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六章 勇者
第四十四話
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「ユウが勇者かもしれない……ということだが」
「ユウ様が勇者……」
リシュレルさんが驚いた顔した。
私も驚いた。信じられない。意味分からない。出来ればその話は忘れていて欲しかった。
「ケシュナの森に勇者が現れる、ということだったか?」
ディルアスが聞いた。
「あぁ、昔読んだ勇者に関する本にはそう書いてあった。魔王が現れる時、勇者も現れる。勇者は異世界人で、ケシュナの森の石碑の元に召還される、と」
「ユウ様は異世界人でケシュナの森に?」
リシュレルさんは私を見た。
「ユウはケシュナの森に倒れていた。俺が見付けた」
ディルアスが答えた。私は何も言えないでいた。
「ユウの魔力の高さといい、勇者である確率は高いだろうな……」
みんなが一斉にこちらを見た。
「いや、でも、そんなこと言われても……」
「うーん、勇者である確率は高いが、とりあえず今は魔王が現れた、とかは聞かないしな。様子を見ながら、勇者のことを調べるほうが良いんじゃないか?」
「勇者のことを調べる?」
「あぁ、ユウが勇者にしても、魔王についても魔物についても、俺たちはよく分かっていない。勇者だけに頼らなくても何とかなるのかもしれないしな」
「なるほど」
アレンに言われて、確かに調べてみるのは良いかもしれないと思った。訳も分からず勇者扱いされるのも嫌だし。
そう考えていると、突然ルナが人間化した。
「お、お前! あの時の……あぁ、ルナなんだな……」
アレンは思い出し、ディルアスとリシュレルさんは驚いた顔をしている。
そりゃいきなり人間が現れたら驚くよね。
「ルナ! 何でいきなり人間化してるの!?」
『我の前の契約者は勇者だった』
「あ、そういえば……」
「前の契約者が勇者!?」
『奴が魔王を倒したときは勇者の魔法しか効かなかった。あの同時の魔王がそうなだけかもしれないが。それと……』
ルナが私を見た。
『前の契約者とユウの魔力は似ていると思った』
「以前の勇者とユウの魔力が似ている、か……前はどんな風に魔王と戦うことになったんだ?」
『勇者のことも最初から勇者とは呼ばれていなかったし、魔王も最初、魔王とは知らなかった。普通に魔物と戦い、その中で普通の魔法では効かない魔物がいた。それが魔王だと後に分かっただけだ』
「勇者も魔王も最初は分からず、か……謎だらけだな。魔王を倒した後の勇者は?」
『消えた』
「消えた!?」
そう、以前ルナは消えたと言っていた。悲しそうだった。
「ルナ……」
『大丈夫だ』
ルナは心配するな、と笑った。
『ある日突然気配が全く感じなくなったのだ。どうなったのかは全く分からない。その後二度と会うことはなかった』
「そ、そうなのか……」
全員が沈黙した。
『我が知っていることはそれだけだ』
そう言うとルナは再び小型化し、膝の上で丸くなった。オブも心配そうにルナを見ていた。そんなオブと膝の上のルナを撫でた。
「ユウ様が勇者……」
リシュレルさんが驚いた顔した。
私も驚いた。信じられない。意味分からない。出来ればその話は忘れていて欲しかった。
「ケシュナの森に勇者が現れる、ということだったか?」
ディルアスが聞いた。
「あぁ、昔読んだ勇者に関する本にはそう書いてあった。魔王が現れる時、勇者も現れる。勇者は異世界人で、ケシュナの森の石碑の元に召還される、と」
「ユウ様は異世界人でケシュナの森に?」
リシュレルさんは私を見た。
「ユウはケシュナの森に倒れていた。俺が見付けた」
ディルアスが答えた。私は何も言えないでいた。
「ユウの魔力の高さといい、勇者である確率は高いだろうな……」
みんなが一斉にこちらを見た。
「いや、でも、そんなこと言われても……」
「うーん、勇者である確率は高いが、とりあえず今は魔王が現れた、とかは聞かないしな。様子を見ながら、勇者のことを調べるほうが良いんじゃないか?」
「勇者のことを調べる?」
「あぁ、ユウが勇者にしても、魔王についても魔物についても、俺たちはよく分かっていない。勇者だけに頼らなくても何とかなるのかもしれないしな」
「なるほど」
アレンに言われて、確かに調べてみるのは良いかもしれないと思った。訳も分からず勇者扱いされるのも嫌だし。
そう考えていると、突然ルナが人間化した。
「お、お前! あの時の……あぁ、ルナなんだな……」
アレンは思い出し、ディルアスとリシュレルさんは驚いた顔をしている。
そりゃいきなり人間が現れたら驚くよね。
「ルナ! 何でいきなり人間化してるの!?」
『我の前の契約者は勇者だった』
「あ、そういえば……」
「前の契約者が勇者!?」
『奴が魔王を倒したときは勇者の魔法しか効かなかった。あの同時の魔王がそうなだけかもしれないが。それと……』
ルナが私を見た。
『前の契約者とユウの魔力は似ていると思った』
「以前の勇者とユウの魔力が似ている、か……前はどんな風に魔王と戦うことになったんだ?」
『勇者のことも最初から勇者とは呼ばれていなかったし、魔王も最初、魔王とは知らなかった。普通に魔物と戦い、その中で普通の魔法では効かない魔物がいた。それが魔王だと後に分かっただけだ』
「勇者も魔王も最初は分からず、か……謎だらけだな。魔王を倒した後の勇者は?」
『消えた』
「消えた!?」
そう、以前ルナは消えたと言っていた。悲しそうだった。
「ルナ……」
『大丈夫だ』
ルナは心配するな、と笑った。
『ある日突然気配が全く感じなくなったのだ。どうなったのかは全く分からない。その後二度と会うことはなかった』
「そ、そうなのか……」
全員が沈黙した。
『我が知っていることはそれだけだ』
そう言うとルナは再び小型化し、膝の上で丸くなった。オブも心配そうにルナを見ていた。そんなオブと膝の上のルナを撫でた。
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