44 / 247
第2章《修行》編
第42話 薬物研究所植物園
しおりを挟む
魔石付与部を後にし、研究所棟へ来る時に通った植物園へと向かう。硝子造りの建物へとたどり着くとウルバさんが扉を開けなかへと促した。
硝子に光が反射し、キラキラとしている。建物のなかは空調管理がされているらしく、少し湿度が高いのか肌に纏わりつくような空気を感じる。
「ようこそ、薬物研究所植物園へ」
出迎えてくれたのは金髪碧眼のとても綺麗な男の人だった。とても背が高く、上から羽織っている白衣を靡かせこちらに歩いて来た。
「フィルさん、今日は突然お願いしてしまいすみませんでした。ありがとうございます」
「ハハ、構わないよ。研究所の見学は出来なくて申し訳ない、お嬢さん方」
「薬物研究所所長のフィルさんです。こちらはリラーナさんとルーサさんです」
フィルさんはニコリと優しい笑顔でこちらに微笑んでくれた。リラーナと二人で挨拶をし、リラーナは「かっこいい人ね」と小声で話したかと思うとウキウキした顔になっていた。
「自由に見てくれて構わないが、毒性のある植物もあるから触らないようにね」
「毒!」
リラーナが驚いた顔をすると、フィルさんはクスッと笑った。
「植物には毒のあるものも多くある。しかしその毒は薬になったりもする。そういったものをうちでは研究しているんだよ」
「「へぇぇ、そうなんですね」」
リラーナと二人で驚きの声を上げていると、フィルさんは嬉しそうに微笑みながら植物の説明をしてくれた。
今いるところは暖かいが、別の部屋はまた違った気温管理で寒い環境だったり、暑い環境だったりと様々な気温を想定して育てられているらしい。その植物が一番育ちやすい環境に合わせた気温で栽培をしている。
食べられる果実のものや、怪我に塗る薬となるものなど、そのままで食べたり使えたりする植物も多くあるが、加工しないと使えない薬草もあるそうだ。
「そのままで使うことが出来ないものは、すり潰し他の薬草と混ぜたり、乾燥させたり、逆に煮込んだり、と様々だね。しかし混ぜてはいけないもの同士で混ぜると猛毒になったりもするから要注意だったりする」
「え、怖っ」
「ハハ、しかしその猛毒が魔物から受けた毒の中和に使えたりもする」
「えぇ、そうなんですか!?」
リラーナと驚き顔を見合わせる。
「魔物の毒なんて受けたことがないから、どんなものか知らないけれど、とても強力な毒なんでしょうね……」
「そうだね、魔物の毒は厄介でね。普通の毒消しでは全く効果がないんだ。魔導師の治癒魔法かこういった猛毒から作る毒消しか、しか効かない。
治癒魔法も普通の回復魔法では効かないんだ。魔物の毒の中和魔法だからね、使える人も限られてきたりする。猛毒の毒消しも、魔物の毒を中和してくれるのは良いが、その猛毒のせいで後遺症が現れたりもする。だから使用するにも覚悟が必要とされる」
「そ、そんなに厄介なんですね……」
「だから毒を持つ魔物と戦うときは、騎士団は相当気を遣うそうだよ」
「「…………」」
リラーナと二人して言葉を失くしてしまった。騎士団の人たちは、魔物討伐は本当に大変な仕事なんだろうな……。
「こっちの薬草とこの薬草を混ぜ合わせて魔力を送ると回復薬に、こっちとこっちの薬草は魔力回復薬になる」
フィルさんは薬草を指差しながら作ることの出来る薬を説明してくれる。
「回復薬や魔力回復薬、傷薬や毒消しはうちの研究所内の研究担当とは別の薬剤師が担当して作っているな」
「薬剤師……」
「薬を作るには魔力を混ぜ合わせる必要があるものもあってね。だからそれが得意なものたちが担当している感じだな」
「へぇぇ、色々な仕事があって面白いわね」
「うん」
魔導研究所にしろ、魔石付与部にしろ、薬物研究所にしろ、色んな人たちが色んな仕事をしているということが凄く面白い。今日は見学出来なかったけれど、魔獣研究所もきっと凄く面白いんだろうなぁ。いつか見学させてもらいたい。
その後も他の気温部屋へと連れて行ってもらったり、育てている食べられる果実を特別に食べさせてもらったりと、満喫させてもらい、フィルさんにお礼を言って植物園を後にした。
リラーナがなんだか名残惜しそうにしていたのが少しおかしかったけれど。
植物園を離れ城門へ向かって歩いている途中、なにやら人の怒鳴り声のようなものが聞こえて来た。振り向くと遠目に貴族らしき人が誰かに怒鳴り散らしている。
「あぁ、ランガスタ公爵ですね」
「「えっ!?」」
ランガスタ公爵ってあの『ランガスタ公爵』!?
思わず駆け出しそうになり、リラーナに止められた。ガバッとリラーナに振り向くと、悲痛な顔をしながら頭を横に振っている。
「だめよ、ルーサ。いくら話を聞きたくとも、相手は公爵。そんな簡単に声を掛けられる人じゃない」
「リラーナ」
思わず泣きそうになり必死に堪える。
「ど、どうかされましたか?」
ウルバさんが心配そうに声を掛けてくれるが、私は答えることが出来ずに、リラーナの胸に顔を埋めた。
リラーナはウルバさんに「なんでもない」と誤魔化してくれたが、ウルバさんは戸惑いながらも私が落ち着くまで待ってくれた。
大きく深呼吸をし、なんとか心を落ち着けるとウルバさんに謝って笑顔を向けた。ウルバさんはなにか疑問を感じてはいるようだったが、それを私に聞かないでいてくれた。そうやって気遣ってもらえたことに感謝し、なんとか元気を取り戻したように振舞った。せっかくの研究所棟への見学なんだもの、楽しく終わりたいしね。
「ウルバさん、今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです! 凄く勉強になったし!」
城門まで送ってくれたウルバさんにリラーナとお礼を言う。さっきは突然の出来事で混乱してしまったけれど、本当に楽しかったんだから!
「それは良かったです。ご招待した甲斐がありますよ」
ウルバさんは優しい笑顔でそう言った。
「またいつでも見学したいときはおっしゃってくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
一日満喫していたため、すでに夕陽が眩しかった。リラーナと二人で「お腹空いたね」と笑い合いながら王都の街並みを歩く。ランガスタ公爵のことについてはお互い口にはしなかった。心残りであることは事実だけれど、実際公爵に話を聞くなんてこと、出来るはずがないことは私自身も分かっていたのだから。
夕食時にはランガスタ公爵のことは心にしまい、ダラスさんに今日あったことを二人で話しまくったのだった。
あ、魔導研究所で気付いた『あれ』をダラスさんに確認しないとね。
硝子に光が反射し、キラキラとしている。建物のなかは空調管理がされているらしく、少し湿度が高いのか肌に纏わりつくような空気を感じる。
「ようこそ、薬物研究所植物園へ」
出迎えてくれたのは金髪碧眼のとても綺麗な男の人だった。とても背が高く、上から羽織っている白衣を靡かせこちらに歩いて来た。
「フィルさん、今日は突然お願いしてしまいすみませんでした。ありがとうございます」
「ハハ、構わないよ。研究所の見学は出来なくて申し訳ない、お嬢さん方」
「薬物研究所所長のフィルさんです。こちらはリラーナさんとルーサさんです」
フィルさんはニコリと優しい笑顔でこちらに微笑んでくれた。リラーナと二人で挨拶をし、リラーナは「かっこいい人ね」と小声で話したかと思うとウキウキした顔になっていた。
「自由に見てくれて構わないが、毒性のある植物もあるから触らないようにね」
「毒!」
リラーナが驚いた顔をすると、フィルさんはクスッと笑った。
「植物には毒のあるものも多くある。しかしその毒は薬になったりもする。そういったものをうちでは研究しているんだよ」
「「へぇぇ、そうなんですね」」
リラーナと二人で驚きの声を上げていると、フィルさんは嬉しそうに微笑みながら植物の説明をしてくれた。
今いるところは暖かいが、別の部屋はまた違った気温管理で寒い環境だったり、暑い環境だったりと様々な気温を想定して育てられているらしい。その植物が一番育ちやすい環境に合わせた気温で栽培をしている。
食べられる果実のものや、怪我に塗る薬となるものなど、そのままで食べたり使えたりする植物も多くあるが、加工しないと使えない薬草もあるそうだ。
「そのままで使うことが出来ないものは、すり潰し他の薬草と混ぜたり、乾燥させたり、逆に煮込んだり、と様々だね。しかし混ぜてはいけないもの同士で混ぜると猛毒になったりもするから要注意だったりする」
「え、怖っ」
「ハハ、しかしその猛毒が魔物から受けた毒の中和に使えたりもする」
「えぇ、そうなんですか!?」
リラーナと驚き顔を見合わせる。
「魔物の毒なんて受けたことがないから、どんなものか知らないけれど、とても強力な毒なんでしょうね……」
「そうだね、魔物の毒は厄介でね。普通の毒消しでは全く効果がないんだ。魔導師の治癒魔法かこういった猛毒から作る毒消しか、しか効かない。
治癒魔法も普通の回復魔法では効かないんだ。魔物の毒の中和魔法だからね、使える人も限られてきたりする。猛毒の毒消しも、魔物の毒を中和してくれるのは良いが、その猛毒のせいで後遺症が現れたりもする。だから使用するにも覚悟が必要とされる」
「そ、そんなに厄介なんですね……」
「だから毒を持つ魔物と戦うときは、騎士団は相当気を遣うそうだよ」
「「…………」」
リラーナと二人して言葉を失くしてしまった。騎士団の人たちは、魔物討伐は本当に大変な仕事なんだろうな……。
「こっちの薬草とこの薬草を混ぜ合わせて魔力を送ると回復薬に、こっちとこっちの薬草は魔力回復薬になる」
フィルさんは薬草を指差しながら作ることの出来る薬を説明してくれる。
「回復薬や魔力回復薬、傷薬や毒消しはうちの研究所内の研究担当とは別の薬剤師が担当して作っているな」
「薬剤師……」
「薬を作るには魔力を混ぜ合わせる必要があるものもあってね。だからそれが得意なものたちが担当している感じだな」
「へぇぇ、色々な仕事があって面白いわね」
「うん」
魔導研究所にしろ、魔石付与部にしろ、薬物研究所にしろ、色んな人たちが色んな仕事をしているということが凄く面白い。今日は見学出来なかったけれど、魔獣研究所もきっと凄く面白いんだろうなぁ。いつか見学させてもらいたい。
その後も他の気温部屋へと連れて行ってもらったり、育てている食べられる果実を特別に食べさせてもらったりと、満喫させてもらい、フィルさんにお礼を言って植物園を後にした。
リラーナがなんだか名残惜しそうにしていたのが少しおかしかったけれど。
植物園を離れ城門へ向かって歩いている途中、なにやら人の怒鳴り声のようなものが聞こえて来た。振り向くと遠目に貴族らしき人が誰かに怒鳴り散らしている。
「あぁ、ランガスタ公爵ですね」
「「えっ!?」」
ランガスタ公爵ってあの『ランガスタ公爵』!?
思わず駆け出しそうになり、リラーナに止められた。ガバッとリラーナに振り向くと、悲痛な顔をしながら頭を横に振っている。
「だめよ、ルーサ。いくら話を聞きたくとも、相手は公爵。そんな簡単に声を掛けられる人じゃない」
「リラーナ」
思わず泣きそうになり必死に堪える。
「ど、どうかされましたか?」
ウルバさんが心配そうに声を掛けてくれるが、私は答えることが出来ずに、リラーナの胸に顔を埋めた。
リラーナはウルバさんに「なんでもない」と誤魔化してくれたが、ウルバさんは戸惑いながらも私が落ち着くまで待ってくれた。
大きく深呼吸をし、なんとか心を落ち着けるとウルバさんに謝って笑顔を向けた。ウルバさんはなにか疑問を感じてはいるようだったが、それを私に聞かないでいてくれた。そうやって気遣ってもらえたことに感謝し、なんとか元気を取り戻したように振舞った。せっかくの研究所棟への見学なんだもの、楽しく終わりたいしね。
「ウルバさん、今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです! 凄く勉強になったし!」
城門まで送ってくれたウルバさんにリラーナとお礼を言う。さっきは突然の出来事で混乱してしまったけれど、本当に楽しかったんだから!
「それは良かったです。ご招待した甲斐がありますよ」
ウルバさんは優しい笑顔でそう言った。
「またいつでも見学したいときはおっしゃってくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
一日満喫していたため、すでに夕陽が眩しかった。リラーナと二人で「お腹空いたね」と笑い合いながら王都の街並みを歩く。ランガスタ公爵のことについてはお互い口にはしなかった。心残りであることは事実だけれど、実際公爵に話を聞くなんてこと、出来るはずがないことは私自身も分かっていたのだから。
夕食時にはランガスタ公爵のことは心にしまい、ダラスさんに今日あったことを二人で話しまくったのだった。
あ、魔導研究所で気付いた『あれ』をダラスさんに確認しないとね。
0
お気に入りに追加
275
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる