、なんかやたらガルヴィオに慣れてそうではあるのよね。でもそこまで詳しくガルヴィオの魔導具について知っているとは思えないしなぁ、と苦笑した。
「だから帰りは頼んだ」
そう言って、ガシッとヴァドの肩を掴むオキ。ヴァドの顔は引き攣っていた……のは、見なかったことにしよう。
気を取り直し、商業区を散策。ゼスドルは飛行艇や船や魔導車といったものがあるからか、大型の魔導具を造るためのものだろうか、大きな部品のようなものが置いてある店がたくさんある。それに魔石屋も! 様々な用途に使われている魔石。しかも大型の乗り物に使われるにはそれなりに力のある魔石が必要となるらしく、高価な魔石が多かった。精製魔石もアシェルーダでよく見かける魔石の大きさよりも、数倍大きい魔石が目立つ。
私自身も大きい魔石を創れないことはないと思うが、それだけ魔力も必要となるし、時間もかかる。だから一日に創ることの出来る精製魔石は小さい魔石よりも圧倒的に数が減るだろう。
アシェルーダにいたときはそんな大きい魔石は創ったことがない。必要ないからだ。それほど大きな魔導具がなかったから。それよりもより精巧に精密に精製することを主としていた。大きな魔石を精製する魔力と集中力、精巧さや精密さは二の次になりそうね。
そんなことを考えながら、色んな店を覗いていった。昼食には露店で売っていたなにやら海鮮なのだろう生物の姿焼き……。美味しかったんだけど、見た目が凄かったです……。
「さて、四人乗りだがどうやって別れる?」
「私、魔力を流してみたい!」
リラーナがハイハイ! と勢い良く手を挙げる。
「私も!」
慌てて私も手を挙げた。ここぞとばかりに魔石に触れておかないと! と、意気揚々と手を挙げると男性陣は笑っていた。
「てなことで、リラーナ、イーザン、オキと、ルーサ、ディノ、俺ってことでルギニアスはちっこいまま、ルーサにくっついてるんだな?」
「くっついている訳じゃない」
ルギニアスは私の肩に乗ったまま、ヴァドを睨んでいたが、全員が苦笑していた。うん、「くっついている」なんてのは言われたくはないわよね……でも事実、「くっついている」と言われても仕方がないような……と、ちらりと肩に乗るルギニアスを見たが、ぷんすかと機嫌の悪いルギニアスはそっとしておこう、と思ったのでした。
そうして各々二台の魔導車に別れ乗り込む。私は前の右側にディノはその横左側に、ヴァドは身体が大きいので一人で座っているが窮屈そう。獣人は体格が大きいため、この魔導車も比較的座席は大きいのだが、ヴァドにしてみるとそれでも小さそうだ。
私たちの後ろにはリラーナたちも乗り込み終わったようで、手を振っていた。そして、前方にある魔石に触れ、魔力を送る。
すると魔導車は『ブワン』と音を上げ、魔力が魔導車全体に行き渡ったのが分かった。行き渡ったと同時に車輪が動き出し、魔導車が前へと進み出す。
「おぉ、動いた!」
ディノが声を上げ、私も前を向くと徐々に速度が上がって行くのを感じる。
「ここみたいに一定距離を走るだけなら、もう魔石から手を放して大丈夫だぞ」
「そうなの?」
「あぁ、長距離走るなら飛行艇のようにずっと魔石に魔力を送る必要があるが、この橋を渡る程度なら、大した距離じゃないからな。生活魔導具と似たようなものだ。一度魔力を送るとこの橋を渡るまでは稼働している」
「へぇぇ」
馬車で走るのと同じくらいの速度で走る魔導車。周りの景色を見ていると、歩道と車道が分かれてあり、対面からは反対向きに走って行く魔導車が見えた。橋をのんびり渡る人もいれば、魔導車で渡って行く人もいる。そうやって様々な獣人たちが往来している。
魔石感知を行ってみると、どうやら雷系、風系、大地系の魔力を感じる。それらが強弱はあるものの全て発動し、車輪となにやら魔導車全体へと魔力を発動させているようだ。
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魔導車から降りると、ヴァドはこちら側にいた獣人に声を掛け、その獣人はその魔導車を反対側へと向きを変えていた。
私たちがそれらを眺めていると、リラーナたちも続くように到着する。目を輝かせたリラーナが、勢い良く降りて来ると、声を上げる。
「楽しかったぁ!!」
それを皆で笑った。
「帰りはヴァドと一緒に乗ってくれ」
げっそりとしたオキがヴァドの肩を掴み言った。
「ん? なんかあったのか?」
ヴァドは首を捻りながらオキの顔を見た。
「これはもっと速度は出ないのか、とか、車輪を動かしている構造は、とか、自走じゃない魔導車は造りが違うのか、とか、めちゃくちゃうるさかった……俺は知らねえっつうの!」
若干イーザンまでもが苦笑している。アハハ……想像がつく……。
「だって、オキはなんか色々ガルヴィオに詳しいじゃない。知ってるのかと思うじゃない」
「ねぇ?」といった顔でこちらを見たリラーナ。うーん、確かにオキって、なんかやたらガルヴィオに慣れてそうではあるのよね。でもそこまで詳しくガルヴィオの魔導具について知っているとは思えないしなぁ、と苦笑した。
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