【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~

樹結理(きゆり)

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第3章《試験》編

第108話 国家魔石精製師ルーサ誕生!

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 ダラスさんとリラーナに見送られながら城へと向かった。ルギニアスは鞄のなかね。
 会場へとたどり着くとすでに何人かは着席していた。

 キョロキョロと見回すとライの姿があった。こちらに気付くとライは手を振る。

「よう、ルーサ、フェスラーデの森ではありがとな」
「ううん、お互い様よ。それよりリースは?」
「あー、リースは……」

 ライが微妙な顔をしながら何か口にしようとしたとき、背後からアランがやって来た。

「やあ、ライ、ルーサ」
「おー、アラン」
「久しぶり、アラン」

 アランは確かメルと一緒に砂漠へ行っていたはずだ。

「アランはメルと一緒だったのよね? 今日は一緒に来なかったのね」

「あー……、メルなんだけど……」

 アランが眉を下げ、少し話し辛そうにしている。ライも同様の顔だ。ん? 二人して同じ表情……なにかあったのかしら。

 どうしたのか聞こうとしたとき、扉から試験官が入って来た。

「合否発表だ。座れー」

 ガタガタと部屋にいた全員が着席する。でも、まだ数人しかいない……全員で十人いたはずなのに、今部屋の中を見渡すとライとアランと私を含めても六人しかいない……。メルとリースもどうしたのか結局まだ聞けていない。

「今日ここにいるのは六名だ。四名は辞退、もしくは特殊魔石採取の提出に来なかった者たちだ」

 辞退!? 提出に来なかった!? メルとリースが!? なにがあったの!? 思わずライとアランに目をやるが、二人は悔しそうな顔をしたまま、真っ直ぐ前を向いていた。

「まあ毎年、辞退や間に合わなかった者は数名出る。気にするな。そんな訳で、合否発表はここに残った六名で行う。名前を呼ばれた者は合格。その場に待機。呼ばれなかった者は不合格だ、そのまま帰って良いぞ。では、発表する……」

 後でライとアランに話を聞かないと、と思いながらも、今は合否発表だ。緊張しながら真っ直ぐに試験官を見る。
 試験官は持っていた書類に目をやり、名前を読み上げていく。

「一人目はアラン」

「や、やった……」

 ワッと会場内が沸いた。アランはグッと拳を握り締め、少し涙ぐんでいるようだ。喜んだ反面なんだか少し複雑そうな表情にも見えた。

「二人目はルーサ」

 えっ。アランの表情が気になっていたため、すっかり気を抜いていた。今の私よね!? 慌てて試験官に目をやる。
 試験官は苦笑しているようだったが、ライとアランがグッと拳をこちらに向けてくれていたことで、やはり私が合格で間違いないのだと思わせてくれた。

 やった!! やったわ!! 合格した!! 絶対大丈夫なはず、とは思っていたけれど、それでもやっぱり緊張するものは緊張するのよ。これで私もようやく国家魔石精製師よ!! ついに両親を探しに……旅に…………なんだろう、嬉しい反面少し寂しい気持ちも……。
 これで本当に私は独り立ちなのね……。

 しんみりしているときではない、試験官の声は続く、そう思ったが、試験官は書類から顔を上げ、こちらを見渡した。

「今年の合格者は以上二名だ」

「えっ」

 全員がざわざわとした。アランも目を見開き驚いている。ライは……悔しそうに俯いていた。
 他の人たちも一様に悔しそうに俯いたり、声を上げたりしていた。

「合格者二名以外は解散」

 ガタガタっとアランと私以外の四人が立ち上がる。

「ラ、ライ! 外でちょっと待ってて!」

 慌ててライに声を掛ける。ライにしてみたら私とは話したくないかもしれないが、リースの話を聞きたい。そのことを察してくれたのか、ライは力なく「あぁ」とだけ答えて会場を後にした。

 会場内にはアランと私だけが残り、試験官がそれを確認すると話し出す。

「今から証明タグを発行する。すぐに店を持つ予定の者は?」

「あ、僕は店を出すつもりです」

「では、この用紙に名前と街名と住所を記入しろ」

 そう言って渡された用紙に記入していくアラン。記入された用紙を助手のような試験官が受け取り、小さな箱と共に部屋の外へと持ち出した。

「ルーサはすぐには店を持たないんだな?」

「はい」

「では、そのままこの証明タグを」

 試験官の元まで歩み寄り、小さな箱を手渡される。国の紋章が彫られた小さな金属製の箱。その箱を開けると、艶のある真紅の綺麗な生地の台座の上に乗った、小さな四角い金属プレート。

『国家魔石精製師、ルーサ』

 そう彫られていた。以前ダラスさんに見せてもらった証明タグと同じ。金属プレートの表には名が彫られ、裏には国の紋章となにやら違う模様も描かれていた。

「裏は国の紋章と魔導省の紋章だな」

 魔導省の紋は魔法陣らしき模様の上に杖が二杖交差し描かれていた。

 プレートは首から下げられるようにペンダントの形となっている。持ち上げるとチャリッとチェーンの音がした。

「これからそのプレートがこの国、アシェルーダの魔石精製師だと証明してくれる。決して失くさないように。失くして再発行となると、手続きがややこしいからな。おススメしない」

 そう言いながら苦笑する試験官。頷いて見せ、そして首にとプレートを掛ける。

「ハハ、似合っているぞ。おめでとう」

「はい! ありがとうございます!!」

 小さな金属プレートだが、首に掛けたと同時についに国家魔石精製師となったのだという実感、そして責任を感じた。

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