88 / 247
第3章《試験》編
第85話 採取場所
しおりを挟む
「アッハッハッ!! ガルヴィオに行きたいって!」
全員に笑われた。いや、ちょっと、そんな笑う!?
「えぇ、なんで!? ガルヴィオに行ってみたいと思わない!? そんな凄いものを造る国を見てみたくない!?」
「いやぁ、そりゃ見てみたいけど、無理だろ」
「うん。そんな簡単に入国出来ないんじゃない?」
「え、そ、そうなの?」
ガーン。入国困難なの!?
「ガルヴィオに行ったことがある人も数人聞いたことはあるけれど、どの人も皆、国の偉い人とかだったような。所謂外交だよね」
「えぇぇ、そうなんだ……」
そんな簡単には行けないのか……。ガックリ……。
「ま、まあなにかしら方法はあるかもしれないし……というか、それよりも試験だよ!」
思い出したかのようにライが叫んだ。皆が「あっ」という顔になる。
「そうよ! 明日から特殊魔石の採取に行かないといけないのに!」
「エルシュとガルヴィオの話が興味深過ぎてすっかり忘れるところだったわね」
リースとメルも苦笑する。
「アハハ、ごめんごめん、僕が街の話をし出したから」
「いやいや、面白い話が聞けて良かったよ」
皆がうんうん、と頷く。エルシュとガルヴィオには行きたいけど、今は目先の試験の心配をしないとね。
「皆はどこに採取に行くの?」
「俺とリースはフェスラーデの森だな」
「凄いな、いきなりフェスラーデの森に行くのか」
アランが驚いた顔をした。フェスラーデの森はとても広い森で魔獣や魔蟲が多くいる。しかしそこの魔獣はとても強く、私が独り立ちのときにダラスさんからは厳しいかもしれないと説明された場所だ。
「俺とリースは同じ師匠だからな。一応共闘しようかと思っている」
「なるほど」
共闘することに別段問題はない。結果的に魔石を提出さえ出来たら良いのだ。採取するときにどちらのものか、といった問題さえなければ、共闘するほうが有利に決まっている。
しかし、強い魔獣から強い魔石を採取した、となったときに、どちらが手にするかで揉めることもあるようで、だからあまり共闘する人はいないと聞いたことがある。
その点、ライとリースは同じ師匠の元にいる弟子同士。ライバルでもあるのだろうが、気心知れた仲なのだろう。
「良いなぁ、共闘かぁ。私は一人だし、砂漠に行こうかと思ってる」
メルがそんな二人を羨ましそうに眺めながら言った。
「僕もとりあえずは砂漠かな。そこで様子を見て、フェスラーデの森に移るかもしれないけど」
ダラスさんの話では、特殊魔石での試験はより強力な魔石が求められると言っていた。魔石の品質によって力量が決められてしまう、と。だから安全を取って、簡単なものを採取したところで合格にならないかもしれない。皆、より強いものを求めて採取しようとする。それが危険だともダラスさんは言っていた。
アランのとりあえず砂漠で様子を見る、というのは無難なのだろう。そこで強い魔石を手に入れられたらそれで良し。それで駄目ならばフェスラーデの森へ。
「ルーサはどうするの?」
メルが聞いた。
「私は……」
無難に行けば砂漠なのかもしれないけれど、フェスラーデの森にも修行中に何度か行った。ディノとイーザンとの連携も取れるようになってきた。だから……
「私はフェスラーデの森に行くよ」
「えぇ、ルーサ、フェスラーデの森に行くの!? こ、怖くない!?」
「うーん、怖くないと言ったら嘘になるけど、もう何度も一緒に採取に行ってくれている護衛の人たちもいるし、なんとかなるんじゃないかと思う」
「そうなんだ……皆、フェスラーデの森に行くのね……あぁぁあ! 私だけ!!」
メルはテーブルに突っ伏した。
「王都で護衛を雇うのも初めてだし……色々不安……」
「なんなら僕と一緒に行く?」
見兼ねてかアランがメルに声を掛けた。
「え、良いの!?」
「ハハ、良いよ。僕も王都の護衛は初めてだからメルと一緒の立場だしね。出来れば協力し合いたい」
「ありがとう!!」
メルが涙目になりながらアランに握手を求めていた。良かった、メルが一人にならなくて。私が一緒に行ってあげられたら良かったんだけど……ディノとイーザンにはフェスラーデの森に行くって伝えてある。それに私も強い魔石に挑戦したい。ごめんね、メル。少しばかり後ろめたい気分になってしまった。
『おい、いつもの奴に加えて、なんか数人いるぞ』
ルギニアスの声が聞こえた。周りに聞こえないようにか、小さい声で話しかけてきた。
数人? いつもの奴っていうのはおそらく私をいつもつけていた人よね。魔石感知で周囲を探ると、いつも感じる魔石の気配だけでなく、なにやら似たような、しかし一般的ではない魔石の気配を二つ感じる。どうやら同じ場所からこちらの様子を伺っているようだ。
なんなのかしら……なぜ今日に限って三つの気配……。なにやら不安を感じたが、いつものごとく様子を伺っているだけのようで、こちらに近付いてくる気配はない。しかも皆はなにも気付いていない。仕方がないのでそのままやり過ごしたのだった。
全員に笑われた。いや、ちょっと、そんな笑う!?
「えぇ、なんで!? ガルヴィオに行ってみたいと思わない!? そんな凄いものを造る国を見てみたくない!?」
「いやぁ、そりゃ見てみたいけど、無理だろ」
「うん。そんな簡単に入国出来ないんじゃない?」
「え、そ、そうなの?」
ガーン。入国困難なの!?
「ガルヴィオに行ったことがある人も数人聞いたことはあるけれど、どの人も皆、国の偉い人とかだったような。所謂外交だよね」
「えぇぇ、そうなんだ……」
そんな簡単には行けないのか……。ガックリ……。
「ま、まあなにかしら方法はあるかもしれないし……というか、それよりも試験だよ!」
思い出したかのようにライが叫んだ。皆が「あっ」という顔になる。
「そうよ! 明日から特殊魔石の採取に行かないといけないのに!」
「エルシュとガルヴィオの話が興味深過ぎてすっかり忘れるところだったわね」
リースとメルも苦笑する。
「アハハ、ごめんごめん、僕が街の話をし出したから」
「いやいや、面白い話が聞けて良かったよ」
皆がうんうん、と頷く。エルシュとガルヴィオには行きたいけど、今は目先の試験の心配をしないとね。
「皆はどこに採取に行くの?」
「俺とリースはフェスラーデの森だな」
「凄いな、いきなりフェスラーデの森に行くのか」
アランが驚いた顔をした。フェスラーデの森はとても広い森で魔獣や魔蟲が多くいる。しかしそこの魔獣はとても強く、私が独り立ちのときにダラスさんからは厳しいかもしれないと説明された場所だ。
「俺とリースは同じ師匠だからな。一応共闘しようかと思っている」
「なるほど」
共闘することに別段問題はない。結果的に魔石を提出さえ出来たら良いのだ。採取するときにどちらのものか、といった問題さえなければ、共闘するほうが有利に決まっている。
しかし、強い魔獣から強い魔石を採取した、となったときに、どちらが手にするかで揉めることもあるようで、だからあまり共闘する人はいないと聞いたことがある。
その点、ライとリースは同じ師匠の元にいる弟子同士。ライバルでもあるのだろうが、気心知れた仲なのだろう。
「良いなぁ、共闘かぁ。私は一人だし、砂漠に行こうかと思ってる」
メルがそんな二人を羨ましそうに眺めながら言った。
「僕もとりあえずは砂漠かな。そこで様子を見て、フェスラーデの森に移るかもしれないけど」
ダラスさんの話では、特殊魔石での試験はより強力な魔石が求められると言っていた。魔石の品質によって力量が決められてしまう、と。だから安全を取って、簡単なものを採取したところで合格にならないかもしれない。皆、より強いものを求めて採取しようとする。それが危険だともダラスさんは言っていた。
アランのとりあえず砂漠で様子を見る、というのは無難なのだろう。そこで強い魔石を手に入れられたらそれで良し。それで駄目ならばフェスラーデの森へ。
「ルーサはどうするの?」
メルが聞いた。
「私は……」
無難に行けば砂漠なのかもしれないけれど、フェスラーデの森にも修行中に何度か行った。ディノとイーザンとの連携も取れるようになってきた。だから……
「私はフェスラーデの森に行くよ」
「えぇ、ルーサ、フェスラーデの森に行くの!? こ、怖くない!?」
「うーん、怖くないと言ったら嘘になるけど、もう何度も一緒に採取に行ってくれている護衛の人たちもいるし、なんとかなるんじゃないかと思う」
「そうなんだ……皆、フェスラーデの森に行くのね……あぁぁあ! 私だけ!!」
メルはテーブルに突っ伏した。
「王都で護衛を雇うのも初めてだし……色々不安……」
「なんなら僕と一緒に行く?」
見兼ねてかアランがメルに声を掛けた。
「え、良いの!?」
「ハハ、良いよ。僕も王都の護衛は初めてだからメルと一緒の立場だしね。出来れば協力し合いたい」
「ありがとう!!」
メルが涙目になりながらアランに握手を求めていた。良かった、メルが一人にならなくて。私が一緒に行ってあげられたら良かったんだけど……ディノとイーザンにはフェスラーデの森に行くって伝えてある。それに私も強い魔石に挑戦したい。ごめんね、メル。少しばかり後ろめたい気分になってしまった。
『おい、いつもの奴に加えて、なんか数人いるぞ』
ルギニアスの声が聞こえた。周りに聞こえないようにか、小さい声で話しかけてきた。
数人? いつもの奴っていうのはおそらく私をいつもつけていた人よね。魔石感知で周囲を探ると、いつも感じる魔石の気配だけでなく、なにやら似たような、しかし一般的ではない魔石の気配を二つ感じる。どうやら同じ場所からこちらの様子を伺っているようだ。
なんなのかしら……なぜ今日に限って三つの気配……。なにやら不安を感じたが、いつものごとく様子を伺っているだけのようで、こちらに近付いてくる気配はない。しかも皆はなにも気付いていない。仕方がないのでそのままやり過ごしたのだった。
0
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる