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三章 依頼
第二十一話
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朝、いつもとは違う服を着る。昨日メルダさんたちと買った服だ。うん、動きやすい。
腕当てと脛当ても装着し、魔導具のグローブも忘れずにね。短剣を背中側のベルトに固定し後ろ手に抜けるようにする。
「よし」
気持ちも引き締まった。
一階に降りるといつものように朝食を用意してくれていた。
「おぉ! 見違えたぞ!」
オーグさんはいつもと違う格好に声を上げた。
マリーさんは少し微笑み私の肩を撫でた。
「さ、食べよう」
いつものように三人で朝食を。
さあ、頑張るぞ! 少し緊張するのを払い除けるように気合いを入れる。
「気を付けて行くんだよ」
二人に見送られマリー亭を後にした。
街の出入口で行き先を思い出す。
「王都まではずっと舗装された道になっているから分かりやすいって言ってたな。確か北に向かうって」
昨日の間に教えられた情報を元に進んで行く。
特に何もない、至って平和な道だ。
森の脇を通る時も特に動物が現れたりもない。
天気も良くのんびり平和だなぁ、とお散歩気分になっつしまった。
「もうそろそろ谷かなぁ」
ふわぁ、とあくびが出た。いけないいけない、と思った途端に叫び声が聞こえた。
「うわぁ!! 助けてくれ!」
物凄いスピードでこちらに向かってくる馬車。
慌てて飛翔し空へ逃げる。
見たところ怪我人がいる様子もなく、馬車も無事そうだ。このまま調査に向かうか。
そのままさらに高く飛翔し、谷全体を見渡す。
谷間の道はそれなりに広く馬車が行き交っても大丈夫そうな広さだ。
しかしあちこちがゴツゴツした岩肌だったり、巨大な岩があったりと、動物が隠れていそうな箇所はたくさんある。
「うーん」
しばらく浮遊しながら考えたが、答えも出ないし行くしかないか、と地面に降り立った。
「とりあえず結界と索敵をしておくかな」
結界は範囲を小さく身体に這わすように。索敵は半径十メートルくらいまでに。
警戒しながらゆっくりと谷に入って行く。
飛翔して見ていたときよりも近付くと、とてつもない大きさの岩だったというこどか分かった。
索敵魔法には確かにいくつかの反応を感知した。やはり動物が何匹もいるようだ。しかし調査は襲ってくる理由だ。なぜ人間を襲う?
考えているとぞわっと悪寒がした。索敵魔法に何か強力なものが引っ掛かった。
そう思った瞬間風が走った。頬に何かが掠めた。
『グルルルゥゥ!!』
唸り声に振り向いた。
銀色の狼? 陽射しが当たるとキラキラした毛皮が煌めく。綺麗な狼。
『グワァァア!!』
狼は吼えながら再び襲いかかってきた。
見惚れている場合じゃない!
結界魔法をさらに強いものに、飛翔し狼を避ける。地面に着地する瞬間、狼が口を開いた。
『グルァァア!!』
狼の口から炎の球が噴き出した。
「えっ!?」
慌てて自分の前に障壁結界を張る。結界に当たるように炎は横へと飛び散った。
「魔法が使える動物なんて聞いてなーい!」
ひぃいとなったが、ふと、これって魔獣ってやつかな?
魔法が使えるなんて普通の動物じゃないよね。
『人間は帰れ。ここへは来るな』
「えっ!? 喋った!?」
魔石に附与しているとはいえ、まだ意志疎通の魔法は発動させていない。どういうこと? 狼自身の力で喋ってる?
再びガバッと口を開き炎の球を噴き出す。
結界を張りつつ飛翔し、
「ちょ、ちょっと待って! 待って! 話を聞かせて!」
こうなれば、と、意志疎通魔法を全開に、周りの動物たちにも話し掛けた。
「ねぇ! 周りにみんないるんでしょ! 出て来てよ! 話を聞かせてよ!」
狼からの攻撃を躱しながら大声で叫ぶ。
すると岩陰に隠れていた動物たちが出て来た。そこにはこの間魔法訓練しに行ったときに見かけたウサギもいた。
「あ! この間の子! ねぇ、この狼さんに話を聞くように言ってよ!」
ウサギは指を指されビクッとしたが、どうやら思い出したようだ。
ウサギは怒り狂う狼を止めようとしてくれた。
『人間の味方をするな!』
他の動物たちも狼の周りに集まり動きを止めてくれた。
「ちょっと! 少しくらい話を聞かせてくれても良いじゃない!」
『我の言葉が分かるのか』
「ん? 分かるよ? 最初からあなたから喋ってくれてたじゃない」
そう言うと狼は動きを止め考え込んだ。
『我の言葉が分かるのならば話をしよう。今まで我の言葉が分かる者はいなかった』
狼はそう言うとどこかに歩き出した。
ウサギが近付いてきて足元から声を掛けた。
『ついてきて』
言われるがままに狼と動物たちの後に続いた。
しばらく歩くと谷の真ん中辺りで止まって狼が振り返った。
『そなたはどういった人間だ? ここへは何をしに来た』
「動物たちが人間を襲って通行出来ないから困ってるって。何で襲ってくるのかを調査しに来たんだよ」
『そうか。そなたが取る行動によっては容赦はしない』
そう言いながら狼は大きな岩の裏に入った。
腕当てと脛当ても装着し、魔導具のグローブも忘れずにね。短剣を背中側のベルトに固定し後ろ手に抜けるようにする。
「よし」
気持ちも引き締まった。
一階に降りるといつものように朝食を用意してくれていた。
「おぉ! 見違えたぞ!」
オーグさんはいつもと違う格好に声を上げた。
マリーさんは少し微笑み私の肩を撫でた。
「さ、食べよう」
いつものように三人で朝食を。
さあ、頑張るぞ! 少し緊張するのを払い除けるように気合いを入れる。
「気を付けて行くんだよ」
二人に見送られマリー亭を後にした。
街の出入口で行き先を思い出す。
「王都まではずっと舗装された道になっているから分かりやすいって言ってたな。確か北に向かうって」
昨日の間に教えられた情報を元に進んで行く。
特に何もない、至って平和な道だ。
森の脇を通る時も特に動物が現れたりもない。
天気も良くのんびり平和だなぁ、とお散歩気分になっつしまった。
「もうそろそろ谷かなぁ」
ふわぁ、とあくびが出た。いけないいけない、と思った途端に叫び声が聞こえた。
「うわぁ!! 助けてくれ!」
物凄いスピードでこちらに向かってくる馬車。
慌てて飛翔し空へ逃げる。
見たところ怪我人がいる様子もなく、馬車も無事そうだ。このまま調査に向かうか。
そのままさらに高く飛翔し、谷全体を見渡す。
谷間の道はそれなりに広く馬車が行き交っても大丈夫そうな広さだ。
しかしあちこちがゴツゴツした岩肌だったり、巨大な岩があったりと、動物が隠れていそうな箇所はたくさんある。
「うーん」
しばらく浮遊しながら考えたが、答えも出ないし行くしかないか、と地面に降り立った。
「とりあえず結界と索敵をしておくかな」
結界は範囲を小さく身体に這わすように。索敵は半径十メートルくらいまでに。
警戒しながらゆっくりと谷に入って行く。
飛翔して見ていたときよりも近付くと、とてつもない大きさの岩だったというこどか分かった。
索敵魔法には確かにいくつかの反応を感知した。やはり動物が何匹もいるようだ。しかし調査は襲ってくる理由だ。なぜ人間を襲う?
考えているとぞわっと悪寒がした。索敵魔法に何か強力なものが引っ掛かった。
そう思った瞬間風が走った。頬に何かが掠めた。
『グルルルゥゥ!!』
唸り声に振り向いた。
銀色の狼? 陽射しが当たるとキラキラした毛皮が煌めく。綺麗な狼。
『グワァァア!!』
狼は吼えながら再び襲いかかってきた。
見惚れている場合じゃない!
結界魔法をさらに強いものに、飛翔し狼を避ける。地面に着地する瞬間、狼が口を開いた。
『グルァァア!!』
狼の口から炎の球が噴き出した。
「えっ!?」
慌てて自分の前に障壁結界を張る。結界に当たるように炎は横へと飛び散った。
「魔法が使える動物なんて聞いてなーい!」
ひぃいとなったが、ふと、これって魔獣ってやつかな?
魔法が使えるなんて普通の動物じゃないよね。
『人間は帰れ。ここへは来るな』
「えっ!? 喋った!?」
魔石に附与しているとはいえ、まだ意志疎通の魔法は発動させていない。どういうこと? 狼自身の力で喋ってる?
再びガバッと口を開き炎の球を噴き出す。
結界を張りつつ飛翔し、
「ちょ、ちょっと待って! 待って! 話を聞かせて!」
こうなれば、と、意志疎通魔法を全開に、周りの動物たちにも話し掛けた。
「ねぇ! 周りにみんないるんでしょ! 出て来てよ! 話を聞かせてよ!」
狼からの攻撃を躱しながら大声で叫ぶ。
すると岩陰に隠れていた動物たちが出て来た。そこにはこの間魔法訓練しに行ったときに見かけたウサギもいた。
「あ! この間の子! ねぇ、この狼さんに話を聞くように言ってよ!」
ウサギは指を指されビクッとしたが、どうやら思い出したようだ。
ウサギは怒り狂う狼を止めようとしてくれた。
『人間の味方をするな!』
他の動物たちも狼の周りに集まり動きを止めてくれた。
「ちょっと! 少しくらい話を聞かせてくれても良いじゃない!」
『我の言葉が分かるのか』
「ん? 分かるよ? 最初からあなたから喋ってくれてたじゃない」
そう言うと狼は動きを止め考え込んだ。
『我の言葉が分かるのならば話をしよう。今まで我の言葉が分かる者はいなかった』
狼はそう言うとどこかに歩き出した。
ウサギが近付いてきて足元から声を掛けた。
『ついてきて』
言われるがままに狼と動物たちの後に続いた。
しばらく歩くと谷の真ん中辺りで止まって狼が振り返った。
『そなたはどういった人間だ? ここへは何をしに来た』
「動物たちが人間を襲って通行出来ないから困ってるって。何で襲ってくるのかを調査しに来たんだよ」
『そうか。そなたが取る行動によっては容赦はしない』
そう言いながら狼は大きな岩の裏に入った。
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