111 / 247
第3章《試験》編
第108話 国家魔石精製師ルーサ誕生!
しおりを挟む
ダラスさんとリラーナに見送られながら城へと向かった。ルギニアスは鞄のなかね。
会場へとたどり着くとすでに何人かは着席していた。
キョロキョロと見回すとライの姿があった。こちらに気付くとライは手を振る。
「よう、ルーサ、フェスラーデの森ではありがとな」
「ううん、お互い様よ。それよりリースは?」
「あー、リースは……」
ライが微妙な顔をしながら何か口にしようとしたとき、背後からアランがやって来た。
「やあ、ライ、ルーサ」
「おー、アラン」
「久しぶり、アラン」
アランは確かメルと一緒に砂漠へ行っていたはずだ。
「アランはメルと一緒だったのよね? 今日は一緒に来なかったのね」
「あー……、メルなんだけど……」
アランが眉を下げ、少し話し辛そうにしている。ライも同様の顔だ。ん? 二人して同じ表情……なにかあったのかしら。
どうしたのか聞こうとしたとき、扉から試験官が入って来た。
「合否発表だ。座れー」
ガタガタと部屋にいた全員が着席する。でも、まだ数人しかいない……全員で十人いたはずなのに、今部屋の中を見渡すとライとアランと私を含めても六人しかいない……。メルとリースもどうしたのか結局まだ聞けていない。
「今日ここにいるのは六名だ。四名は辞退、もしくは特殊魔石採取の提出に来なかった者たちだ」
辞退!? 提出に来なかった!? メルとリースが!? なにがあったの!? 思わずライとアランに目をやるが、二人は悔しそうな顔をしたまま、真っ直ぐ前を向いていた。
「まあ毎年、辞退や間に合わなかった者は数名出る。気にするな。そんな訳で、合否発表はここに残った六名で行う。名前を呼ばれた者は合格。その場に待機。呼ばれなかった者は不合格だ、そのまま帰って良いぞ。では、発表する……」
後でライとアランに話を聞かないと、と思いながらも、今は合否発表だ。緊張しながら真っ直ぐに試験官を見る。
試験官は持っていた書類に目をやり、名前を読み上げていく。
「一人目はアラン」
「や、やった……」
ワッと会場内が沸いた。アランはグッと拳を握り締め、少し涙ぐんでいるようだ。喜んだ反面なんだか少し複雑そうな表情にも見えた。
「二人目はルーサ」
えっ。アランの表情が気になっていたため、すっかり気を抜いていた。今の私よね!? 慌てて試験官に目をやる。
試験官は苦笑しているようだったが、ライとアランがグッと拳をこちらに向けてくれていたことで、やはり私が合格で間違いないのだと思わせてくれた。
やった!! やったわ!! 合格した!! 絶対大丈夫なはず、とは思っていたけれど、それでもやっぱり緊張するものは緊張するのよ。これで私もようやく国家魔石精製師よ!! ついに両親を探しに……旅に…………なんだろう、嬉しい反面少し寂しい気持ちも……。
これで本当に私は独り立ちなのね……。
しんみりしているときではない、試験官の声は続く、そう思ったが、試験官は書類から顔を上げ、こちらを見渡した。
「今年の合格者は以上二名だ」
「えっ」
全員がざわざわとした。アランも目を見開き驚いている。ライは……悔しそうに俯いていた。
他の人たちも一様に悔しそうに俯いたり、声を上げたりしていた。
「合格者二名以外は解散」
ガタガタっとアランと私以外の四人が立ち上がる。
「ラ、ライ! 外でちょっと待ってて!」
慌ててライに声を掛ける。ライにしてみたら私とは話したくないかもしれないが、リースの話を聞きたい。そのことを察してくれたのか、ライは力なく「あぁ」とだけ答えて会場を後にした。
会場内にはアランと私だけが残り、試験官がそれを確認すると話し出す。
「今から証明タグを発行する。すぐに店を持つ予定の者は?」
「あ、僕は店を出すつもりです」
「では、この用紙に名前と街名と住所を記入しろ」
そう言って渡された用紙に記入していくアラン。記入された用紙を助手のような試験官が受け取り、小さな箱と共に部屋の外へと持ち出した。
「ルーサはすぐには店を持たないんだな?」
「はい」
「では、そのままこの証明タグを」
試験官の元まで歩み寄り、小さな箱を手渡される。国の紋章が彫られた小さな金属製の箱。その箱を開けると、艶のある真紅の綺麗な生地の台座の上に乗った、小さな四角い金属プレート。
『国家魔石精製師、ルーサ』
そう彫られていた。以前ダラスさんに見せてもらった証明タグと同じ。金属プレートの表には名が彫られ、裏には国の紋章となにやら違う模様も描かれていた。
「裏は国の紋章と魔導省の紋章だな」
魔導省の紋は魔法陣らしき模様の上に杖が二杖交差し描かれていた。
プレートは首から下げられるようにペンダントの形となっている。持ち上げるとチャリッとチェーンの音がした。
「これからそのプレートがこの国、アシェルーダの魔石精製師だと証明してくれる。決して失くさないように。失くして再発行となると、手続きがややこしいからな。おススメしない」
そう言いながら苦笑する試験官。頷いて見せ、そして首にとプレートを掛ける。
「ハハ、似合っているぞ。おめでとう」
「はい! ありがとうございます!!」
小さな金属プレートだが、首に掛けたと同時についに国家魔石精製師となったのだという実感、そして責任を感じた。
会場へとたどり着くとすでに何人かは着席していた。
キョロキョロと見回すとライの姿があった。こちらに気付くとライは手を振る。
「よう、ルーサ、フェスラーデの森ではありがとな」
「ううん、お互い様よ。それよりリースは?」
「あー、リースは……」
ライが微妙な顔をしながら何か口にしようとしたとき、背後からアランがやって来た。
「やあ、ライ、ルーサ」
「おー、アラン」
「久しぶり、アラン」
アランは確かメルと一緒に砂漠へ行っていたはずだ。
「アランはメルと一緒だったのよね? 今日は一緒に来なかったのね」
「あー……、メルなんだけど……」
アランが眉を下げ、少し話し辛そうにしている。ライも同様の顔だ。ん? 二人して同じ表情……なにかあったのかしら。
どうしたのか聞こうとしたとき、扉から試験官が入って来た。
「合否発表だ。座れー」
ガタガタと部屋にいた全員が着席する。でも、まだ数人しかいない……全員で十人いたはずなのに、今部屋の中を見渡すとライとアランと私を含めても六人しかいない……。メルとリースもどうしたのか結局まだ聞けていない。
「今日ここにいるのは六名だ。四名は辞退、もしくは特殊魔石採取の提出に来なかった者たちだ」
辞退!? 提出に来なかった!? メルとリースが!? なにがあったの!? 思わずライとアランに目をやるが、二人は悔しそうな顔をしたまま、真っ直ぐ前を向いていた。
「まあ毎年、辞退や間に合わなかった者は数名出る。気にするな。そんな訳で、合否発表はここに残った六名で行う。名前を呼ばれた者は合格。その場に待機。呼ばれなかった者は不合格だ、そのまま帰って良いぞ。では、発表する……」
後でライとアランに話を聞かないと、と思いながらも、今は合否発表だ。緊張しながら真っ直ぐに試験官を見る。
試験官は持っていた書類に目をやり、名前を読み上げていく。
「一人目はアラン」
「や、やった……」
ワッと会場内が沸いた。アランはグッと拳を握り締め、少し涙ぐんでいるようだ。喜んだ反面なんだか少し複雑そうな表情にも見えた。
「二人目はルーサ」
えっ。アランの表情が気になっていたため、すっかり気を抜いていた。今の私よね!? 慌てて試験官に目をやる。
試験官は苦笑しているようだったが、ライとアランがグッと拳をこちらに向けてくれていたことで、やはり私が合格で間違いないのだと思わせてくれた。
やった!! やったわ!! 合格した!! 絶対大丈夫なはず、とは思っていたけれど、それでもやっぱり緊張するものは緊張するのよ。これで私もようやく国家魔石精製師よ!! ついに両親を探しに……旅に…………なんだろう、嬉しい反面少し寂しい気持ちも……。
これで本当に私は独り立ちなのね……。
しんみりしているときではない、試験官の声は続く、そう思ったが、試験官は書類から顔を上げ、こちらを見渡した。
「今年の合格者は以上二名だ」
「えっ」
全員がざわざわとした。アランも目を見開き驚いている。ライは……悔しそうに俯いていた。
他の人たちも一様に悔しそうに俯いたり、声を上げたりしていた。
「合格者二名以外は解散」
ガタガタっとアランと私以外の四人が立ち上がる。
「ラ、ライ! 外でちょっと待ってて!」
慌ててライに声を掛ける。ライにしてみたら私とは話したくないかもしれないが、リースの話を聞きたい。そのことを察してくれたのか、ライは力なく「あぁ」とだけ答えて会場を後にした。
会場内にはアランと私だけが残り、試験官がそれを確認すると話し出す。
「今から証明タグを発行する。すぐに店を持つ予定の者は?」
「あ、僕は店を出すつもりです」
「では、この用紙に名前と街名と住所を記入しろ」
そう言って渡された用紙に記入していくアラン。記入された用紙を助手のような試験官が受け取り、小さな箱と共に部屋の外へと持ち出した。
「ルーサはすぐには店を持たないんだな?」
「はい」
「では、そのままこの証明タグを」
試験官の元まで歩み寄り、小さな箱を手渡される。国の紋章が彫られた小さな金属製の箱。その箱を開けると、艶のある真紅の綺麗な生地の台座の上に乗った、小さな四角い金属プレート。
『国家魔石精製師、ルーサ』
そう彫られていた。以前ダラスさんに見せてもらった証明タグと同じ。金属プレートの表には名が彫られ、裏には国の紋章となにやら違う模様も描かれていた。
「裏は国の紋章と魔導省の紋章だな」
魔導省の紋は魔法陣らしき模様の上に杖が二杖交差し描かれていた。
プレートは首から下げられるようにペンダントの形となっている。持ち上げるとチャリッとチェーンの音がした。
「これからそのプレートがこの国、アシェルーダの魔石精製師だと証明してくれる。決して失くさないように。失くして再発行となると、手続きがややこしいからな。おススメしない」
そう言いながら苦笑する試験官。頷いて見せ、そして首にとプレートを掛ける。
「ハハ、似合っているぞ。おめでとう」
「はい! ありがとうございます!!」
小さな金属プレートだが、首に掛けたと同時についに国家魔石精製師となったのだという実感、そして責任を感じた。
1
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる