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本編 リディア編
第十四話 冷徹王子とお茶会!?
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昼食後の準備には、やたらと気合いを入れたマニカと侍女たちにこれでもか、というくらいの出来映えで見事にお姫様に仕上げられた。
今日のドレスは淡い紫で小さな宝石がちりばめられた華やかなドレス。
気合いの入ったおめかしで化粧もとても上品に、髪型は後ろで軽く纏めつつ、下ろしてある髪はふわふわと揺らいでいる。
そんなに気合いを入れても、多分あの王子様は全く興味がないだろうに……、頑張ってくれた侍女たちに申し訳なくなる。
重い足取りでお茶会の場所まで歩く。
「今日は外のガゼボでのお茶会だそうです。お天気も良く気持ち良いですね」
マニカが先導しながら言うが、私の心は曇り空……、なんてね……。
美しい庭園の中央に真っ白のガゼボが見えた。
シェスレイト殿下はまだ来ていないようだ。良かった。殿下を待たせるなんて無礼なことは許されないしね。
さて、到着したけど、座って待っていても居心地悪いし、庭園の花でも見てようかしら、と周りをキョロキョロしていると、先程自分が通って来た道にギル兄とディベルゼさんを伴ったシェスレイト殿下の姿が見えた。
太陽の光を浴び、キラキラとそれは美しく煌めく銀髪。宝石みたいだなぁ、と思わず見惚れる。
素晴らしい金の刺繍が施された濃紺の衣裳が映えるが、それに負けない美しい顔。
こんな美しい人間がいるだろうか、と目を疑いそうになる。
しかしながらその目はやはり冷たく恐ろしい。美しい顔だからこそ、なおさらその冷たさが際立つ。
あぁ、何か話題があるかしら。何か探さないと……。
「ごきげんよう、シェスレイト殿下。本日はお招きありがとうございます」
ドレスのスカートを持ち、最上の礼を取る。
「あぁ」
シェスレイト殿下は一声だけそう呟くと、一応椅子に座るよう左手を差し出しエスコートしてくれた。
椅子にお互い座ると、侍女たちがお茶の準備をしてくれる。マニカも一緒に手伝っている。
私の側にはオルガが立ち、シェスレイト殿下の側にはギル兄とディベルゼさんが立っていた。
ギル兄は目配せをしてきて、クスッと笑いそうになった。ディベルゼさんはこの前ばったり会ってしまった人よね。
目が合うとディベルゼさんはニコリと微笑んだ。優しそうなんだけど、何かその笑顔に裏がありそうな気がするのは何故だろう。
お互い一声も発することなく、テーブルにはお茶とお菓子が置かれた。
シェスレイト殿下はお茶を手にし、一口飲むと再びカップを置いた。
緊張を解すために、私も一口お茶を飲む。
あ、これはリラックスしたいときに飲むお茶。マニカが選んでくれたんだね。
ありがとう、落ち着くよ。
マニカの顔は見えないが、背後に気配を感じるだけで安心する。
「君は教師に国営の病院を造るように言ったのか?」
「え?」
突然話しかけられ思考回路が停止してしまった。
咄嗟に返答が出来ない。どうしよう、睨まれ余計に言葉が出ない。
「あ、あの……、申し訳ありません! そういうつもりで言ったのではなく、あれば良いのに、と私の願望を述べただけで……」
やっとの思いで、言葉を紡いだ。
「医療保険とやらもか?」
「は、はい……」
冷たい目。
何も知らない人間が能天気なことを! とお怒りなんだろうな……。
冷徹王子に無礼なことをしたのだろう、婚約破棄かしら……、お父様、お母様ごめんなさい。
シェスレイト殿下はまた無言になってしまった。
居たたまれない……、逃げ出したいわぁ。
「その男は誰だ」
「え?」
また唐突に聞かれ、一瞬何のことか分からなかった。
その男……、この場にいる男といえば……、
「オルガのことでしょうか?」
側に立つオルガにチラリと顔を向けた。
無言の圧力を感じる。
「最近、私の従者になったオルガと申します。以後、お見知りおきを」
無言だ……。
聞いて来たのはそっちなのに、返事なしかい! と思わず突っ込みそうだ。
唐突に話は変わるし、自分の言いたいことだけ言ったら無言だし……、何かイラッとしてきた。
いや、きっとリディアならおしとやかに黙ってるんだろうね。でもカナデも混ざってるのよ。カナデだと黙ってられないのよ。
我慢が限界に来そうでプルプルする。マニカが不安そうにしているのが気配で分かるんだけど……。
あー!! 我慢出来ない!!
「シェスレイト殿下はお休みには何をなされているのですか? 私が王宮に来て、一度もお会いすることがなかったので、何をされていらっしゃるのかと」
ちょっと皮肉を交えてニコリと笑ってみせた。
シェスレイト殿下はお茶を口にしていたが、そのカップを置きギロリと睨んで来た。
冷たい目、冷徹王子。
もうこの際好きに言ってやる!
「殿下、お顔が怖いですよ? たまにはニコリとされたほうがよろしいのでは? あぁ、でもニコリとされたシェスレイト殿下は恐らく今よりさらにお美しくなってしまわれるのでしょうね。それ以上お美しくなられてしまっては、女性である私の立場がありませんわね。それにとんでもなくおモテになられるでしょうし、私はヤキモキした日々を送らなければならなくなるのでしょう。それは大変ですわ。やはり殿下はそのままが一番なのかもしれませんわね」
一気に捲し立てて言った。
冷徹王子からは考えられない顔付きになった。初めて見る顔だわ。
そしてシェスレイト殿下の横に立つ二人は今にも吹き出しそうなくらいだ。必死に笑いを堪えている。
こちらの二人はというと、顔は見えないけど、きっと青ざめているのでしょうね。
「おい、お前たちは何を笑っている」
ギル兄とディベルゼさんがビクッとし、姿勢を正した。
言い過ぎたかしら。何言われるだろうか。
ある意味どんな反応を見せるのかが気になった。
しかしシェスレイト殿下は何も言わなかった。言葉から少し怒りなのか、戸惑いなのか、動揺は感じるが、無礼だと怒ることもなく、何事もなかったかのように……。
初めてのこと過ぎて、返す言葉が見付からないのかしら。
「私はもう失礼する」
「え、あ、はい」
そう言うとシェスレイト殿下は足早に去って行った。慌ててギル兄とディベルゼさんが付いて行く。
三人の姿が見えなくなると……。
「お嬢様!!!!」
シェスレイト殿下の代わりとばかりに、マニカが怒り出した。
まあそうよね。きっとそうなると思った。
「お嬢、格好良かったよ!!」
オルガはやたらと喜んでるし。
私は緊張の糸が切れ、テーブルにうなだれた。
「あぁ、緊張したし疲れた」
「お嬢様、あれはいけません!」
「うん、分かってる。でも、自分が聞きたいことばかりで、私の言うことには無言だし! 会話になってなかったし……」
「まあ確かにそうでしたけど……」
言い訳がましくなった。でもあれは言い過ぎた。自分でもそう思う。
婚約破棄されても仕方ない。諦めよう。
「仕方ないから、諦めてお菓子食べよう!」
緊張で一口お茶に口を付けただけだ。
せっかくだからお茶とお菓子を堪能していこう。
「お菓子美味しい~! 疲れたときには甘いものよね」
マニカが苦笑している。
「明日はまた厨房に行くんだし、何作るかを考えないと!」
お菓子を堪能しながら、明日のお菓子作りを考える。
さすがに料理人が作ってくれたお菓子には敵わないから、どんな工夫が出来るか考えてみよう。
考える間にお菓子を食べ過ぎるというオチになったことは言うまでもない……。
今日のドレスは淡い紫で小さな宝石がちりばめられた華やかなドレス。
気合いの入ったおめかしで化粧もとても上品に、髪型は後ろで軽く纏めつつ、下ろしてある髪はふわふわと揺らいでいる。
そんなに気合いを入れても、多分あの王子様は全く興味がないだろうに……、頑張ってくれた侍女たちに申し訳なくなる。
重い足取りでお茶会の場所まで歩く。
「今日は外のガゼボでのお茶会だそうです。お天気も良く気持ち良いですね」
マニカが先導しながら言うが、私の心は曇り空……、なんてね……。
美しい庭園の中央に真っ白のガゼボが見えた。
シェスレイト殿下はまだ来ていないようだ。良かった。殿下を待たせるなんて無礼なことは許されないしね。
さて、到着したけど、座って待っていても居心地悪いし、庭園の花でも見てようかしら、と周りをキョロキョロしていると、先程自分が通って来た道にギル兄とディベルゼさんを伴ったシェスレイト殿下の姿が見えた。
太陽の光を浴び、キラキラとそれは美しく煌めく銀髪。宝石みたいだなぁ、と思わず見惚れる。
素晴らしい金の刺繍が施された濃紺の衣裳が映えるが、それに負けない美しい顔。
こんな美しい人間がいるだろうか、と目を疑いそうになる。
しかしながらその目はやはり冷たく恐ろしい。美しい顔だからこそ、なおさらその冷たさが際立つ。
あぁ、何か話題があるかしら。何か探さないと……。
「ごきげんよう、シェスレイト殿下。本日はお招きありがとうございます」
ドレスのスカートを持ち、最上の礼を取る。
「あぁ」
シェスレイト殿下は一声だけそう呟くと、一応椅子に座るよう左手を差し出しエスコートしてくれた。
椅子にお互い座ると、侍女たちがお茶の準備をしてくれる。マニカも一緒に手伝っている。
私の側にはオルガが立ち、シェスレイト殿下の側にはギル兄とディベルゼさんが立っていた。
ギル兄は目配せをしてきて、クスッと笑いそうになった。ディベルゼさんはこの前ばったり会ってしまった人よね。
目が合うとディベルゼさんはニコリと微笑んだ。優しそうなんだけど、何かその笑顔に裏がありそうな気がするのは何故だろう。
お互い一声も発することなく、テーブルにはお茶とお菓子が置かれた。
シェスレイト殿下はお茶を手にし、一口飲むと再びカップを置いた。
緊張を解すために、私も一口お茶を飲む。
あ、これはリラックスしたいときに飲むお茶。マニカが選んでくれたんだね。
ありがとう、落ち着くよ。
マニカの顔は見えないが、背後に気配を感じるだけで安心する。
「君は教師に国営の病院を造るように言ったのか?」
「え?」
突然話しかけられ思考回路が停止してしまった。
咄嗟に返答が出来ない。どうしよう、睨まれ余計に言葉が出ない。
「あ、あの……、申し訳ありません! そういうつもりで言ったのではなく、あれば良いのに、と私の願望を述べただけで……」
やっとの思いで、言葉を紡いだ。
「医療保険とやらもか?」
「は、はい……」
冷たい目。
何も知らない人間が能天気なことを! とお怒りなんだろうな……。
冷徹王子に無礼なことをしたのだろう、婚約破棄かしら……、お父様、お母様ごめんなさい。
シェスレイト殿下はまた無言になってしまった。
居たたまれない……、逃げ出したいわぁ。
「その男は誰だ」
「え?」
また唐突に聞かれ、一瞬何のことか分からなかった。
その男……、この場にいる男といえば……、
「オルガのことでしょうか?」
側に立つオルガにチラリと顔を向けた。
無言の圧力を感じる。
「最近、私の従者になったオルガと申します。以後、お見知りおきを」
無言だ……。
聞いて来たのはそっちなのに、返事なしかい! と思わず突っ込みそうだ。
唐突に話は変わるし、自分の言いたいことだけ言ったら無言だし……、何かイラッとしてきた。
いや、きっとリディアならおしとやかに黙ってるんだろうね。でもカナデも混ざってるのよ。カナデだと黙ってられないのよ。
我慢が限界に来そうでプルプルする。マニカが不安そうにしているのが気配で分かるんだけど……。
あー!! 我慢出来ない!!
「シェスレイト殿下はお休みには何をなされているのですか? 私が王宮に来て、一度もお会いすることがなかったので、何をされていらっしゃるのかと」
ちょっと皮肉を交えてニコリと笑ってみせた。
シェスレイト殿下はお茶を口にしていたが、そのカップを置きギロリと睨んで来た。
冷たい目、冷徹王子。
もうこの際好きに言ってやる!
「殿下、お顔が怖いですよ? たまにはニコリとされたほうがよろしいのでは? あぁ、でもニコリとされたシェスレイト殿下は恐らく今よりさらにお美しくなってしまわれるのでしょうね。それ以上お美しくなられてしまっては、女性である私の立場がありませんわね。それにとんでもなくおモテになられるでしょうし、私はヤキモキした日々を送らなければならなくなるのでしょう。それは大変ですわ。やはり殿下はそのままが一番なのかもしれませんわね」
一気に捲し立てて言った。
冷徹王子からは考えられない顔付きになった。初めて見る顔だわ。
そしてシェスレイト殿下の横に立つ二人は今にも吹き出しそうなくらいだ。必死に笑いを堪えている。
こちらの二人はというと、顔は見えないけど、きっと青ざめているのでしょうね。
「おい、お前たちは何を笑っている」
ギル兄とディベルゼさんがビクッとし、姿勢を正した。
言い過ぎたかしら。何言われるだろうか。
ある意味どんな反応を見せるのかが気になった。
しかしシェスレイト殿下は何も言わなかった。言葉から少し怒りなのか、戸惑いなのか、動揺は感じるが、無礼だと怒ることもなく、何事もなかったかのように……。
初めてのこと過ぎて、返す言葉が見付からないのかしら。
「私はもう失礼する」
「え、あ、はい」
そう言うとシェスレイト殿下は足早に去って行った。慌ててギル兄とディベルゼさんが付いて行く。
三人の姿が見えなくなると……。
「お嬢様!!!!」
シェスレイト殿下の代わりとばかりに、マニカが怒り出した。
まあそうよね。きっとそうなると思った。
「お嬢、格好良かったよ!!」
オルガはやたらと喜んでるし。
私は緊張の糸が切れ、テーブルにうなだれた。
「あぁ、緊張したし疲れた」
「お嬢様、あれはいけません!」
「うん、分かってる。でも、自分が聞きたいことばかりで、私の言うことには無言だし! 会話になってなかったし……」
「まあ確かにそうでしたけど……」
言い訳がましくなった。でもあれは言い過ぎた。自分でもそう思う。
婚約破棄されても仕方ない。諦めよう。
「仕方ないから、諦めてお菓子食べよう!」
緊張で一口お茶に口を付けただけだ。
せっかくだからお茶とお菓子を堪能していこう。
「お菓子美味しい~! 疲れたときには甘いものよね」
マニカが苦笑している。
「明日はまた厨房に行くんだし、何作るかを考えないと!」
お菓子を堪能しながら、明日のお菓子作りを考える。
さすがに料理人が作ってくれたお菓子には敵わないから、どんな工夫が出来るか考えてみよう。
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