62 / 247
第2章《修行》編
第60話 再会
しおりを挟む
「どこへ行った?」
追いかけて来ていたフードを被った人物は小さく呟きキョロキョロとしている。チラリと上を見上げたが、高い建物に囲まれたこの場所では上に逃げるような場所もなく、階段がある訳でもない。すぐに視線は戻り、しばらく周りを探っていたかと思うと、諦めたのか、違うところを探そうとしているのか別の路地へと入って行った。
「あ、危なかった……」
上を見上げたときにぎくりとしたが、どうやら見付からなかったようだ。
今現在、私がどこにいるのかというと……。
「うーん、靴にこの魔導具はちょっと改良の余地ありかしら……」
私の足は建物の壁に貼り付いている。四階ほどの高さに壁を床のようにして立っている。うっかり見付からないように、なんとか追手の視線の先ではない壁だったため、見付からなかったのだ。
リラーナと今までにない魔導具を開発してみよう! となって、最近開発中の『これ』。靴に風系の魔力を付与させた魔石と大地系の魔力を付与させた魔石を埋め込み、風の魔力を身体の周りに纏わせ、大地系の魔力で靴を建物と吸着させる。それによって建物の壁を床のように歩くことが可能になる! ……なるんだけれど……壁から少しでも足が離れると発動条件が解除されてしまい墜落の危険が……と考えているそのときに、私が立っているすぐ近くの窓がガチャリと開き、顔を出した人が驚愕の顔になった。
「「えっ」」
お互いが声を上げ、私は思わず後退り足が離れてしまった!
「え、あ、きゃぁぁあああ!!」
「おい! 馬鹿が!!」
窓を開けた人も驚き、ルギニアスも目を見開き、私の肩にしがみ付いたがどうにも出来ない! ルギニアスは必死になにか魔法を発動させようとしてくれているようだが、なにも起こらない。
「くそっ」
いやぁぁあああ!! 死ぬぅぅ!! ど、どうしよう!!
あわあわと成すすべもなく墜落していく。あぁ、リラーナと実験したときは二階までしか行かなかったけど、今回はさらに高いところ……まだまだ実験途中だったのにこんな高いところへ登るんじゃなかった!!
嘆いている場合じゃなく!! か、風!! 風の魔力だけでも発動出来ないかしら!? そうジタバタし、魔力を送ると私の周りに風の魔力は渦巻いた気がしたけれど、墜落を防げるはずもなく……
バスンッ!!!!
死んだ…………と、思ったのに痛くはなかった。ん? なんで? そおっと目を開くと……。
「ぐ、ぐはぁぁあ……びびったぁ」
私は見知らぬ青年に抱き止められていた。
青年はそのまま崩れ落ち、私を抱えたまま座り込んだ。
「あんたなぁ!! なにやってんの!? なんで上から落ちてくんの!? めっさびびったんだけど!!」
青年に抱きかかえられた状態で顔を見合わせ怒鳴られた。
「え、あ、す、すみません!!!!」
青年は溜め息を吐き、上を見上げた。上には先程私が顔を見合わせ驚かせてしまった人が窓から心配そうに見下ろしている。青年はその人に手を振り、大丈夫だ、と声を掛けてくれていた。窓辺の人は安心したように手を振り返し、部屋へと戻って行った。
「で、あんたは何をやってたわけ?」
窓辺の人が姿を消したのを確認し、改めてこちらを見た青年は濃紺の短髪に金色の瞳。一瞬金色の瞳に見惚れてしまったが、ハッとし、あまりの近さに緊張してしまい、青年の胸に手を突き身体を離した。
「あぁ、悪い」
青年はいつまでも私を抱き寄せていたことに気付いたのか、慌てて身体を離した。そして改めて私を見ると「ん?」と小さく呟いた。視線の先は私ではなく……あ、ルギニアス……ま、またこのパターンか……。
「その肩の……、お前……どこかで……えっと……名前……えーっと」
青年は座り込んだまま腕を組み、頭をあちこち動かし必死に思い出そうとしている仕草。
え? なんだろう、なんか会ったことある人? 私も同じように考え込んだ。
濃紺の髪に金色の瞳……どこかで見たことがあるような……この綺麗な金色の瞳に見覚えが……。
「「あっ!」」
お互いの声が重なった。
「ルーサ!」
「ディノ!」
お互い顔を見合わせ驚いた顔、そして笑顔になった。
「ルーサ! ルーサだよな!? 久しぶり!」
「うん、ディノも久しぶり!」
幼いときに出逢った少年。あのときも見知らぬ男に追われていた。それを助けてくれたのがディノだった。ディノは立ち上がり、私に手を伸ばすと引っ張り上げた。
幼い頃の面影はあるまま、すっかり大人っぽく男らしい顔付きになったディノは、あのときよりも背は大きく伸び、立ち上がると私よりも遥かに背が高い。私も背は伸びたのに、頭一つ分はディノのほうが高かった。なんだかちょっぴり悔しくなっちゃう。あのときは少し私よりも高いくらいだったのに。
腰から剣を下げ、あのとき言っていた剣闘士として力を付けたのだろう、身体付きも細身の割には服の上からでも分かるほど、しっかりと筋肉質な感じだった。
「で、ルーサはなんで空から落ちて来たんだよ」
苦笑しながらディノが聞いた。
アハハハ、と私も苦笑しながら、先程あった出来事を全て話したのだった。
追いかけて来ていたフードを被った人物は小さく呟きキョロキョロとしている。チラリと上を見上げたが、高い建物に囲まれたこの場所では上に逃げるような場所もなく、階段がある訳でもない。すぐに視線は戻り、しばらく周りを探っていたかと思うと、諦めたのか、違うところを探そうとしているのか別の路地へと入って行った。
「あ、危なかった……」
上を見上げたときにぎくりとしたが、どうやら見付からなかったようだ。
今現在、私がどこにいるのかというと……。
「うーん、靴にこの魔導具はちょっと改良の余地ありかしら……」
私の足は建物の壁に貼り付いている。四階ほどの高さに壁を床のようにして立っている。うっかり見付からないように、なんとか追手の視線の先ではない壁だったため、見付からなかったのだ。
リラーナと今までにない魔導具を開発してみよう! となって、最近開発中の『これ』。靴に風系の魔力を付与させた魔石と大地系の魔力を付与させた魔石を埋め込み、風の魔力を身体の周りに纏わせ、大地系の魔力で靴を建物と吸着させる。それによって建物の壁を床のように歩くことが可能になる! ……なるんだけれど……壁から少しでも足が離れると発動条件が解除されてしまい墜落の危険が……と考えているそのときに、私が立っているすぐ近くの窓がガチャリと開き、顔を出した人が驚愕の顔になった。
「「えっ」」
お互いが声を上げ、私は思わず後退り足が離れてしまった!
「え、あ、きゃぁぁあああ!!」
「おい! 馬鹿が!!」
窓を開けた人も驚き、ルギニアスも目を見開き、私の肩にしがみ付いたがどうにも出来ない! ルギニアスは必死になにか魔法を発動させようとしてくれているようだが、なにも起こらない。
「くそっ」
いやぁぁあああ!! 死ぬぅぅ!! ど、どうしよう!!
あわあわと成すすべもなく墜落していく。あぁ、リラーナと実験したときは二階までしか行かなかったけど、今回はさらに高いところ……まだまだ実験途中だったのにこんな高いところへ登るんじゃなかった!!
嘆いている場合じゃなく!! か、風!! 風の魔力だけでも発動出来ないかしら!? そうジタバタし、魔力を送ると私の周りに風の魔力は渦巻いた気がしたけれど、墜落を防げるはずもなく……
バスンッ!!!!
死んだ…………と、思ったのに痛くはなかった。ん? なんで? そおっと目を開くと……。
「ぐ、ぐはぁぁあ……びびったぁ」
私は見知らぬ青年に抱き止められていた。
青年はそのまま崩れ落ち、私を抱えたまま座り込んだ。
「あんたなぁ!! なにやってんの!? なんで上から落ちてくんの!? めっさびびったんだけど!!」
青年に抱きかかえられた状態で顔を見合わせ怒鳴られた。
「え、あ、す、すみません!!!!」
青年は溜め息を吐き、上を見上げた。上には先程私が顔を見合わせ驚かせてしまった人が窓から心配そうに見下ろしている。青年はその人に手を振り、大丈夫だ、と声を掛けてくれていた。窓辺の人は安心したように手を振り返し、部屋へと戻って行った。
「で、あんたは何をやってたわけ?」
窓辺の人が姿を消したのを確認し、改めてこちらを見た青年は濃紺の短髪に金色の瞳。一瞬金色の瞳に見惚れてしまったが、ハッとし、あまりの近さに緊張してしまい、青年の胸に手を突き身体を離した。
「あぁ、悪い」
青年はいつまでも私を抱き寄せていたことに気付いたのか、慌てて身体を離した。そして改めて私を見ると「ん?」と小さく呟いた。視線の先は私ではなく……あ、ルギニアス……ま、またこのパターンか……。
「その肩の……、お前……どこかで……えっと……名前……えーっと」
青年は座り込んだまま腕を組み、頭をあちこち動かし必死に思い出そうとしている仕草。
え? なんだろう、なんか会ったことある人? 私も同じように考え込んだ。
濃紺の髪に金色の瞳……どこかで見たことがあるような……この綺麗な金色の瞳に見覚えが……。
「「あっ!」」
お互いの声が重なった。
「ルーサ!」
「ディノ!」
お互い顔を見合わせ驚いた顔、そして笑顔になった。
「ルーサ! ルーサだよな!? 久しぶり!」
「うん、ディノも久しぶり!」
幼いときに出逢った少年。あのときも見知らぬ男に追われていた。それを助けてくれたのがディノだった。ディノは立ち上がり、私に手を伸ばすと引っ張り上げた。
幼い頃の面影はあるまま、すっかり大人っぽく男らしい顔付きになったディノは、あのときよりも背は大きく伸び、立ち上がると私よりも遥かに背が高い。私も背は伸びたのに、頭一つ分はディノのほうが高かった。なんだかちょっぴり悔しくなっちゃう。あのときは少し私よりも高いくらいだったのに。
腰から剣を下げ、あのとき言っていた剣闘士として力を付けたのだろう、身体付きも細身の割には服の上からでも分かるほど、しっかりと筋肉質な感じだった。
「で、ルーサはなんで空から落ちて来たんだよ」
苦笑しながらディノが聞いた。
アハハハ、と私も苦笑しながら、先程あった出来事を全て話したのだった。
1
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる