110 / 247
第3章《試験》編
第107話 特殊魔石提出
しおりを挟む
翌朝、起きてからはリラーナと共にレインさんの元へと買い物へ出かけたり、ウィスさんやロンさんに今後の話を伝えに行ったり、としていると、皆驚いた顔をしたが、それでも私たちの成長を喜んでくれ応援してくれた。まるで皆が家族のような温かさ。それが嬉しかった。
昼食をリラーナと共に食べた後、リラーナとは別れ、私は一人城へと向かった。
魔石の提出のためだ。
ルギニアスが見付かるたびに、皆が興味津々で聞いてくるため、城へ向かうときは鞄のなかに入っていてもらうことにした。毎回説明するのが大変なのよね……ごめん、ルギニアス。
若干ふてくされてはいたが、毎回注目を浴びるのが自分でも嫌だったのか、大人しく鞄のなかへと隠れてくれた。
門兵に国家魔石精製師試験の魔石を提出しに来たと伝え、受験票を見せるとすんなりと通してもらえた。
会場はもう覚えている。前回と違いすんなり向かうことが出来た。
試験会場には何人かの提出に来た人たちと会うことが出来たが、ライとリース、メルとアランの姿はなかった。
会場には以前試験官をしていた人だろうか、ローブを着た人が一番前に立っており、こちらに気付くと視線を向けた。
「受験生だね? ここに受験番号と名前の書かれた箱がある。自分の番号の箱に入れて提出しなさい」
「はい」
言われるがまま受験番号を探す。
『受験番号5 受験者名 ルーサ』
あった。その箱に持って来た魔石を鞄のなかから取り出し入れる。ドラゴンの魔石はかなりの大きさのため、それだけでも箱いっぱいになりそうなほどだった。
「なんだこの魔石! スゲーな!」
背後から他の受験者に驚きの声を投げかけられた。その場にいた他の受験者数名と試験官もわらわらと集まってくる。
皆が口々に「なんだこれは」といった、驚愕の目を向けていた。自慢出来るほどメンタルが強くもなく、居た堪れない気分になり、慌てて試験官に提出する。
「お願いします!」
「あ、あぁ」
試験官は目を見開いたまま箱を受け取り、明日の予定が書かれた紙を手渡した。それを受け取りそそくさと会場を後にする。
結局ライたちには会えなかったわね。まあ提出するだけだものね。時間が合わないと会えないか。会場を出た後、きょろきょろと周りを見回してみても皆の姿はなかった。
店へ戻るまでの道中、もらった用紙を確認する。
『〇月〇日〇時から合否発表。合格者は発表後、証明タグ発行を行うためその場に待機。注、合格後すぐに店を持つ者は店名、住所が登録に必要となる』
明日昼前に合否発表か……。それにしても店の登録……すぐに店を持つ人もいるのか、凄いわね。まあでも王都に店を持つならともかく、地方から来ている人からしたら、登録のためだけに何度も王都に来るのは手間だものね。メルとアランも今回の試験に王都へやって来るだけでも大変だと言っていた。
そういう意味でも王都で修行させてもらえた私は本当に運が良かったんだろうな。お父様のおかげか……。
旅に出るようになったらお父様とお母様の行方ももっと情報が集まるかしら……。屋敷にいた皆も探せたら良いのにな……。
そんなことをぼんやり考えながら店へと戻り、店番をしつつ何年もお世話になった店の掃除や魔石磨きを行った。
店に並ぶダラスさんの魔石、幼い頃からずっとこの魔石を眺めるのが好きだった。これをまさか自分で精製出来るようになるなんて、あのときは思ってもいなかった。
柔らかい布で優しく磨いてやると、魔石はさらに輝いて見えた。店のランプに照らされキラキラと煌めく魔石たち。
今はもうただ純粋に『綺麗だ』と思うだけではなくなった。子供のころのようにただウキウキと綺麗なものを眺めているだけではなくなったの。
それが寂しくもあるけれど、嬉しくもある。私はそれだけ成長したということだから。
魔石の内部は魔力が揺らぐ。大きさも形も様々。綺麗な形となる精製魔石に、歪な形もある天然魔石。魔力量によって大きさも変わる特殊魔石。それぞれ強さも大きく違う。石それぞれに個性がある。
そして……特殊魔石たちは魔獣や魔蟲の命と同じ。命をいただいているのだということを忘れてはいけないと思っている。私たち魔石精製師は討伐じゃない、魔石のために命を奪う。それだけ重い仕事だと思う。
それを心に止めて、私は国家魔石精製師になる。
そして翌日、昼前、場所は城、魔導師団演習場近くの一室。
合否発表だ。
昼食をリラーナと共に食べた後、リラーナとは別れ、私は一人城へと向かった。
魔石の提出のためだ。
ルギニアスが見付かるたびに、皆が興味津々で聞いてくるため、城へ向かうときは鞄のなかに入っていてもらうことにした。毎回説明するのが大変なのよね……ごめん、ルギニアス。
若干ふてくされてはいたが、毎回注目を浴びるのが自分でも嫌だったのか、大人しく鞄のなかへと隠れてくれた。
門兵に国家魔石精製師試験の魔石を提出しに来たと伝え、受験票を見せるとすんなりと通してもらえた。
会場はもう覚えている。前回と違いすんなり向かうことが出来た。
試験会場には何人かの提出に来た人たちと会うことが出来たが、ライとリース、メルとアランの姿はなかった。
会場には以前試験官をしていた人だろうか、ローブを着た人が一番前に立っており、こちらに気付くと視線を向けた。
「受験生だね? ここに受験番号と名前の書かれた箱がある。自分の番号の箱に入れて提出しなさい」
「はい」
言われるがまま受験番号を探す。
『受験番号5 受験者名 ルーサ』
あった。その箱に持って来た魔石を鞄のなかから取り出し入れる。ドラゴンの魔石はかなりの大きさのため、それだけでも箱いっぱいになりそうなほどだった。
「なんだこの魔石! スゲーな!」
背後から他の受験者に驚きの声を投げかけられた。その場にいた他の受験者数名と試験官もわらわらと集まってくる。
皆が口々に「なんだこれは」といった、驚愕の目を向けていた。自慢出来るほどメンタルが強くもなく、居た堪れない気分になり、慌てて試験官に提出する。
「お願いします!」
「あ、あぁ」
試験官は目を見開いたまま箱を受け取り、明日の予定が書かれた紙を手渡した。それを受け取りそそくさと会場を後にする。
結局ライたちには会えなかったわね。まあ提出するだけだものね。時間が合わないと会えないか。会場を出た後、きょろきょろと周りを見回してみても皆の姿はなかった。
店へ戻るまでの道中、もらった用紙を確認する。
『〇月〇日〇時から合否発表。合格者は発表後、証明タグ発行を行うためその場に待機。注、合格後すぐに店を持つ者は店名、住所が登録に必要となる』
明日昼前に合否発表か……。それにしても店の登録……すぐに店を持つ人もいるのか、凄いわね。まあでも王都に店を持つならともかく、地方から来ている人からしたら、登録のためだけに何度も王都に来るのは手間だものね。メルとアランも今回の試験に王都へやって来るだけでも大変だと言っていた。
そういう意味でも王都で修行させてもらえた私は本当に運が良かったんだろうな。お父様のおかげか……。
旅に出るようになったらお父様とお母様の行方ももっと情報が集まるかしら……。屋敷にいた皆も探せたら良いのにな……。
そんなことをぼんやり考えながら店へと戻り、店番をしつつ何年もお世話になった店の掃除や魔石磨きを行った。
店に並ぶダラスさんの魔石、幼い頃からずっとこの魔石を眺めるのが好きだった。これをまさか自分で精製出来るようになるなんて、あのときは思ってもいなかった。
柔らかい布で優しく磨いてやると、魔石はさらに輝いて見えた。店のランプに照らされキラキラと煌めく魔石たち。
今はもうただ純粋に『綺麗だ』と思うだけではなくなった。子供のころのようにただウキウキと綺麗なものを眺めているだけではなくなったの。
それが寂しくもあるけれど、嬉しくもある。私はそれだけ成長したということだから。
魔石の内部は魔力が揺らぐ。大きさも形も様々。綺麗な形となる精製魔石に、歪な形もある天然魔石。魔力量によって大きさも変わる特殊魔石。それぞれ強さも大きく違う。石それぞれに個性がある。
そして……特殊魔石たちは魔獣や魔蟲の命と同じ。命をいただいているのだということを忘れてはいけないと思っている。私たち魔石精製師は討伐じゃない、魔石のために命を奪う。それだけ重い仕事だと思う。
それを心に止めて、私は国家魔石精製師になる。
そして翌日、昼前、場所は城、魔導師団演習場近くの一室。
合否発表だ。
1
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる