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第2章《修行》編
第22話 魔導具作り
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「住み込みで修行してんのか!? 凄いな」
ロンさんはひたすら驚いている。ダラスさんが弟子を取るってそんなに驚くことなのかしら。
「でしょ? 僕も最初ダラスさんの店で聞いたとき驚いたよ」
「これからルーサが店番していたり、お二人のところにお使いに来たりもするからよろしくね」
リラーナが驚く二人に向かって言った。
「おう、そういうことならこれからよろしくな、ルーサ」
ロンさんは再び私の頭に大きな手を置くと、ワシワシと撫でた。その手が温かく、嬉しい気持ちになる。
「よろしくお願いします!」
「ハハハッ、威勢が良いな! 修行頑張れよ!」
「さてと、注文されてた魔石持ってきたよ」
そう言って鞄から魔石を取り出しテーブルに並べるウィスさん。
「おぉ、助かる!」
商売人の顔になったロンさんは魔石を光に翳し、じっくりと眺めている。ウィスさんが持って来た魔石全てを確認し、ニッと笑うと全ての魔石を買い取った。
「ついでにルーサちゃんに魔力付与された天然魔石を見せてあげてくれない?」
ウィスさんが持って来た魔石を包んでいた布を片付けながら言った。
「ん? 天然魔石か? あー、ちょうどまだ魔導具に装着させていない魔石があるから良いぞ」
そう言って店の奥から一つの石を持って来たロンさん。
その石は青色のような、紫色のような、なんだか色が揺らいでいるような、なんとも不思議な色だった。
「これ、水系の魔力を付与してあるんですか?」
リラーナと二人で石を覗き込みながら聞いた。すると、ロンさんはニヤッと笑う。
「そう思うだろ? でもな、これが違うんだよな」
アハハ、といたずらっぽく笑うロンさん。ウィスさんも横で笑っている。
「これは大地系の魔力が付与されてある」
「「大地系?」」
リラーナと二人で顔を見合わせた。
「あぁ。方位計に使われる魔石だな」
「土魔法のなかには地脈を感知し方角を知る魔法があるんだ」
ウィスさんがロンさんの後に続き説明をしてくれる。
「この世界には三つの国とそれらの国の中心に、女神アシェリアンの神殿があると言われているよね?」
リラーナと私は頷いた。
「女神アシェリアンの神殿は僕たちの住むアシェルーダの東にあるとされている。そして地脈を感知するとそれは女神アシェリアンの神殿へと繋がるんだ。だから方位計で東を基本として方角を知ることが出来る。ただ、アシェリアンの神殿は近付くと結界のためか方位計が狂うらしく、今まで誰もたどり着いたことはないらしいんだけどね」
「あー、何度となく大聖堂からじゃなく神殿に行ってやろうとした奴が、海で難破したとか聞いたことあるな」
馬鹿だよな、と笑うロンさんと、苦笑しているウィスさん。
そういえば洗礼式のとき、神殿でお父様から「女神アシェリアンの神殿の場所は誰も知らない」って聞いたわね。方位計も狂うとか、凄い結界が張ってあるのね。
「で、話は逸れたけど、これが天然魔石で大地系魔力の付与されたものってこと。色で判別出来ないでしょ?」
そう言いながら笑うウィスさん。うん、これは全く分からない。
「あー、色の判別のことか。この天然魔石は元々は普通の青色だったな」
ロンさんが石を指で摘まみ上げながら言った。
「今は紫色っぽい色も揺らいでいますよね」
「あぁ。魔力付与してからこの色になった。精製魔石と違って、色で判別出来ないし、魔力付与したあとは、違う色が揺らいだりするからなぁ。天然魔石は色の判別はしないほうが良い……というか、出来ないな」
「なるほど……」
色々奥が深いなぁ、と感心しっぱなしだ。
「さて、ここまでわざわざ来たということは、ルーサの紹介だけでなく、魔導具を作るところを見たいんだろ?」
ロンさんが石を片付けながら、ニッと笑った。
「ハハ、さすがロンさん、よく分かってるよね」
ウィスさんが笑いながら言う。リラーナも笑っている。
「ルーサに魔導具作りを見せてあげたいの」
「リラーナもついでに作りたいんだろ」
「バレたか」
そう言いながらリラーナとロンさんは笑い合っている。フフ、良い師弟関係ね。
「仕方ねーな。ちょっと待てよ」
ロンさんは店の奥へと入ると、一人の青年を連れて来た。
「すまんが、ちょっと店番変わってくれ」
「分かりました」
「あぁ、こいつはリラーナと同じく弟子でな。少しの間店番を頼んだから、その間に作業場で魔導具作りを見せてやるよ」
そう言って店の奥に入って行くロンさん。それに私たちは続いた。
店の奥はダラスさんのお店の作業場よりも広く、しかし、様々な部品が置いてあったりするので、部屋自体は物が溢れ返り狭く感じる。
「魔導具は材料を物理的に加工する場合と魔力を流して加工する場合がある」
ロンさんは作業台に様々な部品を並べ、説明をしていく。
「物理的加工と魔力を流す加工?」
「あぁ、物の外壁を作るには物理的加工だな。しかし、魔石の力を流すために影響する部分には魔力を流して加工していかないと発動出来ない」
ロンさんは部品を手に取り、物理的に叩いて型を作っていく。カンカンと叩く音が部屋に響き渡る。溶接したり叩いたり、そうして型作った物は四角く小さなテーブルのようなものだった。
「次に魔力を流して曲げていく」
ロンさんはひたすら驚いている。ダラスさんが弟子を取るってそんなに驚くことなのかしら。
「でしょ? 僕も最初ダラスさんの店で聞いたとき驚いたよ」
「これからルーサが店番していたり、お二人のところにお使いに来たりもするからよろしくね」
リラーナが驚く二人に向かって言った。
「おう、そういうことならこれからよろしくな、ルーサ」
ロンさんは再び私の頭に大きな手を置くと、ワシワシと撫でた。その手が温かく、嬉しい気持ちになる。
「よろしくお願いします!」
「ハハハッ、威勢が良いな! 修行頑張れよ!」
「さてと、注文されてた魔石持ってきたよ」
そう言って鞄から魔石を取り出しテーブルに並べるウィスさん。
「おぉ、助かる!」
商売人の顔になったロンさんは魔石を光に翳し、じっくりと眺めている。ウィスさんが持って来た魔石全てを確認し、ニッと笑うと全ての魔石を買い取った。
「ついでにルーサちゃんに魔力付与された天然魔石を見せてあげてくれない?」
ウィスさんが持って来た魔石を包んでいた布を片付けながら言った。
「ん? 天然魔石か? あー、ちょうどまだ魔導具に装着させていない魔石があるから良いぞ」
そう言って店の奥から一つの石を持って来たロンさん。
その石は青色のような、紫色のような、なんだか色が揺らいでいるような、なんとも不思議な色だった。
「これ、水系の魔力を付与してあるんですか?」
リラーナと二人で石を覗き込みながら聞いた。すると、ロンさんはニヤッと笑う。
「そう思うだろ? でもな、これが違うんだよな」
アハハ、といたずらっぽく笑うロンさん。ウィスさんも横で笑っている。
「これは大地系の魔力が付与されてある」
「「大地系?」」
リラーナと二人で顔を見合わせた。
「あぁ。方位計に使われる魔石だな」
「土魔法のなかには地脈を感知し方角を知る魔法があるんだ」
ウィスさんがロンさんの後に続き説明をしてくれる。
「この世界には三つの国とそれらの国の中心に、女神アシェリアンの神殿があると言われているよね?」
リラーナと私は頷いた。
「女神アシェリアンの神殿は僕たちの住むアシェルーダの東にあるとされている。そして地脈を感知するとそれは女神アシェリアンの神殿へと繋がるんだ。だから方位計で東を基本として方角を知ることが出来る。ただ、アシェリアンの神殿は近付くと結界のためか方位計が狂うらしく、今まで誰もたどり着いたことはないらしいんだけどね」
「あー、何度となく大聖堂からじゃなく神殿に行ってやろうとした奴が、海で難破したとか聞いたことあるな」
馬鹿だよな、と笑うロンさんと、苦笑しているウィスさん。
そういえば洗礼式のとき、神殿でお父様から「女神アシェリアンの神殿の場所は誰も知らない」って聞いたわね。方位計も狂うとか、凄い結界が張ってあるのね。
「で、話は逸れたけど、これが天然魔石で大地系魔力の付与されたものってこと。色で判別出来ないでしょ?」
そう言いながら笑うウィスさん。うん、これは全く分からない。
「あー、色の判別のことか。この天然魔石は元々は普通の青色だったな」
ロンさんが石を指で摘まみ上げながら言った。
「今は紫色っぽい色も揺らいでいますよね」
「あぁ。魔力付与してからこの色になった。精製魔石と違って、色で判別出来ないし、魔力付与したあとは、違う色が揺らいだりするからなぁ。天然魔石は色の判別はしないほうが良い……というか、出来ないな」
「なるほど……」
色々奥が深いなぁ、と感心しっぱなしだ。
「さて、ここまでわざわざ来たということは、ルーサの紹介だけでなく、魔導具を作るところを見たいんだろ?」
ロンさんが石を片付けながら、ニッと笑った。
「ハハ、さすがロンさん、よく分かってるよね」
ウィスさんが笑いながら言う。リラーナも笑っている。
「ルーサに魔導具作りを見せてあげたいの」
「リラーナもついでに作りたいんだろ」
「バレたか」
そう言いながらリラーナとロンさんは笑い合っている。フフ、良い師弟関係ね。
「仕方ねーな。ちょっと待てよ」
ロンさんは店の奥へと入ると、一人の青年を連れて来た。
「すまんが、ちょっと店番変わってくれ」
「分かりました」
「あぁ、こいつはリラーナと同じく弟子でな。少しの間店番を頼んだから、その間に作業場で魔導具作りを見せてやるよ」
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「物理的加工と魔力を流す加工?」
「あぁ、物の外壁を作るには物理的加工だな。しかし、魔石の力を流すために影響する部分には魔力を流して加工していかないと発動出来ない」
ロンさんは部品を手に取り、物理的に叩いて型を作っていく。カンカンと叩く音が部屋に響き渡る。溶接したり叩いたり、そうして型作った物は四角く小さなテーブルのようなものだった。
「次に魔力を流して曲げていく」
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