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第3章《試験》編
第83話 試験一日目終了!
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出来上がったばかりの赤い魔石を受験番号の書かれた箱に入れる。そして切り替えるように大きく深呼吸をし、心を落ち着ける。
次は魔力練り上げの精製魔石よ。大きく深呼吸。そして目を瞑り集中していく。
身体の中心部分に意識を集中させる。チリチリと熱いものを感じ出す。魔素の塊。このまま冷静にこの熱を維持していく。
もう一度深呼吸をし、結晶化の魔力と付与魔力対応の魔力の練り上げ。付与魔力対応の魔力の組式を疎かにしないよう慎重に、そして結晶化の魔力と合わせていく。
体内で維持されている魔素に向かって魔力を組み合わせていく。糸を編み込んでいくように、ゆっくり丁寧に。一本ずつ編み込むかのように、魔力の糸を魔素に馴染ませていく。魔力の糸がゆるゆると魔素に組み込まれていくのを感じる。
魔素と魔力はお互いを受け入れるかの如く、糸が絡み合っていき、完全に一つになった魔素と魔力。
それを少しずつ掌から外へと放出し、練り上げていく。両手を翳した中心部分にチリチリと魔力の渦が少しずつ渦巻いて行く。小さかった渦は少しずつ少しずつ大きくなっていき、激しい魔力の渦となり、光と共に魔力の色を放ち出す。今度は青い魔力。
魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げ、それは魔石となった。
コロンと掌に乗った小さな魔石。中心部分はいまだ青い魔力が渦巻いている。
「よし、こっちも完璧」
ふぅ、と息を吐き、先程の赤い魔石の隣に出来上がった青い魔石を入れた。コロンと二つ並んだ赤い魔石と青い魔石。二つとも綺麗に輝いている。
十歳のときから修行し、何度も失敗し、何年も続けて来た精製魔石。今はもうすっかり慣れた。油断していると歪な魔石が出来上がることもあるが、さすがに今日はしっかり集中して精製した。だから完璧! のはず!
周りを見渡すと、同様に二つの魔石の精製を終了している人が多くいた。少し苦労している様子の人もいるけれど。
目の前のメルもその一人。少し苦労しているのか、まだ魔力を送っているようだ。私もダラスさんに弟子入り出来ていなければ、こんなに早く精製出来るほどには上達していなかったかもしれない。やはり私はダラスさんに弟子入りさせてもらえたことが、とても運の良いことだったのね。
もう少しで終了になりそうな雰囲気で試験官が時計を気にし出した頃、メルもどうやら精製し終えたらしく、大きな溜め息を吐いていた。
「終了だ!」
試験官が大きな声を張り上げた。
「本日の試験はこれで終了だ。各自、魔石の入った箱は机に置いたまま、器材は入っていた箱に片付ける。終わった者から帰っていいぞ。特殊魔石はこの七日間の間に自分のペースに合った採取を行うように。それを七日目に提出。この七日目に提出をしに来ない場合は不合格となるから気を付けろ」
試験官の話を聞き終え、皆が片付けを始める。席の近い者同士がお互い「どうだった?」と声を掛け合っている。
「ルーサもどうだった!?」
メルは片付けながら、後ろに振り向くと笑顔で聞いて来た。
「うん、多分大丈夫じゃないかな」
「えー、自信あるんだね、良いなぁ。私は筆記試験はともかく、精製魔石がやっぱり苦手だった……」
「精製魔石、苦手なの?」
「うん。師匠がいる訳じゃないからさ、いっぱい調べたりはしたけど、精製の仕方が合ってるのか分からなくて」
メルはそう言いながら少し複雑そうな顔で笑った。そうか、師匠がいると間違ったことは訂正してもらえるし、最初からやり方を教えてもらえる。そこから出来るようになるには自分の努力次第だけれど、やはり教えてくれる人がいるのといないのとじゃ、スタートが違う。しかもメルは私よりも年下だ。
私が申し訳なさそうな顔をしていたからか、メルは笑った。
「アハハ、なんでルーサがそんな顔してんのさ。ルーサに師匠がいることと、私に師匠がいないことは関係ないよ。師匠に出逢えたことはその人の運の良さなんだから、ルーサは胸を張っていれば良いの!」
そう言って笑って見せるメルは強いな。かっこいい。私だったら卑屈になっていたかもしれない。
「ね、この後、お昼一緒に食べない?」
試験は朝からだったため、今はお昼を少し過ぎたくらいの時間。緊張から解放されると一気にお腹が空いてきた。
「うん! 行こう!」
「やった!」
「なあ、俺たちも一緒して良いか?」
私たちの会話を聞いていたのか、まだ部屋に残っていた数人が声を掛けてきた。
「お昼食べながら、特殊魔石のこと話したいね、って言っててさー」
男の子二人と、女の子が一人、明日からの特殊魔石をどうするのか意見交換したいと話してきたのだった。
*****
※更新のお知らせ
いつもお読みいただいている皆様ありがとうございます!
ストック切れのため、何日かお休みします。
お読みいただいている皆様には申し訳ありませんが、ストックが出来次第すぐに再開しますので、しばらくお待ちいただけたらと思います。
次は魔力練り上げの精製魔石よ。大きく深呼吸。そして目を瞑り集中していく。
身体の中心部分に意識を集中させる。チリチリと熱いものを感じ出す。魔素の塊。このまま冷静にこの熱を維持していく。
もう一度深呼吸をし、結晶化の魔力と付与魔力対応の魔力の練り上げ。付与魔力対応の魔力の組式を疎かにしないよう慎重に、そして結晶化の魔力と合わせていく。
体内で維持されている魔素に向かって魔力を組み合わせていく。糸を編み込んでいくように、ゆっくり丁寧に。一本ずつ編み込むかのように、魔力の糸を魔素に馴染ませていく。魔力の糸がゆるゆると魔素に組み込まれていくのを感じる。
魔素と魔力はお互いを受け入れるかの如く、糸が絡み合っていき、完全に一つになった魔素と魔力。
それを少しずつ掌から外へと放出し、練り上げていく。両手を翳した中心部分にチリチリと魔力の渦が少しずつ渦巻いて行く。小さかった渦は少しずつ少しずつ大きくなっていき、激しい魔力の渦となり、光と共に魔力の色を放ち出す。今度は青い魔力。
魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げ、それは魔石となった。
コロンと掌に乗った小さな魔石。中心部分はいまだ青い魔力が渦巻いている。
「よし、こっちも完璧」
ふぅ、と息を吐き、先程の赤い魔石の隣に出来上がった青い魔石を入れた。コロンと二つ並んだ赤い魔石と青い魔石。二つとも綺麗に輝いている。
十歳のときから修行し、何度も失敗し、何年も続けて来た精製魔石。今はもうすっかり慣れた。油断していると歪な魔石が出来上がることもあるが、さすがに今日はしっかり集中して精製した。だから完璧! のはず!
周りを見渡すと、同様に二つの魔石の精製を終了している人が多くいた。少し苦労している様子の人もいるけれど。
目の前のメルもその一人。少し苦労しているのか、まだ魔力を送っているようだ。私もダラスさんに弟子入り出来ていなければ、こんなに早く精製出来るほどには上達していなかったかもしれない。やはり私はダラスさんに弟子入りさせてもらえたことが、とても運の良いことだったのね。
もう少しで終了になりそうな雰囲気で試験官が時計を気にし出した頃、メルもどうやら精製し終えたらしく、大きな溜め息を吐いていた。
「終了だ!」
試験官が大きな声を張り上げた。
「本日の試験はこれで終了だ。各自、魔石の入った箱は机に置いたまま、器材は入っていた箱に片付ける。終わった者から帰っていいぞ。特殊魔石はこの七日間の間に自分のペースに合った採取を行うように。それを七日目に提出。この七日目に提出をしに来ない場合は不合格となるから気を付けろ」
試験官の話を聞き終え、皆が片付けを始める。席の近い者同士がお互い「どうだった?」と声を掛け合っている。
「ルーサもどうだった!?」
メルは片付けながら、後ろに振り向くと笑顔で聞いて来た。
「うん、多分大丈夫じゃないかな」
「えー、自信あるんだね、良いなぁ。私は筆記試験はともかく、精製魔石がやっぱり苦手だった……」
「精製魔石、苦手なの?」
「うん。師匠がいる訳じゃないからさ、いっぱい調べたりはしたけど、精製の仕方が合ってるのか分からなくて」
メルはそう言いながら少し複雑そうな顔で笑った。そうか、師匠がいると間違ったことは訂正してもらえるし、最初からやり方を教えてもらえる。そこから出来るようになるには自分の努力次第だけれど、やはり教えてくれる人がいるのといないのとじゃ、スタートが違う。しかもメルは私よりも年下だ。
私が申し訳なさそうな顔をしていたからか、メルは笑った。
「アハハ、なんでルーサがそんな顔してんのさ。ルーサに師匠がいることと、私に師匠がいないことは関係ないよ。師匠に出逢えたことはその人の運の良さなんだから、ルーサは胸を張っていれば良いの!」
そう言って笑って見せるメルは強いな。かっこいい。私だったら卑屈になっていたかもしれない。
「ね、この後、お昼一緒に食べない?」
試験は朝からだったため、今はお昼を少し過ぎたくらいの時間。緊張から解放されると一気にお腹が空いてきた。
「うん! 行こう!」
「やった!」
「なあ、俺たちも一緒して良いか?」
私たちの会話を聞いていたのか、まだ部屋に残っていた数人が声を掛けてきた。
「お昼食べながら、特殊魔石のこと話したいね、って言っててさー」
男の子二人と、女の子が一人、明日からの特殊魔石をどうするのか意見交換したいと話してきたのだった。
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