27 / 36
第27話 公爵邸へ
しおりを挟む
結局ボロボロと泣き出してしまい、アイリーンに慰められるという訳分からん状態に……。
黒い靄には憑りつかれたりしてなさそうなのが幸いだ……。
「ルシアさん、私のために泣いてくれてありがとう。私は良いお友達を持ったわね」
フフっと微笑みながらアイリーンは私の手を握り返した。そしてそっと顔を近付け囁いた。
「ルシアさん、私のお話を聞いてくださる?」
耳元でそう呟いたアイリーン。顔を向けるとアイリーンはニコリと微笑んだ。
「一時、私は公爵邸へ戻ります。今晩、公爵邸まで来てくださらない?」
そうよね。このまま学園にはいたくないわよね。アイリーンの顔を見ながら頷いた。アイリーンは微笑み、「では後ほど」と言い去って行く。
セルディ殿下め!! どうしてくれようか!! ふんす!! と鼻息荒く寮へと戻る。
今さら卒業パーティに参加する気分でもないしね! あぁ、でも料理は食べたかった……美味しそうだったなぁ。
そんなことをブツブツ考えながら、寮へと戻るとアナが驚いていた。
「お嬢様、どうされたんですか!? こんなお早いお戻りとは!」
「ただいまぁ……ほんとどうなのよ……」
ぐったりしながらアナに卒業パーティでのことを話した。やはりアナも驚いた顔。
「えぇ……信じられません。あれほど仲が良さげでしたのに……」
「でしょ!? もう本当にセルディ殿下が信じられない!」
「なにか理由でもあるのでしょうか……」
「理由?」
「えぇ。あのセルディ殿下が理由もなく婚約破棄をあのような場で言い出すとは到底思えません……」
「だよねぇ……」
うーん、と二人して考え込んだが、あのときアイリーンですら理由は分からないと言っていた。アイリーンですら分からないものを私たちが分かるはずもなく……。
「とにかく何かお食事を用意致しましょう。そのご様子ではパーティでは何もお召し上がりにならなかったのでしょう?」
「えぇ、それどころじゃなかったから……」
アナは頷くと素早く食事の手配をしてくれ、そして卒業パーティで着用していたドレスを脱ぐ手伝いをしてくれた。
この後公爵邸に向かうことを伝え、外出用のワンピースを用意してもらい着替える。
食後、お茶をしながらまったりとしていたが、モヤモヤモヤモヤ……。公爵邸へ行くまでの時間、色々なことが頭のなかを巡り答えが出ない苛立ちにぐったりとしてしまった。
夕方に差し掛かるころ、アナに馬車の手配をしてもらい、公爵邸まで!
公爵邸は我が家の侯爵邸とは比べ物にならないほどの広さと豪華さだった。長期の休み中に何度かはお邪魔させてもらったことはあるため、慣れては来たのだが、やはりこのなんというか……規模が違い過ぎていつも腰が引ける。
門のところで名前を告げると、屋敷入口では執事長が出迎えてくれていた。
「ルシア様、お待ちしておりました。アイリーン様がお待ちです」
恭しく頭を下げた髪の白い執事長は、とても落ち着いた品のあるダンディなおじいちゃんだ。
執事長に案内されながら向かった先は応接室ではなくアイリーンの部屋だった。執事長が扉を叩き、なかへと声を掛けると、部屋のなかからアイリーンの声がした。
「どうぞ」
なかへと入る瞬間、なにやら違和感を感じたが、キョロっと周りを見回しても特になにもなかったため、気にせずなかへ。
部屋のなかにはアイリーンがいたが、一人だけではなかった。執事長が共に部屋へと入ると、しっかりと扉を閉めた。
「セルディ殿下!? それにみんなも……シュリフス殿下まで!?」
部屋のなかにはアイリーン、それにセルディ殿下、ロナルド、ラドルフ、アイザック、そしてシュリフス殿下がいた。
「お待ちしておりましたわ、ルシアさん」
にこやかにアイリーンは出迎え、私の手を取り部屋の中央へと促す。
「セバスチャン、人払いを。お茶の用意もいりません。呼ぶまではこの部屋に誰も近付かないように。セルディ殿下方が来られていることも内密に」
「分かりました、それでは失礼致します」
セバスチャンと呼ばれたのは執事長のことだ。恭しくお辞儀をした執事長は外へと出るとしっかりと扉を閉めた。
「セバスチャンは信頼出来る者ですのでご安心ください」
アイリーンはセルディ殿下に向かって言った。
「あぁ、彼は私も幼いころから知っている。信頼しているよ」
セルディ殿下がニコリと笑った。
ん? さっき卒業パーティであったことが嘘のように二人共穏やかだ。どういうこと?
しかもこの場にこんなみんな勢揃いってなんなの一体。
アイリーンと二人だけだと思っていた私には全くこの状況を理解出来なかった。
「ルシアさん、こちらにお座りになって」
アイリーンは長椅子に私を促し、その隣に座った。それに合わせて、セルディ殿下とシュリフス殿下も向かいに座る。他三人は我々を囲むように立った。
「あの……これは一体……」
まずこの状況を説明してもらいたい。
黒い靄には憑りつかれたりしてなさそうなのが幸いだ……。
「ルシアさん、私のために泣いてくれてありがとう。私は良いお友達を持ったわね」
フフっと微笑みながらアイリーンは私の手を握り返した。そしてそっと顔を近付け囁いた。
「ルシアさん、私のお話を聞いてくださる?」
耳元でそう呟いたアイリーン。顔を向けるとアイリーンはニコリと微笑んだ。
「一時、私は公爵邸へ戻ります。今晩、公爵邸まで来てくださらない?」
そうよね。このまま学園にはいたくないわよね。アイリーンの顔を見ながら頷いた。アイリーンは微笑み、「では後ほど」と言い去って行く。
セルディ殿下め!! どうしてくれようか!! ふんす!! と鼻息荒く寮へと戻る。
今さら卒業パーティに参加する気分でもないしね! あぁ、でも料理は食べたかった……美味しそうだったなぁ。
そんなことをブツブツ考えながら、寮へと戻るとアナが驚いていた。
「お嬢様、どうされたんですか!? こんなお早いお戻りとは!」
「ただいまぁ……ほんとどうなのよ……」
ぐったりしながらアナに卒業パーティでのことを話した。やはりアナも驚いた顔。
「えぇ……信じられません。あれほど仲が良さげでしたのに……」
「でしょ!? もう本当にセルディ殿下が信じられない!」
「なにか理由でもあるのでしょうか……」
「理由?」
「えぇ。あのセルディ殿下が理由もなく婚約破棄をあのような場で言い出すとは到底思えません……」
「だよねぇ……」
うーん、と二人して考え込んだが、あのときアイリーンですら理由は分からないと言っていた。アイリーンですら分からないものを私たちが分かるはずもなく……。
「とにかく何かお食事を用意致しましょう。そのご様子ではパーティでは何もお召し上がりにならなかったのでしょう?」
「えぇ、それどころじゃなかったから……」
アナは頷くと素早く食事の手配をしてくれ、そして卒業パーティで着用していたドレスを脱ぐ手伝いをしてくれた。
この後公爵邸に向かうことを伝え、外出用のワンピースを用意してもらい着替える。
食後、お茶をしながらまったりとしていたが、モヤモヤモヤモヤ……。公爵邸へ行くまでの時間、色々なことが頭のなかを巡り答えが出ない苛立ちにぐったりとしてしまった。
夕方に差し掛かるころ、アナに馬車の手配をしてもらい、公爵邸まで!
公爵邸は我が家の侯爵邸とは比べ物にならないほどの広さと豪華さだった。長期の休み中に何度かはお邪魔させてもらったことはあるため、慣れては来たのだが、やはりこのなんというか……規模が違い過ぎていつも腰が引ける。
門のところで名前を告げると、屋敷入口では執事長が出迎えてくれていた。
「ルシア様、お待ちしておりました。アイリーン様がお待ちです」
恭しく頭を下げた髪の白い執事長は、とても落ち着いた品のあるダンディなおじいちゃんだ。
執事長に案内されながら向かった先は応接室ではなくアイリーンの部屋だった。執事長が扉を叩き、なかへと声を掛けると、部屋のなかからアイリーンの声がした。
「どうぞ」
なかへと入る瞬間、なにやら違和感を感じたが、キョロっと周りを見回しても特になにもなかったため、気にせずなかへ。
部屋のなかにはアイリーンがいたが、一人だけではなかった。執事長が共に部屋へと入ると、しっかりと扉を閉めた。
「セルディ殿下!? それにみんなも……シュリフス殿下まで!?」
部屋のなかにはアイリーン、それにセルディ殿下、ロナルド、ラドルフ、アイザック、そしてシュリフス殿下がいた。
「お待ちしておりましたわ、ルシアさん」
にこやかにアイリーンは出迎え、私の手を取り部屋の中央へと促す。
「セバスチャン、人払いを。お茶の用意もいりません。呼ぶまではこの部屋に誰も近付かないように。セルディ殿下方が来られていることも内密に」
「分かりました、それでは失礼致します」
セバスチャンと呼ばれたのは執事長のことだ。恭しくお辞儀をした執事長は外へと出るとしっかりと扉を閉めた。
「セバスチャンは信頼出来る者ですのでご安心ください」
アイリーンはセルディ殿下に向かって言った。
「あぁ、彼は私も幼いころから知っている。信頼しているよ」
セルディ殿下がニコリと笑った。
ん? さっき卒業パーティであったことが嘘のように二人共穏やかだ。どういうこと?
しかもこの場にこんなみんな勢揃いってなんなの一体。
アイリーンと二人だけだと思っていた私には全くこの状況を理解出来なかった。
「ルシアさん、こちらにお座りになって」
アイリーンは長椅子に私を促し、その隣に座った。それに合わせて、セルディ殿下とシュリフス殿下も向かいに座る。他三人は我々を囲むように立った。
「あの……これは一体……」
まずこの状況を説明してもらいたい。
35
お気に入りに追加
430
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
完結まで執筆済み、毎日更新
もう少しだけお付き合いください
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ
鏑木 うりこ
恋愛
毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。
圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!
なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??
「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。
*ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。
*ご照覧いただけたら幸いです。
*深く考えないでいただけるともっと幸いです。
*作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。
*あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。
マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)
2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)
恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!
ほら、誰もシナリオ通りに動かないから
蔵崎とら
恋愛
乙女ゲームの世界にモブとして転生したのでゲームの登場人物を観察していたらいつの間にか巻き込まれていた。
ただヒロインも悪役も攻略対象キャラクターさえも、皆シナリオを無視するから全てが斜め上へと向かっていってる気がするようなしないような……。
※ちょっぴり百合要素があります※
他サイトからの転載です。
ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!
As-me.com
恋愛
説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。
気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。
原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。
えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!
腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!
私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!
眼鏡は顔の一部です!
※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。
基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。
途中まで恋愛タグは迷子です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる