92 / 247
第3章《試験》編
第89話 魔石一個目!
しおりを挟む
しばらく様子を見ていると、風上にイーザンがいた。
ディノは少し離れた場所から物音を立てる。その音に反応したフォルーが唸り声を上げてそちらに向いた。
その瞬間イーザンがフォルーの傍に何かを投げ込んだ。一瞬見えたそれには見覚えがあった。ゲイナーさんとシスバさんがウルーを攻撃するときに使っていた煙玉だ!
煙玉は地面に落ちた瞬間、白い煙を噴き出し、辺り一面白い霧に覆われた。
ウルーと同様に鼻を麻痺させるのだろう。フォルーは煙玉の臭いに反応したのか、頭を大きく振ったと思うと、空高く飛び上がった。巨大な身体とは思えないほど軽やかに跳躍したフォルーが煙から飛び出した瞬間、雷撃が走った。
雷は空を舞い、フォルーに突き刺さる。そう思った瞬間、身体を翻しそれを避けた。空中で軽やかに身を捩ったフォルーは煙のない場所へと着地する。
それを待ってましたとばかりに、ディノが飛び込んだ。横一文字に振り抜いた剣はフォルーの首を掠め、切り取られた毛がはらりと落ちる。
『ウガァァァァァアアアッ!!』
標的を見付けたフォルーは大きく口を開け、鋭い牙をディノに向けた。物凄い速度でディノに迫る。ディノを噛み殺そうと覆いかぶさったかと思うと、ディノは剣を突き上げた。しかしそれをすぐさま躱す。
フォルーは躱したと同時に、己の尻尾を鞭のようにしならせたかと思うと、ディノの脇腹を激しく打ち付けた。
「ぐはっ!」
「ディノ!!」
ディノは思い切り吹き飛ばされるが、なんとか受け身を取り、すぐさま再びフォルーに切りかかるために地面を蹴った。しかしその瞬間フォルーの背後から業火が襲う。
背後から現れた炎に包まれたフォルーは咆哮を上げた。大地がビリビリと震える。
フォルーの咆哮と共に自身を包み込んでいた炎が一瞬で消し飛んだ。
「おいおい、あの炎で無傷かよ」
ディノは呆れたように呟いた。
「いや、少しは効いているようだ」
イーザンがディノの言葉に反応するように言った。
フォルーは炎を退けたが、プスプスと身体からは煙が上がり、荒い息をしている。無傷とはいかなかったのか、疲労なのか、呼吸が乱れだした。
ディノは休む間を与えないよう、一気に攻め入る。駆け寄ったディノにフォルーは大きく口を開いたかと思うと炎を吐き出した。
それを跳躍し躱したディノはフォルーの背に手を突き、側転で背後に回り込む。脚を斬り付け、血が噴き出す。しかし、鞭のような尻尾が再びディノを薙ぎ払う。
「二度も食らうか!」
ディノは尻尾を剣で受け止めると、力比べのように耐えた。そして大きく薙ぎ払い、その勢いのままくるりと身体を翻し、再び脚を斬り付ける。
大きく悲鳴のような叫び声を上げたフォルーに、イーザンが脚の傷に合わせて風の刃を走らせた。鋭い刃は元々あった傷をさらに抉る。
『ウガァァアアアアッ!!!!』
動きの鈍くなったフォルーに向かい、ディノは胴体に剣を突き立てた。そこへさらにイーザンは炎を纏わせた魔導剣を振りかぶり、首に突き立て、そこから一気に魔導剣から炎を放出させた。
フォルー内部に放出された炎は全身を駆け巡り、内部を燃やす。
「「ルーサ!!」」
フォルーが動きを止めた瞬間、私は木陰から飛び出し構えた。両腕を突き出し手を構える。そして集中し結晶化の魔力を手に込める。それに反応したフォルーの血は空中を舞いゆらゆらと川が流れるように集まってくる。
掌に集まってくるフォルーの血は次第に小さく集まっていき、私の掌の上でコロンと塊となって落ち着いた。
「ふぅ、やれやれ、やっぱりフォルーはそれなりに強敵だな」
ディノが剣を大きく振り払い鞘に収め、こちらに戻ってくる。イーザンも同様に魔導剣を収めそれに続く。
「ありがとう、二人とも大丈夫?」
魔石を鞄に片付けながら二人の姿を見る。特に怪我などはなさそうだ。
「特に問題はない」
イーザンは涼しい顔。
「ディノは吹っ飛ばされてたけど大丈夫?」
「ハハ、あれくらいなんともない」
ディノの服は少し汚れてはいたものの、問題なさそうで安心した。
「とりあえず魔石一個目確保だな!」
「うん!」
ニッと笑うディノと、フッと笑うイーザン。そして私も満面の笑み。ルギニアスはやれやれといった溜め息を人の頭の上で吐いていた。
「さーて、他の魔獣が寄って来る前にアシェリアンの泉へ向かうぞ」
さすがに集団で襲って来られたらキツイものね。ディノの言葉と共に、早々に再び移動を開始した。
ディノは少し離れた場所から物音を立てる。その音に反応したフォルーが唸り声を上げてそちらに向いた。
その瞬間イーザンがフォルーの傍に何かを投げ込んだ。一瞬見えたそれには見覚えがあった。ゲイナーさんとシスバさんがウルーを攻撃するときに使っていた煙玉だ!
煙玉は地面に落ちた瞬間、白い煙を噴き出し、辺り一面白い霧に覆われた。
ウルーと同様に鼻を麻痺させるのだろう。フォルーは煙玉の臭いに反応したのか、頭を大きく振ったと思うと、空高く飛び上がった。巨大な身体とは思えないほど軽やかに跳躍したフォルーが煙から飛び出した瞬間、雷撃が走った。
雷は空を舞い、フォルーに突き刺さる。そう思った瞬間、身体を翻しそれを避けた。空中で軽やかに身を捩ったフォルーは煙のない場所へと着地する。
それを待ってましたとばかりに、ディノが飛び込んだ。横一文字に振り抜いた剣はフォルーの首を掠め、切り取られた毛がはらりと落ちる。
『ウガァァァァァアアアッ!!』
標的を見付けたフォルーは大きく口を開け、鋭い牙をディノに向けた。物凄い速度でディノに迫る。ディノを噛み殺そうと覆いかぶさったかと思うと、ディノは剣を突き上げた。しかしそれをすぐさま躱す。
フォルーは躱したと同時に、己の尻尾を鞭のようにしならせたかと思うと、ディノの脇腹を激しく打ち付けた。
「ぐはっ!」
「ディノ!!」
ディノは思い切り吹き飛ばされるが、なんとか受け身を取り、すぐさま再びフォルーに切りかかるために地面を蹴った。しかしその瞬間フォルーの背後から業火が襲う。
背後から現れた炎に包まれたフォルーは咆哮を上げた。大地がビリビリと震える。
フォルーの咆哮と共に自身を包み込んでいた炎が一瞬で消し飛んだ。
「おいおい、あの炎で無傷かよ」
ディノは呆れたように呟いた。
「いや、少しは効いているようだ」
イーザンがディノの言葉に反応するように言った。
フォルーは炎を退けたが、プスプスと身体からは煙が上がり、荒い息をしている。無傷とはいかなかったのか、疲労なのか、呼吸が乱れだした。
ディノは休む間を与えないよう、一気に攻め入る。駆け寄ったディノにフォルーは大きく口を開いたかと思うと炎を吐き出した。
それを跳躍し躱したディノはフォルーの背に手を突き、側転で背後に回り込む。脚を斬り付け、血が噴き出す。しかし、鞭のような尻尾が再びディノを薙ぎ払う。
「二度も食らうか!」
ディノは尻尾を剣で受け止めると、力比べのように耐えた。そして大きく薙ぎ払い、その勢いのままくるりと身体を翻し、再び脚を斬り付ける。
大きく悲鳴のような叫び声を上げたフォルーに、イーザンが脚の傷に合わせて風の刃を走らせた。鋭い刃は元々あった傷をさらに抉る。
『ウガァァアアアアッ!!!!』
動きの鈍くなったフォルーに向かい、ディノは胴体に剣を突き立てた。そこへさらにイーザンは炎を纏わせた魔導剣を振りかぶり、首に突き立て、そこから一気に魔導剣から炎を放出させた。
フォルー内部に放出された炎は全身を駆け巡り、内部を燃やす。
「「ルーサ!!」」
フォルーが動きを止めた瞬間、私は木陰から飛び出し構えた。両腕を突き出し手を構える。そして集中し結晶化の魔力を手に込める。それに反応したフォルーの血は空中を舞いゆらゆらと川が流れるように集まってくる。
掌に集まってくるフォルーの血は次第に小さく集まっていき、私の掌の上でコロンと塊となって落ち着いた。
「ふぅ、やれやれ、やっぱりフォルーはそれなりに強敵だな」
ディノが剣を大きく振り払い鞘に収め、こちらに戻ってくる。イーザンも同様に魔導剣を収めそれに続く。
「ありがとう、二人とも大丈夫?」
魔石を鞄に片付けながら二人の姿を見る。特に怪我などはなさそうだ。
「特に問題はない」
イーザンは涼しい顔。
「ディノは吹っ飛ばされてたけど大丈夫?」
「ハハ、あれくらいなんともない」
ディノの服は少し汚れてはいたものの、問題なさそうで安心した。
「とりあえず魔石一個目確保だな!」
「うん!」
ニッと笑うディノと、フッと笑うイーザン。そして私も満面の笑み。ルギニアスはやれやれといった溜め息を人の頭の上で吐いていた。
「さーて、他の魔獣が寄って来る前にアシェリアンの泉へ向かうぞ」
さすがに集団で襲って来られたらキツイものね。ディノの言葉と共に、早々に再び移動を開始した。
0
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる