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第2章《修行》編
第73話 喧嘩
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「うん! ありがとう!」
両手を前に突き出し意識を集中させる。チチルの身体から流れ出る体液に集中し、両手に結晶化の魔力を込める。それに反応するように、チチルの体液はゆらゆらと動き出した。
黄色い体液は宙を舞い、流れる川のように徐々にこちらへ向かって流れてくる。
「おぉ、凄い……」
「あぁ、これが魔石になるのか……」
ディノもイーザンも唖然としたまま、宙を舞う体液を見詰めている。
流れる体液はこちらに流れまいという意思があるかのように抵抗を感じる。こちらの魔力が吸い取られるような感覚に、いつも通りだという手応えを感じた。
よし。きっと大丈夫。このまま集中!
引っ張られないように魔力を繋ぎ止め、手繰り寄せるようにチチルの体液を操る。手繰り寄せた体液は空を舞い、私の掌へと集まっていく。魔力が混じった体液はキラキラと煌めき、澄んだ色となっていく。そして私の目の前で渦巻き出し、圧縮されていった。
圧縮されていく体液は渦を巻いたまま、小さく丸くなってコロンと私の手の上に収まった。
私の手に乗る黄色い魔石。鮮やかな黄色は美しく輝いていたが、中心部分では濃い色をして歪に蠢く渦が見えた。
それと同時にチチルの身体がさらさらと砂のように崩れ去り、風に煽られ消えて行った。
「おぉ、凄いな!! 滅茶苦茶綺麗だな!」
ディノが興奮しながら駆け寄って来る。イーザンも魔導剣を鞘におさめ、ゆっくりとこちらへと歩いて来る。
「あー、無事に出来て良かったぁ……」
緊張と疲れでその場へとへたり込んでしまう。イーザンがそんな私の顔を覗き込むようにしゃがんだ。
「魔力回復薬はいるか?」
「ありがとう、とりあえずはまだ大丈夫」
「分かった……出来上がった魔石を見せてもらってもいいか?」
イーザンは私の前に膝をついたまま聞いた。頷き、イーザンの前に手を差し出すと、私の掌に乗る魔石をイーザンは手に取った。
イーザンの掌に収まるほどの大きさの魔石。今回はそれほど大きくはない。イーザンはその魔石をじっくり観察するように、太陽へと翳した。
「魔石というものはああやって出来るのだな。面白い」
イーザンがワクワクしている? なんだか目を輝かせていそうに見える。初めて見る表情で、私はイーザンを観察してしまった。それに気付いたのか、ふいっと私を見たイーザンと目が合い、心臓が跳ねた。び、びっくりした……見詰めていたのがバレた!? あわあわと誤魔化すように視線を外す。
それを見ていたのかなんなのか、いきなりディノが私とイーザンの間に割り込み、イーザンから魔石を奪った。
「おい、まだ私が観察している。勝手に取るな」
「いいだろ! 俺にも見せろ!」
「私が見た後にしろ」
「いやだね! 俺も今見たいんだよ!」
「ちょ、ちょっと!」
喧嘩なのか言い合いが始まってしまった。イーザンは取り返そうとディノの腕を掴むが、ディノは負けじと魔石を持った手を高く遠ざける。
「お前は……」
イーザンから低い声が響き、ビクッとする。あわわ、な、なんか怒ってる……? イーザンはディノの胸倉を掴み、物凄い顔で睨んでいる。
「ちょっと! 喧嘩するくらいなら返してー!!」
ディノとイーザンの間に割り込み、喧嘩を止めようとすると、私の肩からふわっと浮かび上がったルギニアスがディノの手から魔石を取り上げた。
「「「あっ」」」
全員がルギニアスを見た。しれっとした顔のルギニアスは魔石を抱えたまま、手を伸ばしても届かない高さにまで浮かんだ。
ルギニアスが抱えると滅茶苦茶大きく見える……。
「プッ。ルーちゃん可愛い」
「は? せっかく仲裁してやったのにその言い草はなんだ」
「え、あ、ごめん」
クスクスと笑っていると、不機嫌になったルギニアスが私の元に降りて来た。そして手を差し出すとその上に魔石を置き、フンと再び肩の上へ。
唖然としたままの二人はばつが悪そうに視線を逸らした。
「ルーちゃん、ありがとうね」
肩に乗るルギニアスのほうが不機嫌になってしまったため、宥めるように頭を撫でた。相変わらず「フン」と鼻を鳴らしていたけど……。
そして掌に魔石を乗せ、二人のほうへ差し出した。
「二人で一緒にどうぞ」
差し出された魔石をちらりと横目に、二人は「ぐぬぬ」といった顔をしながらも、小さく溜め息を吐きながら、大人しく私の言葉に従ったのでした。
年上なんだから喧嘩しないでもらいたいわねー。フフフ。
両手を前に突き出し意識を集中させる。チチルの身体から流れ出る体液に集中し、両手に結晶化の魔力を込める。それに反応するように、チチルの体液はゆらゆらと動き出した。
黄色い体液は宙を舞い、流れる川のように徐々にこちらへ向かって流れてくる。
「おぉ、凄い……」
「あぁ、これが魔石になるのか……」
ディノもイーザンも唖然としたまま、宙を舞う体液を見詰めている。
流れる体液はこちらに流れまいという意思があるかのように抵抗を感じる。こちらの魔力が吸い取られるような感覚に、いつも通りだという手応えを感じた。
よし。きっと大丈夫。このまま集中!
引っ張られないように魔力を繋ぎ止め、手繰り寄せるようにチチルの体液を操る。手繰り寄せた体液は空を舞い、私の掌へと集まっていく。魔力が混じった体液はキラキラと煌めき、澄んだ色となっていく。そして私の目の前で渦巻き出し、圧縮されていった。
圧縮されていく体液は渦を巻いたまま、小さく丸くなってコロンと私の手の上に収まった。
私の手に乗る黄色い魔石。鮮やかな黄色は美しく輝いていたが、中心部分では濃い色をして歪に蠢く渦が見えた。
それと同時にチチルの身体がさらさらと砂のように崩れ去り、風に煽られ消えて行った。
「おぉ、凄いな!! 滅茶苦茶綺麗だな!」
ディノが興奮しながら駆け寄って来る。イーザンも魔導剣を鞘におさめ、ゆっくりとこちらへと歩いて来る。
「あー、無事に出来て良かったぁ……」
緊張と疲れでその場へとへたり込んでしまう。イーザンがそんな私の顔を覗き込むようにしゃがんだ。
「魔力回復薬はいるか?」
「ありがとう、とりあえずはまだ大丈夫」
「分かった……出来上がった魔石を見せてもらってもいいか?」
イーザンは私の前に膝をついたまま聞いた。頷き、イーザンの前に手を差し出すと、私の掌に乗る魔石をイーザンは手に取った。
イーザンの掌に収まるほどの大きさの魔石。今回はそれほど大きくはない。イーザンはその魔石をじっくり観察するように、太陽へと翳した。
「魔石というものはああやって出来るのだな。面白い」
イーザンがワクワクしている? なんだか目を輝かせていそうに見える。初めて見る表情で、私はイーザンを観察してしまった。それに気付いたのか、ふいっと私を見たイーザンと目が合い、心臓が跳ねた。び、びっくりした……見詰めていたのがバレた!? あわあわと誤魔化すように視線を外す。
それを見ていたのかなんなのか、いきなりディノが私とイーザンの間に割り込み、イーザンから魔石を奪った。
「おい、まだ私が観察している。勝手に取るな」
「いいだろ! 俺にも見せろ!」
「私が見た後にしろ」
「いやだね! 俺も今見たいんだよ!」
「ちょ、ちょっと!」
喧嘩なのか言い合いが始まってしまった。イーザンは取り返そうとディノの腕を掴むが、ディノは負けじと魔石を持った手を高く遠ざける。
「お前は……」
イーザンから低い声が響き、ビクッとする。あわわ、な、なんか怒ってる……? イーザンはディノの胸倉を掴み、物凄い顔で睨んでいる。
「ちょっと! 喧嘩するくらいなら返してー!!」
ディノとイーザンの間に割り込み、喧嘩を止めようとすると、私の肩からふわっと浮かび上がったルギニアスがディノの手から魔石を取り上げた。
「「「あっ」」」
全員がルギニアスを見た。しれっとした顔のルギニアスは魔石を抱えたまま、手を伸ばしても届かない高さにまで浮かんだ。
ルギニアスが抱えると滅茶苦茶大きく見える……。
「プッ。ルーちゃん可愛い」
「は? せっかく仲裁してやったのにその言い草はなんだ」
「え、あ、ごめん」
クスクスと笑っていると、不機嫌になったルギニアスが私の元に降りて来た。そして手を差し出すとその上に魔石を置き、フンと再び肩の上へ。
唖然としたままの二人はばつが悪そうに視線を逸らした。
「ルーちゃん、ありがとうね」
肩に乗るルギニアスのほうが不機嫌になってしまったため、宥めるように頭を撫でた。相変わらず「フン」と鼻を鳴らしていたけど……。
そして掌に魔石を乗せ、二人のほうへ差し出した。
「二人で一緒にどうぞ」
差し出された魔石をちらりと横目に、二人は「ぐぬぬ」といった顔をしながらも、小さく溜め息を吐きながら、大人しく私の言葉に従ったのでした。
年上なんだから喧嘩しないでもらいたいわねー。フフフ。
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