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最終章 勇者と魔王
第八十五話
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森に戻ってからは索敵を強化した。ディルアスと二人で交代しながら、通常索敵と特定索敵を発動させながら過ごした。
それとディルアスとルナに微妙な空気が漂っているような? そうでもないような? 何だかよく分からない空気。
私はというと、変に意識してぎこちなくなるのも嫌だったので、とりあえずは表面上普通に過ごしている、つもり……。
ディルアスのは子供が寝る前の挨拶! ルナのはワンコの愛情表現! と、言い聞かせた。
ワンコは物凄い怒られそうだけど……姿は人間だったけど……。
それで何とかやり過ごしている。
いつか……いつかディルアスに好きって言えるかな……自信が持てたら言えるのかな……。
自信……持てる気がしないけど……。
ディルアスとルナはどうしたんだろう。今までも特に必要以上には喋ったりはしてないけど、今は何か変。
主にディルアスがルナを気にしているというか……。ルナはそれが分かっているだろうに無視している感じだ。
何だかなぁ……。
仕方ないのでオブと飛行訓練にでも行こうかな。
オブに声をかけようとしたら、ディルアスに止められた。
「ユウ、一人で行動はするな」
「ご、ごめん」
『我が一緒なら良いだろう』
ルナがそう言ったが、ディルアスはどうにも嫌そうだ。
「あぁ、良いよ、ルナ。ありがとう。やることないし、飛行訓練に行ってみようかと思っただけだから」
『行けば良いではないか』
「ハハ、良いんだよ、ありがとう」
ディルアスに気を遣っている訳ではない。違うと思う。ただ私がディルアスの嫌がることはしたくないだけ。
『言いなりになる必要はない』
言いなり……そうなのかな……好きな人の嫌がることはしたくない、って言うのは言いなりなのかな……。
経験がなさすぎて分からない。
「すまない、ユウを閉じ込めておきたい訳ではないんだ。忘れてくれ。ルナと一緒なら行ってくると良い」
ディルアスは切なそうな顔をして言った。
嫌だ! そんな顔見たくない!
ディルアスの頬に両手を差し伸べ、グイッとこちらに顔を向けさせた。
ディルアスは驚いた顔をしている。
「そんな悲しそうな顔でそんなこと言わないで! ディルアスが嫌なことや悲しむようなことはしたくない!」
「ユウ……」
ディルアスが頬を押さえる私の手に、自分の手を重ねて握り締めた。
私の手を掴むとそのまま顔から離し、片方の掌に唇を押し当てた。
温かく柔らかいそれにビクッとし、目を見開いた。
「ディ、ディルアス!?」
伏し目がちに唇を押し当てるその姿は、何だか艶かしくてドキドキした。
その時魔導具から急に声が聞こえ、さらにビクッとした。今度は違う意味でのドキドキだ。
心臓が止まるかと思った……あのままだったらどんなことになったんだろう……良かったような残念なような複雑な心境。
「ユウ! ディルアス! アレン! 聞こえるか!?」
イグリードからだった。
それとディルアスとルナに微妙な空気が漂っているような? そうでもないような? 何だかよく分からない空気。
私はというと、変に意識してぎこちなくなるのも嫌だったので、とりあえずは表面上普通に過ごしている、つもり……。
ディルアスのは子供が寝る前の挨拶! ルナのはワンコの愛情表現! と、言い聞かせた。
ワンコは物凄い怒られそうだけど……姿は人間だったけど……。
それで何とかやり過ごしている。
いつか……いつかディルアスに好きって言えるかな……自信が持てたら言えるのかな……。
自信……持てる気がしないけど……。
ディルアスとルナはどうしたんだろう。今までも特に必要以上には喋ったりはしてないけど、今は何か変。
主にディルアスがルナを気にしているというか……。ルナはそれが分かっているだろうに無視している感じだ。
何だかなぁ……。
仕方ないのでオブと飛行訓練にでも行こうかな。
オブに声をかけようとしたら、ディルアスに止められた。
「ユウ、一人で行動はするな」
「ご、ごめん」
『我が一緒なら良いだろう』
ルナがそう言ったが、ディルアスはどうにも嫌そうだ。
「あぁ、良いよ、ルナ。ありがとう。やることないし、飛行訓練に行ってみようかと思っただけだから」
『行けば良いではないか』
「ハハ、良いんだよ、ありがとう」
ディルアスに気を遣っている訳ではない。違うと思う。ただ私がディルアスの嫌がることはしたくないだけ。
『言いなりになる必要はない』
言いなり……そうなのかな……好きな人の嫌がることはしたくない、って言うのは言いなりなのかな……。
経験がなさすぎて分からない。
「すまない、ユウを閉じ込めておきたい訳ではないんだ。忘れてくれ。ルナと一緒なら行ってくると良い」
ディルアスは切なそうな顔をして言った。
嫌だ! そんな顔見たくない!
ディルアスの頬に両手を差し伸べ、グイッとこちらに顔を向けさせた。
ディルアスは驚いた顔をしている。
「そんな悲しそうな顔でそんなこと言わないで! ディルアスが嫌なことや悲しむようなことはしたくない!」
「ユウ……」
ディルアスが頬を押さえる私の手に、自分の手を重ねて握り締めた。
私の手を掴むとそのまま顔から離し、片方の掌に唇を押し当てた。
温かく柔らかいそれにビクッとし、目を見開いた。
「ディ、ディルアス!?」
伏し目がちに唇を押し当てるその姿は、何だか艶かしくてドキドキした。
その時魔導具から急に声が聞こえ、さらにビクッとした。今度は違う意味でのドキドキだ。
心臓が止まるかと思った……あのままだったらどんなことになったんだろう……良かったような残念なような複雑な心境。
「ユウ! ディルアス! アレン! 聞こえるか!?」
イグリードからだった。
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