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第2章《修行》編
第49話 魔力練り上げの精製魔石
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あの日からディノに会うことはなかったが、彼との約束は私の心を前向きにしてくれた。いつか世界中の魔石を見るんだ! お父様とお母様の情報を探るんだ! そんな気持ちが魔石を精製する気力にも繋がった。
あれから何度となく失敗している魔力練り上げの精製魔石。でもめげない! 頑張るのみ!
今日こそはと神経を集中させる。
「ふぅぅう」
大きく深呼吸。そして目を瞑り集中していく。
採掘場の魔素を思い出していく。身体の中心部分に意識を集中させる。あのとき感じた魔素。チリチリと熱いものを感じ出す。このまま冷静にこの熱を維持していく。
しばらくその状態を維持出来るようになると、もう一度深呼吸をし、結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力の練り上げ。魔力付与対応の魔力の組式を疎かにしないよう慎重に、そして結晶化の魔力と合わせていく。
魔素は体内で維持出来ている。うん、今度こそいけるはず。冷静に、慎重に。
体内で維持されている魔素に向かって魔力を組み合わせていく。糸を編み込んでいくように、ゆっくり丁寧に。一本ずつ編み込むかのように、魔力の糸を魔素に馴染ませていく。
今まではここで上手く組み合わせることが出来なかった。どうしても魔素と魔力が上手く馴染まない。集中力が途切れてしまっていることも原因だったかもしれない。
しかし、今日はなんだか出来るような気がする。魔力の糸がゆるゆると魔素に組み込まれていくのを感じる。
なんだろう、この感覚。水に落とした色水がじわじわと滲み混ざり合っていくかのような……。まるで元から一つであったかのように、魔素と魔力はお互いを受け入れるかの如く、糸が絡み合っていく。
完全に一つになった魔素と魔力は体内で今までに感じたことがないような気配を放っていた。なんだか温かい気がして不思議な感覚だ。
それを少しずつ掌から外へと放出し、練り上げていく。両手を翳した中心部分にチリチリと魔力の渦が少しずつ渦巻いて行く。小さかった渦は少しずつ少しずつ大きくなっていき、激しい魔力の渦となり、光と共に魔力の色を放ち出す。ダラスさんが見本に見せてくれたときと同じく赤い魔力。
その赤い魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げ……、私の目の前でそれは魔石となった。
「あ……」
コロンと掌に乗った小さな魔石。赤い魔石。中心部分はいまだ魔力が渦巻いている。
茫然としていると私の掌に乗る小さな魔石をひょいと取り上げられた。その手の行方を追うと、ダラスさんがその魔石を指で摘まみ上げ、じっと見詰めていた。
ダラスさんは魔力感知を行っているのか、じっと魔石を見詰め観察する。そして再び私の掌に乗せた。
「及第点といった感じか。なんとか出来上がったな」
そう言って頭にポンと手を置いたダラスさん。
「あ、あぁ……はぁぁあ、良かったぁぁ」
初めてろ過蒸留の精製魔石が出来たときよりも、さらに一層嬉しさは上なのだが……なぜこんなにテンションが低いのかというと……なんせ疲れた……。
魔力練り上げの精製魔石は疲労感が半端ないわね……。慣れてきたらもっとマシなんだろうけれど、今の私にはこれが限界……。つ、疲れた……。もう途中で集中力途切れるんじゃないかと思った……それじゃあいつものままだから、今日こそは! って頑張った甲斐があるけれど、しんどすぎる……。
「これを……」
「全種類の魔力での精製ですよね……」
「そうだ」
「ふっ」
今は考えるのを放棄していいですか……アハハハ……。今日はもうこれ以上は精製出来ませんでした、はい。
◇◇
それからの毎日は襲われることもなく、順調に修行の日々だった。
常に誰かと共に行動、ひと気のないところは通らない、を徹底したからか全く襲われることはなかった。
ただ何やら気配は感じた。リラーナは気付いていないようだったけど、常につかず離れずの距離で魔石の気配を感じる。
何かの魔導具なんだろうけれど、いつも同じ気配。特になにかをしてくる気配はなかったので、ダラスさんやリラーナには言わずにいた。
精製魔石の習得にはかなりの年月を要した。ろ過蒸留の精製魔石に一年以上、魔力練り上げの魔石にさらに二年近く……その間私の魔力量や集中力、精神的なものもかなり上がってきたと思う。私の年齢も十四となり、国家資格を取得出来る試験を受けられる歳まで後二年。一般的には十八で受ける人が多いらしいので、それを踏まえても後二年から四年のうちには試験を受けられるようになる。
その二年から四年の間に、後は特殊魔石と精製魔石のレベルアップを目指す! 精製魔石は全種類の魔力で精製出来るようにはなったけれど、これ、きっとまだまだ改良の余地があると思うのよね。
せっかく魔力練り上げで一から魔石を創れるのだから、もっと力の強い魔石を創ることも可能なんじゃないかと思っている。魔石精製師の力量次第のような気がするのよね。
だから試験を受けるまでの間に、そこをもっと追求していくのよ!
そうしてとうとうというか、ようやくというか、特殊魔石の採取へ行く許可が出た!
あれから何度となく失敗している魔力練り上げの精製魔石。でもめげない! 頑張るのみ!
今日こそはと神経を集中させる。
「ふぅぅう」
大きく深呼吸。そして目を瞑り集中していく。
採掘場の魔素を思い出していく。身体の中心部分に意識を集中させる。あのとき感じた魔素。チリチリと熱いものを感じ出す。このまま冷静にこの熱を維持していく。
しばらくその状態を維持出来るようになると、もう一度深呼吸をし、結晶化の魔力と魔力付与対応の魔力の練り上げ。魔力付与対応の魔力の組式を疎かにしないよう慎重に、そして結晶化の魔力と合わせていく。
魔素は体内で維持出来ている。うん、今度こそいけるはず。冷静に、慎重に。
体内で維持されている魔素に向かって魔力を組み合わせていく。糸を編み込んでいくように、ゆっくり丁寧に。一本ずつ編み込むかのように、魔力の糸を魔素に馴染ませていく。
今まではここで上手く組み合わせることが出来なかった。どうしても魔素と魔力が上手く馴染まない。集中力が途切れてしまっていることも原因だったかもしれない。
しかし、今日はなんだか出来るような気がする。魔力の糸がゆるゆると魔素に組み込まれていくのを感じる。
なんだろう、この感覚。水に落とした色水がじわじわと滲み混ざり合っていくかのような……。まるで元から一つであったかのように、魔素と魔力はお互いを受け入れるかの如く、糸が絡み合っていく。
完全に一つになった魔素と魔力は体内で今までに感じたことがないような気配を放っていた。なんだか温かい気がして不思議な感覚だ。
それを少しずつ掌から外へと放出し、練り上げていく。両手を翳した中心部分にチリチリと魔力の渦が少しずつ渦巻いて行く。小さかった渦は少しずつ少しずつ大きくなっていき、激しい魔力の渦となり、光と共に魔力の色を放ち出す。ダラスさんが見本に見せてくれたときと同じく赤い魔力。
その赤い魔力は濃縮されながら形を作り、綺麗な丸い形となると最後に激しい光と風を巻き上げ……、私の目の前でそれは魔石となった。
「あ……」
コロンと掌に乗った小さな魔石。赤い魔石。中心部分はいまだ魔力が渦巻いている。
茫然としていると私の掌に乗る小さな魔石をひょいと取り上げられた。その手の行方を追うと、ダラスさんがその魔石を指で摘まみ上げ、じっと見詰めていた。
ダラスさんは魔力感知を行っているのか、じっと魔石を見詰め観察する。そして再び私の掌に乗せた。
「及第点といった感じか。なんとか出来上がったな」
そう言って頭にポンと手を置いたダラスさん。
「あ、あぁ……はぁぁあ、良かったぁぁ」
初めてろ過蒸留の精製魔石が出来たときよりも、さらに一層嬉しさは上なのだが……なぜこんなにテンションが低いのかというと……なんせ疲れた……。
魔力練り上げの精製魔石は疲労感が半端ないわね……。慣れてきたらもっとマシなんだろうけれど、今の私にはこれが限界……。つ、疲れた……。もう途中で集中力途切れるんじゃないかと思った……それじゃあいつものままだから、今日こそは! って頑張った甲斐があるけれど、しんどすぎる……。
「これを……」
「全種類の魔力での精製ですよね……」
「そうだ」
「ふっ」
今は考えるのを放棄していいですか……アハハハ……。今日はもうこれ以上は精製出来ませんでした、はい。
◇◇
それからの毎日は襲われることもなく、順調に修行の日々だった。
常に誰かと共に行動、ひと気のないところは通らない、を徹底したからか全く襲われることはなかった。
ただ何やら気配は感じた。リラーナは気付いていないようだったけど、常につかず離れずの距離で魔石の気配を感じる。
何かの魔導具なんだろうけれど、いつも同じ気配。特になにかをしてくる気配はなかったので、ダラスさんやリラーナには言わずにいた。
精製魔石の習得にはかなりの年月を要した。ろ過蒸留の精製魔石に一年以上、魔力練り上げの魔石にさらに二年近く……その間私の魔力量や集中力、精神的なものもかなり上がってきたと思う。私の年齢も十四となり、国家資格を取得出来る試験を受けられる歳まで後二年。一般的には十八で受ける人が多いらしいので、それを踏まえても後二年から四年のうちには試験を受けられるようになる。
その二年から四年の間に、後は特殊魔石と精製魔石のレベルアップを目指す! 精製魔石は全種類の魔力で精製出来るようにはなったけれど、これ、きっとまだまだ改良の余地があると思うのよね。
せっかく魔力練り上げで一から魔石を創れるのだから、もっと力の強い魔石を創ることも可能なんじゃないかと思っている。魔石精製師の力量次第のような気がするのよね。
だから試験を受けるまでの間に、そこをもっと追求していくのよ!
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