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三章 依頼
第二十四話
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『ぼくも! ぼくもいっしょにいたい!』
ドラゴンがルナの後ろから叫んだ。
「一緒に、って、私と一緒に来るの? それって……」
チラッとルナの方を見た。
『ドラゴンは人間に狙われる。まだ幼いお前は竜の谷に帰る方が良いと思うが』
「だよねぇ」
ルナと顔を見合わせた。
『いやだ! おねえちゃんといる! ぼく、かえってもおかあさんもういない。ひとりぼっち』
ドラゴンが泣き出した。いや、人間のような涙は出ていないのだろうが、泣いているようにしか見えなかった。
『おかあさんとぼくはにんげんにつかまった。ぼくだけみんなにたすけてもらった。おかあさんもういない』
つまり捕まったときにはこの子の母親もいたのだ。ルナたちが助けたときにはすでに母親は連れて行かれた後だったということか。
「そっか、辛かったね……」
ドラゴンの頭にギュッとしがみついた。
「この子も連れて行っちゃダメかな?」
ルナに聞いた。
『人間に狙われるぞ。主の負担が増えるが良いのか?』
「うん。きっと大丈夫!」
こういうときこそ能天気に! と思ったが、少し不安になる。
「守れる根拠もないのに無責任かな?」
ルナをチラッと見た。ルナは小さく溜め息を吐き、
『主が連れて行くというのなら、我は全力で守ろう』
「ありがとう、ルナ!」
ルナの首に抱き付いた。あぁ、やっぱり大きくてももふもふ!じゃなくて。
「ドラゴンちゃんも契約出来るのかな?」
『少しでも魔力があれば出来るぞ』
「ドラゴンちゃんは魔力あるの?」
ドラゴンに向かって聞いた。
『ぼくもいっしょにいていいの?』
「うん、一緒にいよう」
『ありがとう!』
ドラゴンは満面の笑みを浮かべた。ように見えた。
ドラゴンはまだ子供だったため、少量の魔力しかなく、ルナのような力はまだ全くなかったが、とりあえず契約は出来そうだった。
どこにいるかすぐ分かるほうが守りやすいしね。
「ん、でもどうやって魔力を流そう」
ルナは人間の姿で手を繋ぎ合えば出来たが、ドラゴンは子供といっても大きい。
『ふむ、首元の宝玉に触れてお互い流し合えば良い』
宝玉? 良く見るとドラゴンの首元に小さな深紅の宝石みたいなものが付いていた。
そういえばディルアスのドラゴンにももっと大きかったが宝石が付いていた。
『ドラゴンにとって魔力の源のようなものだ』
なるほど。大事なものだね。
ドラゴンの深紅の宝玉にそっと触れた。魔力を流す。
『あたたかいね』
ドラゴンが嬉しそうだった。ドラゴンからも僅かな魔力が流れてくるのが分かった。
「じゃあ、あなたの名前は……、オブシディアン!」
触れた宝玉と手が煌めいて光った。
『オブシディアン? ぼくのなまえ?』
「そうだよ、黒曜石っていう宝石のことだよ。あなたの鱗がそっくりで綺麗なの」
オブシディアンはとても嬉しそうな顔をした。
『さて、主、これからどうする?』
「あのさ、その主ってやめてくれない?」
『?』
主って……、何かガラじゃない……。
「私はユウって名前だからユウって呼んで」
『ユウか、分かった』
「オブもね! ユウって呼んで!」
『オブ? ぼくのこと?』
「そ! オブシディアンて名付けたけど、長いから普段はオブ!」
『わかった~、ユウ』
オブは翼を大きく広げた。その風圧で砂埃が舞う。
「オブ! ちょっと翼閉じて!」
『連れて歩くには目立つな。ユウ、人里ではオブシディアンを小さくしたほうが良い』
「小さくって言ってもオブはルナみたいに自分で変化出来ないんでしょ?」
オブはキョトンとした。まだ魔力が少ないオブには無理なようだ。
『魔導具を使えば良い』
「魔導具?」
『あぁ、確か魔導具で契約魔獣を小さくしたり出来ると聞いたことがある』
「へー、そうなんだ。ルナって凄い色々なことに詳しいね」
そういえばディルアスはドラゴンを街に連れ入るとき小さくすると言っていた。それか。
『遥か昔にユウのように契約をした者がいた。その時に色々人間の事を知ったからな。そういえばユウの魔力は何となく奴と似ている』
「へー! 昔人間と仲良かったんだね」
仲が良かった、そう表現することにルナは笑った。
「えっと、じゃあ魔導具で小さくする方法が分からないから、一度帰って調べるね。それとルナの人間化したときの服も魔導具に装備出来るんだよね? それも用意してくるよ!」
『分かった。では、我々は人間の目に付かぬ所へ移動しよう』
「うん、じゃあそれまでオブのことよろしくね、ルナ!」
『了解した』
だいぶ魔力が回復したため、飛翔してキシュクまで帰った。
ドラゴンがルナの後ろから叫んだ。
「一緒に、って、私と一緒に来るの? それって……」
チラッとルナの方を見た。
『ドラゴンは人間に狙われる。まだ幼いお前は竜の谷に帰る方が良いと思うが』
「だよねぇ」
ルナと顔を見合わせた。
『いやだ! おねえちゃんといる! ぼく、かえってもおかあさんもういない。ひとりぼっち』
ドラゴンが泣き出した。いや、人間のような涙は出ていないのだろうが、泣いているようにしか見えなかった。
『おかあさんとぼくはにんげんにつかまった。ぼくだけみんなにたすけてもらった。おかあさんもういない』
つまり捕まったときにはこの子の母親もいたのだ。ルナたちが助けたときにはすでに母親は連れて行かれた後だったということか。
「そっか、辛かったね……」
ドラゴンの頭にギュッとしがみついた。
「この子も連れて行っちゃダメかな?」
ルナに聞いた。
『人間に狙われるぞ。主の負担が増えるが良いのか?』
「うん。きっと大丈夫!」
こういうときこそ能天気に! と思ったが、少し不安になる。
「守れる根拠もないのに無責任かな?」
ルナをチラッと見た。ルナは小さく溜め息を吐き、
『主が連れて行くというのなら、我は全力で守ろう』
「ありがとう、ルナ!」
ルナの首に抱き付いた。あぁ、やっぱり大きくてももふもふ!じゃなくて。
「ドラゴンちゃんも契約出来るのかな?」
『少しでも魔力があれば出来るぞ』
「ドラゴンちゃんは魔力あるの?」
ドラゴンに向かって聞いた。
『ぼくもいっしょにいていいの?』
「うん、一緒にいよう」
『ありがとう!』
ドラゴンは満面の笑みを浮かべた。ように見えた。
ドラゴンはまだ子供だったため、少量の魔力しかなく、ルナのような力はまだ全くなかったが、とりあえず契約は出来そうだった。
どこにいるかすぐ分かるほうが守りやすいしね。
「ん、でもどうやって魔力を流そう」
ルナは人間の姿で手を繋ぎ合えば出来たが、ドラゴンは子供といっても大きい。
『ふむ、首元の宝玉に触れてお互い流し合えば良い』
宝玉? 良く見るとドラゴンの首元に小さな深紅の宝石みたいなものが付いていた。
そういえばディルアスのドラゴンにももっと大きかったが宝石が付いていた。
『ドラゴンにとって魔力の源のようなものだ』
なるほど。大事なものだね。
ドラゴンの深紅の宝玉にそっと触れた。魔力を流す。
『あたたかいね』
ドラゴンが嬉しそうだった。ドラゴンからも僅かな魔力が流れてくるのが分かった。
「じゃあ、あなたの名前は……、オブシディアン!」
触れた宝玉と手が煌めいて光った。
『オブシディアン? ぼくのなまえ?』
「そうだよ、黒曜石っていう宝石のことだよ。あなたの鱗がそっくりで綺麗なの」
オブシディアンはとても嬉しそうな顔をした。
『さて、主、これからどうする?』
「あのさ、その主ってやめてくれない?」
『?』
主って……、何かガラじゃない……。
「私はユウって名前だからユウって呼んで」
『ユウか、分かった』
「オブもね! ユウって呼んで!」
『オブ? ぼくのこと?』
「そ! オブシディアンて名付けたけど、長いから普段はオブ!」
『わかった~、ユウ』
オブは翼を大きく広げた。その風圧で砂埃が舞う。
「オブ! ちょっと翼閉じて!」
『連れて歩くには目立つな。ユウ、人里ではオブシディアンを小さくしたほうが良い』
「小さくって言ってもオブはルナみたいに自分で変化出来ないんでしょ?」
オブはキョトンとした。まだ魔力が少ないオブには無理なようだ。
『魔導具を使えば良い』
「魔導具?」
『あぁ、確か魔導具で契約魔獣を小さくしたり出来ると聞いたことがある』
「へー、そうなんだ。ルナって凄い色々なことに詳しいね」
そういえばディルアスはドラゴンを街に連れ入るとき小さくすると言っていた。それか。
『遥か昔にユウのように契約をした者がいた。その時に色々人間の事を知ったからな。そういえばユウの魔力は何となく奴と似ている』
「へー! 昔人間と仲良かったんだね」
仲が良かった、そう表現することにルナは笑った。
「えっと、じゃあ魔導具で小さくする方法が分からないから、一度帰って調べるね。それとルナの人間化したときの服も魔導具に装備出来るんだよね? それも用意してくるよ!」
『分かった。では、我々は人間の目に付かぬ所へ移動しよう』
「うん、じゃあそれまでオブのことよろしくね、ルナ!」
『了解した』
だいぶ魔力が回復したため、飛翔してキシュクまで帰った。
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