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第20話 魔物!
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学園長が挨拶をし、セルディ殿下が開会の宣言を行うと、生徒たちは各々森のなかへと消えて行った。
「さて、私は……」
「ルシア、もしかして黒い靄が集まっていたりするのかい?」
振り向くとセルディ殿下以外の三人、ロナルド、ラドルフ、アイザックがいた。私とセルディ殿下のやり取りを見ていたようだ。
「なにか起こりそうなのか?」
ラドルフも真面目な顔で聞いてくる。うーん、どこまで言うべきか……まさか魔物が現れるなんて思ってもいないでしょうし、なぜ私が知っているのかも疑われても厄介だし……。
そもそもこの森には魔物なんていないはずだったのに。野獣も大型のものはおらず、精々中型ほどの大きさまでのはずだった。ましてや魔物なんて。
だからゲームのなかでは油断していたのもあり、初動が遅れた。魔物が襲って来たときに皆が唖然としてしまい咄嗟に動けなかったのだ。
騎士団が警備をしていたとはいえ、同様に警戒対象が魔物ではなかったため、瞬時の判断で動くことは出来なかった。
そのためルシアがなんとか魔物を倒しても、その後他の魔物が現れるなんて誰も予想をしていなかったのだ。
一匹を倒しホッとした瞬間、背後から襲われたのだった。
今日は絶対に油断しない!
三人には黒い靄が集まっていそうだ、と説明しておこう。嘘ではないし。事実黒い靄も空に渦巻いているのだ。嫌な予感しかしない。
「黒い靄がなんだか多い気がするんです。どうにも嫌な予感が……」
それを聞いた三人はお互い顔を見合わせ頷いた。
「分かった、俺たちも警戒しておくよ」
三人も警戒をしてくれる、アイリーンにはセルディ殿下が付いていてくれる、きっと大丈夫……そう信じた。
あちこちですでに多くの生徒たちが剣や魔法を駆使して狩りを行っていた。
アイリーンとセルディ殿下も遠目で発見したりもするが、仲睦まじい様子で微笑ましいわ。
三人組は周りを警戒しつつも狩りを行っているようだ。器用よねぇ。
そしてもうすぐお昼になろうとしている……皆が休憩に入ろうかというそのときに確か現れるはず。
それに合わせて最大限の警戒をした…………しかし、魔物は現れない…………一体どういうこと……?
「午前中は特になにも起こらなかったな」
アイザックが周りを見渡しながら戻って来た。ロナルドとラドルフもその後に続く。
「ないならないに越したことはない」
「そうだねー」
なにも起こらなくても三人とも信じてくれている。有難いと同時にもし何もなかったら申し訳ないな……。
なにも起こらないのは時間がズレただけなのか、「私」というイレギュラーな存在でゲームの内容が変わってしまったのか……。一体どういうことだろうか……。
ランチは学園が用意してくれている青空ビュッフェだ。大きなテーブルにたくさんの料理が並べられている。美味しそうだわー。
アイリーンに誘われ、セルディ殿下とアイリーンとともにランチをすることになった。しかしさすがに二人に挟まれて一緒に食べるとか居たたまれないので、生徒会メンバーを巻き込みました、アハ。
他の女生徒たちに恨まれるかしら、とも思ったけれど、以前のロナルド事件から姐御扱いされているので恐らく大丈夫だろう。
皆がランチを楽しみ歓談中のことだった! 森から巨大な魔物が現れたのだ!
「「「「「きゃぁぁぁああああ!!!!」」」」」
皆が悲鳴を上げた。
「なっ!! 魔物!?」
「なぜこんなところに!?」
セルディ殿下たちも立ち上がり混乱する生徒たちに指示を出す。さすが生徒会メンバーね、驚いたのは最初だけ。すぐに冷静になり指示をしている。これなら生徒たちは逃げられるはず。
「ルシアさん!? なにをしているの!? 逃げないと!!」
アイリーンが必死に声をかけてくれる。
「大丈夫です! アイリーン様は生徒の誘導をお願いします!」
「貴女まさか戦うつもりなの!? 騎士団を今呼びに行ってもらっていますわ! 貴女が戦う必要などないのよ!」
アイリーンに振り向きニコリと笑った。心配してくれてありがとう。やっぱりアイリーンは優しい子だわ。
魔物に向かい手を伸ばした。
巨大な魔物は森の木々をなぎ倒しながら進んでくる。真っ黒で醜悪な身体は鱗のようにも見えるがあちこちがひび割れトゲのようなものが付き出している。
目はギラギラと赤色に光り、口には鋭い牙が覗き、唸り声を上げている。太い四肢はなぎ倒した木々を踏みつけていく。身体と同じく真っ黒な鋭い爪は地面を踏みしめるたびに土をえぐった。
きっとこの一匹だけではないはず。この一匹を倒した後、ルシアはさらに現れた魔物にやられたんだもの。
周りにも意識を巡らせながら、雷の魔法を発動させる。
「雷撃!!」
掌に集まった魔力を魔物に向かって放出する。すると魔力は矢のような姿で魔物目掛けて飛んだ。
放たれた雷の矢は魔物の身体を貫いた……その瞬間にグッと拳を握る。それに呼応するように矢は魔物の中心部分で止まった。
『ウガァァァアアア!!』
魔物は怒っているのか痛がっているのか、急に叫び出しこちらへ向かうスピードを上げた。
「「「「ルシア!!」」」」
背後で皆が叫ぶのが聞こえた。
「さて、私は……」
「ルシア、もしかして黒い靄が集まっていたりするのかい?」
振り向くとセルディ殿下以外の三人、ロナルド、ラドルフ、アイザックがいた。私とセルディ殿下のやり取りを見ていたようだ。
「なにか起こりそうなのか?」
ラドルフも真面目な顔で聞いてくる。うーん、どこまで言うべきか……まさか魔物が現れるなんて思ってもいないでしょうし、なぜ私が知っているのかも疑われても厄介だし……。
そもそもこの森には魔物なんていないはずだったのに。野獣も大型のものはおらず、精々中型ほどの大きさまでのはずだった。ましてや魔物なんて。
だからゲームのなかでは油断していたのもあり、初動が遅れた。魔物が襲って来たときに皆が唖然としてしまい咄嗟に動けなかったのだ。
騎士団が警備をしていたとはいえ、同様に警戒対象が魔物ではなかったため、瞬時の判断で動くことは出来なかった。
そのためルシアがなんとか魔物を倒しても、その後他の魔物が現れるなんて誰も予想をしていなかったのだ。
一匹を倒しホッとした瞬間、背後から襲われたのだった。
今日は絶対に油断しない!
三人には黒い靄が集まっていそうだ、と説明しておこう。嘘ではないし。事実黒い靄も空に渦巻いているのだ。嫌な予感しかしない。
「黒い靄がなんだか多い気がするんです。どうにも嫌な予感が……」
それを聞いた三人はお互い顔を見合わせ頷いた。
「分かった、俺たちも警戒しておくよ」
三人も警戒をしてくれる、アイリーンにはセルディ殿下が付いていてくれる、きっと大丈夫……そう信じた。
あちこちですでに多くの生徒たちが剣や魔法を駆使して狩りを行っていた。
アイリーンとセルディ殿下も遠目で発見したりもするが、仲睦まじい様子で微笑ましいわ。
三人組は周りを警戒しつつも狩りを行っているようだ。器用よねぇ。
そしてもうすぐお昼になろうとしている……皆が休憩に入ろうかというそのときに確か現れるはず。
それに合わせて最大限の警戒をした…………しかし、魔物は現れない…………一体どういうこと……?
「午前中は特になにも起こらなかったな」
アイザックが周りを見渡しながら戻って来た。ロナルドとラドルフもその後に続く。
「ないならないに越したことはない」
「そうだねー」
なにも起こらなくても三人とも信じてくれている。有難いと同時にもし何もなかったら申し訳ないな……。
なにも起こらないのは時間がズレただけなのか、「私」というイレギュラーな存在でゲームの内容が変わってしまったのか……。一体どういうことだろうか……。
ランチは学園が用意してくれている青空ビュッフェだ。大きなテーブルにたくさんの料理が並べられている。美味しそうだわー。
アイリーンに誘われ、セルディ殿下とアイリーンとともにランチをすることになった。しかしさすがに二人に挟まれて一緒に食べるとか居たたまれないので、生徒会メンバーを巻き込みました、アハ。
他の女生徒たちに恨まれるかしら、とも思ったけれど、以前のロナルド事件から姐御扱いされているので恐らく大丈夫だろう。
皆がランチを楽しみ歓談中のことだった! 森から巨大な魔物が現れたのだ!
「「「「「きゃぁぁぁああああ!!!!」」」」」
皆が悲鳴を上げた。
「なっ!! 魔物!?」
「なぜこんなところに!?」
セルディ殿下たちも立ち上がり混乱する生徒たちに指示を出す。さすが生徒会メンバーね、驚いたのは最初だけ。すぐに冷静になり指示をしている。これなら生徒たちは逃げられるはず。
「ルシアさん!? なにをしているの!? 逃げないと!!」
アイリーンが必死に声をかけてくれる。
「大丈夫です! アイリーン様は生徒の誘導をお願いします!」
「貴女まさか戦うつもりなの!? 騎士団を今呼びに行ってもらっていますわ! 貴女が戦う必要などないのよ!」
アイリーンに振り向きニコリと笑った。心配してくれてありがとう。やっぱりアイリーンは優しい子だわ。
魔物に向かい手を伸ばした。
巨大な魔物は森の木々をなぎ倒しながら進んでくる。真っ黒で醜悪な身体は鱗のようにも見えるがあちこちがひび割れトゲのようなものが付き出している。
目はギラギラと赤色に光り、口には鋭い牙が覗き、唸り声を上げている。太い四肢はなぎ倒した木々を踏みつけていく。身体と同じく真っ黒な鋭い爪は地面を踏みしめるたびに土をえぐった。
きっとこの一匹だけではないはず。この一匹を倒した後、ルシアはさらに現れた魔物にやられたんだもの。
周りにも意識を巡らせながら、雷の魔法を発動させる。
「雷撃!!」
掌に集まった魔力を魔物に向かって放出する。すると魔力は矢のような姿で魔物目掛けて飛んだ。
放たれた雷の矢は魔物の身体を貫いた……その瞬間にグッと拳を握る。それに呼応するように矢は魔物の中心部分で止まった。
『ウガァァァアアア!!』
魔物は怒っているのか痛がっているのか、急に叫び出しこちらへ向かうスピードを上げた。
「「「「ルシア!!」」」」
背後で皆が叫ぶのが聞こえた。
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