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第29話 クラウド公爵家
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「罠?」
「えぇ、私とアイリーンの婚約を破棄する。それによってボルデン公爵家は立場が微妙になるように思わせる。それをきっかけにクラウド家がなにか動きを見せるのではないか、と」
「それであんな大勢の前で婚約破棄を?」
「はい、ルシア嬢にだけなにも伝えなかったのは貴女も狙われているから……」
「はい?」
私も狙われている? どういうこと?
「貴女が狩り大会で見せた魔法、あれがとてつもないものだとあのとき多くの者に知れ渡ってしまいました。それはクラウド家の耳にも入った……」
「ルシアがいると計画の邪魔になる、そんな理由で狙われていた」
普段ニコニコと可愛いロナルドまでもが真剣な顔で言葉にする。
私が狙われていた? 計画の邪魔になる存在だから? だから排除しようと画策していた……。
「それで私の傍には常に誰かがいてくださったんですか?」
皆が静かに頷く。
狩り大会以降、いつも誰かが傍にいてくれた。魔物から護るためか、私が無茶しないように見張っていたのか、そのどちらかだと思っていたがどうやら違ったらしい。
まさか人間から命を狙われていたとは。
そうか、ゲームではクラウド家なんてほとんど出てこないが、ルシアがセルディ殿下ルートではなくてもアイリーンが闇堕ちしてしまう原因、それはこのクラウド家の魔石のせいだったって訳ね。
婚約破棄されて傷付いたアイリーンに、黒い影が封印された魔石を使い闇堕ちさせたんだ。
その後アイリーンは倒され、おそらく黒い影の力はルシアの浄化で消え去ったのだろう。
クラウド家が魔石を使い企んだというようなことは一切出てこないため、プレイヤーには分からないはずだわ。
「魔石をどう使おうとしているのか分かりませんが、封印された黒い影を解き放とうとしている、ということだけは確実でしょう……これをなんとかしなければなりません。
しかし貴女がこの計画を知れば、アイリーンを護ろうとなさるでしょう?」
「もちろん!」
セルディ殿下はふんわりと笑った。
「だからです」
「?」
「だから貴女には言わなかった。アイリーンを護るためにきっとまた無茶をする。貴女自身が狙われているのに、貴女は自分よりもアイリーンを護ろうとするでしょう?」
「…………」
「そんなことはここにいる全員が望んでいません。
……本当は最後まで言わないつもりにしていたのです。しかしアイリーンから貴女が酷く心を痛めている、と聞いて……」
アイリーンが私の手をギュッと握り締めた。シュリフス殿下もいつもの優しい顔ではなく、真剣な顔で見詰めてくる。他の皆もそうだ。
「ごめんなさい……ありがとうございます。皆さん、私を心配してくださっていたのですね……」
皆の気持ちが嬉しい。しかし嬉しいと同時にやはり私は皆を護りたい。こんな優しい人たちを失いたくない。
「無茶はしないと約束します。私にも戦わせてください!」
皆は顔を見合せたかと思うと、クスッと笑った。
「そう言うと思った!」
ロナルドが笑いながら言った。
「あぁ、絶対ルシアはそう言うだろうな」
「仕方ない」
「はぁぁ、本当に無茶はしないでくださいね?」
アイザックも笑い出し、ラドルフはヤレヤレといった顔、シュリフス殿下も苦笑しながらも頭を撫でてくれる。
そしてアイリーンは俯き私の手を握り締め……
「絶対に……絶対に無茶はしないでください……私のために怪我をするようなら……」
「するようなら?」
「もうお友達をやめますから!!」
ガバッと顔を上げアイリーンが叫んだ。若干目に涙を溜めながら、顔を赤くし叫ぶ。
必死な様子は見て取れる……ブフッ。駄目! 笑っちゃ駄目! 我慢よ!
もぉぉお!! アイリーン可愛すぎ!! お友達やめるって!! 真剣な顔でなにを言われるのかと思ったら! いやん、可愛いわ!!
ニヤニヤしてしまいそうな顔を我慢しているのがバレたのか、男性陣に生暖かい目で見守られていた……アハハ……。
「私の父、国王陛下もボルデン公爵にも今回の作戦は了承を得ています。この後クラウド家がどう動いてくるか、それによっての対策は考えねばなりませんが、とにかく今は黒い靄をどうするかです」
「黒い影の文献のように最近どうも諍いが多くなっている気がする。しかもそれは学園内だけじゃない」
ラドルフが腕を組み報告する。
確かに黒い靄が増えだしてから、生徒同士にも小さいが諍いが増えていたような気がする。それが街にも広がっているということ!?
セルディ殿下は頷き眉間に皺を寄せた。
「街の様子も徐々におかしくなっているような報告を受けているのです」
「私の力でどうにか出来ないでしょうか……」
ルシアは唯一浄化魔法が使える。黒い靄を蹴散らせていたのもそのおかげだと思う。おそらく魔力自体に聖なる力が宿ったりしているのだろうと推測した。
私自身は浄化魔法自体を発動させたことはないが、ルシアの記憶にはある。きっと他の魔法と同じように発動させられるはず!
浄化魔法について話そうとしたとき、扉を叩く音が聞こえた。
「アイリーン、私だ」
「えぇ、私とアイリーンの婚約を破棄する。それによってボルデン公爵家は立場が微妙になるように思わせる。それをきっかけにクラウド家がなにか動きを見せるのではないか、と」
「それであんな大勢の前で婚約破棄を?」
「はい、ルシア嬢にだけなにも伝えなかったのは貴女も狙われているから……」
「はい?」
私も狙われている? どういうこと?
「貴女が狩り大会で見せた魔法、あれがとてつもないものだとあのとき多くの者に知れ渡ってしまいました。それはクラウド家の耳にも入った……」
「ルシアがいると計画の邪魔になる、そんな理由で狙われていた」
普段ニコニコと可愛いロナルドまでもが真剣な顔で言葉にする。
私が狙われていた? 計画の邪魔になる存在だから? だから排除しようと画策していた……。
「それで私の傍には常に誰かがいてくださったんですか?」
皆が静かに頷く。
狩り大会以降、いつも誰かが傍にいてくれた。魔物から護るためか、私が無茶しないように見張っていたのか、そのどちらかだと思っていたがどうやら違ったらしい。
まさか人間から命を狙われていたとは。
そうか、ゲームではクラウド家なんてほとんど出てこないが、ルシアがセルディ殿下ルートではなくてもアイリーンが闇堕ちしてしまう原因、それはこのクラウド家の魔石のせいだったって訳ね。
婚約破棄されて傷付いたアイリーンに、黒い影が封印された魔石を使い闇堕ちさせたんだ。
その後アイリーンは倒され、おそらく黒い影の力はルシアの浄化で消え去ったのだろう。
クラウド家が魔石を使い企んだというようなことは一切出てこないため、プレイヤーには分からないはずだわ。
「魔石をどう使おうとしているのか分かりませんが、封印された黒い影を解き放とうとしている、ということだけは確実でしょう……これをなんとかしなければなりません。
しかし貴女がこの計画を知れば、アイリーンを護ろうとなさるでしょう?」
「もちろん!」
セルディ殿下はふんわりと笑った。
「だからです」
「?」
「だから貴女には言わなかった。アイリーンを護るためにきっとまた無茶をする。貴女自身が狙われているのに、貴女は自分よりもアイリーンを護ろうとするでしょう?」
「…………」
「そんなことはここにいる全員が望んでいません。
……本当は最後まで言わないつもりにしていたのです。しかしアイリーンから貴女が酷く心を痛めている、と聞いて……」
アイリーンが私の手をギュッと握り締めた。シュリフス殿下もいつもの優しい顔ではなく、真剣な顔で見詰めてくる。他の皆もそうだ。
「ごめんなさい……ありがとうございます。皆さん、私を心配してくださっていたのですね……」
皆の気持ちが嬉しい。しかし嬉しいと同時にやはり私は皆を護りたい。こんな優しい人たちを失いたくない。
「無茶はしないと約束します。私にも戦わせてください!」
皆は顔を見合せたかと思うと、クスッと笑った。
「そう言うと思った!」
ロナルドが笑いながら言った。
「あぁ、絶対ルシアはそう言うだろうな」
「仕方ない」
「はぁぁ、本当に無茶はしないでくださいね?」
アイザックも笑い出し、ラドルフはヤレヤレといった顔、シュリフス殿下も苦笑しながらも頭を撫でてくれる。
そしてアイリーンは俯き私の手を握り締め……
「絶対に……絶対に無茶はしないでください……私のために怪我をするようなら……」
「するようなら?」
「もうお友達をやめますから!!」
ガバッと顔を上げアイリーンが叫んだ。若干目に涙を溜めながら、顔を赤くし叫ぶ。
必死な様子は見て取れる……ブフッ。駄目! 笑っちゃ駄目! 我慢よ!
もぉぉお!! アイリーン可愛すぎ!! お友達やめるって!! 真剣な顔でなにを言われるのかと思ったら! いやん、可愛いわ!!
ニヤニヤしてしまいそうな顔を我慢しているのがバレたのか、男性陣に生暖かい目で見守られていた……アハハ……。
「私の父、国王陛下もボルデン公爵にも今回の作戦は了承を得ています。この後クラウド家がどう動いてくるか、それによっての対策は考えねばなりませんが、とにかく今は黒い靄をどうするかです」
「黒い影の文献のように最近どうも諍いが多くなっている気がする。しかもそれは学園内だけじゃない」
ラドルフが腕を組み報告する。
確かに黒い靄が増えだしてから、生徒同士にも小さいが諍いが増えていたような気がする。それが街にも広がっているということ!?
セルディ殿下は頷き眉間に皺を寄せた。
「街の様子も徐々におかしくなっているような報告を受けているのです」
「私の力でどうにか出来ないでしょうか……」
ルシアは唯一浄化魔法が使える。黒い靄を蹴散らせていたのもそのおかげだと思う。おそらく魔力自体に聖なる力が宿ったりしているのだろうと推測した。
私自身は浄化魔法自体を発動させたことはないが、ルシアの記憶にはある。きっと他の魔法と同じように発動させられるはず!
浄化魔法について話そうとしたとき、扉を叩く音が聞こえた。
「アイリーン、私だ」
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