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第2章《修行》編
第25話 魔力の種類と精製と
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翌朝、窓から差し込む眩い日差しに目を覚ました。周りを見回すがなにもない。
「ルギニアス?」
そう呟いてもなにも返事は返って来ない。
「夢?」
あまりに泣いて、疲れて、現実逃避をするような夢を見たのだろうか……。うーん、分からない。
でも、なんだかすっきりしている。たくさん泣いて、たくさん寝て、なんだか温かいものに包まれたような気がして、昨日までの辛い気持ちはなくなっていた。
「よし」
泣いていてもなにも変わらない。分からないことは調べたらいい。お父様とお母様のことは探したらいい。魔石精製師として有名になれば、お父様とお母様から会いに来てくれるかもしれないし。きっと……きっとどこかで無事に生きているはず! 修行をしつつ、これから少しずつ調べていけば良いのよ!
十歳の「サラルーサ」だけならば、こんなすぐには立ち直れないかもしれないけれど、今の私には大人だった「サクラ」の記憶がある。独りで生きていた記憶がある。独りでも誰かに支えられていた記憶がある。だからきっと今の私も大丈夫!
そう決意を固め、私は勢いよくベッドから降りると、着替えを済ませ一階へと向かった。
「おはよう、ルーサ。大丈夫?」
「おはよう、リラーナ、師匠」
ダラスさんはテーブルに着席し、新聞を読んでいた。眉間に皺を寄せ、なにやら難しい顔。ちらりと私を少し見たが、すぐさま視線は再び新聞に。
リラーナは朝食の準備をしつつ、私の顔色を気にして聞いてくれた。
「昨日は一体どうしたの?」
リラーナは私があのローグ伯爵家の娘だということは知らないのだろう。お父様たちにも貴族だったことは周りには言わないようにと言われている。ただダラスさんだけはお父様と色々私のことで話をしていたようなので、きっと知っているのよね。だから先程ちらりと私を見たのかしら。でもあえて何も言わないところを見ると、やはりリラーナにも言わないほうが良いようだ。
「心配かけてごめんね。なんでもない。知っている人だったからびっくりしただけ」
「あー、ルーサって元々お金持ちだったみたいだし、ローグ伯爵家の人とも会ったことがあったんだね。それなら心配になるよね、大丈夫?」
リラーナに嘘をついているのは心苦しいけれど、本当のことは言えない。ごめん、リラーナ。
「うん、また気になったら調べてみるし、大丈夫」
「そっか、じゃあ朝食にしよう」
リラーナを手伝いつつ、朝食をいただき今日の修行へと向かった。
しばらくはひたすら結晶化の練習だった。ゴリゴリと石を砕き、ろ過蒸留し、魔力を送る。何日も繰り返していると、次第に不格好ではあるが結晶化出来るようになってきた。
「いまいち綺麗な形にならないのはなんでだろう」
結晶化した魔石を手に取り、じっくり眺めているとダラスさんが背後から声を掛けて来た。
「付与する魔力に合わせる作業をしていないのと、お前の魔力がまだ未発達だからだろうな」
「未発達?」
付与する魔力に合わせて精製していないのは分かる、でも未発達ってどういうことかしら。
「魔力自体は生まれたときから持っているのだろうが、能力としてはっきりするのは神託を受けてからだ。そこから各々修行や訓練で能力が安定していく。お前はまだ神託を受けてからほとんど経験を積んでいない。まだまだ魔石精製師としての魔力が安定していくのはこれからだ」
「えー、じゃあまだ綺麗な丸い形にはならないってことですか?」
「形だけじゃない、天然魔石と違って精製魔石は歪な形ということは、魔力を付与するための核となる部分が安定していないということだ。そこが安定しないと魔力は付与出来ない」
これだけ毎日精製していてもまだ魔力安定には程遠いのかぁ。出来る精製の種類を増やす修行だけでなく、魔力を安定させるために経験を積んでいかないと駄目なのね……。
「とにかく数をこなせ。精製した回数が多ければ多いほど、それだけ安定していくのも早いはずだ」
「なるほど」
それならやっぱりひたすら練習するのみよね!
「とりあえずは付与する魔力に合わせて精製するやり方を教える」
「やった!」
ダラスさんは様々な石を作業台に並べた。
「これは全部精製魔石だが、一つずつ違う魔力付与されてある。ウィスに聞いたようだが、精製魔石は色で付与出来る魔力を判別出来る。天然魔石は色では判別出来ない。
それと、付与出来る魔力の強さも違う。精製魔石で付与出来る魔力は種類としては多いが、生活魔法程度の弱いものだけだな。天然魔石はもう少し強い魔力を付与出来る。特殊な魔石に至っては、戦闘用の魔力を付与することも可能だ」
「そして、精製魔石は付与する魔力の種類によって精製する。一つ魔石を手に取ってみろ」
ダラスさんに促されるままに、一つの青い魔石を手にした。
「ルギニアス?」
そう呟いてもなにも返事は返って来ない。
「夢?」
あまりに泣いて、疲れて、現実逃避をするような夢を見たのだろうか……。うーん、分からない。
でも、なんだかすっきりしている。たくさん泣いて、たくさん寝て、なんだか温かいものに包まれたような気がして、昨日までの辛い気持ちはなくなっていた。
「よし」
泣いていてもなにも変わらない。分からないことは調べたらいい。お父様とお母様のことは探したらいい。魔石精製師として有名になれば、お父様とお母様から会いに来てくれるかもしれないし。きっと……きっとどこかで無事に生きているはず! 修行をしつつ、これから少しずつ調べていけば良いのよ!
十歳の「サラルーサ」だけならば、こんなすぐには立ち直れないかもしれないけれど、今の私には大人だった「サクラ」の記憶がある。独りで生きていた記憶がある。独りでも誰かに支えられていた記憶がある。だからきっと今の私も大丈夫!
そう決意を固め、私は勢いよくベッドから降りると、着替えを済ませ一階へと向かった。
「おはよう、ルーサ。大丈夫?」
「おはよう、リラーナ、師匠」
ダラスさんはテーブルに着席し、新聞を読んでいた。眉間に皺を寄せ、なにやら難しい顔。ちらりと私を少し見たが、すぐさま視線は再び新聞に。
リラーナは朝食の準備をしつつ、私の顔色を気にして聞いてくれた。
「昨日は一体どうしたの?」
リラーナは私があのローグ伯爵家の娘だということは知らないのだろう。お父様たちにも貴族だったことは周りには言わないようにと言われている。ただダラスさんだけはお父様と色々私のことで話をしていたようなので、きっと知っているのよね。だから先程ちらりと私を見たのかしら。でもあえて何も言わないところを見ると、やはりリラーナにも言わないほうが良いようだ。
「心配かけてごめんね。なんでもない。知っている人だったからびっくりしただけ」
「あー、ルーサって元々お金持ちだったみたいだし、ローグ伯爵家の人とも会ったことがあったんだね。それなら心配になるよね、大丈夫?」
リラーナに嘘をついているのは心苦しいけれど、本当のことは言えない。ごめん、リラーナ。
「うん、また気になったら調べてみるし、大丈夫」
「そっか、じゃあ朝食にしよう」
リラーナを手伝いつつ、朝食をいただき今日の修行へと向かった。
しばらくはひたすら結晶化の練習だった。ゴリゴリと石を砕き、ろ過蒸留し、魔力を送る。何日も繰り返していると、次第に不格好ではあるが結晶化出来るようになってきた。
「いまいち綺麗な形にならないのはなんでだろう」
結晶化した魔石を手に取り、じっくり眺めているとダラスさんが背後から声を掛けて来た。
「付与する魔力に合わせる作業をしていないのと、お前の魔力がまだ未発達だからだろうな」
「未発達?」
付与する魔力に合わせて精製していないのは分かる、でも未発達ってどういうことかしら。
「魔力自体は生まれたときから持っているのだろうが、能力としてはっきりするのは神託を受けてからだ。そこから各々修行や訓練で能力が安定していく。お前はまだ神託を受けてからほとんど経験を積んでいない。まだまだ魔石精製師としての魔力が安定していくのはこれからだ」
「えー、じゃあまだ綺麗な丸い形にはならないってことですか?」
「形だけじゃない、天然魔石と違って精製魔石は歪な形ということは、魔力を付与するための核となる部分が安定していないということだ。そこが安定しないと魔力は付与出来ない」
これだけ毎日精製していてもまだ魔力安定には程遠いのかぁ。出来る精製の種類を増やす修行だけでなく、魔力を安定させるために経験を積んでいかないと駄目なのね……。
「とにかく数をこなせ。精製した回数が多ければ多いほど、それだけ安定していくのも早いはずだ」
「なるほど」
それならやっぱりひたすら練習するのみよね!
「とりあえずは付与する魔力に合わせて精製するやり方を教える」
「やった!」
ダラスさんは様々な石を作業台に並べた。
「これは全部精製魔石だが、一つずつ違う魔力付与されてある。ウィスに聞いたようだが、精製魔石は色で付与出来る魔力を判別出来る。天然魔石は色では判別出来ない。
それと、付与出来る魔力の強さも違う。精製魔石で付与出来る魔力は種類としては多いが、生活魔法程度の弱いものだけだな。天然魔石はもう少し強い魔力を付与出来る。特殊な魔石に至っては、戦闘用の魔力を付与することも可能だ」
「そして、精製魔石は付与する魔力の種類によって精製する。一つ魔石を手に取ってみろ」
ダラスさんに促されるままに、一つの青い魔石を手にした。
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