【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~

樹結理(きゆり)

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第3章《試験》編

第77話 試験内容

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 その後も幾度となくディノとイーザンに護衛をお願いし、魔獣や魔蟲の魔石採取に出かけた。次第に私自身も連携が取れるようになり、手際よく採取出来るようになってくると、一日三個は採取出来るようにもなってきた。

 魔石屋での仕事も順調にこなし、リラーナとの魔導具開発にも勤しんでいた。毎日が忙しく、しかし充実した日々だった。
 それと同時に早く国家魔石精製師になって、ディノと旅に出たい気持ちも大きくなった。それはやはり両親の行方を捜すという目的が大きく、世界中の魔石を見てみたい、ともちょっぴりはあったけれど……ちょっぴりね、本当よ、ちょっぴり!

 リラーナにもそのことを伝えた。一緒に店を出そう、という話を忘れた訳ではない、でも店を出す前に世界中を見てみたい、そう正直に伝えた。
 リラーナは最初驚いた顔をしたが、すぐさま私の手をガッと握り締め目を輝かせた。

「私も行きたい!!」
「え?」
「私もルーサと一緒に旅に行きたいわ! だって獣人の国も行くんでしょ!? 獣人って言ったら物づくりがとても得意だと聞くし、絶対凄いものがありそうじゃない! そんなの見ないと駄目でしょ!」

 目をランランと輝かせ訴えるリラーナ。

「フハッ。リラーナ興奮しすぎ!」
「だって、そんな夢みたいなこと興奮するなってほうが無理ってもんよ!」
「アハハハ、だよね! 獣人の国も天空の国も見てみたい!」
「うんうん!」

 二人してガッと手を組んだ。

「あ、でもしばらく父さんには内緒ね」
「え? なんで?」
「絶対反対されるでしょ」
「あー、うーん、そっか……あ、それに師匠を一人にしたら生きていける!?」
「…………無理ね」

 酷い言われようのダラスさんだが、しかし、実際のところダラスさん一人だと家事がままならない気がする……。

「と、とりあえず、父さんに反対されないだけの実力をお互いつけることと、父さんが生きていけるだけの家事を……」

 そこまで口にして、リラーナはハハハと乾いた笑いで遠い目をした。



「試験のことだが、大体の内容を説明しておく」
「はい!」

 修行の合間にダラスさんとの試験対策会議だ。

「試験の内容的には、筆記試験と実技試験とある。
 筆記試験は、
 ・魔石についての基本的知識
 ・精製方法について
 ・魔石の市場価格について
 大きく分けてこの三つが主な内容だ。
 実技試験は、
 ・精製魔石
 ・特殊魔石
 この二つ。精製魔石は試験会場で別室に用意された器材を借りて行う。特殊魔石は試験日から七日間で採取しに行く。七日目に特殊魔石を手に試験会場へと戻るんだ」

「七日間で特殊魔石……ですか」
「あぁ、筆記試験や精製魔石は簡単とは言わないが、今までの積み上げでなんとかなる。しかし問題はこの特殊魔石だな」
「問題?」
「特殊魔石は護衛と共に行くのはもちろんなんだが、より強力なものを求められる。修行中に採取したものよりも強力なものを」
「より強力なもの……」
「その魔石の品質によって、そのときの力量が決定されてしまうからな。皆、かなり無理をして強い魔獣や魔物から魔石を採取しようとする。試験会場へと戻ることが出来ずに不合格になる場合もある」
「え、不合格ですか!?」
「あぁ。より強力なものを求めて挑戦するのは良いが、己の力量を越えすぎると採取に失敗し、大怪我をしたり、もしくは死亡したり、と最終日に戻って来られない奴も何人かいる。そのとき最終日に間に合わなければ、不合格となり、自己管理や日程調整などが出来ない無能という判断をされ、今後も非常に不利になるな」
「…………」

「だから、この試験はほぼ一発勝負だと思ったほうがいい」
「は、はい……」

 い、一発勝負かぁ……不安しかないんだけど。

 ダラスさんはそんな私の不安を見透かしたように、頭にポンと手を置いた。

「無茶をする奴は己の力量が分かってないからそうなるんだ。しっかりと修行し、何度も経験を重ねた奴はそんなヘマはしない。お前は今まで十分やってきただろう?」

 フッと軽く笑ったような柔らかい表情でダラスさんは私の目を真っ直ぐ見詰め言った。
 うん、私は今まで何年も修行を重ねた。特殊魔石の採取も何度も何度も繰り返した。ディノとイーザンの力量も、自分の力量も分かっていると思う。だから無茶をするつもりもないし、かといって簡単なものを採取しようとも思わない。


「お前なら大丈夫だ」


 ダラスさんの一言が心強い。背中を押してくれる。


「はい!」


 きっと私は大丈夫!!


 そうして十七の歳になった頃、試験を受けることとなった。

 試験会場は城! さあ、気合い入れるわよ!

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