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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第130話 野獣の群れ
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現れた狼たちは魔獣よりは遥かに小さい。しかし数が多い。ディノは先手必勝とばかりに素早く駆け出した。イーザンはそれを援護するように炎弾を撃ち込む。突然現れた炎に狼たちは一瞬怯む。そこにすかさずディノは斬り込んで行く。
一刀両断で一匹を斬り倒すと激しく血飛沫を上げ倒れ込む。それを目にした仲間たちは怒りなのか、ただ本能なのか、勢い良くディノに飛び掛かる。
『ウガァァアア!!』
一匹がディノに飛び掛かると大きく口を開け噛み付いた。ディノは剣身でそれを受け止め、ブンと大きく振り払い、跳躍すると吹き飛ばした狼を上から突き刺した。
イーザンは駆け寄ってくる狼に向かって雷撃を飛ばす。一匹に命中。動きを止めた一匹に炎を纏わせた魔導剣を真一文字に振り抜いた。首を落とされた狼からは赤い血が大量に流れ出し息絶える。
その隙にもう一匹がイーザンに迫るが、再び発動させた雷撃に反応し、大きくそれを避けた。もう一匹が背後からイーザンを狙って大きく跳躍する。
「イーザン!! リラーナ、雷付与のナイフ!」
咄嗟に叫んだ言葉にリラーナは聞き返すでもなく瞬時に理解してくれたようだ。鞄のなかから取り出したナイフを私に手渡す。
リラーナから受け取ったナイフを鞘から抜き、魔力を送ったと同時にイーザンの背後で跳躍している狼に向かって思い切り投げた。投げたナイフは勢い良く飛んでいき、狼の腹へと命中した。
『ギャァアン!!』
グサリと刺さったナイフは腹に刺さったためか、どうやら雷魔法が体内で発動したようだ。ビクンと痙攣した狼はそのまま地面へと落ちた。
イーザンはその隙を見逃さず、地面へと落ちた狼に魔導剣を突き立てた。
ディノがもう一匹を仕留めた直後、馬車のほうへ向いたかと思うと叫んだ。
「ルーサ!! リラーナ!!」
ディノが叫んだと同時になにが起ころうとしているのかすぐに分かった。最後の一匹がこちらに向かって駆け寄って来ていたのだ。
イーザンの雷撃を避けた奴だ! リラーナの持つ武器になりそうな魔導具はもうないはず。どうする!? 自身が持っていた短剣を手に取り、構える。しかし鋭い牙で噛み付かれたら、短剣で防ぎきれるはずがない。
鞄のなかからルギニアスがひょっこりと顔を出し、仕方ないなといった顔をした。
「ルギニアスはそのままでいて!」
小声で声を掛けるとルギニアスは驚いた顔で私を見た。しかし今大きくなってしまうと、ララさんたちにもルギニアスの姿を見られてしまう上に、ここにいる全員にルギニアスの力を知られてしまう。今、それはよくない気がする。いつかはディノやイーザンにもルギニアスの力がどんなものかバレるときは来るだろうけど、今はそのときではない気がするから。
グッと歯を食いしばり、噛み付かれる覚悟で短剣を構える。噛まれた直後に腕を引かなければ噛み千切られることはないはず。ぞっとする想像だがそれしか方法がない! 腕を噛まれた瞬間に短剣を突き刺すのよ! そうやって少しでも時間を稼ぐことが出来たらディノかイーザンが倒してくれるはず!
そう瞬時に考え、震える手にグッと力を込めた。リラーナが背後で私の名を呼び、叫ぶ声が聞こえる。ルギニアスの「おい!!」と焦る声も聞こえた。
「「ルーサ!!」」
ディノが駆け出し、イーザンが振り向き魔法を発動させようとしているのが見えた。狼の口が目の前で開かれ鋭い牙が、滴る涎と共にキラリと光った。ガバッと左腕で顔を庇った瞬間、狼の鋭い牙が私の腕を……
『ドシャッ』
狼が私の腕に噛み付いたかと思われたが、狼は私の腕に牙が届く前に地面へ横たわっていた。
「「「「!?」」」」
その場でそれを目撃した全員が、なにが起こったのか分からないといった顔だった。ただルギニアスだけは眉間に皺を寄せていた。
「ルーサ! 大丈夫か!?」
ディノとイーザンが駆け寄り、私に声を掛けてくれる。
「う、うん……なんとか」
今さらながらに震えてくる。短剣を握り締める手が震える。手は強張り短剣から離すことが出来なかった。
「ルーサ!!」
リラーナはそんな私を思い切り抱き締めてくれた。イーザンは私の手をそっと握り、ゆっくりと短剣から手を解いてくれる。
「はぁぁあ、マジで焦ったよ。無事で良かった……」
ディノは安堵の溜め息を吐いていた。イーザンは私の短剣を鞘へと納めてくれると、リラーナにもナイフを返していた。
「助かった。役に立ったな」
そう言いながらフッと笑ったイーザンにリラーナが少し驚いた顔になったが、役に立ったという言葉にご機嫌になりドヤ顔となっていた。
「それにしてもなんで急に動きが止まったんだ?」
ディノが私たちを襲った狼の横にしゃがみ込み、狼の身体を観察した。イーザンもそれに続き膝を付く。同様にじっくりと狼を観察し調べているようだ。そしてなにやら狼の毛並みをさわさわと撫でるように触れていくと、ふと動きが止まった。
「ん? なんかあったのか?」
ディノがイーザンの手元を見詰めた。イーザンは手を止めた部位をじっくり見詰めると、なにかをそっと摘まんだ。そしてそれを皆の前に見せる。
それは一瞬なにか分からなかった。透明かと思えるほど細く、髪の毛ほどの太さしかない棒のようなものだった。
「針だな。しかも先端に毒が仕込んである……毒針だ」
一刀両断で一匹を斬り倒すと激しく血飛沫を上げ倒れ込む。それを目にした仲間たちは怒りなのか、ただ本能なのか、勢い良くディノに飛び掛かる。
『ウガァァアア!!』
一匹がディノに飛び掛かると大きく口を開け噛み付いた。ディノは剣身でそれを受け止め、ブンと大きく振り払い、跳躍すると吹き飛ばした狼を上から突き刺した。
イーザンは駆け寄ってくる狼に向かって雷撃を飛ばす。一匹に命中。動きを止めた一匹に炎を纏わせた魔導剣を真一文字に振り抜いた。首を落とされた狼からは赤い血が大量に流れ出し息絶える。
その隙にもう一匹がイーザンに迫るが、再び発動させた雷撃に反応し、大きくそれを避けた。もう一匹が背後からイーザンを狙って大きく跳躍する。
「イーザン!! リラーナ、雷付与のナイフ!」
咄嗟に叫んだ言葉にリラーナは聞き返すでもなく瞬時に理解してくれたようだ。鞄のなかから取り出したナイフを私に手渡す。
リラーナから受け取ったナイフを鞘から抜き、魔力を送ったと同時にイーザンの背後で跳躍している狼に向かって思い切り投げた。投げたナイフは勢い良く飛んでいき、狼の腹へと命中した。
『ギャァアン!!』
グサリと刺さったナイフは腹に刺さったためか、どうやら雷魔法が体内で発動したようだ。ビクンと痙攣した狼はそのまま地面へと落ちた。
イーザンはその隙を見逃さず、地面へと落ちた狼に魔導剣を突き立てた。
ディノがもう一匹を仕留めた直後、馬車のほうへ向いたかと思うと叫んだ。
「ルーサ!! リラーナ!!」
ディノが叫んだと同時になにが起ころうとしているのかすぐに分かった。最後の一匹がこちらに向かって駆け寄って来ていたのだ。
イーザンの雷撃を避けた奴だ! リラーナの持つ武器になりそうな魔導具はもうないはず。どうする!? 自身が持っていた短剣を手に取り、構える。しかし鋭い牙で噛み付かれたら、短剣で防ぎきれるはずがない。
鞄のなかからルギニアスがひょっこりと顔を出し、仕方ないなといった顔をした。
「ルギニアスはそのままでいて!」
小声で声を掛けるとルギニアスは驚いた顔で私を見た。しかし今大きくなってしまうと、ララさんたちにもルギニアスの姿を見られてしまう上に、ここにいる全員にルギニアスの力を知られてしまう。今、それはよくない気がする。いつかはディノやイーザンにもルギニアスの力がどんなものかバレるときは来るだろうけど、今はそのときではない気がするから。
グッと歯を食いしばり、噛み付かれる覚悟で短剣を構える。噛まれた直後に腕を引かなければ噛み千切られることはないはず。ぞっとする想像だがそれしか方法がない! 腕を噛まれた瞬間に短剣を突き刺すのよ! そうやって少しでも時間を稼ぐことが出来たらディノかイーザンが倒してくれるはず!
そう瞬時に考え、震える手にグッと力を込めた。リラーナが背後で私の名を呼び、叫ぶ声が聞こえる。ルギニアスの「おい!!」と焦る声も聞こえた。
「「ルーサ!!」」
ディノが駆け出し、イーザンが振り向き魔法を発動させようとしているのが見えた。狼の口が目の前で開かれ鋭い牙が、滴る涎と共にキラリと光った。ガバッと左腕で顔を庇った瞬間、狼の鋭い牙が私の腕を……
『ドシャッ』
狼が私の腕に噛み付いたかと思われたが、狼は私の腕に牙が届く前に地面へ横たわっていた。
「「「「!?」」」」
その場でそれを目撃した全員が、なにが起こったのか分からないといった顔だった。ただルギニアスだけは眉間に皺を寄せていた。
「ルーサ! 大丈夫か!?」
ディノとイーザンが駆け寄り、私に声を掛けてくれる。
「う、うん……なんとか」
今さらながらに震えてくる。短剣を握り締める手が震える。手は強張り短剣から離すことが出来なかった。
「ルーサ!!」
リラーナはそんな私を思い切り抱き締めてくれた。イーザンは私の手をそっと握り、ゆっくりと短剣から手を解いてくれる。
「はぁぁあ、マジで焦ったよ。無事で良かった……」
ディノは安堵の溜め息を吐いていた。イーザンは私の短剣を鞘へと納めてくれると、リラーナにもナイフを返していた。
「助かった。役に立ったな」
そう言いながらフッと笑ったイーザンにリラーナが少し驚いた顔になったが、役に立ったという言葉にご機嫌になりドヤ顔となっていた。
「それにしてもなんで急に動きが止まったんだ?」
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「ん? なんかあったのか?」
ディノがイーザンの手元を見詰めた。イーザンは手を止めた部位をじっくり見詰めると、なにかをそっと摘まんだ。そしてそれを皆の前に見せる。
それは一瞬なにか分からなかった。透明かと思えるほど細く、髪の毛ほどの太さしかない棒のようなものだった。
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