【完結】魔石精製師とときどき魔王 ~家族を失った伯爵令嬢の数奇な人生~

樹結理(きゆり)

文字の大きさ
上 下
23 / 247
第2章《修行》編

第22話 魔導具作り

しおりを挟む
「住み込みで修行してんのか!? 凄いな」

 ロンさんはひたすら驚いている。ダラスさんが弟子を取るってそんなに驚くことなのかしら。

「でしょ? 僕も最初ダラスさんの店で聞いたとき驚いたよ」

「これからルーサが店番していたり、お二人のところにお使いに来たりもするからよろしくね」

 リラーナが驚く二人に向かって言った。

「おう、そういうことならこれからよろしくな、ルーサ」

 ロンさんは再び私の頭に大きな手を置くと、ワシワシと撫でた。その手が温かく、嬉しい気持ちになる。

「よろしくお願いします!」
「ハハハッ、威勢が良いな! 修行頑張れよ!」



「さてと、注文されてた魔石持ってきたよ」

 そう言って鞄から魔石を取り出しテーブルに並べるウィスさん。

「おぉ、助かる!」

 商売人の顔になったロンさんは魔石を光に翳し、じっくりと眺めている。ウィスさんが持って来た魔石全てを確認し、ニッと笑うと全ての魔石を買い取った。

「ついでにルーサちゃんに魔力付与された天然魔石を見せてあげてくれない?」

 ウィスさんが持って来た魔石を包んでいた布を片付けながら言った。

「ん? 天然魔石か? あー、ちょうどまだ魔導具に装着させていない魔石があるから良いぞ」

 そう言って店の奥から一つの石を持って来たロンさん。
 その石は青色のような、紫色のような、なんだか色が揺らいでいるような、なんとも不思議な色だった。

「これ、水系の魔力を付与してあるんですか?」

 リラーナと二人で石を覗き込みながら聞いた。すると、ロンさんはニヤッと笑う。

「そう思うだろ? でもな、これが違うんだよな」

 アハハ、といたずらっぽく笑うロンさん。ウィスさんも横で笑っている。

「これは大地系の魔力が付与されてある」
「「大地系?」」

 リラーナと二人で顔を見合わせた。

「あぁ。方位計に使われる魔石だな」

「土魔法のなかには地脈を感知し方角を知る魔法があるんだ」

 ウィスさんがロンさんの後に続き説明をしてくれる。

「この世界には三つの国とそれらの国の中心に、女神アシェリアンの神殿があると言われているよね?」

 リラーナと私は頷いた。

「女神アシェリアンの神殿は僕たちの住むアシェルーダの東にあるとされている。そして地脈を感知するとそれは女神アシェリアンの神殿へと繋がるんだ。だから方位計で東を基本として方角を知ることが出来る。ただ、アシェリアンの神殿は近付くと結界のためか方位計が狂うらしく、今まで誰もたどり着いたことはないらしいんだけどね」
「あー、何度となく大聖堂からじゃなく神殿に行ってやろうとした奴が、海で難破したとか聞いたことあるな」

 馬鹿だよな、と笑うロンさんと、苦笑しているウィスさん。

 そういえば洗礼式のとき、神殿でお父様から「女神アシェリアンの神殿の場所は誰も知らない」って聞いたわね。方位計も狂うとか、凄い結界が張ってあるのね。

「で、話は逸れたけど、これが天然魔石で大地系魔力の付与されたものってこと。色で判別出来ないでしょ?」

 そう言いながら笑うウィスさん。うん、これは全く分からない。

「あー、色の判別のことか。この天然魔石は元々は普通の青色だったな」

 ロンさんが石を指で摘まみ上げながら言った。

「今は紫色っぽい色も揺らいでいますよね」
「あぁ。魔力付与してからこの色になった。精製魔石と違って、色で判別出来ないし、魔力付与したあとは、違う色が揺らいだりするからなぁ。天然魔石は色の判別はしないほうが良い……というか、出来ないな」
「なるほど……」

 色々奥が深いなぁ、と感心しっぱなしだ。



「さて、ここまでわざわざ来たということは、ルーサの紹介だけでなく、魔導具を作るところを見たいんだろ?」

 ロンさんが石を片付けながら、ニッと笑った。

「ハハ、さすがロンさん、よく分かってるよね」

 ウィスさんが笑いながら言う。リラーナも笑っている。

「ルーサに魔導具作りを見せてあげたいの」
「リラーナもついでに作りたいんだろ」
「バレたか」

 そう言いながらリラーナとロンさんは笑い合っている。フフ、良い師弟関係ね。

「仕方ねーな。ちょっと待てよ」

 ロンさんは店の奥へと入ると、一人の青年を連れて来た。

「すまんが、ちょっと店番変わってくれ」
「分かりました」

「あぁ、こいつはリラーナと同じく弟子でな。少しの間店番を頼んだから、その間に作業場で魔導具作りを見せてやるよ」

 そう言って店の奥に入って行くロンさん。それに私たちは続いた。


 店の奥はダラスさんのお店の作業場よりも広く、しかし、様々な部品が置いてあったりするので、部屋自体は物が溢れ返り狭く感じる。

「魔導具は材料を物理的に加工する場合と魔力を流して加工する場合がある」

 ロンさんは作業台に様々な部品を並べ、説明をしていく。

「物理的加工と魔力を流す加工?」
「あぁ、物の外壁を作るには物理的加工だな。しかし、魔石の力を流すために影響する部分には魔力を流して加工していかないと発動出来ない」

 ロンさんは部品を手に取り、物理的に叩いて型を作っていく。カンカンと叩く音が部屋に響き渡る。溶接したり叩いたり、そうして型作った物は四角く小さなテーブルのようなものだった。

「次に魔力を流して曲げていく」

しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...