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六章 勇者

第四十五話

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「と、とりあえず勇者と魔王について調べてみるか! ユウ、禁書庫の閲覧許可を取ってやるから自分で調べてみるか?」
「うん、お願いします」

 何も知らずに勇者にされてしまうのは嫌だ。勇者とは何なのか、魔王とは何なのかを知りたい。

「俺も付き合う」
「え!? ディルアスが? 調べるの付き合ってくれるの?」
「あぁ」

 意外だった。ディルアスはそういうことには関わりたくないのかと思っていた。だから私をマリー亭に預けて姿を消したのかと思っていた。

 何だかんだと竜の谷やら王宮の結界やらも付き合ってくれてるし、やっぱり優しい人なんだろうな。最近はよく喋ってくれてるし。

「ありがとう、じゃあよろしくね」

「しばらくは王宮に泊まると良い。父上には結界の件の報告はするが、お前たちのことは結界を張った当人であることは内密にしておく。表向きには俺の客だ。禁書庫は後で閲覧許可証を渡すから、自由に閲覧すると良い。その代わり何か分かったら、すぐ俺に報告してくれ」
「分かった」
「では今日はもう休め」


 部屋に戻るとお風呂と食事が用意されていた。身の回りの世話も侍女さんを付けてくれたが、食事の用意等以外の自分で出来ること以外は丁重にお断りした。
 豪華でとても美味しい食事とお風呂で、まったりと癒された。ルナとオブも洗ってみようかと思ったが嫌がられた。うん、嫌がると思った。

 お風呂から上がると寝衣が置かれ着ていた服がなくなっていた。
 こ、これを着て寝るのかぁ……いわゆるネグリジェ? レースたっぷりヒラヒラだな……。久しぶりにワンピースを着るとスースーする。しかも何か生地薄いし。恥ずかしいし。まあ誰に見せるでもないから良いか。早く寝よう。
 浴室から出るとルナとオブが驚いた顔をした。

『何だその格好は』
『ユウ、かわいいねぇ!』
「いや、言いたいことは分かるけど、突っ込まないで! これしかなかったし! 恥ずかしいし!」

 部屋の扉がノックされた。

「ユウ、俺だ。さっき閲覧許可証が届いた。明日から早速禁書庫へ行くか?」

 ディルアスの声だった。閲覧許可証! もう届いたんだ!
 扉を開けた。ディルアスも入浴後なのか良い匂いがして、サッパリした格好だった。
 その時お互いに「あっ!」となった。
 ディルアスは慌てて横を向き、すまん、と小さい声で言った。
 いや、こちらこそすいません、こんな格好で扉開けて!

「あ、いや、こんな格好でごめんなさい! 明日行く! 禁書庫行く!」

 扉の陰に隠れながら言った。

「分かった。では明日朝食後に迎えに行く。じゃあ明日」

 ディルアスは顔をそらしながら、そう言うとそのまま自分の部屋に帰った。
 扉を閉ざして、はぁぁあ、と深い溜め息を吐いた。この格好で出迎えはダメだったな……。
 もそもそとベッドに入り込んだ。
 あぁ、ふかふかベッド!しかも凄く広い! ルナとオブもベッドに乗って来たが余裕で広い!
 気持ち良いなぁ、と嬉しくなり眠りについた。

 翌朝、侍女さんが部屋をノックする音で目が覚めた。

「ユウ様、おはようございます。お目覚めですか? お支度お手伝いいたします」

 にっこりと侍女さんが言った。

「おはようございます」

 過度なお世話はお断りしたので、こちらがお願いしたことだけをしてくれる。

「お着替えはどれになさいますか?」

 クローゼットになぜかたくさんの服が用意されていた。昨日部屋を出ているあの短時間の間だけで用意されていたのか……凄いな。

 クローゼットを眺めてもどうもドレスばかり……いや、これ、どれを着たら良いのよ。
 悩んでいると侍女さんか中身を色々確認した後、一着取り出した。

「これはいかがですか?」

 とても高そうな肌触りの良さそうな生地だが、デザインはとてもシンプルなワンピースで、ほんのりピンク色で少しだけレースをあしらっていて上品で綺麗だった。

 他は何だか豪華そうなドレスばかりだし、一番良さげかな、と、侍女さんに感謝してそれを着ることにした。

 着替えている間に朝食を準備してくれて、着替え終わると席に着いた。

「とてもお似合いですよ」

 侍女さんは満足そうな顔をしていた。うん、侍女さんの見立てのおかげ。

「ありがとうございます」

 にこりと笑い合い、朝食をいただいた。
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