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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第126話 七年前の真実
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「お嬢様方が王都へ出発した後は、我々はいつも通りに仕事をこなしておりました」
エナは思い出すようにゆっくりと話し出す。
「いつもならば旦那様が王都から戻られるときには、戻られる日時を先触れで送ってくださるのです。ですから、それに合わせ我々も準備するのですが……しかしあのときは……」
「私が王都に残り、お父様とお母様だけが先触れもなく帰って来た……」
「はい……。今まで先触れなくお戻りになられたことはありませんでしたので、皆が驚き慌ててお迎えの準備をしたのですが……そのときお嬢様はおらず……皆が不審に思い、執事長が旦那様にお聞きしたのです」
エナは悲しそうな辛そうな、なんとも言えない表情となった。
「旦那様は少し寂しそうなお顔をされ『サラルーサは王都へ残った』と。皆、それは驚きました。なぜお嬢様だけが王都へ残ったのか、それはいつまでなのか、皆が驚愕の顔で旦那様の言葉を待ちました。旦那様はお嬢様の神託が魔石精製師であったことを伝え、そのまま住み込みで修行となったとおっしゃっておりました。何年かかるかは分からない、とも」
「…………」
私はそれを黙って聞いていた。リラーナも少し辛そうな顔、ディノやイーザンもじっと話を聞いてくれている。
エナは深呼吸をし、そのまま話を続ける。
「皆、ショックを受けておりましたが、話はそれだけでは終わりませんでした」
さらに悲痛な顔となったエナ。ここからは私には想像もつかないことだった。
「旦那様は使用人たち全員を集め、話し出されたのです。『これから私たちは行かなければならないところがある。少しの間留守にする。その間、執事長を筆頭に皆に屋敷や領地を頼みたい』と。皆はそれはどのくらいの期間なのかと尋ねました。しかし旦那様は申し訳なさそうに、『どれくらいかかるかは分からない、すまない』とだけおっしゃっておられました。その後旦那様と奥様はすぐに出発を……」
「ちょ、ちょっと待って」
エナがまだ話している途中だったが、ひとつ気になることがあった。
「少しの間留守にする、って言ってたの?」
「はい」
「ということは、お父様たちは戻って来るつもりだったのよね?」
「だと思います……」
その言葉に皆がハッとした顔になった。リラーナは私の肩をぐいっと引いた。
「ル、ルーサ、それって……」
「うん。お父様とお母様は戻るつもりだった。ということは爵位返上なんてするつもりはなかった……」
エナが頷いて見せた。
「えぇ、我々も旦那様と奥様は戻られると思っておりました。それなのに……旦那様と奥様が出発されてから幾日も経たないうちに、いきなり国から使者がやってきて、旦那様が爵位返上をなされた、と」
「どういうこと? 戻るつもりだったお父様たちがなぜ爵位返上を……」
「我々も違和感を抱き、国からの使者に問い詰めたのです、なにかの間違いではないのか、旦那様が爵位返上なんてされるはずがない、と。しかし、使者はもうすでに決定事項だ、と。国からの正式な書類を見せられ、我々には反論する余地もございませんでした」
どういうこと? 戻るつもりだったお父様がなぜ爵位返上を? ルギニアスの話ではお母様は聖女かもしれない。結界の守護、そのために屋敷を出たのだとしても爵位返上をする理由が分からない。
なにか予期せぬ事態となり、戻れなくなりそうだったから爵位返上を? それにしても使用人たちになんの連絡もなく爵位返上をするとは思えない。しかもお父様たちが出て行ってからそんなすぐに国から通達が? 違和感しかない。
「それからはあっという間に屋敷は差し押さえられ、我々は次の領主様に雇われるでもなく、離散を余儀なくされました。実家のある者は実家へと戻り、戻ることが出来ないものは、執事長や騎士の方々の伝手を頼りに、違う職へと。騎士の皆様は最後まで事実確認をしてくださっておりましたが、しかし屋敷にいることが出来ない我々は住むところのためにも離散するしかなかったのです」
悲しそうな表情のエナ。その当時の辛い記憶を思い出させてしまった。
「ごめん、エナ。私は全く知らなかった……ごめんなさい……」
私は一人だけダラスさんとリラーナに守られていた。皆が苦しんでいるときに、私だけ……。
「お嬢様! お嬢様はなにも悪くはありません! 謝ったりしないでください!」
「そうよ、ルーサはまだ子供だったんだから、仕方ないじゃない」
リラーナも私を慰めてくれる。でも……私は自分が許せない……。
「まあ、俺は分かるな。いくら子供といえど、なにも知らずにいたのは辛い。子供だとしても、役に立たないにしても、大事なことは話してもらいものだ。話してもらえない自分に腹立たしくもなるんだよ」
ディノの言葉にイーザンも無言で頷いていた。
「リラーナも、ディノもありがとう……。なにも知らなかった自分に腹が立つ。それは変わらない。だから私は絶対お父様とお母様を見付ける。お父様が本当に自分から爵位返上をしたのか、したのならなぜなのか、それを問い質す。そしていつか領地も……」
いつか領地も取り戻すことが出来たら……。今のままで平和に暮らせているのならローグ家だろうがどこの領主だろうが問題ないと思ってはいるけれど……でもランガスタ公爵……あの人が領主である限りは領民が幸せになれるとは思えない。
私は改めて両親を必ず見付けると決意を新たにした。
エナは思い出すようにゆっくりと話し出す。
「いつもならば旦那様が王都から戻られるときには、戻られる日時を先触れで送ってくださるのです。ですから、それに合わせ我々も準備するのですが……しかしあのときは……」
「私が王都に残り、お父様とお母様だけが先触れもなく帰って来た……」
「はい……。今まで先触れなくお戻りになられたことはありませんでしたので、皆が驚き慌ててお迎えの準備をしたのですが……そのときお嬢様はおらず……皆が不審に思い、執事長が旦那様にお聞きしたのです」
エナは悲しそうな辛そうな、なんとも言えない表情となった。
「旦那様は少し寂しそうなお顔をされ『サラルーサは王都へ残った』と。皆、それは驚きました。なぜお嬢様だけが王都へ残ったのか、それはいつまでなのか、皆が驚愕の顔で旦那様の言葉を待ちました。旦那様はお嬢様の神託が魔石精製師であったことを伝え、そのまま住み込みで修行となったとおっしゃっておりました。何年かかるかは分からない、とも」
「…………」
私はそれを黙って聞いていた。リラーナも少し辛そうな顔、ディノやイーザンもじっと話を聞いてくれている。
エナは深呼吸をし、そのまま話を続ける。
「皆、ショックを受けておりましたが、話はそれだけでは終わりませんでした」
さらに悲痛な顔となったエナ。ここからは私には想像もつかないことだった。
「旦那様は使用人たち全員を集め、話し出されたのです。『これから私たちは行かなければならないところがある。少しの間留守にする。その間、執事長を筆頭に皆に屋敷や領地を頼みたい』と。皆はそれはどのくらいの期間なのかと尋ねました。しかし旦那様は申し訳なさそうに、『どれくらいかかるかは分からない、すまない』とだけおっしゃっておられました。その後旦那様と奥様はすぐに出発を……」
「ちょ、ちょっと待って」
エナがまだ話している途中だったが、ひとつ気になることがあった。
「少しの間留守にする、って言ってたの?」
「はい」
「ということは、お父様たちは戻って来るつもりだったのよね?」
「だと思います……」
その言葉に皆がハッとした顔になった。リラーナは私の肩をぐいっと引いた。
「ル、ルーサ、それって……」
「うん。お父様とお母様は戻るつもりだった。ということは爵位返上なんてするつもりはなかった……」
エナが頷いて見せた。
「えぇ、我々も旦那様と奥様は戻られると思っておりました。それなのに……旦那様と奥様が出発されてから幾日も経たないうちに、いきなり国から使者がやってきて、旦那様が爵位返上をなされた、と」
「どういうこと? 戻るつもりだったお父様たちがなぜ爵位返上を……」
「我々も違和感を抱き、国からの使者に問い詰めたのです、なにかの間違いではないのか、旦那様が爵位返上なんてされるはずがない、と。しかし、使者はもうすでに決定事項だ、と。国からの正式な書類を見せられ、我々には反論する余地もございませんでした」
どういうこと? 戻るつもりだったお父様がなぜ爵位返上を? ルギニアスの話ではお母様は聖女かもしれない。結界の守護、そのために屋敷を出たのだとしても爵位返上をする理由が分からない。
なにか予期せぬ事態となり、戻れなくなりそうだったから爵位返上を? それにしても使用人たちになんの連絡もなく爵位返上をするとは思えない。しかもお父様たちが出て行ってからそんなすぐに国から通達が? 違和感しかない。
「それからはあっという間に屋敷は差し押さえられ、我々は次の領主様に雇われるでもなく、離散を余儀なくされました。実家のある者は実家へと戻り、戻ることが出来ないものは、執事長や騎士の方々の伝手を頼りに、違う職へと。騎士の皆様は最後まで事実確認をしてくださっておりましたが、しかし屋敷にいることが出来ない我々は住むところのためにも離散するしかなかったのです」
悲しそうな表情のエナ。その当時の辛い記憶を思い出させてしまった。
「ごめん、エナ。私は全く知らなかった……ごめんなさい……」
私は一人だけダラスさんとリラーナに守られていた。皆が苦しんでいるときに、私だけ……。
「お嬢様! お嬢様はなにも悪くはありません! 謝ったりしないでください!」
「そうよ、ルーサはまだ子供だったんだから、仕方ないじゃない」
リラーナも私を慰めてくれる。でも……私は自分が許せない……。
「まあ、俺は分かるな。いくら子供といえど、なにも知らずにいたのは辛い。子供だとしても、役に立たないにしても、大事なことは話してもらいものだ。話してもらえない自分に腹立たしくもなるんだよ」
ディノの言葉にイーザンも無言で頷いていた。
「リラーナも、ディノもありがとう……。なにも知らなかった自分に腹が立つ。それは変わらない。だから私は絶対お父様とお母様を見付ける。お父様が本当に自分から爵位返上をしたのか、したのならなぜなのか、それを問い質す。そしていつか領地も……」
いつか領地も取り戻すことが出来たら……。今のままで平和に暮らせているのならローグ家だろうがどこの領主だろうが問題ないと思ってはいるけれど……でもランガスタ公爵……あの人が領主である限りは領民が幸せになれるとは思えない。
私は改めて両親を必ず見付けると決意を新たにした。
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