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第2章《修行》編

第61話 護衛依頼

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「また襲われてたのか? よく襲われる奴だな」
「いや、襲われてた訳じゃ……追いかけられただけ……」
「一緒だろ」
「うぐっ」

「だって私自身、なぜ襲われるのか、なぜつけられているのか理由が分からないんだもん」

 一応拗ねてみた。

「ま、襲われる理由なんか分からんわな。心当たりがある奴なんてろくでもないだろ」

 そう言ってアハハと笑ったディノ。まあそうですよね。襲われる心当たりなんかあったときは罰を受けますよ。殺されるのは嫌だけど。

「それよりもその靴! 変なもん作ってんなぁ」

 ディノの興味はすっかり靴の魔導具へと移っていた。

「変なもんとは失礼な。ちゃんと真剣に考えた魔導具なんだから」

 リラーナと真面目に研究している魔導具なんだからね、とちょっぴり怒ってみせる。まああまりに突拍子もないものばかり作って、いつもダラスさんに怒られていることは内緒だ。

「ハハ、悪い。でもなぁ、まだ実験段階なら実戦に使うなよ。今回俺が通りかからなければ死んでたぞ?」
「うっ……うん。ごめん。助けてくれてありがとう」

 ディノは苦笑しながら頭にポンと手を置いた。

「おい、仲介屋へ行くんだろうが」
「あ、そうだった」

 ルギニアスが私の肩の上で不機嫌そうに呟いた。

「お、この魔傀儡も相変わらずだな。仲介屋って?」

 ディノはルギニアスをツンツンと突きながら聞いた。ルギニアスが滅茶苦茶嫌そうな顔でディノの指をビシッと叩き落している。そのやり取りに思わず笑いそうになった。

「フッ。あ、あー、本当は仲介屋へ行く途中だったの。道中でなぜか追われて逃げてただけ」

 長年いつも外出時にはつけられていたことは今言う必要はないだろう。

「仲介屋になんの依頼をしに行くんだ? 俺も仲介屋には登録しているんだ。依頼が条件に合うなら俺が受けてやるぞ?」

 そう言ってニッと笑ったディノ。

「仲介屋に登録しているの? 剣闘士として?」
「あぁ。もう十六の頃から独り立ちして活動してるから、それなりに経験もあるぞ」

 ディノの話では剣闘士としてしばらくは剣士の修行をしていたらしいが、腕を見込まれ騎士見習いにならないかと誘いを受けたらしい。しかし以前私と話していた夢は未だに持っているらしく、騎士見習いを断り自由に動ける剣闘士として仲介屋に登録。護衛や討伐部隊に助っ人参加など、様々な仕事をしているらしい。

 ちなみに私よりも二歳上だそうで、出逢ったあの当時は十三、現在は十七ということだった。

「あれから四年か、早いもんだな。ルーサの修行はどうだ?」

 依頼を受けるならどちらにしろ仲介屋を通す必要がある上に、護衛は最低でももう一人は必要となるため、二人で仲介屋へと向かう。

「私の修行ももう最終段階にはきてると思う。多分」
「ハハ、多分てなんだよ」
「だって、終わりを決めるのは私じゃなく師匠だし」

 特殊魔石の採取に一人で行く許可が出た時点で、もうかなり最終段階に入っているとは自分で理解出来ているが、でも一人前かと言われると自信はない。やはりダラスさんの判断によると思う。

「それに、私は国家魔石精製師の資格を取らないといけないしね」
「あー、魔石精製師は国家資格がいるんだったか。大変だな。どんな試験なんだ?」
「んー、まだよく知らないんだよね。師匠からはまだ一度も試験内容とか教えてもらったことないし」

 ディノが「ふーん」と残念そうな顔をしている間に仲介屋へと着き、中へと入った。

 扉を開けたと同時に、私の姿に気付いたモルドさんが相変わらずの無精髭の顔でニッと笑ったのが見えた。

「よう、ルーサじゃねーか。今日は一人か? って、ん? ディノじゃねーか、なんでルーサと一緒にいるんだ?」
「こんにちは、モルドさん。そっか当然ディノもモルドさんと知り合いよね」

 ちらりとディノに顔を向けると、ディノもニッと笑った。

「ちわっす、モルドさん。ルーサとは昔知り合っててね。さっき偶然再会したんだ。これから仲介屋へ行くと言ってたから一緒に付いて来た。ルーサの依頼、俺が受けるよ」

 カウンターに肩肘をつきモルドさんと私を見ながら言った。

「ん? 今回ルーサ一人か?」

 モルドさんが私を見る。

「えぇ。今回の採取、一人で行って良いと許可をもらったんです!」
「おぉ、ようやく独り立ちか! なるほどな、で、一人で護衛の依頼に来た訳か」
「はい」

 頷くとモルドさんは今度はディノを見て、ニヤッと笑った。

「で、たまたま再会してディノが護衛を受けている話になったって訳か」
「そうなんです」
「へー、ほー」

 モルドさんはなんだかニヤニヤとしながら、ディノと私を見ている。ん? なんなの?

「おい、モルドのおっさん、あんたが思ってるようなことはねーからな」

 ディノはギロリとモルドさんを睨んでいる。しかしモルドさんのニヤニヤは変わらないまま笑っていた。

「ハハ、まあそういうことにしといてやるよ」
「おい」

「ディノは了解した。で、もう一人必要だよな」

 睨むディノを無視してモルドさんは私のほうへ向いた。なんなのかよく分からないやり取りに若干たじろぎながら頷いた。肩にへばりつくルギニアスが溜め息を吐いたような気がしたが気のせいかしら。
 ちなみにルギニアスは大人しくしてくれているため、モルドさんも特に気を留めてはいないようだった。人形とでも思っているのかしら。この歳になっても人形を持ち歩いている痛い子だと思われてなければ良いけど……ハハ。

「魔導師を一人入れといてやるよ。ゲイナーやシスバみたいにベテランではないが腕は確かだ。ディノとも何度か一緒になってるからやりやすいと思うぞ」
「あぁ、イーザンか?」

 ディノが口にした名前にモルドさんは頷いた。

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