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本編
第四十二話 フルコースが最高だった
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ラズとヤイヤイ言い合っていると、扉がノックされニアナが夕食を持って現れた。
すっかり日も暮れ、そんな時間まで寝てしまっていたのか、と自分に呆れつつも、テーブルに着く。
用意された夕食はまあ豪華!!
食事はちょっと期待してたのよね! だってお城よ、お城! 食事も豪華そうじゃない!
日本にいたときだって、こちらに来てからだって、こんな豪華な食事食べたことないわよ!
あぁ、感動!!
『何やってんだ?』
ラズが小声で聞いた。
感動のあまりに思わず神様にお祈りしてたよ。
「ハハ、何でもない」
料理は所謂フランス料理のフルコースのような感じ。前菜から始まりスープ、魚料理、口直し、肉料理が来て、デザートにドリンク。フランス料理のフルコースなんか食べたことないですけどね!
前菜はテリーヌだっけ? 何だかゼリーのようなもの。中には色とりどりの野菜らしきものが入っていて、見た目にもとても綺麗。
ひんやり冷たくぷるるんとしたゼリーはコンソメのような味かしら。でも何か少し甘みもあり不思議な味。
このひんやりしているのは、あの切り出しに行った氷が使われているのかしら、とか考えながらチラリとラズを見た。あのときのラズを思い出してしまう。
ラズはそんな私の想いはお構いなしに、ゼリーにかぶりついたかと思うと一口で食べた。
「ちょ、ちょっと! 一口って!! もっと味わいなさいよ!」
『んあ?』
口をパンパンにしながら、もぐもぐしているラズが何とも…………、ブッ、いやまあ可愛いんだけどね。
ズルいわぁ、いつも可愛い姿で許してしまう。
ニアナもそんなラズの姿に笑っている。まあ良いか。
スープは何だろう、色的にオニオンスープかと思ったら、味が全く違うかった。
「これって何のスープ?」
横で給仕をしてくれているニアナに聞いた。
「これはオニレオという野菜のスープです」
オニレオの見た目を聞いているとどうやら、大根のような根菜類ぽい感じかしら。味はなんというかゴボウのような? ちょっとクセのある感じね。
とても栄養価が高くお高い野菜らしい。うん、薬膳スープみたいな感じかしらね。お味はね、うん、薬膳……。
ラズは猫舌だからか、少し舌を伸ばし舐めようとすると小さく『ギャッ』と呟いていた。スープは諦めたようだ。
魚料理は白身魚。ソテーされ皮はカリカリで香ばしい。白いソースがかかっていて、少し甘みもあり、魚の塩気と良いバランスだった。
口直しにはソルベを。ソルベ! え? ソルベってシャーベットみたいなものよね。この世界にシャーベットなんてあるの!? 氷だけであんな貴重なのに。
それをニアナに聞くと、
「私はよく知らないのですが、氷と果物を使って作るらしいですよ? でも氷自体が貴重だから、中々たくさんは作れないそうですが」
「へぇぇ」
な、何かそんなことを聞いてしまうと、そんな貴重なものを私みたいな庶民が口にして良いのかしら、と思ってしまう。
「フフ、そんな気になさらず召し上がってください。料理長がせっかく腕を振るったのですから」
躊躇っているとニアナは笑いながらそう言った。
そ、そうよね、せっかく私のために作っていただいたのだから、食べないと申し訳ないわよね。
ラズはすっかり食べ終わってるけど……もうちょっと遠慮しなさいよね……。
ひんやり冷たいソルベはレモンのような果実の皮が小さく刻んで入っていて、甘酸っぱくさっぱりしていた。氷に味があるというよりはかき氷みたいなイメージかしら。シロップのように氷にかけてあるのかな? といった感じ。
ソルベで口直しした後は肉料理が運ばれて来た。
肉料理はジークが食べていたような豪快な肉ではなく、カットされた肉が数枚。
しかしこれがめちゃくちゃ柔らかい肉! クセもなく美味しいー!! ちょっと感動してしまった。
最後にはデザートとドリンク。
所謂ケーキだけど、どれも小ぶりなプチケーキが三個、さらにはムースみたいなものもある。一皿に綺麗に飾られ、周りには小さな花弁が散らされている。
「可愛い!!」
キャッキャと喜んでいるとニアナは微笑み、ラズは呆れた顔をしていた。
「デザートは専属の料理人が作っているんです。女性なんですよ」
「へぇぇ! 女性! 凄いわね」
女性が料理人というのは、中々厳しい世界なんじゃないのかしら、何となく男社会のイメージ。そう考えたのが、ニアナに伝わったのか、目を輝かせ嬉々として答えた。
「ライラさんは凄いんですよ! 女性でありながら、男性にも負けず料理長の右腕にまで登り詰めた人なんです!」
ニアナが興奮気味に話す。ライラさんという女性がパティシエとしてこのデザートを作ってるのね。
「へー、女性で料理長の右腕かぁ、それは凄い」
「でも急にデザートに目覚めてそれ専門になってしまったという変わった方でもあるんですけどね」
ニアナは笑った。確かにそこまで登り詰めていながらの急な方向転換ね。そんなところまで登り詰める方の考えは分からないけど……、
「でもまあそのおかげでこんな素敵なデザート食べられているのよね」
ふむ、と真面目な顔をすると、ニアナはきょとんとした顔をしてからアハハと笑った。
「確かにそうですね、このデザートはライラさんじゃないと作れません」
「会ってみたいなぁ、謁見終わって自由行動の許可が出たらライラさんにも会えるかな」
ニアナは少し考えてから答える。
「分かりませんが、多分会えるのではないですかね」
ニアナいわく、城内は王族の間以外は立ち入り禁止の部屋が何箇所かあるくらいで、厨房は特に立ち入り禁止ではないはずだ、と。
ただし料理長の許可は必要だということだった。それはそうよね。
うん、でも謁見は気が重いけど、楽しみが出来た! よし、こうなりゃあちこち散策してやる!
「フッフッフッ」
変な笑いが漏れてしまい、ニアナには苦笑され、ラズはドン引きだった。
デザートは見た目だけでなく味もあっさりとした甘さでとても美味しく、ドリンクもどうやら紅茶のようなお茶だった。
最後まで食べきるとさすがに満腹で幸せな気分。
「あー、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
「フフ、良かったです。では明朝お迎えにあがりますね」
そう言いニアナは部屋を後にした。
いよいよ、明日謁見……。くっ、胃が痛い。決して食べすぎたからではなく!
「あぁ、緊張する……ラズも一緒に行けたら良かったのに……」
『いい加減諦めろ、部屋で待ってるからさ、頑張って来いよ』
「うぅ……ラズぅ」
何だか落ち着かないからラズを抱き締めた。それを理解しているからか、ラズは大人しく抱かれていた。
ラズを抱っこしたまま窓の外を眺めると、ポツリポツリと雨が降っていた。
「雨だ……、この世界に来て初めて雨が降ってるのを見た……」
『そうだったか?』
「うん」
ポツポツと次第に雨足が強くなっていく。
窓から外を眺めると、遥か彼方に小さく街の灯りが見えるが、それ以外は真っ暗だ。
城の灯りが漏れているくらいで、暗く静まり返っているので雨音が響く。
『雨上がりが綺麗らしいぞ』
「ん? 雨上がり?」
『あぁ、なかなか見るタイミングが合わないから俺も見たことはないが、朝陽を浴びた雨の雫はなぜか紫に輝くらしい』
「へぇぇ! 紫に!? 何それ! 見たい!」
あまりにテンション高く食い付いたからか、ラズが少し笑う。
『フッ、だからそんな簡単には見れないんだよ。日の出、朝陽が昇る瞬間の光を浴びないと駄目らしいからなぁ』
「えー、そんなのなかなか見られないじゃない。見たかったなぁ」
シトシトと降る雨を眺めながらラズを撫でた。
「いつか見たいねぇ」
『そうだな』
そんなことを呟き、雨音だけが響く部屋で豪華なベッドに横たわり眠りに就くのだった。
ラズのおかげで謁見の緊張よりも、紫の雫というものに想いを馳せながら。
すっかり日も暮れ、そんな時間まで寝てしまっていたのか、と自分に呆れつつも、テーブルに着く。
用意された夕食はまあ豪華!!
食事はちょっと期待してたのよね! だってお城よ、お城! 食事も豪華そうじゃない!
日本にいたときだって、こちらに来てからだって、こんな豪華な食事食べたことないわよ!
あぁ、感動!!
『何やってんだ?』
ラズが小声で聞いた。
感動のあまりに思わず神様にお祈りしてたよ。
「ハハ、何でもない」
料理は所謂フランス料理のフルコースのような感じ。前菜から始まりスープ、魚料理、口直し、肉料理が来て、デザートにドリンク。フランス料理のフルコースなんか食べたことないですけどね!
前菜はテリーヌだっけ? 何だかゼリーのようなもの。中には色とりどりの野菜らしきものが入っていて、見た目にもとても綺麗。
ひんやり冷たくぷるるんとしたゼリーはコンソメのような味かしら。でも何か少し甘みもあり不思議な味。
このひんやりしているのは、あの切り出しに行った氷が使われているのかしら、とか考えながらチラリとラズを見た。あのときのラズを思い出してしまう。
ラズはそんな私の想いはお構いなしに、ゼリーにかぶりついたかと思うと一口で食べた。
「ちょ、ちょっと! 一口って!! もっと味わいなさいよ!」
『んあ?』
口をパンパンにしながら、もぐもぐしているラズが何とも…………、ブッ、いやまあ可愛いんだけどね。
ズルいわぁ、いつも可愛い姿で許してしまう。
ニアナもそんなラズの姿に笑っている。まあ良いか。
スープは何だろう、色的にオニオンスープかと思ったら、味が全く違うかった。
「これって何のスープ?」
横で給仕をしてくれているニアナに聞いた。
「これはオニレオという野菜のスープです」
オニレオの見た目を聞いているとどうやら、大根のような根菜類ぽい感じかしら。味はなんというかゴボウのような? ちょっとクセのある感じね。
とても栄養価が高くお高い野菜らしい。うん、薬膳スープみたいな感じかしらね。お味はね、うん、薬膳……。
ラズは猫舌だからか、少し舌を伸ばし舐めようとすると小さく『ギャッ』と呟いていた。スープは諦めたようだ。
魚料理は白身魚。ソテーされ皮はカリカリで香ばしい。白いソースがかかっていて、少し甘みもあり、魚の塩気と良いバランスだった。
口直しにはソルベを。ソルベ! え? ソルベってシャーベットみたいなものよね。この世界にシャーベットなんてあるの!? 氷だけであんな貴重なのに。
それをニアナに聞くと、
「私はよく知らないのですが、氷と果物を使って作るらしいですよ? でも氷自体が貴重だから、中々たくさんは作れないそうですが」
「へぇぇ」
な、何かそんなことを聞いてしまうと、そんな貴重なものを私みたいな庶民が口にして良いのかしら、と思ってしまう。
「フフ、そんな気になさらず召し上がってください。料理長がせっかく腕を振るったのですから」
躊躇っているとニアナは笑いながらそう言った。
そ、そうよね、せっかく私のために作っていただいたのだから、食べないと申し訳ないわよね。
ラズはすっかり食べ終わってるけど……もうちょっと遠慮しなさいよね……。
ひんやり冷たいソルベはレモンのような果実の皮が小さく刻んで入っていて、甘酸っぱくさっぱりしていた。氷に味があるというよりはかき氷みたいなイメージかしら。シロップのように氷にかけてあるのかな? といった感じ。
ソルベで口直しした後は肉料理が運ばれて来た。
肉料理はジークが食べていたような豪快な肉ではなく、カットされた肉が数枚。
しかしこれがめちゃくちゃ柔らかい肉! クセもなく美味しいー!! ちょっと感動してしまった。
最後にはデザートとドリンク。
所謂ケーキだけど、どれも小ぶりなプチケーキが三個、さらにはムースみたいなものもある。一皿に綺麗に飾られ、周りには小さな花弁が散らされている。
「可愛い!!」
キャッキャと喜んでいるとニアナは微笑み、ラズは呆れた顔をしていた。
「デザートは専属の料理人が作っているんです。女性なんですよ」
「へぇぇ! 女性! 凄いわね」
女性が料理人というのは、中々厳しい世界なんじゃないのかしら、何となく男社会のイメージ。そう考えたのが、ニアナに伝わったのか、目を輝かせ嬉々として答えた。
「ライラさんは凄いんですよ! 女性でありながら、男性にも負けず料理長の右腕にまで登り詰めた人なんです!」
ニアナが興奮気味に話す。ライラさんという女性がパティシエとしてこのデザートを作ってるのね。
「へー、女性で料理長の右腕かぁ、それは凄い」
「でも急にデザートに目覚めてそれ専門になってしまったという変わった方でもあるんですけどね」
ニアナは笑った。確かにそこまで登り詰めていながらの急な方向転換ね。そんなところまで登り詰める方の考えは分からないけど……、
「でもまあそのおかげでこんな素敵なデザート食べられているのよね」
ふむ、と真面目な顔をすると、ニアナはきょとんとした顔をしてからアハハと笑った。
「確かにそうですね、このデザートはライラさんじゃないと作れません」
「会ってみたいなぁ、謁見終わって自由行動の許可が出たらライラさんにも会えるかな」
ニアナは少し考えてから答える。
「分かりませんが、多分会えるのではないですかね」
ニアナいわく、城内は王族の間以外は立ち入り禁止の部屋が何箇所かあるくらいで、厨房は特に立ち入り禁止ではないはずだ、と。
ただし料理長の許可は必要だということだった。それはそうよね。
うん、でも謁見は気が重いけど、楽しみが出来た! よし、こうなりゃあちこち散策してやる!
「フッフッフッ」
変な笑いが漏れてしまい、ニアナには苦笑され、ラズはドン引きだった。
デザートは見た目だけでなく味もあっさりとした甘さでとても美味しく、ドリンクもどうやら紅茶のようなお茶だった。
最後まで食べきるとさすがに満腹で幸せな気分。
「あー、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
「フフ、良かったです。では明朝お迎えにあがりますね」
そう言いニアナは部屋を後にした。
いよいよ、明日謁見……。くっ、胃が痛い。決して食べすぎたからではなく!
「あぁ、緊張する……ラズも一緒に行けたら良かったのに……」
『いい加減諦めろ、部屋で待ってるからさ、頑張って来いよ』
「うぅ……ラズぅ」
何だか落ち着かないからラズを抱き締めた。それを理解しているからか、ラズは大人しく抱かれていた。
ラズを抱っこしたまま窓の外を眺めると、ポツリポツリと雨が降っていた。
「雨だ……、この世界に来て初めて雨が降ってるのを見た……」
『そうだったか?』
「うん」
ポツポツと次第に雨足が強くなっていく。
窓から外を眺めると、遥か彼方に小さく街の灯りが見えるが、それ以外は真っ暗だ。
城の灯りが漏れているくらいで、暗く静まり返っているので雨音が響く。
『雨上がりが綺麗らしいぞ』
「ん? 雨上がり?」
『あぁ、なかなか見るタイミングが合わないから俺も見たことはないが、朝陽を浴びた雨の雫はなぜか紫に輝くらしい』
「へぇぇ! 紫に!? 何それ! 見たい!」
あまりにテンション高く食い付いたからか、ラズが少し笑う。
『フッ、だからそんな簡単には見れないんだよ。日の出、朝陽が昇る瞬間の光を浴びないと駄目らしいからなぁ』
「えー、そんなのなかなか見られないじゃない。見たかったなぁ」
シトシトと降る雨を眺めながらラズを撫でた。
「いつか見たいねぇ」
『そうだな』
そんなことを呟き、雨音だけが響く部屋で豪華なベッドに横たわり眠りに就くのだった。
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