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第22話 二人きりの治療
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「大丈夫ですか!? ルシアさん!!」
天幕で出来た救護室へと入るとベッドに降ろされた。
「だ、大丈夫です……運んでくださりありがとうございます」
「そんなことにお礼はいりません、それよりも早く治療しますよ! レディに申し訳ないのですが、今女性の治療師が不在なのです……しばらく席を外しますので上の服だけ脱いでいただけますか?」
「えっ」
「傷を見て治癒魔法をかけていきますので……」
えぇぇえ!! 脱ぐの!? せ、背中とは言え、素肌を見せちゃうの!? えぇぇえ!! ど、どうしよう、邪な考えが…………い、いや、いやいやいや、ち、治療よ!! シュリフス殿下はそんな邪な考えあるわけないじゃない!! 純粋に治療としてだし、それにこんな子供に欲情なんかしないでしょ! …………それはそれで地味に凹むわね…………。
し、仕方ないわよね……脱ぐわよ!
痛たた……。腕を動かすと背中の傷が痛む。なんとか上の服を全て脱ぎ、来ていた服を胸の前に抱える。き、緊張する……。
外から声が掛けられる。
「ルシアさん、入ってよろしいですか?」
「は、はい」
天幕の入口をまくり、中へと入ってきたシュリフス殿下。
肩があらわになっていて恥ずかしい……いくら三十路とはいえ恥ずかしいものは恥ずかしいのよ! お肌はピチピチ十六歳だから自信はあるんだけどね。それは羞恥心とは別の問題だ。
「後ろを向いていますので、ベッドにうつ伏せになっていただけますか? 背中を診ます」
「は、はい」
背を向けるシュリフス殿下に返事をし、ベッドにうつ伏せになる。もちろん着ていた服は横に置きました。今、私は上半身裸……胸を隠すものはベッドだけ……少しでも動けば見えちゃう……きゃぁぁああ、き、緊張する!!
「うつ伏せになりました」
「振り向いて大丈夫ですか?」
「はい」
ちゃんと何度も確認してくれるシュリフス殿下。紳士だわぁ。上半身裸で思わず抱き付きたくなってしまうが、紳士なシュリフス殿下に比べて変態過ぎる……痴女じゃん……ぐふぅ。
「それでは診ていきますね」
「はい、お願いします」
じっとしているとお姫様抱っこの衝撃で忘れていた痛みがぶり返してくる。自分で見えないのが幸いかしら。かなりの痛みだから結構な怪我なんだろうな……。
シュリフス殿下は私の背中に触れるか触れないかの位置に手を翳し、背中に手を這わせていく。それが触れてはいないのに気配だけを感じるものだからぞわぞわしてしまう。変な気分になってしまいそうだわ。
「傷だけでなく、内部に損傷がないかスキャンしていっています。しばらく待ってくださいね」
なるほど、内部に損傷か……そんなことも魔法で分かるのね。凄いわ。
しっかし、ゲームではこの治療のときもシュリフス殿下と対面のときに少し顔が出ただけで、治療シーンもなければ「治療し、治った」という表現だけだったのが悔しくて仕方がない!
こんな接近シーンならゲームでも出してくれたら良いのにぃ!! でもシュリフス殿下はモブだから駄目か……攻略対象じゃないもんね……こんなにイケオジなのに!!
さっき四人組に怒ってた姿もかっこよかったわぁ! 普段にこにこ優しいお顔なのにあんなキリッとしたお顔まで見られるなんて! 幸せ……はうぅ。
「では今から治療していきますね。かなり傷が深いですから、少し時間がかかります。もし途中でなにかあればすぐにおっしゃってくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
シュリフス殿下は手に魔力を込め治癒魔法を施していく。じんわりと温かい気配を感じ、治癒魔法の存在を感じられる。
温かい……気持ち良い……あぁ、抱き付きたい……違う違う……いやでも本心……
そんなことをぼんやり考えていると、ついウトウトとしてしまい、いつの間にか眠ってしまっていた。
頬を撫でられたような気がしたが夢なのか現実なのかが分からなかった……。
「ルシアさん、大丈夫ですか? お着替えをお持ちしましたわ」
アイリーンの声がする。重い瞼をゆっくりと開けると、ベッドに眠っていた私の横にアイリーンが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「アイリーン様?」
「良かった、ルシアさん! 本当に良かった」
アイリーンは再び泣き出してしまった。
「な、泣かないでください!」
慌てて身体を起こしアイリーンの手に触れる。
「ル、ルシアさん!! 前を!!」
慌ててアイリーンが毛布をガバッと私に掛けた。ん? あ!! ぎゃぁぁああ!! まだ上半身裸だった!! 目の前にシュリフス殿下もいた!!
「あぁぁああ!!」
慌てて前のめりになり胸を隠す。み、見られた!? ひぃぃいん!!
「んん」
シュリフス殿下は変な咳払いをし、顔を横に向けた……あぁぁあ……シュリフス殿下はずっと紳士に対応してくださったのに……台無し!! ぐふぅ。
天幕で出来た救護室へと入るとベッドに降ろされた。
「だ、大丈夫です……運んでくださりありがとうございます」
「そんなことにお礼はいりません、それよりも早く治療しますよ! レディに申し訳ないのですが、今女性の治療師が不在なのです……しばらく席を外しますので上の服だけ脱いでいただけますか?」
「えっ」
「傷を見て治癒魔法をかけていきますので……」
えぇぇえ!! 脱ぐの!? せ、背中とは言え、素肌を見せちゃうの!? えぇぇえ!! ど、どうしよう、邪な考えが…………い、いや、いやいやいや、ち、治療よ!! シュリフス殿下はそんな邪な考えあるわけないじゃない!! 純粋に治療としてだし、それにこんな子供に欲情なんかしないでしょ! …………それはそれで地味に凹むわね…………。
し、仕方ないわよね……脱ぐわよ!
痛たた……。腕を動かすと背中の傷が痛む。なんとか上の服を全て脱ぎ、来ていた服を胸の前に抱える。き、緊張する……。
外から声が掛けられる。
「ルシアさん、入ってよろしいですか?」
「は、はい」
天幕の入口をまくり、中へと入ってきたシュリフス殿下。
肩があらわになっていて恥ずかしい……いくら三十路とはいえ恥ずかしいものは恥ずかしいのよ! お肌はピチピチ十六歳だから自信はあるんだけどね。それは羞恥心とは別の問題だ。
「後ろを向いていますので、ベッドにうつ伏せになっていただけますか? 背中を診ます」
「は、はい」
背を向けるシュリフス殿下に返事をし、ベッドにうつ伏せになる。もちろん着ていた服は横に置きました。今、私は上半身裸……胸を隠すものはベッドだけ……少しでも動けば見えちゃう……きゃぁぁああ、き、緊張する!!
「うつ伏せになりました」
「振り向いて大丈夫ですか?」
「はい」
ちゃんと何度も確認してくれるシュリフス殿下。紳士だわぁ。上半身裸で思わず抱き付きたくなってしまうが、紳士なシュリフス殿下に比べて変態過ぎる……痴女じゃん……ぐふぅ。
「それでは診ていきますね」
「はい、お願いします」
じっとしているとお姫様抱っこの衝撃で忘れていた痛みがぶり返してくる。自分で見えないのが幸いかしら。かなりの痛みだから結構な怪我なんだろうな……。
シュリフス殿下は私の背中に触れるか触れないかの位置に手を翳し、背中に手を這わせていく。それが触れてはいないのに気配だけを感じるものだからぞわぞわしてしまう。変な気分になってしまいそうだわ。
「傷だけでなく、内部に損傷がないかスキャンしていっています。しばらく待ってくださいね」
なるほど、内部に損傷か……そんなことも魔法で分かるのね。凄いわ。
しっかし、ゲームではこの治療のときもシュリフス殿下と対面のときに少し顔が出ただけで、治療シーンもなければ「治療し、治った」という表現だけだったのが悔しくて仕方がない!
こんな接近シーンならゲームでも出してくれたら良いのにぃ!! でもシュリフス殿下はモブだから駄目か……攻略対象じゃないもんね……こんなにイケオジなのに!!
さっき四人組に怒ってた姿もかっこよかったわぁ! 普段にこにこ優しいお顔なのにあんなキリッとしたお顔まで見られるなんて! 幸せ……はうぅ。
「では今から治療していきますね。かなり傷が深いですから、少し時間がかかります。もし途中でなにかあればすぐにおっしゃってくださいね」
「はい、よろしくお願いします」
シュリフス殿下は手に魔力を込め治癒魔法を施していく。じんわりと温かい気配を感じ、治癒魔法の存在を感じられる。
温かい……気持ち良い……あぁ、抱き付きたい……違う違う……いやでも本心……
そんなことをぼんやり考えていると、ついウトウトとしてしまい、いつの間にか眠ってしまっていた。
頬を撫でられたような気がしたが夢なのか現実なのかが分からなかった……。
「ルシアさん、大丈夫ですか? お着替えをお持ちしましたわ」
アイリーンの声がする。重い瞼をゆっくりと開けると、ベッドに眠っていた私の横にアイリーンが心配そうな顔で覗き込んでいた。
「アイリーン様?」
「良かった、ルシアさん! 本当に良かった」
アイリーンは再び泣き出してしまった。
「な、泣かないでください!」
慌てて身体を起こしアイリーンの手に触れる。
「ル、ルシアさん!! 前を!!」
慌ててアイリーンが毛布をガバッと私に掛けた。ん? あ!! ぎゃぁぁああ!! まだ上半身裸だった!! 目の前にシュリフス殿下もいた!!
「あぁぁああ!!」
慌てて前のめりになり胸を隠す。み、見られた!? ひぃぃいん!!
「んん」
シュリフス殿下は変な咳払いをし、顔を横に向けた……あぁぁあ……シュリフス殿下はずっと紳士に対応してくださったのに……台無し!! ぐふぅ。
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