【完結】生意気な黒猫と異世界観察がてら便利屋はじめました。大好きなラノベを読むため必ず帰ってみせます!

樹結理(きゆり)

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本編

第六十二話 異世界への扉

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 一通りの話を終えるとアルティス殿下とリュウノスケさんは城へと帰って行った。
 なぜかアルティス殿下がラズに「頑張れ」って言ってたのは意味不明だったけど。

『ヒナタ、……やっぱり日本に帰りたいのか?』
「ん? ……うん、帰りたい」
『…………そうか…………』

 そう呟くとラズはそのまま黙ってしまった。
 私がいなくなるほうがラズはエルフィーネ様の元に戻れるじゃない。ラズのために……、いや、うん、違うか……、自分のためよね。自分が傷付きたくないから逃げるのよ。

 何やら考え込んでいるラズの後ろ姿を眺めながらふと考える。

 私はラズのどこが好きなんだろう。

 一緒にいると楽しい。いなくなると寂しい。お馬鹿だけど、いつもツンツンしているけど、本当は優しい。人間だと分かったから異性として意識し出したんだろうけど、猫のときからラズがいないと駄目になってしまっていたしな……。

 もし猫のままだったとしても、きっとラズがいなくなると寂しくてどうしようもなかったはず。あのラズが家出したときに、嫌というほど分かった。私はラズがいないと駄目なのよ。

 だからこそこのままここにいるとラズはいつまでも私から離れようとしないし、もし本当に離れてしまったときは自分が辛くなるから……、私は逃げようとしている。

 なんて自分勝手なんだろう、と苦笑した。でもそうするしかなかった。





 それからは再び何でも屋の仕事に戻り、仕事が終わると日本人に会いに行き、色々聞いて回るという日々が続いた。
 キミカさん、コタロウさん、それ以外にも王都には数名の日本人が暮らしていた。色々聞いてみるが異世界に来たときのことはあまりに突然で覚えていない、という反応ばかりだった。

 強いて言えば皆「満月を見た気がする」というくらいか。しかもそれもうろ覚えで定かではない。

 日本人の人達には日本に帰ることが出来るかもしれない、と伝え、この話は内密にと念を押した。キミカさんは帰りたいと言ったが他の日本人たちはもうすでに長い年月この異世界で暮らしている、だからもう良いんだ、と帰る意思は見せなかった。


 あまりの情報のなさにぐったりしていたが、ある日コゴンじぃさんとお茶をしているときの世間話に気になることを聞いた。

「そういえば日本人がやって来たって日を聞くと思い出すのは月食があったことだなぁ」
「月食?」
「あぁ、月が見えなくなってなぁ……」

 皆既月食か! 今までの中で一番手掛かりになりそうかしら。アルティス殿下にも伝えないとね。


 そしてあるときにはロノアと遊んでいるときに不思議な話を聞いた。

「ぼくねぇ、おそらにきらきらみたことあるの~」
「きらきら?」
「うん、おつきさまからねぇ、おほしさまふってきたのー!」
「んん??」

 なんだかよく分からない……、どういうことかしら。

 アルミリアさんが帰って来てからその話を聞いてみると、どうやらロノアが夜寝るときに、窓から空を眺めていると、キラキラと光る何かが降って来たそうだ。
 それは月が欠け出したときに起こったようで、ロノアはお月様が零れ落ちてきた、と言ったらしい。

 こっちも月食か……。月食になにかあるのかしら。


 アルティス殿下とリュウノスケさんとが再び街にやって来ては、聞いた情報を共有する。そうやってあまり多くはない情報を元に色々考えていくと、どうやら月食が関係していそうだ、という結論に至った。

「月からキラキラしたもの、というのは謎だね」

 アルティス殿下はふむ、と顎に手を添え考え込んだ。

「月食自体はそんなに珍しいことでもないですし、月食のたびに日本人が流れて来ているとも思えないですしね」

 リュウノスケさんが言う。

「確かに月食のたびに、では、頻度が多過ぎるし、その割には日本人の数が少ないし……」

 三人でうーん、と考え込んでしまった。せっかく月食が関係してそうだと分かったのに。

「あの森に行ってみましょうか」
「「えっ」」

 アルティス殿下がにこやかに言った言葉にリュウノスケさんが苦笑した。

「良いんですか? そんなところをうろついていたら怪しまれませんか?」
「うーん、まあそこはこっそりと」

 ハハ、とアルティス殿下は能天気な感じで笑った。

「こっそりとって……」

 リュウノスケさんと顔を見合わせお互い苦笑するのだった。


 仕方がないので三人と一匹、さらに護衛の方二人とであの森へと向かった。

 地図を見ながら日本人が現れた場所を探っていく。少し開けた場所やら、木々で鬱蒼とした場所やら様々だが、特に目立ったものはないような気がした。

 しかし開けた場所ではなく、鬱蒼とした木々の間に何やら光るものを見付ける。

「なんだあれ」

 リュウノスケさんが光るそれに近付き、危険がないか確認してから掌に乗せる。

 それは小さな石だった。真っ黒の小石。
 それがほのかに青白く光っているのだ。

「なんですかこれ?」
「さあ、見たこともないな」
「僕も見たことないですね」

 周りをよくよく見渡すと、そうやってぼんやり光る小さな石がたくさん落ちていた。

「なんかたくさんある……」

「…………、これ、ロノアとかいう子供が言ってたやつじゃないか?」

 リュウノスケさんの発言にアルティス殿下も私もハッとした顔になり、顔を見合わせた。

「月の石? 結晶?」

「何かは分からないが、月からキラキラしたものが見えた、というのはこの小石が空から降って来てたんじゃ……」

「うん、可能性はありますね」

 ということは、と言って、三人で日本人が現れた場所を全て探っていった。
 開けた場所などは風でさらわれたのか、落ちていなかったが、鬱蒼とした森の中には無数の光る小石を発見した。

「これは研究する必要がありますね」

 そう言い残し、アルティス殿下はその大量の石を持ち帰り研究を重ねた。





 そうしてアルティス殿下は一つの仮説を立てた。

 満月が皆既月食を迎えるとき、月の力が歪みそれが零れ落ちるのではないか。その零れ落ちたものがあの光る石。
 そしてその石が零れ落ちることによって空間に歪みが生じ、異世界への扉が開いてしまう。

 そういった仮説だった。だが、これは仮説とは思えない気がした。

「おそらく月食だからといって、全てあの石が降ってくる訳ではないのでしょう。何かの弾みで月の力が歪んでしまったとき、あの石が降ってくる。そしてその石のせいで空間が歪む……、僕はそう考えます」

「次の月食のときに確認しましょう! もしかしたらそのときに日本への扉が開くかもしれない!」

 そうアルティス殿下は宣言した。

「次の月食はいつですか?」

「次の月食は……」


 一週間後だった……


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