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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第148話 出航の障害
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とりあえず数日後に再び現状を確認しに来る、と約束しヴァドとは別れた。
「ねえ、本当になにを言ってヴァドを説得したの?」
先を歩くオキに向かって声を掛ける。
「ん? んー、だからそれは秘密だって」
「なんか変なこと言ってないでしょうね?」
「あー、ハハ、大丈夫、大丈夫」
手をひらひらとさせるオキ。信用出来ない……。
「それよりも船旅支度するんだろ?」
それもそうだ、と皆で顔を見合わせる。
「とりあえず薬屋で船酔いのことを聞いてみるか」
ディノの提案に皆が頷く。
「あー、俺は自分の荷の確認をするから別行動で。また適当に現れるからさ」
「ちょっと、なにか報告とかしないでしょうね?」
「心配しなくても、元々そんなしょっちゅう連絡取ってないからさ。あんたらの仲間になったって認識が俺のなかにはちゃんとあるんだから信用しろよ」
オキはそう言って笑うと、シュッといきなり姿を消した。
「えっ、き、消えた!?」
リラーナと二人で驚いていたが、ルギニアスはある方向をじっと見詰め、ディノとイーザンもオキがどこに行ったのか分かっているようだった。
「オキ自身は気配を殺すのがやはり得意のようだが、一度覚えた気配はなんとなくは感知出来る。だから気にするな」
イーザンはオキが消えたのだろう方向を見詰め言った。
「あぁ、それにオキ自身もそのことが分かっている、って態度だったしな。敢えて姿を現したんだ。もう気配を殺して俺たちに近付くといったことはしないだろ」
ディノもイーザンの言葉に同調した。
「ま、信用したかと言われたら微妙だけどな」
アハハ、と、そう言って笑うディノに釣られ、私とリラーナも一緒に笑った。ルギニアスはオキが離れたからか、ボフンと小さくなり私の肩に乗った。
「お、ちっこくなった。ルギニアスってやっぱデカいと威圧感あるよなぁ」
ディノが笑いながら言う。確かに大きいルギニアスは威圧感あるよね。しかも今回なんだかずっと機嫌が悪かったし。余計に怖い雰囲気を醸し出していた。やっぱり小さいほうが可愛いなぁ、とほっぺをつんつんしたら、ビシッと叩き落されたのでした。
そうして薬屋へと向かい、船酔いに効く薬を購入。防具屋で防寒マントを購入したり、携帯食を購入したりしていると、お金がなくなって来る。ということで、ディノとイーザンと共に魔獣の魔石を精製しに行き、それをアランに買い取ってもらうということを繰り返し、リラーナは一人宿に残り、魔導具作りに勤しんだ。それを魔導具屋に買い取ってもらう、ということを繰り返していくと、それなりに稼げたようで生活費は十分手にすることが出来た。
そして八日ほどが経った頃、再び港に顔を出すと、オキとヴァドがなにやら話し込んでいた。
「オキ、ヴァド、どうしたの?」
「おぉ、ルーサたちか、いやぁ、ちょっとな……」
なにやら話しづらそうなヴァド。
「なに?」
オキも苦笑し、ヴァドの代わりに話し出す。
「あー、なんかなぁ、聞いてたよりは早く出航出来そうなんだが……」
「早く出航出来そうなの? 良かった!」
「そうなんだが……ちょっと問題が……」
あまりに歯切れの悪いオキにイラッとしたのか、ディノが詰め寄った。
「なんなんだよ」
「いやぁ、なんかガルヴィオまでの航路途中に魔獣か魔魚が出ているらしくてな」
「魔獣か魔魚……」
全員が驚愕の顔となった。
話を聞くと、どうやらアシェルーダとガルヴィオのちょうど中間辺りの海に魔獣か魔魚が出ているらしい、とのことだった。
「そ、そんなこと分かるの?」
アシェルーダとガルヴィオまでどれほどの距離があるのかは知らないが、そんな遠いところに魔獣か魔魚が出たと分かることが不思議だった。
「あぁ、俺たちは安全のために、航海するときには海の様子を先に調べてから出航するんだ。天候にしろ、魔獣にしろ、感知させる魔導具がある。まあ完璧ではないが」
そう言いながらヴァドは笑うが、リラーナの目が輝いたのは言うまでもない。
「なにそれ!? 天候や魔獣を感知!? そんなこと出来るの!?」
前のめりにヴァドに詰め寄るリラーナに、ヴァドは苦笑した。
「あ、あぁ。だが完璧じゃないから外れることもしょっちゅうある。今回は魔獣かもしくは魔魚の反応があったんだが、実際本当にいるのかは行ってみないと分からない」
リラーナの興奮をよそに、ディノとイーザンは顔を見合わせた。
「強行するか、もうしばらく様子を見るかで、今揉めていてな」
「危険ならば様子を見たほうが良いのでは?」
イーザンが冷静に判断した。それを聞き、ヴァドは苦笑する。
「確かにそうなんだが、俺たちも早く帰りたい事情もあってな……だから揉めているんだ」
私たちは顔を見合わせた。
「海に出た魔獣か魔魚ってどんなのかは分かるの?」
「そこまでは分からん。海に出たのか、空に出たのか、その場にずっと留まっているのかも分からない。行ってみないことにはなにも分からないんだ」
「ならば、行ってみるしかないだろう」
ルギニアスが風を巻き上げ大きくなった。
「!? ど、どこから現れた!?」
ヴァドが驚いた顔をする。あ、ごめん、鞄のなかにいました。内心冷や汗をかきながら、素知らぬ顔のままルギニアスにこそっと聞く。
「魔獣か魔魚の気配ってルギニアスも感じるの?」
「さすがに遠すぎるのか、なにも感じない」
「そうなのね……」
うーん、と皆が考え込み、しかしヴァドはルギニアスを見詰め頷いた。
「まあ、行ってみるしかないか!」
「ねえ、本当になにを言ってヴァドを説得したの?」
先を歩くオキに向かって声を掛ける。
「ん? んー、だからそれは秘密だって」
「なんか変なこと言ってないでしょうね?」
「あー、ハハ、大丈夫、大丈夫」
手をひらひらとさせるオキ。信用出来ない……。
「それよりも船旅支度するんだろ?」
それもそうだ、と皆で顔を見合わせる。
「とりあえず薬屋で船酔いのことを聞いてみるか」
ディノの提案に皆が頷く。
「あー、俺は自分の荷の確認をするから別行動で。また適当に現れるからさ」
「ちょっと、なにか報告とかしないでしょうね?」
「心配しなくても、元々そんなしょっちゅう連絡取ってないからさ。あんたらの仲間になったって認識が俺のなかにはちゃんとあるんだから信用しろよ」
オキはそう言って笑うと、シュッといきなり姿を消した。
「えっ、き、消えた!?」
リラーナと二人で驚いていたが、ルギニアスはある方向をじっと見詰め、ディノとイーザンもオキがどこに行ったのか分かっているようだった。
「オキ自身は気配を殺すのがやはり得意のようだが、一度覚えた気配はなんとなくは感知出来る。だから気にするな」
イーザンはオキが消えたのだろう方向を見詰め言った。
「あぁ、それにオキ自身もそのことが分かっている、って態度だったしな。敢えて姿を現したんだ。もう気配を殺して俺たちに近付くといったことはしないだろ」
ディノもイーザンの言葉に同調した。
「ま、信用したかと言われたら微妙だけどな」
アハハ、と、そう言って笑うディノに釣られ、私とリラーナも一緒に笑った。ルギニアスはオキが離れたからか、ボフンと小さくなり私の肩に乗った。
「お、ちっこくなった。ルギニアスってやっぱデカいと威圧感あるよなぁ」
ディノが笑いながら言う。確かに大きいルギニアスは威圧感あるよね。しかも今回なんだかずっと機嫌が悪かったし。余計に怖い雰囲気を醸し出していた。やっぱり小さいほうが可愛いなぁ、とほっぺをつんつんしたら、ビシッと叩き落されたのでした。
そうして薬屋へと向かい、船酔いに効く薬を購入。防具屋で防寒マントを購入したり、携帯食を購入したりしていると、お金がなくなって来る。ということで、ディノとイーザンと共に魔獣の魔石を精製しに行き、それをアランに買い取ってもらうということを繰り返し、リラーナは一人宿に残り、魔導具作りに勤しんだ。それを魔導具屋に買い取ってもらう、ということを繰り返していくと、それなりに稼げたようで生活費は十分手にすることが出来た。
そして八日ほどが経った頃、再び港に顔を出すと、オキとヴァドがなにやら話し込んでいた。
「オキ、ヴァド、どうしたの?」
「おぉ、ルーサたちか、いやぁ、ちょっとな……」
なにやら話しづらそうなヴァド。
「なに?」
オキも苦笑し、ヴァドの代わりに話し出す。
「あー、なんかなぁ、聞いてたよりは早く出航出来そうなんだが……」
「早く出航出来そうなの? 良かった!」
「そうなんだが……ちょっと問題が……」
あまりに歯切れの悪いオキにイラッとしたのか、ディノが詰め寄った。
「なんなんだよ」
「いやぁ、なんかガルヴィオまでの航路途中に魔獣か魔魚が出ているらしくてな」
「魔獣か魔魚……」
全員が驚愕の顔となった。
話を聞くと、どうやらアシェルーダとガルヴィオのちょうど中間辺りの海に魔獣か魔魚が出ているらしい、とのことだった。
「そ、そんなこと分かるの?」
アシェルーダとガルヴィオまでどれほどの距離があるのかは知らないが、そんな遠いところに魔獣か魔魚が出たと分かることが不思議だった。
「あぁ、俺たちは安全のために、航海するときには海の様子を先に調べてから出航するんだ。天候にしろ、魔獣にしろ、感知させる魔導具がある。まあ完璧ではないが」
そう言いながらヴァドは笑うが、リラーナの目が輝いたのは言うまでもない。
「なにそれ!? 天候や魔獣を感知!? そんなこと出来るの!?」
前のめりにヴァドに詰め寄るリラーナに、ヴァドは苦笑した。
「あ、あぁ。だが完璧じゃないから外れることもしょっちゅうある。今回は魔獣かもしくは魔魚の反応があったんだが、実際本当にいるのかは行ってみないと分からない」
リラーナの興奮をよそに、ディノとイーザンは顔を見合わせた。
「強行するか、もうしばらく様子を見るかで、今揉めていてな」
「危険ならば様子を見たほうが良いのでは?」
イーザンが冷静に判断した。それを聞き、ヴァドは苦笑する。
「確かにそうなんだが、俺たちも早く帰りたい事情もあってな……だから揉めているんだ」
私たちは顔を見合わせた。
「海に出た魔獣か魔魚ってどんなのかは分かるの?」
「そこまでは分からん。海に出たのか、空に出たのか、その場にずっと留まっているのかも分からない。行ってみないことにはなにも分からないんだ」
「ならば、行ってみるしかないだろう」
ルギニアスが風を巻き上げ大きくなった。
「!? ど、どこから現れた!?」
ヴァドが驚いた顔をする。あ、ごめん、鞄のなかにいました。内心冷や汗をかきながら、素知らぬ顔のままルギニアスにこそっと聞く。
「魔獣か魔魚の気配ってルギニアスも感じるの?」
「さすがに遠すぎるのか、なにも感じない」
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「まあ、行ってみるしかないか!」
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