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第2章《修行》編
第15話 精製魔石
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「天然魔石の採掘場にはいずれ連れて行ってやる。しばらくはろ過、蒸留で魔石を作る練習をしていけ」
「はい」
ダラスさんはまず石の加工を教えてくれた。
魔石の原石となる石。しかしそれだけでは小さすぎたり、魔石の魔力耐性が弱すぎたりして使い物にならない石を加工していくそうだ。
「まず細かい石を乳鉢ですり潰していく。それらを清水と混ぜ合わせろ過していく。ろ紙は特殊なものを使っている。かなり昔に開発されたものらしくてな。魔石精製師にだけ、そのろ紙の作り方は伝わっている。いずれお前にも作り方を教える」
そう言ってダラスさんは乳鉢ですり潰したものを清水と混ぜ合わせ、その特殊なろ紙を目の前に広げた。見た目はただの紙だけどなぁ。少し黄色っぽいかな、というくらいかしら。
それをろうとに装着させると、ビーカーにろ過させていった。
「これである程度の不純物を取り除くことが出来て《魔素》が含まれるものだけが残る。そこからさらに蒸留していく。ビーカーに溜まった魔石水を魔導具で加熱していくんだ。加熱されると魔石水は不純物と純水とに分けられ、魔素の純度も上がっていく。その出来上がった純魔石水を魔力で結晶化させていく」
ちなみに《魔素》というのは魔力の素らしい。人間でいうと体内に魔力の源になる魔素が生まれる核があり、そこから生まれ出たものが体内を巡るうちに魔力となり、体外に発動させると魔法となる。これは屋敷にいたときに勉強した。皆、幼い頃から勉強するような常識だ。
魔石の場合は、天然魔石は元から魔素と魔力が備わっているらしいが、精製魔石の場合は原石に含まれる魔素と魔石精製師の魔力を融合させていくと使用出来る魔石となる、ということだった。
別のビーカーに溜まった純魔石水。ダラスさんはそれを目の前でクルクルと動かしながら、どうやら魔力を送っているようだ。次第に純魔石水は粘りを持つかのような鈍い動きになってきた。
あまりにも不思議でジッとそれを見詰める。
次第に透明だった色も黄色く色付いてきた。粘りがあった純魔石水はスライムほどの固さとなり、ビーカーのなかでは振ってもプルプルとするだけで動かなくなった。
ダラスさんはそこまでくると、今度はビーカーから取り出し、両手にそれを持ち、掌で包み込む。そしてさらに魔力を送りこんでいく。
見ているだけでは手のなかでどのようになっているのか分からなかったが、終了したのだろう、ダラスさんが手を開け中身を見せてくれると、先程まで柔らかそうだった純魔石水スライムは宝石の固さとなり、小さな丸い結晶となっていた。
「わぁぁあ、凄い!! これ、あの純魔石水なんですよね!? ついさっきまでただの水だったのに!! 不思議!!」
触らせてもらった結晶はすっかり魔石となっていた。固く小さな黄色い魔石。光に翳すとキラリと輝いた。
「これがろ過、蒸留させた魔石だ。これを作るための魔力コントロール、魔力を練り上げて創るための魔力コントロールは少しやり方が違う。それはこれから身体で覚えろ」
身体で覚えろ……お、おぉ……適当な感じ……。
「手を出せ」
「?」
「俺から魔力コントロールしたものを送ってやる。それで覚えろ」
両手を差し出してきたダラスさんに釣られるように両手を差し出すと、ダラスさんは私の手を握り、魔力を送り始めた。
なんだかぞわぞわとなにかが流れてくるのが分かる。温かいようなそうでもないような不思議な感覚。
「これが今行った結晶化の魔力だ。結晶化の最中に送る魔力によって付与出来る魔力が違ってくる。魔石精製師は訓練次第で全ての魔力に対応出来る魔石を精製出来るようになる」
「師匠も?」
「……あぁ」
師匠と呼んだことに抵抗を感じたのか、少したじろいだダラスさん。
「魔力を練り上げて創るほうの魔力コントロールは今のやつが出来るようになってからだな」
「は、はい……」
こ、これ、出来るようになるかな……難しそう……。と、とりあえず練習あるのみよね!
ダラスさんは練習に使っても良い原石を教えてくれた。本当に使い物にならないほどの細かい魔石原石を練習用にたくさんくれた。私専用で使って良いと、昔ダラスさんが使っていた道具類も貸してくれた。
お膳立てはしてやったから、後はひたすら練習しろ、と。そのままダラスさんは自身の仕事に戻った。
ま、まずは石をゴリゴリするところからよね。さあ始めるわよ! と、意気込んだところで作業場にリラーナが現れた。
「父さん、お客さんだよ」
「誰だ?」
「ウィスさん」
呼ばれてダラスさんは店へと出た。確か、ウィスさんて魔導師さんよね。ダラスさんの創る魔石に魔力付与しているのがウィスさんだと言っていた。
き、気になる……ちょっと覗いてみようかしら……。
作業場からチラリと店を覗いてみると、速攻でバレた。
「あれ? どちら様だい?」
ギクッ!!
その言葉にダラスさんもリラーナも振り向いた。
「ちょうど良かった、ルーサも来い」
ダラスさんに呼ばれ、ドキドキしながらもリラーナの傍まで出て行った。若干リラーナの陰に隠れる形で立つ。
「こいつは昨日から弟子入りしてきたルーサだ。今後使いに出したりもするだろうから覚えといてくれ」
「へぇぇ!! ダラスさんの弟子かい!? 弟子を取るなんて珍しいね!!」
青い長髪を一つ括りにし、銀色の瞳のイケメンさんだなぁ、とか呑気なことを考えていると、その人はこちらに歩み寄り、顔を間近に近付け物珍しそうに私を見た。ち、近い。
「はい」
ダラスさんはまず石の加工を教えてくれた。
魔石の原石となる石。しかしそれだけでは小さすぎたり、魔石の魔力耐性が弱すぎたりして使い物にならない石を加工していくそうだ。
「まず細かい石を乳鉢ですり潰していく。それらを清水と混ぜ合わせろ過していく。ろ紙は特殊なものを使っている。かなり昔に開発されたものらしくてな。魔石精製師にだけ、そのろ紙の作り方は伝わっている。いずれお前にも作り方を教える」
そう言ってダラスさんは乳鉢ですり潰したものを清水と混ぜ合わせ、その特殊なろ紙を目の前に広げた。見た目はただの紙だけどなぁ。少し黄色っぽいかな、というくらいかしら。
それをろうとに装着させると、ビーカーにろ過させていった。
「これである程度の不純物を取り除くことが出来て《魔素》が含まれるものだけが残る。そこからさらに蒸留していく。ビーカーに溜まった魔石水を魔導具で加熱していくんだ。加熱されると魔石水は不純物と純水とに分けられ、魔素の純度も上がっていく。その出来上がった純魔石水を魔力で結晶化させていく」
ちなみに《魔素》というのは魔力の素らしい。人間でいうと体内に魔力の源になる魔素が生まれる核があり、そこから生まれ出たものが体内を巡るうちに魔力となり、体外に発動させると魔法となる。これは屋敷にいたときに勉強した。皆、幼い頃から勉強するような常識だ。
魔石の場合は、天然魔石は元から魔素と魔力が備わっているらしいが、精製魔石の場合は原石に含まれる魔素と魔石精製師の魔力を融合させていくと使用出来る魔石となる、ということだった。
別のビーカーに溜まった純魔石水。ダラスさんはそれを目の前でクルクルと動かしながら、どうやら魔力を送っているようだ。次第に純魔石水は粘りを持つかのような鈍い動きになってきた。
あまりにも不思議でジッとそれを見詰める。
次第に透明だった色も黄色く色付いてきた。粘りがあった純魔石水はスライムほどの固さとなり、ビーカーのなかでは振ってもプルプルとするだけで動かなくなった。
ダラスさんはそこまでくると、今度はビーカーから取り出し、両手にそれを持ち、掌で包み込む。そしてさらに魔力を送りこんでいく。
見ているだけでは手のなかでどのようになっているのか分からなかったが、終了したのだろう、ダラスさんが手を開け中身を見せてくれると、先程まで柔らかそうだった純魔石水スライムは宝石の固さとなり、小さな丸い結晶となっていた。
「わぁぁあ、凄い!! これ、あの純魔石水なんですよね!? ついさっきまでただの水だったのに!! 不思議!!」
触らせてもらった結晶はすっかり魔石となっていた。固く小さな黄色い魔石。光に翳すとキラリと輝いた。
「これがろ過、蒸留させた魔石だ。これを作るための魔力コントロール、魔力を練り上げて創るための魔力コントロールは少しやり方が違う。それはこれから身体で覚えろ」
身体で覚えろ……お、おぉ……適当な感じ……。
「手を出せ」
「?」
「俺から魔力コントロールしたものを送ってやる。それで覚えろ」
両手を差し出してきたダラスさんに釣られるように両手を差し出すと、ダラスさんは私の手を握り、魔力を送り始めた。
なんだかぞわぞわとなにかが流れてくるのが分かる。温かいようなそうでもないような不思議な感覚。
「これが今行った結晶化の魔力だ。結晶化の最中に送る魔力によって付与出来る魔力が違ってくる。魔石精製師は訓練次第で全ての魔力に対応出来る魔石を精製出来るようになる」
「師匠も?」
「……あぁ」
師匠と呼んだことに抵抗を感じたのか、少したじろいだダラスさん。
「魔力を練り上げて創るほうの魔力コントロールは今のやつが出来るようになってからだな」
「は、はい……」
こ、これ、出来るようになるかな……難しそう……。と、とりあえず練習あるのみよね!
ダラスさんは練習に使っても良い原石を教えてくれた。本当に使い物にならないほどの細かい魔石原石を練習用にたくさんくれた。私専用で使って良いと、昔ダラスさんが使っていた道具類も貸してくれた。
お膳立てはしてやったから、後はひたすら練習しろ、と。そのままダラスさんは自身の仕事に戻った。
ま、まずは石をゴリゴリするところからよね。さあ始めるわよ! と、意気込んだところで作業場にリラーナが現れた。
「父さん、お客さんだよ」
「誰だ?」
「ウィスさん」
呼ばれてダラスさんは店へと出た。確か、ウィスさんて魔導師さんよね。ダラスさんの創る魔石に魔力付与しているのがウィスさんだと言っていた。
き、気になる……ちょっと覗いてみようかしら……。
作業場からチラリと店を覗いてみると、速攻でバレた。
「あれ? どちら様だい?」
ギクッ!!
その言葉にダラスさんもリラーナも振り向いた。
「ちょうど良かった、ルーサも来い」
ダラスさんに呼ばれ、ドキドキしながらもリラーナの傍まで出て行った。若干リラーナの陰に隠れる形で立つ。
「こいつは昨日から弟子入りしてきたルーサだ。今後使いに出したりもするだろうから覚えといてくれ」
「へぇぇ!! ダラスさんの弟子かい!? 弟子を取るなんて珍しいね!!」
青い長髪を一つ括りにし、銀色の瞳のイケメンさんだなぁ、とか呑気なことを考えていると、その人はこちらに歩み寄り、顔を間近に近付け物珍しそうに私を見た。ち、近い。
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