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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第161話 ガルヴィオの魔傀儡
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お待たせしました!
連載再開致します!
*********
「あぁ、申し訳ない! また調子悪くなっているのか……」
店の奥から少し年老いた男性がやって来た。この魔石屋の店主のようだ。
「店主か? これは魔傀儡か?」
ヴァドが男性に聞く。男性が出て来たおかげでリラーナたちの視線もルギニアスから男性へと移った。とりあえずルギニアスへの関心から逸れてホッとするが、当のルギニアスはシラーッとしていることに少しイラッ。あんたのことで私は焦ってるんでしょうが! と言いたくはなったが、そもそも魔傀儡で押し通したのは私だもんね……。そう思うと仕方ないな、と小さく溜め息を吐くのだった。
「あぁ、そうだよ。店番として役立つから助かっていたんだが、最近調子が悪くてね。もう古いものだからガタがきてるんだよ。直してもらおうにも魔傀儡師はもう一人しかいないらしいし、しかもその魔傀儡師は作ることをやめてしまったし」
「作ることをやめた? なぜ?」
店主のおじさんは魔傀儡の女性をそっと横に促す。見た目は本当に人間と同じ。いや、獣人と同じというべき? 皮膚感も仕草や表情も、瞳や髪も本物そっくりだ。自然に会話をしていたならきっと魔傀儡とは気付かなかっただろう。
ルギニアスを咄嗟に魔傀儡だと言ったけれど、本物は見たことがなかった。こんなに人間と区別がつかないほどのものならば、ルギニアスが魔傀儡だとしても疑われないかもしれない。でも……。
「さあねぇ、元々魔傀儡師自体が人数は少なかったけれど、作る人数が減って来て、最終今いる一人だけになったらしいが、その男自身も変わり者だからなぁ。滅多にひと前に現れないし、なにやら辺鄙な場所に住んでいる、と聞いたな」
「へぇ……」
「だから直してもらうにしても持って行くだけで大変なうえ、持って行っても直してもらえんらしい」
おじさんは溜め息を吐く。
「直してくれないのか? なぜだ? 作っていないのなら収入がないだろうに」
「さあ? だから困ってるんだ。もう魔傀儡は売っていないし、今のやつが壊れたら店員を雇わないといけなくなるし」
本当に困った、といった顔のおじさん。
「もう作ってないのかぁ、作っているところや他の魔傀儡も見せてもらいたかったなぁ」
リラーナが残念そうに呟く。うん、私も出来れば見てみたかったな。
「その魔傀儡師の住んでるところって分かるのか?」
ヴァドはおじさんに聞いた。
「うん? あんたら行く気か? やめとけ、やめとけ。門前払いされるのがオチだぞ?」
「うーん、まあそうだろうが、行ってみる価値はあるんじゃないか、と思うがどうだ?」
おじさんに向かって話していたが、ヴァドは途中から私たちに向けて言葉にしているのが分かった。そして振り向きニッと笑う。
「え? 行けるの? 行く行く!!」
リラーナは意気揚々と片手を上げ、ぴょんぴょんと返事をした。それにディノとイーザンも苦笑する。
「ハハ、リラーナならそう言うよな。俺たちも興味はあるな」
ディノがそう言うとイーザンも頷いた。その姿にヴァドは笑い、オキは相変わらずどっちでもいいぞ、と関心があるのかないのかよく分からない態度。
ルギニアスはシラッとしたまま。私はというと……
「私も行ってみたい!」
それはもちろん! といった態度で言ってみると、ルギニアスが呆れたように小さく溜め息を吐いた。
全員一致で魔傀儡師に会いに行ってみよう、となり、おじさんはやれやれと言った顔だったが、それでもその魔傀儡師がいるという場所を教えてくれた。
「はっきりとした場所は分からんから、見付かるかどうかは保証しないぞ?」
「あぁ、分かった。ありがとう」
ヴァドがおじさんから魔傀儡師の居場所が書かれた紙を受け取り、私たちは店を後にした。店を出るときちらりと店員の魔傀儡に目をやると、相変わらず同じ笑顔のままこちらを見詰めていた。
「その魔傀儡師がいる場所ってどこなの?」
リラーナがヴァドに聞くと、ヴァドはもらった紙を見詰めた。
「王都の近くだが……森のなか?」
「森?」
「あぁ、王都近くにあまり大きくはないが森が広がっている。どうやらその森のなかのどこかにいるらしいな」
「森……それ、なかなか探すのが難しい感じね」
全員で苦笑した。
「ま、とりあえず今日の宿へ行くぞー」
ヴァドがすたすたと歩いて行くのを後ろからついていった。ディノとイーザンの後ろを歩いていると、おもむろにディノが振り向き笑う。
「まさか魔傀儡を見られるとは思わなかったが、ルギニアスとはかなり違うかったなー」
そう言ってハハと笑うディノ。イーザンもルギニアスをちらりと見た。ルギニアスはなにも思っていないようだが、魔傀儡……やっぱり本物を目にしてしまうと、見た目的な問題はないにしろ、ルギニアスを魔傀儡として言い張るのはいつか無理が出てくる気がする……。今はまだいいが、今後何度となく魔傀儡と遭遇することがあったなら……皆には正直に伝えるべきかしら……。
そんなことを考えているうちに宿へと到着したようで、ヴァドが色々と手配をしてくれている。部屋は二人部屋で、私(ルギニアス付き)とリラーナ、ディノとイーザン、オキとヴァド、という部屋割りとなった。
「風呂は宿にもあるが、近くに温泉があるから行ってみるか?」
「「温泉?」」
温泉……確か前世の記憶にもあるような……行ったことはないけれど。
連載再開致します!
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「あぁ、申し訳ない! また調子悪くなっているのか……」
店の奥から少し年老いた男性がやって来た。この魔石屋の店主のようだ。
「店主か? これは魔傀儡か?」
ヴァドが男性に聞く。男性が出て来たおかげでリラーナたちの視線もルギニアスから男性へと移った。とりあえずルギニアスへの関心から逸れてホッとするが、当のルギニアスはシラーッとしていることに少しイラッ。あんたのことで私は焦ってるんでしょうが! と言いたくはなったが、そもそも魔傀儡で押し通したのは私だもんね……。そう思うと仕方ないな、と小さく溜め息を吐くのだった。
「あぁ、そうだよ。店番として役立つから助かっていたんだが、最近調子が悪くてね。もう古いものだからガタがきてるんだよ。直してもらおうにも魔傀儡師はもう一人しかいないらしいし、しかもその魔傀儡師は作ることをやめてしまったし」
「作ることをやめた? なぜ?」
店主のおじさんは魔傀儡の女性をそっと横に促す。見た目は本当に人間と同じ。いや、獣人と同じというべき? 皮膚感も仕草や表情も、瞳や髪も本物そっくりだ。自然に会話をしていたならきっと魔傀儡とは気付かなかっただろう。
ルギニアスを咄嗟に魔傀儡だと言ったけれど、本物は見たことがなかった。こんなに人間と区別がつかないほどのものならば、ルギニアスが魔傀儡だとしても疑われないかもしれない。でも……。
「さあねぇ、元々魔傀儡師自体が人数は少なかったけれど、作る人数が減って来て、最終今いる一人だけになったらしいが、その男自身も変わり者だからなぁ。滅多にひと前に現れないし、なにやら辺鄙な場所に住んでいる、と聞いたな」
「へぇ……」
「だから直してもらうにしても持って行くだけで大変なうえ、持って行っても直してもらえんらしい」
おじさんは溜め息を吐く。
「直してくれないのか? なぜだ? 作っていないのなら収入がないだろうに」
「さあ? だから困ってるんだ。もう魔傀儡は売っていないし、今のやつが壊れたら店員を雇わないといけなくなるし」
本当に困った、といった顔のおじさん。
「もう作ってないのかぁ、作っているところや他の魔傀儡も見せてもらいたかったなぁ」
リラーナが残念そうに呟く。うん、私も出来れば見てみたかったな。
「その魔傀儡師の住んでるところって分かるのか?」
ヴァドはおじさんに聞いた。
「うん? あんたら行く気か? やめとけ、やめとけ。門前払いされるのがオチだぞ?」
「うーん、まあそうだろうが、行ってみる価値はあるんじゃないか、と思うがどうだ?」
おじさんに向かって話していたが、ヴァドは途中から私たちに向けて言葉にしているのが分かった。そして振り向きニッと笑う。
「え? 行けるの? 行く行く!!」
リラーナは意気揚々と片手を上げ、ぴょんぴょんと返事をした。それにディノとイーザンも苦笑する。
「ハハ、リラーナならそう言うよな。俺たちも興味はあるな」
ディノがそう言うとイーザンも頷いた。その姿にヴァドは笑い、オキは相変わらずどっちでもいいぞ、と関心があるのかないのかよく分からない態度。
ルギニアスはシラッとしたまま。私はというと……
「私も行ってみたい!」
それはもちろん! といった態度で言ってみると、ルギニアスが呆れたように小さく溜め息を吐いた。
全員一致で魔傀儡師に会いに行ってみよう、となり、おじさんはやれやれと言った顔だったが、それでもその魔傀儡師がいるという場所を教えてくれた。
「はっきりとした場所は分からんから、見付かるかどうかは保証しないぞ?」
「あぁ、分かった。ありがとう」
ヴァドがおじさんから魔傀儡師の居場所が書かれた紙を受け取り、私たちは店を後にした。店を出るときちらりと店員の魔傀儡に目をやると、相変わらず同じ笑顔のままこちらを見詰めていた。
「その魔傀儡師がいる場所ってどこなの?」
リラーナがヴァドに聞くと、ヴァドはもらった紙を見詰めた。
「王都の近くだが……森のなか?」
「森?」
「あぁ、王都近くにあまり大きくはないが森が広がっている。どうやらその森のなかのどこかにいるらしいな」
「森……それ、なかなか探すのが難しい感じね」
全員で苦笑した。
「ま、とりあえず今日の宿へ行くぞー」
ヴァドがすたすたと歩いて行くのを後ろからついていった。ディノとイーザンの後ろを歩いていると、おもむろにディノが振り向き笑う。
「まさか魔傀儡を見られるとは思わなかったが、ルギニアスとはかなり違うかったなー」
そう言ってハハと笑うディノ。イーザンもルギニアスをちらりと見た。ルギニアスはなにも思っていないようだが、魔傀儡……やっぱり本物を目にしてしまうと、見た目的な問題はないにしろ、ルギニアスを魔傀儡として言い張るのはいつか無理が出てくる気がする……。今はまだいいが、今後何度となく魔傀儡と遭遇することがあったなら……皆には正直に伝えるべきかしら……。
そんなことを考えているうちに宿へと到着したようで、ヴァドが色々と手配をしてくれている。部屋は二人部屋で、私(ルギニアス付き)とリラーナ、ディノとイーザン、オキとヴァド、という部屋割りとなった。
「風呂は宿にもあるが、近くに温泉があるから行ってみるか?」
「「温泉?」」
温泉……確か前世の記憶にもあるような……行ったことはないけれど。
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