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第3章《試験》編
第109話 それぞれの決断
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程なくして先程アランの登録用紙を持って出て行った試験官が再び現れた。そしてその場にいた試験官がそれを受け取るとアランを呼んだ。私は席へと戻り、今度はアランが試験官の元へ。
アランも私と同様小さな箱を受け取り、中から証明タグを取り出した。
「『国家魔石精製師、アラン、エルシュ02』、師匠の店番号の次ですね」
「エルシュでの魔石屋二号だな、おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
アランが振り返り、お互い証明タグを掲げて見せた。お互いニッと笑い合う。
二人ともが証明タグを受け取ると、試験官は用意してあった箱からさらになにかを取り出した。
「後はこれだ」
そう言ってアランと私は証明タグよりも大きめのプレートと小さな魔導具らしきものを渡される。
「採掘場への入場許可証と結界解除の魔導具だ」
ダラスさんが持っていたやつね! この許可証と魔導具があれば一人でも採掘場に入れるのね。受け取ったものを眺め、実感が湧いてくる。
「渡すものはこれくらいだな……」
全てを受け取り、席に着いたアランと私を真っ直ぐに見据えながら試験官は真面目な顔になった。
「ルーサは店を出す場合は再び魔導省に連絡をし、登録。魔石屋で商売をする場合は、月に一度、どのような種類の、どれだけの魔石を精製販売したかの書類を魔導省に提出。他にもなにかあったときはすぐに魔導省に連絡するように。本日は以上だ。二人ともおめでとう。これから頑張ってくれ」
「「はい!! ありがとうございました!!」」
一通りの説明が終わると試験官は解散を促し去って行った。
「アラン、おめでとう!!」
「ルーサもおめでとう」
お互い証明タグを見せ合う。アランのタグにはダラスさんと同じく店番号も書かれている。
「もう店の場所も決まっているなんて凄いわね」
「あー、ハハ、今回の試験に懸けていたからね。落ちる訳にはいかない、って気合いを入れたかったんだ。受かって良かったよ」
そう言いながらアハハと笑ったアラン。
「そうだ、メルは?」
結局聞けないままだったメルとリースのこと。
「あぁ、そうだね。その前にライを待たせたままだろう? 行こう」
そうだ、ライにもリースのことを聞きたくて待っていてもらっているのよね。急がないと。
アランと共に外へと出ると、会場建物を出てすぐの木陰にライは立っていた。ボーッとしているような、遠くを見ているような顔。なんだか声をかけ辛い。
「ライ」
それを察したのか、アランが先に声を掛けた。アランの声に気付いたライはこちらを向く。その顔には覇気がなかったが、私たちに気を遣わせまいと精一杯笑顔を作っているように見えた。
「よ、お二人さん、おめでとう」
「あ、うん、ありがとう」
「あ、ありがと……」
「アハハ、そんな顔すんな! 俺は大丈夫だから」
どんな顔をしたらいいのか分からず、ぎこちない返事になったことに気付いたのか、ライは明るく言った。ライに気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちになる。
「なあ、昼飯でも食いながら話そうぜ。リースのことを聞きたいんだろ?」
「あ、あぁ、そうだね。僕もメルのことを話さないと」
「うん」
三人でカフェへと入り、昼食がてら二人の話を聞く。
「まずは改めて、アランもルーサもおめでとう」
「「ありがとう」」
「本当に気を遣わなくていいからな? 俺、正直不合格だと思っていたし……」
「え……」
「な、なんで?」
ライの口から不合格だと思っていた、という言葉を聞くと違和感しかない。採取に行く前にはあれだけやる気があったのに。
「いやぁ、ルーサとフェスラーデの森で会ったあと、俺たち砂漠に移動しただろ?」
「うん」
私たちがフェスラーデの森で会った話をアランにすると、意外なことにアランはそれを知っていた。
「実はライとリースにはランバナスで会ってね。そのときにフェスラーデの森でルーサに会った話を聞いたんだ」
「そうそう、その話をして、その後はお互い別行動になったから、その後のことは知らないんだがな」
「へー、そうなんだ」
「それでリースはさ、フェスラーデの森で怪我をしただろ? それからどうも恐怖心が出てしまったのか、積極的に採取が出来なくなってさ、あまり良い魔石が採取出来なかったんだ。それで自分はもう今回は無理だ、となってな。自分から辞退を申し出た」
「そうなんだ……」
「俺もあまり良い魔石は採取出来なかったのは分かっていたからな、きっと無理だと思っていた。だからさ、俺たちもう一度キリアさんの元で修行しなおそうと思う」
「「…………」」
ライはもう決めたのだろう、清々しい顔をしていた。アランと二人で顔を見合わせる。そして二人して少し寂しい想いをしながらも頷いた。
「そっか、頑張って」
「あぁ、ルーサとアランはしっかりな」
「ハハ、僕はエルシュで店を出すからまた遊びに来てよ」
「おぉ、もう店があるんだな。スゲーな、いつか必ず行くよ!」
そうやってお互い笑いながら話せたことが嬉しかった。
「で、メルはどうしたんだ? ランバナスで会ったときはまだ一緒にいたよな?」
ライが改めて聞いた。そう、メルもどうしたのか、それを知りたいのよ。アランを見ると、先程までの和やかな雰囲気から少し悲しそうな顔になった。
「メルはさ、もう魔石精製師になるのを諦めたって……」
「「えっ!?」」
アランの言葉に耳を疑う。
「諦めたって、メルが!? なんで!?」
アランも私と同様小さな箱を受け取り、中から証明タグを取り出した。
「『国家魔石精製師、アラン、エルシュ02』、師匠の店番号の次ですね」
「エルシュでの魔石屋二号だな、おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
アランが振り返り、お互い証明タグを掲げて見せた。お互いニッと笑い合う。
二人ともが証明タグを受け取ると、試験官は用意してあった箱からさらになにかを取り出した。
「後はこれだ」
そう言ってアランと私は証明タグよりも大きめのプレートと小さな魔導具らしきものを渡される。
「採掘場への入場許可証と結界解除の魔導具だ」
ダラスさんが持っていたやつね! この許可証と魔導具があれば一人でも採掘場に入れるのね。受け取ったものを眺め、実感が湧いてくる。
「渡すものはこれくらいだな……」
全てを受け取り、席に着いたアランと私を真っ直ぐに見据えながら試験官は真面目な顔になった。
「ルーサは店を出す場合は再び魔導省に連絡をし、登録。魔石屋で商売をする場合は、月に一度、どのような種類の、どれだけの魔石を精製販売したかの書類を魔導省に提出。他にもなにかあったときはすぐに魔導省に連絡するように。本日は以上だ。二人ともおめでとう。これから頑張ってくれ」
「「はい!! ありがとうございました!!」」
一通りの説明が終わると試験官は解散を促し去って行った。
「アラン、おめでとう!!」
「ルーサもおめでとう」
お互い証明タグを見せ合う。アランのタグにはダラスさんと同じく店番号も書かれている。
「もう店の場所も決まっているなんて凄いわね」
「あー、ハハ、今回の試験に懸けていたからね。落ちる訳にはいかない、って気合いを入れたかったんだ。受かって良かったよ」
そう言いながらアハハと笑ったアラン。
「そうだ、メルは?」
結局聞けないままだったメルとリースのこと。
「あぁ、そうだね。その前にライを待たせたままだろう? 行こう」
そうだ、ライにもリースのことを聞きたくて待っていてもらっているのよね。急がないと。
アランと共に外へと出ると、会場建物を出てすぐの木陰にライは立っていた。ボーッとしているような、遠くを見ているような顔。なんだか声をかけ辛い。
「ライ」
それを察したのか、アランが先に声を掛けた。アランの声に気付いたライはこちらを向く。その顔には覇気がなかったが、私たちに気を遣わせまいと精一杯笑顔を作っているように見えた。
「よ、お二人さん、おめでとう」
「あ、うん、ありがとう」
「あ、ありがと……」
「アハハ、そんな顔すんな! 俺は大丈夫だから」
どんな顔をしたらいいのか分からず、ぎこちない返事になったことに気付いたのか、ライは明るく言った。ライに気を遣わせてしまい申し訳ない気持ちになる。
「なあ、昼飯でも食いながら話そうぜ。リースのことを聞きたいんだろ?」
「あ、あぁ、そうだね。僕もメルのことを話さないと」
「うん」
三人でカフェへと入り、昼食がてら二人の話を聞く。
「まずは改めて、アランもルーサもおめでとう」
「「ありがとう」」
「本当に気を遣わなくていいからな? 俺、正直不合格だと思っていたし……」
「え……」
「な、なんで?」
ライの口から不合格だと思っていた、という言葉を聞くと違和感しかない。採取に行く前にはあれだけやる気があったのに。
「いやぁ、ルーサとフェスラーデの森で会ったあと、俺たち砂漠に移動しただろ?」
「うん」
私たちがフェスラーデの森で会った話をアランにすると、意外なことにアランはそれを知っていた。
「実はライとリースにはランバナスで会ってね。そのときにフェスラーデの森でルーサに会った話を聞いたんだ」
「そうそう、その話をして、その後はお互い別行動になったから、その後のことは知らないんだがな」
「へー、そうなんだ」
「それでリースはさ、フェスラーデの森で怪我をしただろ? それからどうも恐怖心が出てしまったのか、積極的に採取が出来なくなってさ、あまり良い魔石が採取出来なかったんだ。それで自分はもう今回は無理だ、となってな。自分から辞退を申し出た」
「そうなんだ……」
「俺もあまり良い魔石は採取出来なかったのは分かっていたからな、きっと無理だと思っていた。だからさ、俺たちもう一度キリアさんの元で修行しなおそうと思う」
「「…………」」
ライはもう決めたのだろう、清々しい顔をしていた。アランと二人で顔を見合わせる。そして二人して少し寂しい想いをしながらも頷いた。
「そっか、頑張って」
「あぁ、ルーサとアランはしっかりな」
「ハハ、僕はエルシュで店を出すからまた遊びに来てよ」
「おぉ、もう店があるんだな。スゲーな、いつか必ず行くよ!」
そうやってお互い笑いながら話せたことが嬉しかった。
「で、メルはどうしたんだ? ランバナスで会ったときはまだ一緒にいたよな?」
ライが改めて聞いた。そう、メルもどうしたのか、それを知りたいのよ。アランを見ると、先程までの和やかな雰囲気から少し悲しそうな顔になった。
「メルはさ、もう魔石精製師になるのを諦めたって……」
「「えっ!?」」
アランの言葉に耳を疑う。
「諦めたって、メルが!? なんで!?」
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