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最終話 もう一度恋を……
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ここは私の部屋だ……一人暮らしの私の部屋……ベッドにテーブルにテレビにパソコン……。手元にはスマホが……『ラベルシアの乙女』をやっていたゲーム画面が……。
どういうこと!? 全部夢だったってこと!? なんで!! あんなにリアルだったのに!! シュリフス殿下とせっかく良い感じになったのに!!
「そ、そんなぁ……あれ、全部夢だったの……?」
がっくりと項垂れ、スマホの画面を見る。そこにはルシアが最高の笑顔で誰かの背中を見送っている……。
「こ、これって……」
『ラベルシアの乙女』のエンディングにこんなシーンはなかった。生徒会四人組の誰かとハッピーエンドになったあと、アイリーンを倒して結ばれた攻略対象の相手とのキスシーンで最後は終わっていたはず。
こんなエンディング見たことない……。しかもこの背中……忘れるわけがない。私の大好きな人。
「シュリフス殿下の背中……」
ゲームではシュリフス殿下はモブだったはず。エンディングになんて出てくるはずがない。でもこれは紛れもなくシュリフス殿下。それを最高の笑顔で見詰めるルシア。
「どうなってるの……?」
訳が分からない。でも……シュリフス殿下……貴方にもう会えないの? もう二度と会えないの? あぁ、一生現実に戻れなくても良いからシュリフス殿下と共に生きたかった……。
そう思った瞬間、ゲームの画面がプツンと消えた。
「え!? ま、待って待って!! 消えないでよ!!」
スマホを操作し『ラベルシアの乙女』のアプリを探す。
しかし、アプリは一向に見付からなかった。
「どうして……」
スマホのなかにはゲームの痕跡がなかった。ネットで調べてみても世間から消えていた。あれほど人気のあったゲームなのに、まるで最初から存在すらなかったかのような……。
私が夢でも見ていたのか……妄想だったのか……ゲーム自体、シュリフス殿下も全て夢だった……?
私の生活は日常に戻った。
大好きだったゲームもなく、毎日がつまらなくなった。仕事に没頭し、後輩を説教し、お局と言われる生活に戻ってしまった……。
夢でもなんでもいい。シュリフス殿下にもう一度逢いたい。
毎日泣いた。ベッドに潜るたびに泣いた。
あぁ、私は本当にシュリフス殿下が好きだったんだな、と思う。
初めてあれほど好きになったんだけどな……。
それが二次元の人物だなんて私らしいっちゃ私らしいんだけどね。自分で自分を笑った。
今日は残業もなく定時で帰ることが出来た。
でもこのまま帰っても部屋に一人だとまた泣いてしまう……。そう思うと帰ることも出来ず夕陽が沈む景色を眺め、一人公園でボーっと過ごしていた。
もう一度『ラベルシアの乙女』が出て来ないかしら、と諦め悪くスマホをいじった。
あるわけないわよね……そう思った瞬間、画面がキラリと煌めいた……? 夕陽が反射しただけ?
「おぉ、綺麗な夕陽ですね」
突然声がし、驚いてスマホを落としそうになる。
「あぁ、すみません! 突然声をかけて驚かせてしまいましたね」
その人は私のスマホをキャッチするような姿勢で私の手と共に支え上げた。そして座っていた私の前に立ち、こちらに顔を向ける。
「!! シュリ……!!」
「?」
あわわ、と慌てて口をつぐむ。
目の前に立つ人……男性は……シュリフス殿下にそっくりだった。銀髪ではないのだろうが、夕陽を浴びキラキラと煌めく髪。優しい笑顔。声までもが似ている。まさにシュリフス殿下だった。
ど、どういうこと!?
「貴女のスマホが夕陽を反射したのか、キラリと光っていましたよね。そのおかげでこんな美しい景色に気付きました。ありがとうございます」
ニコリと微笑んだ男性はあの優しく微笑んでくれたシュリフス殿下を思い出す。違う。この人はシュリフス殿下ではない。そう思っても目が離せない。
その男性は夕陽に向かい目を細める。その横顔は大好きだった人と同じ……。
シュリフス殿下……私、大人になったんだよ? こちらの世界では貴方とあまり変わらない年齢なのよ? この姿の私を、貴方は好きになってくれるだろうか。
貴方の返事が聞きたかった……。
もう一度私は恋が出来るかしら……シュリフス殿下……大好きだったシュリフス殿下……。
私はベンチから立ち上がり、その男性に向かって立った。
この人はシュリフス殿下とはなにも関係がないのかもしれない……でも運命なのかもしれない……それは私には分からない。
でも……今までの出来事が全て夢だったのだとしても……今この瞬間は偶然ではないと信じたい……。
「あの……貴方のお名前を教えていただけませんか?」
彼は私を見ると優しい眼差しを向けた……
◇◇
「あぁ、懐かしいね」
「?」
「君と初めて会った日もこんな綺麗な夕陽だった」
茜色に染まる空を眺めながら彼は言った。
「今から思えば私はあのとき君に一目惚れしていたんだろうね。恥ずかしくてずっと言えなかったけれど」
フフ、と楽しそうに彼は笑った。
「だってね、あのとき私はなぜか君を見て『もう逃がさない』って思ったんだ」
!!
その言葉は遠い記憶……でも、絶対忘れられない記憶……忘れたくない記憶……。
「フフ、おかしいよね。君とはあのとき初めて出逢ったのに」
涙が込み上げ、視界が歪む。
あぁ……
「どうしたんだい?」
そう言って彼は優しい微笑みで私の頭をポンッと撫でた。
これは偶然? それとも……
ううん、どちらでも構わないわ。
私は……今、とても幸せだから……
「さて、もう帰ろうか。皆が待っているよ」
そう言うと彼は私の手を優しく握った。
そう、彼らが私たちを待っている……早く帰らないとね、フフ。
茜色の夕陽を眺めながら二人歩く。
もうお互い皺くちゃになってしまった手を繋ぎながら……
完
***********************
後書きです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回の作品はかなり突発的に始めてしまい、本当に行き当たりばったりで
執筆しておりました。
そのためかなり拙い作品になってしまい申し訳ございません。
本当はもう少し攻略対象者たちとの恋模様も書くつもりにしていたのですが、
元々あまり長く書く予定ではなく、攻略対象者たちの話を入れるとかなり長くなってしまうため、
中編程度にするつもりでかなり端折って進めました。
いつかもしかしたら加筆修正するかもしれませんが、今作はとりあえずこれにて完結とさせていただきます。
拙い作品を最後までお付き合いくださりありがとうございました!
どういうこと!? 全部夢だったってこと!? なんで!! あんなにリアルだったのに!! シュリフス殿下とせっかく良い感じになったのに!!
「そ、そんなぁ……あれ、全部夢だったの……?」
がっくりと項垂れ、スマホの画面を見る。そこにはルシアが最高の笑顔で誰かの背中を見送っている……。
「こ、これって……」
『ラベルシアの乙女』のエンディングにこんなシーンはなかった。生徒会四人組の誰かとハッピーエンドになったあと、アイリーンを倒して結ばれた攻略対象の相手とのキスシーンで最後は終わっていたはず。
こんなエンディング見たことない……。しかもこの背中……忘れるわけがない。私の大好きな人。
「シュリフス殿下の背中……」
ゲームではシュリフス殿下はモブだったはず。エンディングになんて出てくるはずがない。でもこれは紛れもなくシュリフス殿下。それを最高の笑顔で見詰めるルシア。
「どうなってるの……?」
訳が分からない。でも……シュリフス殿下……貴方にもう会えないの? もう二度と会えないの? あぁ、一生現実に戻れなくても良いからシュリフス殿下と共に生きたかった……。
そう思った瞬間、ゲームの画面がプツンと消えた。
「え!? ま、待って待って!! 消えないでよ!!」
スマホを操作し『ラベルシアの乙女』のアプリを探す。
しかし、アプリは一向に見付からなかった。
「どうして……」
スマホのなかにはゲームの痕跡がなかった。ネットで調べてみても世間から消えていた。あれほど人気のあったゲームなのに、まるで最初から存在すらなかったかのような……。
私が夢でも見ていたのか……妄想だったのか……ゲーム自体、シュリフス殿下も全て夢だった……?
私の生活は日常に戻った。
大好きだったゲームもなく、毎日がつまらなくなった。仕事に没頭し、後輩を説教し、お局と言われる生活に戻ってしまった……。
夢でもなんでもいい。シュリフス殿下にもう一度逢いたい。
毎日泣いた。ベッドに潜るたびに泣いた。
あぁ、私は本当にシュリフス殿下が好きだったんだな、と思う。
初めてあれほど好きになったんだけどな……。
それが二次元の人物だなんて私らしいっちゃ私らしいんだけどね。自分で自分を笑った。
今日は残業もなく定時で帰ることが出来た。
でもこのまま帰っても部屋に一人だとまた泣いてしまう……。そう思うと帰ることも出来ず夕陽が沈む景色を眺め、一人公園でボーっと過ごしていた。
もう一度『ラベルシアの乙女』が出て来ないかしら、と諦め悪くスマホをいじった。
あるわけないわよね……そう思った瞬間、画面がキラリと煌めいた……? 夕陽が反射しただけ?
「おぉ、綺麗な夕陽ですね」
突然声がし、驚いてスマホを落としそうになる。
「あぁ、すみません! 突然声をかけて驚かせてしまいましたね」
その人は私のスマホをキャッチするような姿勢で私の手と共に支え上げた。そして座っていた私の前に立ち、こちらに顔を向ける。
「!! シュリ……!!」
「?」
あわわ、と慌てて口をつぐむ。
目の前に立つ人……男性は……シュリフス殿下にそっくりだった。銀髪ではないのだろうが、夕陽を浴びキラキラと煌めく髪。優しい笑顔。声までもが似ている。まさにシュリフス殿下だった。
ど、どういうこと!?
「貴女のスマホが夕陽を反射したのか、キラリと光っていましたよね。そのおかげでこんな美しい景色に気付きました。ありがとうございます」
ニコリと微笑んだ男性はあの優しく微笑んでくれたシュリフス殿下を思い出す。違う。この人はシュリフス殿下ではない。そう思っても目が離せない。
その男性は夕陽に向かい目を細める。その横顔は大好きだった人と同じ……。
シュリフス殿下……私、大人になったんだよ? こちらの世界では貴方とあまり変わらない年齢なのよ? この姿の私を、貴方は好きになってくれるだろうか。
貴方の返事が聞きたかった……。
もう一度私は恋が出来るかしら……シュリフス殿下……大好きだったシュリフス殿下……。
私はベンチから立ち上がり、その男性に向かって立った。
この人はシュリフス殿下とはなにも関係がないのかもしれない……でも運命なのかもしれない……それは私には分からない。
でも……今までの出来事が全て夢だったのだとしても……今この瞬間は偶然ではないと信じたい……。
「あの……貴方のお名前を教えていただけませんか?」
彼は私を見ると優しい眼差しを向けた……
◇◇
「あぁ、懐かしいね」
「?」
「君と初めて会った日もこんな綺麗な夕陽だった」
茜色に染まる空を眺めながら彼は言った。
「今から思えば私はあのとき君に一目惚れしていたんだろうね。恥ずかしくてずっと言えなかったけれど」
フフ、と楽しそうに彼は笑った。
「だってね、あのとき私はなぜか君を見て『もう逃がさない』って思ったんだ」
!!
その言葉は遠い記憶……でも、絶対忘れられない記憶……忘れたくない記憶……。
「フフ、おかしいよね。君とはあのとき初めて出逢ったのに」
涙が込み上げ、視界が歪む。
あぁ……
「どうしたんだい?」
そう言って彼は優しい微笑みで私の頭をポンッと撫でた。
これは偶然? それとも……
ううん、どちらでも構わないわ。
私は……今、とても幸せだから……
「さて、もう帰ろうか。皆が待っているよ」
そう言うと彼は私の手を優しく握った。
そう、彼らが私たちを待っている……早く帰らないとね、フフ。
茜色の夕陽を眺めながら二人歩く。
もうお互い皺くちゃになってしまった手を繋ぎながら……
完
***********************
後書きです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
今回の作品はかなり突発的に始めてしまい、本当に行き当たりばったりで
執筆しておりました。
そのためかなり拙い作品になってしまい申し訳ございません。
本当はもう少し攻略対象者たちとの恋模様も書くつもりにしていたのですが、
元々あまり長く書く予定ではなく、攻略対象者たちの話を入れるとかなり長くなってしまうため、
中編程度にするつもりでかなり端折って進めました。
いつかもしかしたら加筆修正するかもしれませんが、今作はとりあえずこれにて完結とさせていただきます。
拙い作品を最後までお付き合いくださりありがとうございました!
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