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最終章 勇者と魔王

第七十九話

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「ルナはどう思う?」
『魔力の気配が変わっているような気がしたな。ただそういう気がするというだけで、はっきりと何かを感じる訳ではないが』
「うん、そうなんだよね、はっきりと何かを感じる訳ではないんだよねぇ」

 でも何か気になる。

「どうだった?」

 謁見の間から戻ったアレンが聞いた。

「うーん、以前会ったときの印象と違う感じがした。アレンはどう思った?」
「俺か? 俺は初めて会ったからなぁ、特に何か変化を感じられる訳ではないけど、様々な人間と会う機会が多い俺からすると、何か野心に溢れているやつと同じような匂いを感じるな」
「野心……」
「あぁ、純粋に正義を求めるもの、強さを求めるもの、まあ様々だか純粋にそれらを求めるものは瞳に迷いがないし、真っ直ぐな瞳を向ける。だが野心溢れるものは求めるものへの純粋さは同じだが、そこに妬みや嫉みが加わる」
「妬み嫉み……」
「妬みや嫉みから自分にとって邪魔なものを排除しようとする。そういうやつの瞳は目の前にいる者を見ていない」

「サクヤとか言う勇者らしき人物、彼の瞳は俺を見ていなかった。彼が何を見ているのかは分からないが、何かを追い求めているのかもな」

 その時扉が叩かれた。

「失礼いたします! 只今魔物が出現したとの報告が!」

 リシュレルさんが息を切らしながら報告に来た。

「!!」

 アレンは立ち上がり、戦闘準備を指示した。

「ユウ、お前は来るな!」
「!? 何で!?」
「まだ勇者がいる。恐らく彼も戦いに出る」
「あ……」

 サクヤがまだ城にいるならば、きっとサクヤが出るだろう。

「分かった……待機しとく……」
「あぁ、大人しくしとけ、俺たちで大丈夫だから」

 アレンはそう言うと頭を軽く撫でて去って行った。

 今ここにいるのに一緒に戦えない歯痒さ。
 大丈夫だろうか。
 どんな魔物なんだろうか。
 みんな怪我とかしないだろうか。

 ディルアスも頭を撫でて来た。

「とりあえず部屋に戻ろう。部屋に戻ったら索敵をしてみよう。少しくらいは状況が分かるかもしれない」

 私が気にしていることを感じ慰めてくれているんだな。
 そうだね、索敵をすれば少しは何か分かるかも!
 部屋に戻った。

 部屋に戻り広範囲の索敵に集中をしてみた。
 どうやら王宮より西側の辺りに魔物の反応がある。しかもかなりの数が。
 特定索敵をしてみると恐らくサクヤであろう気配、そして兵士と宮廷魔導士団の人だろう気配も感じた。

 やはりサクヤが出ている。行かなくて良かった。
 しかしこの魔物の数、凄い数だ……大丈夫だろうか。

「大丈夫かな……」

 少し心配になりボソッと呟いた。それをディルアスに聞かれていたらしく、頭を撫でられた。
 うーん、アレンといい、やっぱり子供扱いなのかな。
 思わずディルアスの顔をジッと見詰めていたらしく、ディルアスがたじろいだ。

「な、何だ?」
「え、いや、何でもない」

 笑ってごまかし、ルナとオブを抱っこして椅子に座った。

「様子を見に近くまで行ったら……ダメだよねぇ」

 ルナを撫でながらチラッとディルアスを見た。
 あれだけの数を相手にサクヤもだが、魔導士さんたちが心配になる。毎日索敵練習で顔を合わせていたから、余計に心配。
 身近な人たちが怪我をするのは見たくない。

「気になるんだな?」
「う、うん」
「はぁ……、ユウらしいけどな」

 溜め息を吐きながら半ば呆れた様子でディルアスは苦笑していた。

「陰から見るだけだぞ」
「うん!」

 やった! ディルアスの許可が下りた。

「アレンには内緒にして行くぞ」
「そうだね」

 アレンに言ったら絶対反対される。私のことを心配してくれているからだ、ということも分かっているのだが、やはり気になるものは気になる!

 こっそりと建物の陰から空間転移で王宮の外に出る。
 そこから魔物を感じた場所まで飛翔で移動した。ルナとオブは抱っこね。元の姿だと目立つから。

 激しい音が聞こえ、少し離れた場所に降りた。
 小型化のままだと万が一魔物が近くに来ると危険だから、ルナとオブは元の姿に戻りなるべく物陰に隠れているように言った。

 気配を殺しながら魔物の気配のほうへそっと近付く。

 岩の陰に身を隠し、伺い見ると、鳥のような人のような? 翼が生えた人型の魔物? ガルーダみたいな?
 何だか今まで見たことない異形な魔物だった。
 それが数十匹。

 魔力も今まで感じたことがないくらいの強い魔物だ。

「ディルアス……あれって……」
「見たことがないな。しかも凄い魔力だ」
「大丈夫かな……」
「しばらく様子を見よう」
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