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第4章《旅立ち~獣人国ガルヴィオ》編
第119話 花の街ルバード
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「着いたー!」
「ケツいてー」
ディノと二人で身体を伸ばしていたら、リラーナとイーザンはいまだに魔導具について話をしていた。
「二人とも夢中になるはいいけど、とりあえず宿に行くぞー」
ディノが荷物を抱え、二人に向かって手をひらひらと振った。
辺りはもう陽が沈みかけ暗くなってきている。
王都と比べとても小さい街『ルバード』。私が住んでいたローグ伯爵領のロダスタや、砂漠の街ランバナスよりも小さい街。建物は二階建てもあるが、数はそれほど多くはない。石造りの建物に、石畳の通路。しかし花がたくさん飾られ、街の中心地には噴水がある。花の街としても知られているらしい。とても可愛らしい雰囲気の街だ。
徐々に街灯が点灯し出し、夕食時の美味しそうな匂いが漂い出す。
「腹減ったー。早く宿に荷物を置いて飯に行くぞー」
リラーナとイーザンは話しながら、たまに喧嘩しながら? 私とディノが歩く後ろを付いて歩いていた。
「ディノはこの街に来たことがあるの?」
「ん? あぁ。エルシュへ行くときには必ず通るしな。小さい街だが、そうやってエルシュまでの行程で必ず皆が寄るから、それなりに栄えてると思うぞ」
「へー、そうなんだ」
確かに周りを見回すと、小さい街にしては人がそれなりにたくさんいる。店もそこそこ多そうだ。
「皆が必ず一泊するから、宿もそれなりに何軒かあったかと思う。後は保存食を売っている店も多かったかな」
ディノが思い出しながら話している。
そしてディノが歩いて行くままに付いて行くと、一軒の宿へと到着した。
「いつもここに泊まるんだが、ここで良いか?」
それほど大きくもない建物は玄関先にたくさんの花が飾られ、とても可愛かった。なんだかそんな可愛らしい宿になるとは思っていなかったため、ちょっと固まってしまった。
「え、駄目か!?」
その様子に気付いたディノが焦った顔でおろおろし出し、笑いそうになってしまった。
「プッ。う、ううん、大丈夫……フフ、なんか思っていた以上に可愛い宿だったからびっくりしただけ……フフ」
そう言うとディノは一気に顔が真っ赤になった。
「あ! いや! これは、別に! こ、この宿は食事も出してくれるんだよ!! 美味いし!」
あわあわと焦るディノが面白くて、笑いが堪え切れなくなってしまった。
「フフフ……だ、大丈夫よ。可愛い宿で私は嬉しい……フフフ」
「わ、笑うな!!」
「アハハ」
若干涙目になっているディノ。そこへ追い打ちをかけたのが……
「わぁ! めちゃくちゃ可愛い宿ね! ディノがこんな可愛いもの好きだとは意外!」
背後からリラーナが盛大に声を張り上げ言ったものだから、ディノの顔は真っ赤から真っ青になりそうな勢いで泣きそうに……いや、少し泣いていた……ア、ハハ……。
イーザンは憐れむような目を向け、ディノの肩にポンと手を置いた……。
散々ディノをからかった後、宿へと入るとなかもとても可愛かった。至る所に花や小物が飾られ、花の香なのか甘い良い香りが漂っていた。女性陣二人できゃっきゃと喜んでいたが、ディノは目が死んでいた……。
「いらっしゃい、何人だい?」
エントランスの横にある扉から出て来た女性がそう聞いて来た。ふくよかな優しそうな女性だ。
「あー、女将、四人だ。二人部屋を二部屋頼む。それと夕食も」
若干げっそりとしたディノが女将と呼んだその女性に話した。
「二部屋と夕食ね」
そう言って奥の部屋へと戻った女将さんは、再び戻ってくると、二つの鍵を渡した。
「二階の一番奥二部屋だよ。風呂場と洗面は共同だからね、入り口に札を掛けとくれ。夕食は今から一時間後で良いかい?」
「あぁ、それで頼む」
ディノは鍵を受け取り、一つを私に渡した。二階へと上がると、廊下を挟んで左右に部屋が並んでいた。扉には番号の札が付いていて、鍵にある番号と照らし合わせる。
「風呂と洗面はこの廊下の反対側、一番奥にある。食堂は一階のエントランス奥だな。じゃあ一時間後に食堂でな」
ディノがそう説明してくれ、私とリラーナは部屋へと入った。
入ったその部屋はこれまた可愛らしい部屋だった。
「なんなの、この可愛さ!! ディノが選んだ宿ってのがまた笑えるわね!」
リラーナが爆笑していた。
部屋には小さな机と椅子は一つしかないが、ベッドはもちろん二つ。一人部屋に比べるとやはり広い。出窓には花が飾られ、ベッドのシーツや布団にも花柄があしらわれている。
「これってきっとあっちの部屋も一緒よね?」
そう言いながらブフッと噴き出すリラーナ。
「だよね……この可愛いベッドでディノとイーザンが寝るのよね」
リラーナと顔を見合わせる。
「「ブフッ」」
笑いを堪え切れずに笑っていたら、ルギニアスが鞄からひょっこりと出て来て一言呟いた。
「お前らな……あいつに同情する……」
そう言いながら溜め息を吐いていた。
「ケツいてー」
ディノと二人で身体を伸ばしていたら、リラーナとイーザンはいまだに魔導具について話をしていた。
「二人とも夢中になるはいいけど、とりあえず宿に行くぞー」
ディノが荷物を抱え、二人に向かって手をひらひらと振った。
辺りはもう陽が沈みかけ暗くなってきている。
王都と比べとても小さい街『ルバード』。私が住んでいたローグ伯爵領のロダスタや、砂漠の街ランバナスよりも小さい街。建物は二階建てもあるが、数はそれほど多くはない。石造りの建物に、石畳の通路。しかし花がたくさん飾られ、街の中心地には噴水がある。花の街としても知られているらしい。とても可愛らしい雰囲気の街だ。
徐々に街灯が点灯し出し、夕食時の美味しそうな匂いが漂い出す。
「腹減ったー。早く宿に荷物を置いて飯に行くぞー」
リラーナとイーザンは話しながら、たまに喧嘩しながら? 私とディノが歩く後ろを付いて歩いていた。
「ディノはこの街に来たことがあるの?」
「ん? あぁ。エルシュへ行くときには必ず通るしな。小さい街だが、そうやってエルシュまでの行程で必ず皆が寄るから、それなりに栄えてると思うぞ」
「へー、そうなんだ」
確かに周りを見回すと、小さい街にしては人がそれなりにたくさんいる。店もそこそこ多そうだ。
「皆が必ず一泊するから、宿もそれなりに何軒かあったかと思う。後は保存食を売っている店も多かったかな」
ディノが思い出しながら話している。
そしてディノが歩いて行くままに付いて行くと、一軒の宿へと到着した。
「いつもここに泊まるんだが、ここで良いか?」
それほど大きくもない建物は玄関先にたくさんの花が飾られ、とても可愛かった。なんだかそんな可愛らしい宿になるとは思っていなかったため、ちょっと固まってしまった。
「え、駄目か!?」
その様子に気付いたディノが焦った顔でおろおろし出し、笑いそうになってしまった。
「プッ。う、ううん、大丈夫……フフ、なんか思っていた以上に可愛い宿だったからびっくりしただけ……フフ」
そう言うとディノは一気に顔が真っ赤になった。
「あ! いや! これは、別に! こ、この宿は食事も出してくれるんだよ!! 美味いし!」
あわあわと焦るディノが面白くて、笑いが堪え切れなくなってしまった。
「フフフ……だ、大丈夫よ。可愛い宿で私は嬉しい……フフフ」
「わ、笑うな!!」
「アハハ」
若干涙目になっているディノ。そこへ追い打ちをかけたのが……
「わぁ! めちゃくちゃ可愛い宿ね! ディノがこんな可愛いもの好きだとは意外!」
背後からリラーナが盛大に声を張り上げ言ったものだから、ディノの顔は真っ赤から真っ青になりそうな勢いで泣きそうに……いや、少し泣いていた……ア、ハハ……。
イーザンは憐れむような目を向け、ディノの肩にポンと手を置いた……。
散々ディノをからかった後、宿へと入るとなかもとても可愛かった。至る所に花や小物が飾られ、花の香なのか甘い良い香りが漂っていた。女性陣二人できゃっきゃと喜んでいたが、ディノは目が死んでいた……。
「いらっしゃい、何人だい?」
エントランスの横にある扉から出て来た女性がそう聞いて来た。ふくよかな優しそうな女性だ。
「あー、女将、四人だ。二人部屋を二部屋頼む。それと夕食も」
若干げっそりとしたディノが女将と呼んだその女性に話した。
「二部屋と夕食ね」
そう言って奥の部屋へと戻った女将さんは、再び戻ってくると、二つの鍵を渡した。
「二階の一番奥二部屋だよ。風呂場と洗面は共同だからね、入り口に札を掛けとくれ。夕食は今から一時間後で良いかい?」
「あぁ、それで頼む」
ディノは鍵を受け取り、一つを私に渡した。二階へと上がると、廊下を挟んで左右に部屋が並んでいた。扉には番号の札が付いていて、鍵にある番号と照らし合わせる。
「風呂と洗面はこの廊下の反対側、一番奥にある。食堂は一階のエントランス奥だな。じゃあ一時間後に食堂でな」
ディノがそう説明してくれ、私とリラーナは部屋へと入った。
入ったその部屋はこれまた可愛らしい部屋だった。
「なんなの、この可愛さ!! ディノが選んだ宿ってのがまた笑えるわね!」
リラーナが爆笑していた。
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そう言いながらブフッと噴き出すリラーナ。
「だよね……この可愛いベッドでディノとイーザンが寝るのよね」
リラーナと顔を見合わせる。
「「ブフッ」」
笑いを堪え切れずに笑っていたら、ルギニアスが鞄からひょっこりと出て来て一言呟いた。
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そう言いながら溜め息を吐いていた。
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