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第18話 緊急会議
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「ルシアさんが見たという、その黒い靄がその文献の黒い影と同じとは断定出来ませんが、なにやら良くないもののような気はしますね。注意することに越したことはないでしょう。ラドルフ」
シュリフス殿下はラドルフを見た。シュリフス殿下と視線を合わせたラドルフは頷く。
「ルシア、セルディ殿下には話を通そう」
初めてラドルフに名前を呼ばれ、思わずドキッとしてしまった。いやいやいやいや、落ち着け。名前くらい呼びますよ、そりゃ。
なるべく一人で解決したかったけど、そういうわけにもいかない感じになってきたわね。
「分かりました……」
その後シュリフス殿下と別れ、ラドルフはセルディ殿下に報告すると言って別れた。
そして翌日、私は生徒会室に呼び出された……ですよね。
アイリーンはいないのかしら、とキョロキョロ見回してみたが、姿は見えなかった。うーん、絶対近くにいるかと思ったんだけどな。
生徒会室の扉をノックすると、中から声が聞こえ扉が開かれた。ロナルドが出迎えてくれる。
「ルシア、待ってたよ、どうぞ」
「ありがとう」
ロナルドに促され、中へと入るといつものメンバーが揃っていた。
セルディ殿下は私を見るとにこやかな顔で立ち上がり、応接用の椅子に促した。
「お待ちしておりました、どうぞおかけになってください」
長椅子に座ると正面にセルディ殿下、その横にラドルフが立ち、アイザックはセルディ殿下の隣に座る。私の横にはロナルドが座った。
「さて、今回お呼びした件なのですが……」
「黒い靄の話ですよね」
「えぇ」
昨日ラドルフがセルディ殿下に報告すると言っていた。だから今日呼び出されたのは当然その話だろう。
「昨日ラドルフから聞きました。貴女が見えているという黒い靄について、そして、それに付随する黒い影の話」
「はい……」
「そもそも黒い靄ってどんななんだ?」
アイザックが信じられないといった顔で聞く。皆には見えていないようだから仕方ないわよね。
「小さな雲のようなというか、埃のようなというか……黒いものが流れてくるんです」
「それをお前が浄化しているのか?」
アイザックは変わらず怪訝な顔。
「浄化……浄化しているんでしょうかね? 蹴散らしているだけなのでよく分からないのです」
「「「「蹴散らす!?」」」」
「あ……」
蹴散らすはまずかったか。
「えっと、祓う? いや、その、えーっと……」
「あの踏みつけていたのはそれか……」
ラドルフが呆れたような顔で言った。他三人は「は?」みたいな顔。そりゃそうですね。踏みつけていたって……アハハ……。
「踏みつけていたってどういうことだ?」
セルディ殿下が純粋にラドルフに質問する……そこは突っ込んで聞かないでぇ。若干笑顔が引き攣る。
「言葉の通り、踏みつけていた」
「黒い靄を?」
「あぁ、私には見えないから最初は何をしているのかと思ったが、先程の「蹴散らす」という言葉を聞いて納得した」
セルディ殿下は唖然として固まっていた。そして横の二人は……盛大に吹き出しました。はぁぁあ。
「「ブフッ!!」」
「お、お前!! 蹴散らす!? 踏みつける!? ひぃー、腹痛いわ!!」
ゲラゲラ笑うアイザック。
「ルシア、さすがだね!! 面白すぎるよ!!」
これまた爆笑中のロナルド。
あぁぁあ……ルシアのキャラが……なんだかおかしな方向に……なぜだ。ちーん。
「あ、うぐっ、うぅん、んん、いや、まあ……その……」
セルディ殿下……無理しないで……シクシク。
「ひぃぃ、あー、笑った笑った。疲れたわ」
アイザックは目に涙を溜めながらようやく笑いを抑えつつあった。
「その踏みつけていたのはすぐ消えたのか?」
もぉぉ!! ラドルフー!! 真面目な顔で追い打ちかけないでよね!! キッと睨むとラドルフは意味が分からなかったのか、キョトンとしていた。
そのラドルフの言葉にアイザックとロナルドはまたブフッと吹き出してるし。くそぅ!
「消えましたよ! 私が触れると消えるみたいです。でもそれがそのとき限りなのか、完全に消しているのかは定かではないですけど」
その言葉に先程まで笑い転げていた二人も真面目に戻った。やっとかい。
「ルシア嬢が触れると消える……それはやはり魔力と関係があるのか……」
うん、関係あるでしょうね。言わないけど。
ルシアは化け物になってしまったアイリーンを唯一浄化出来る存在だった。それは聖魔法と呼ばれるもので、ルシアしか使えなかった。
だからルシアはセルディ殿下たちと共にアイリーンと戦い、そして浄化という名の下にアイリーンを打ち倒すのだ。
浄化、聖魔法、それらの魔力のおかげで黒い靄を蹴散らせているのではないかと思う。はっきりと確信があるわけじゃないけれど、私にしか見えない、ということを踏まえても恐らくそうなんじゃないかと。
「ルシアしか見えないとなると厄介だね」
ロナルドが呟いた。
「あぁ、僕たちが協力するにしても見えないことにはなんともな……」
「ですよねぇ……」
それはそうなんだよねぇ……そこをどうしたら良いものか……。このまま黒い靄が増え続けたら皆にも見えるんだろうか。でも増えるということはそれだけ誰かに憑りつく恐れもある。
あぁぁあ!! どうしたら良いのよ!! 思わず頭を抱え蹲った。
「まあ、とりあえずなるべく注意しながら様子を見るしかないんじゃないか?」
アイザックが珍しく優し気な顔で蹲っていた私の頭を撫でた。
「怖い……」
「なんでだよ!!」
シュリフス殿下はラドルフを見た。シュリフス殿下と視線を合わせたラドルフは頷く。
「ルシア、セルディ殿下には話を通そう」
初めてラドルフに名前を呼ばれ、思わずドキッとしてしまった。いやいやいやいや、落ち着け。名前くらい呼びますよ、そりゃ。
なるべく一人で解決したかったけど、そういうわけにもいかない感じになってきたわね。
「分かりました……」
その後シュリフス殿下と別れ、ラドルフはセルディ殿下に報告すると言って別れた。
そして翌日、私は生徒会室に呼び出された……ですよね。
アイリーンはいないのかしら、とキョロキョロ見回してみたが、姿は見えなかった。うーん、絶対近くにいるかと思ったんだけどな。
生徒会室の扉をノックすると、中から声が聞こえ扉が開かれた。ロナルドが出迎えてくれる。
「ルシア、待ってたよ、どうぞ」
「ありがとう」
ロナルドに促され、中へと入るといつものメンバーが揃っていた。
セルディ殿下は私を見るとにこやかな顔で立ち上がり、応接用の椅子に促した。
「お待ちしておりました、どうぞおかけになってください」
長椅子に座ると正面にセルディ殿下、その横にラドルフが立ち、アイザックはセルディ殿下の隣に座る。私の横にはロナルドが座った。
「さて、今回お呼びした件なのですが……」
「黒い靄の話ですよね」
「えぇ」
昨日ラドルフがセルディ殿下に報告すると言っていた。だから今日呼び出されたのは当然その話だろう。
「昨日ラドルフから聞きました。貴女が見えているという黒い靄について、そして、それに付随する黒い影の話」
「はい……」
「そもそも黒い靄ってどんななんだ?」
アイザックが信じられないといった顔で聞く。皆には見えていないようだから仕方ないわよね。
「小さな雲のようなというか、埃のようなというか……黒いものが流れてくるんです」
「それをお前が浄化しているのか?」
アイザックは変わらず怪訝な顔。
「浄化……浄化しているんでしょうかね? 蹴散らしているだけなのでよく分からないのです」
「「「「蹴散らす!?」」」」
「あ……」
蹴散らすはまずかったか。
「えっと、祓う? いや、その、えーっと……」
「あの踏みつけていたのはそれか……」
ラドルフが呆れたような顔で言った。他三人は「は?」みたいな顔。そりゃそうですね。踏みつけていたって……アハハ……。
「踏みつけていたってどういうことだ?」
セルディ殿下が純粋にラドルフに質問する……そこは突っ込んで聞かないでぇ。若干笑顔が引き攣る。
「言葉の通り、踏みつけていた」
「黒い靄を?」
「あぁ、私には見えないから最初は何をしているのかと思ったが、先程の「蹴散らす」という言葉を聞いて納得した」
セルディ殿下は唖然として固まっていた。そして横の二人は……盛大に吹き出しました。はぁぁあ。
「「ブフッ!!」」
「お、お前!! 蹴散らす!? 踏みつける!? ひぃー、腹痛いわ!!」
ゲラゲラ笑うアイザック。
「ルシア、さすがだね!! 面白すぎるよ!!」
これまた爆笑中のロナルド。
あぁぁあ……ルシアのキャラが……なんだかおかしな方向に……なぜだ。ちーん。
「あ、うぐっ、うぅん、んん、いや、まあ……その……」
セルディ殿下……無理しないで……シクシク。
「ひぃぃ、あー、笑った笑った。疲れたわ」
アイザックは目に涙を溜めながらようやく笑いを抑えつつあった。
「その踏みつけていたのはすぐ消えたのか?」
もぉぉ!! ラドルフー!! 真面目な顔で追い打ちかけないでよね!! キッと睨むとラドルフは意味が分からなかったのか、キョトンとしていた。
そのラドルフの言葉にアイザックとロナルドはまたブフッと吹き出してるし。くそぅ!
「消えましたよ! 私が触れると消えるみたいです。でもそれがそのとき限りなのか、完全に消しているのかは定かではないですけど」
その言葉に先程まで笑い転げていた二人も真面目に戻った。やっとかい。
「ルシア嬢が触れると消える……それはやはり魔力と関係があるのか……」
うん、関係あるでしょうね。言わないけど。
ルシアは化け物になってしまったアイリーンを唯一浄化出来る存在だった。それは聖魔法と呼ばれるもので、ルシアしか使えなかった。
だからルシアはセルディ殿下たちと共にアイリーンと戦い、そして浄化という名の下にアイリーンを打ち倒すのだ。
浄化、聖魔法、それらの魔力のおかげで黒い靄を蹴散らせているのではないかと思う。はっきりと確信があるわけじゃないけれど、私にしか見えない、ということを踏まえても恐らくそうなんじゃないかと。
「ルシアしか見えないとなると厄介だね」
ロナルドが呟いた。
「あぁ、僕たちが協力するにしても見えないことにはなんともな……」
「ですよねぇ……」
それはそうなんだよねぇ……そこをどうしたら良いものか……。このまま黒い靄が増え続けたら皆にも見えるんだろうか。でも増えるということはそれだけ誰かに憑りつく恐れもある。
あぁぁあ!! どうしたら良いのよ!! 思わず頭を抱え蹲った。
「まあ、とりあえずなるべく注意しながら様子を見るしかないんじゃないか?」
アイザックが珍しく優し気な顔で蹲っていた私の頭を撫でた。
「怖い……」
「なんでだよ!!」
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