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第10話 呼ばれた理由
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「それでだ、そのとき私は運命を感じたのだよ」
一体私はなにを聞かされているのだろう……。
王城へ呼び出され、王都へ到着次第、お父様と共に王城へ向かいロベルト様と面会した。
それが数時間前、それからやたらと笑顔で話され、以前のように手の甲へと挨拶のキスをされそうになったが、そこはお父様が庇ってくださった。
久しぶりだとか、最近はどうだとか、どうでもいい話をしていたかと思うと、今度は自分の運命の出逢い話へと発展していった。
男爵令嬢であるフィリア様。名前は別に知りたくもなかったのですが。
彼女と街中で運命の出逢いを果たしたのだと興奮しながらお話されていらっしゃる。別に聞きたくもないのですけれどね。
たまたまお忍びで出かけていたロベルト様はたまたま街に来ていたフィリア様が暴漢に襲われていたところをたまたま助けたのだそうだ。そのときフィリア様はお礼がしたいと食事に誘ったらしいのだが、そのときは断り別れたらしい。しかしその後また違う店で出逢い運命を感じたのだそうだ。
「へー……」
私もお父様もシラーッとした顔になってしまう。でもロベルト様はそれにすら気付かれていないのでしょうね。
心底どうでもいいお話ですこと。
「お父様、これって……」
楽しそうに話すロベルト様を尻目にお父様に耳打ちする。
「これって策略とかではありませんわよね?」
明らかに怪しい出逢いのような気がするので、一応お父様に確認をしてみた。するとお父様も小声で返事をする。
「いや、違うと思う。フィリア嬢のお父上、ジエスト男爵はそのような方ではない。今回の件も謝罪しに来られた腰の低い方だよ。今まで暗躍の噂なども聞いたことすらない。どちらかと言えば、気の弱いお方だな」
なるほど、では今回の件は本当に偶然の出逢い……あぁ、運命の出逢いでしたっけ。政治的なものなど一切なく、本当にたまたま出逢われ、婚約者がいるにも関わらず魅かれてしまったロベルト様がただのおバカ……おっと、失言でしたわね。
まあでもこれで運命の出逢いとやらで二人は本当に出逢われたということだけははっきりしましたわね。心底どうでもいいですが。
「で、わざわざ私を王城まで呼び付けた理由をお教えくださります?」
さっさと終わらせて帰りたい。ラキシスに心配をかけたくない。
そう思っていたのに、王城へ登城してからすでにもう一週間ほど経ってしまった。なぜこんなことに!!
あの聞きたくもない運命の出逢い話をひとしきり聞かされたあと、なぜか私はフィリア様と面会させられた。
そしてそこで耳を疑うような台詞を聞いたのだった。
ロベルト様はとんでもないことを言い出した。
「ロザリア、君に頼みたいことというのは、このフィリアの王妃教育を手伝ってやって欲しいんだ」
「は!?」
なにを言っているのだ、この人は。私もお父様も唖然とし言葉が出ない。ロベルト様は意気揚々と話してらっしゃるが、当のフィリア様はなんだか複雑そうなお顔。
「ロベルト様。我が娘に王妃教育を手伝えとは一体どういうことでしょう」
お父様がなんとか頭を整理しつつ言葉になさった。
「そのままの意味だよ。フィリアは王妃教育が始まったばかりでまだ戸惑っているんだ」
それはそうでしょう。私は幼い頃からこの王妃教育を受けていたので、なんとかこなせていたけれど、今までそんな知識もない方が突然王妃教育を受けて戸惑わないわけがない。
しかもロベルト様は今二十二歳。この国では王太子が二十五歳になった時点で王位を継承する。ということはつまりだ、あと三年しかないのだ。
三年で王妃教育を完璧に習得し終わらせないといけない。ちなみに私は婚約者に決められた五歳のころから教育を受けておりました。今現在十八歳でございます。つまり十三年間の教育に耐えていたわけですわね。長い間頑張ったわね、私。
そういえばラキシスが前ダルヴァン辺境伯の跡を継いだのも今のロベルト様と同じ二十二歳だとおっしゃっていたわね。突然二十二歳の若さで跡を継ぐことになって、さぞかし大変だったでしょうね。そのときのラキシスに寄り添って差し上げたかったわ。
「ロザリア、聞いているかい?」
うっとりと昔のラキシスに思いを馳せていたら突然現実に引き戻され、能天気なお顔のロベルト様にうんざりとした。
「だからロザリアにフィリアを助けてもらいたいんだ。一緒に勉強を見て、分からないところは教えてやって欲しい」
開いた口が塞がらない。この方はどこまで私を侮辱したら気が済むのだろう。
「お断りしますわ」
「!?」
断られるとは思っていなかったのだろう、ニコニコしたまま話していたロベルト様は私の言葉を聞いて心底驚いた顔をした。
「なぜだい!?」
「なぜ? 逆になぜ私が了承すると思ったのかが不思議で仕方ありませんわ。なぜ私がそのお話を受けるとお思いになるのです」
「え、だってロザリアは王妃教育を受けて来たじゃないか」
「は? だから?」
イラッとしてしまい、思わず不敬な態度となってしまう。
「だから王妃教育の大変さは分かるだろう? それにロザリアは責任感が強いじゃないか」
「……」
だからなぜそれで私が婚約者を奪った相手の教育を手伝わなければならないのよ。沸々と怒りが込み上げる。
「いい加減に……」
そう言いかけたときお父様が口を開いた。
「ロベルト様、このことを陛下はご存じなのですか?」
極めて静かな声で言葉にしたお父様。これはきっとかなりお怒りですわね。普段とても優しいお父様だが、怒るととても怖い。冷たく感情のない声で冷静に言葉を発する姿を見ると背筋が凍る。
一体私はなにを聞かされているのだろう……。
王城へ呼び出され、王都へ到着次第、お父様と共に王城へ向かいロベルト様と面会した。
それが数時間前、それからやたらと笑顔で話され、以前のように手の甲へと挨拶のキスをされそうになったが、そこはお父様が庇ってくださった。
久しぶりだとか、最近はどうだとか、どうでもいい話をしていたかと思うと、今度は自分の運命の出逢い話へと発展していった。
男爵令嬢であるフィリア様。名前は別に知りたくもなかったのですが。
彼女と街中で運命の出逢いを果たしたのだと興奮しながらお話されていらっしゃる。別に聞きたくもないのですけれどね。
たまたまお忍びで出かけていたロベルト様はたまたま街に来ていたフィリア様が暴漢に襲われていたところをたまたま助けたのだそうだ。そのときフィリア様はお礼がしたいと食事に誘ったらしいのだが、そのときは断り別れたらしい。しかしその後また違う店で出逢い運命を感じたのだそうだ。
「へー……」
私もお父様もシラーッとした顔になってしまう。でもロベルト様はそれにすら気付かれていないのでしょうね。
心底どうでもいいお話ですこと。
「お父様、これって……」
楽しそうに話すロベルト様を尻目にお父様に耳打ちする。
「これって策略とかではありませんわよね?」
明らかに怪しい出逢いのような気がするので、一応お父様に確認をしてみた。するとお父様も小声で返事をする。
「いや、違うと思う。フィリア嬢のお父上、ジエスト男爵はそのような方ではない。今回の件も謝罪しに来られた腰の低い方だよ。今まで暗躍の噂なども聞いたことすらない。どちらかと言えば、気の弱いお方だな」
なるほど、では今回の件は本当に偶然の出逢い……あぁ、運命の出逢いでしたっけ。政治的なものなど一切なく、本当にたまたま出逢われ、婚約者がいるにも関わらず魅かれてしまったロベルト様がただのおバカ……おっと、失言でしたわね。
まあでもこれで運命の出逢いとやらで二人は本当に出逢われたということだけははっきりしましたわね。心底どうでもいいですが。
「で、わざわざ私を王城まで呼び付けた理由をお教えくださります?」
さっさと終わらせて帰りたい。ラキシスに心配をかけたくない。
そう思っていたのに、王城へ登城してからすでにもう一週間ほど経ってしまった。なぜこんなことに!!
あの聞きたくもない運命の出逢い話をひとしきり聞かされたあと、なぜか私はフィリア様と面会させられた。
そしてそこで耳を疑うような台詞を聞いたのだった。
ロベルト様はとんでもないことを言い出した。
「ロザリア、君に頼みたいことというのは、このフィリアの王妃教育を手伝ってやって欲しいんだ」
「は!?」
なにを言っているのだ、この人は。私もお父様も唖然とし言葉が出ない。ロベルト様は意気揚々と話してらっしゃるが、当のフィリア様はなんだか複雑そうなお顔。
「ロベルト様。我が娘に王妃教育を手伝えとは一体どういうことでしょう」
お父様がなんとか頭を整理しつつ言葉になさった。
「そのままの意味だよ。フィリアは王妃教育が始まったばかりでまだ戸惑っているんだ」
それはそうでしょう。私は幼い頃からこの王妃教育を受けていたので、なんとかこなせていたけれど、今までそんな知識もない方が突然王妃教育を受けて戸惑わないわけがない。
しかもロベルト様は今二十二歳。この国では王太子が二十五歳になった時点で王位を継承する。ということはつまりだ、あと三年しかないのだ。
三年で王妃教育を完璧に習得し終わらせないといけない。ちなみに私は婚約者に決められた五歳のころから教育を受けておりました。今現在十八歳でございます。つまり十三年間の教育に耐えていたわけですわね。長い間頑張ったわね、私。
そういえばラキシスが前ダルヴァン辺境伯の跡を継いだのも今のロベルト様と同じ二十二歳だとおっしゃっていたわね。突然二十二歳の若さで跡を継ぐことになって、さぞかし大変だったでしょうね。そのときのラキシスに寄り添って差し上げたかったわ。
「ロザリア、聞いているかい?」
うっとりと昔のラキシスに思いを馳せていたら突然現実に引き戻され、能天気なお顔のロベルト様にうんざりとした。
「だからロザリアにフィリアを助けてもらいたいんだ。一緒に勉強を見て、分からないところは教えてやって欲しい」
開いた口が塞がらない。この方はどこまで私を侮辱したら気が済むのだろう。
「お断りしますわ」
「!?」
断られるとは思っていなかったのだろう、ニコニコしたまま話していたロベルト様は私の言葉を聞いて心底驚いた顔をした。
「なぜだい!?」
「なぜ? 逆になぜ私が了承すると思ったのかが不思議で仕方ありませんわ。なぜ私がそのお話を受けるとお思いになるのです」
「え、だってロザリアは王妃教育を受けて来たじゃないか」
「は? だから?」
イラッとしてしまい、思わず不敬な態度となってしまう。
「だから王妃教育の大変さは分かるだろう? それにロザリアは責任感が強いじゃないか」
「……」
だからなぜそれで私が婚約者を奪った相手の教育を手伝わなければならないのよ。沸々と怒りが込み上げる。
「いい加減に……」
そう言いかけたときお父様が口を開いた。
「ロベルト様、このことを陛下はご存じなのですか?」
極めて静かな声で言葉にしたお父様。これはきっとかなりお怒りですわね。普段とても優しいお父様だが、怒るととても怖い。冷たく感情のない声で冷静に言葉を発する姿を見ると背筋が凍る。
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