148 / 163
最終章 唯一無二
第百四十六話 万が一の作戦
しおりを挟む
フェイ、アンニーナ、ネヴィルはもう一つの隠し通路に向かっていた。
不気味な枯れた森を進み、少し小山になったところへ登って行くと、城の裏側が見える位置まで移動した。城を見下ろす形で一望出来る。
「空から侵入する場合の死角になる棟ってあれね?」
アンニーナが指を差す。
「多分そうだね。確かにその裏手はほぼ死角だな」
城の中心にあたるその棟は一際大きく高い。その背後にもたくさんの棟があるが、ほぼ正面からは見えないだろう。
ちょうど真後ろにあたるところに屋上に竜を降下させられそうな棟がある。おそらくあれだろう。
見張りが立つでもない。全くの死角。
ナザンヴィアはそもそも空から敵がやって来るという認識がないのかもしれない。空からは隙だらけだ。
「空からのほうが圧倒的に楽そうね」
「うん、でもなにがあるか分からないしね。油断しないでおこう」
「おい、あれじゃないか?」
ネヴィルが指を差した方向を見ると、小山になったところへ洞窟のようになっていた。入口自体は草や木で隠されてはいたが、よく見るとそこだけが違和感がある。
「開けてみるぞ?」
ネヴィルはそう言い、こんもりと重ねられた草や木を取り除いていく。全て取り除くと人一人くらいが通れるか、というほどの入口が現れた。
なかを覗いて見ると…………
「駄目だな、ここは……」
「うん」
ネヴィルが溜め息を吐き、同じようにフェイやアンニーナも溜め息を吐いた。
その入口は少しだけ窪みがあっただけで、なかは土砂崩れでも起こったかのように崩れ、とてもじゃないが人が通れる通路ではなかった。
三人とも脱力したように溜め息を吐き、顔を見合せる。
「とりあえず戻るか。リュシュたちのほうはいけたかもしれないし」
「だね、戻ろう」
その隠し通路は諦め、早々に戻った三人だが、集合場所にはリュシュたちの姿はなかった。
「なにかあったのかしら」
しばらく待ってみても戻らないリュシュたち。
「とりあえずもう一つの隠し通路に行ってみよう」
フェイはなにやら不安を覚え、急ぎリュシュたちが向かった隠し通路に向かう。森を素早く駆け抜け、地面に不自然に枯れ葉がない場所を発見する。
「これか!」
ネヴィルはその扉に手を掛け開こうとするがビクともしない。
「!? なんだ!? どうなってやがる!? 開かねーぞ!!」
「「!?」」
「どういうことよ!? リュシュたちは!?」
アンニーナが不安げな顔をする。フェイは顎に手をやり考え込む。
「罠?」
「「!?」」
フェイの言葉にアンニーナもネヴィルもギョッとした顔。
「そんな!! 扉をこじ開けましょ!! どいて!!」
アンニーナが掌を扉に向ける。
「炎で燃やしてしまえば良いのよ!!」
「ちょっと待って!!」
今にも魔法を放ちそうになったアンニーナをフェイが止めた。手首をグッと抑えられ、驚き魔力を抑え込む。
「なんでよ!? リュシュたちが!!」
「罠だとしたら今こじ開けないほうが良い。僕らも捕まってしまったら意味がない。それよりも……」
「万が一のほうの作戦か?」
「うん」
ネヴィルの言葉にフェイは頷いた。
隠し通路へ向かう前に作戦を立てた。
まずは二ヶ所の隠し通路を探索する。その通路を確認次第、集合場所に戻り情報を共有し対策を立てる。隠し通路が有効ならばその道を通り城内へ侵入。あの術が行われているであろう部屋を探す、という段取りだった。
だが、万が一にもどちらかが敵に見付かった場合、もしくはどちらも敵に見付かった場合、その場を突破出来れば良いが万が一捕まった場合でも、お互いのチームを探さない。
助けることを優先しない。まずは城へ侵入、あの術を止めることを優先だ。
それが全員で決めたルールだった。
どちらかになにかあった場合は、隠し通路ではなく空からの侵入へ作戦変更。そのままあの術の部屋を探索。もう一つのチームを助けるのは術を止めてから、もしくは作戦続行に支障がない場合のみ。
「分かってる! 分かってるけど……このまま見捨てるの?」
アンニーナは泣きそうな顔だ。
「大丈夫だよ。リュシュは俺たちよりも最強の魔力に精霊王も付いているじゃないか。きっと自力でなんとかするはず」
フェイは自分に言い聞かせるように拳を握り締め言った。
「リュシュが決めたことだしな。自分が助けられるよりもあの術を止めるほうを優先したいんだろ。行こう!」
ネヴィルも悲痛な顔だが、しかし、自分を奮い立たせるように立ち上がった。
「アンニーナ」
フェイに手を差し伸べられ、立ち上がったアンニーナは自分の頬を両手で打ち付けた。そして前を見据える。
「分かったわよ! 行きましょう!!」
不気味な枯れた森を進み、少し小山になったところへ登って行くと、城の裏側が見える位置まで移動した。城を見下ろす形で一望出来る。
「空から侵入する場合の死角になる棟ってあれね?」
アンニーナが指を差す。
「多分そうだね。確かにその裏手はほぼ死角だな」
城の中心にあたるその棟は一際大きく高い。その背後にもたくさんの棟があるが、ほぼ正面からは見えないだろう。
ちょうど真後ろにあたるところに屋上に竜を降下させられそうな棟がある。おそらくあれだろう。
見張りが立つでもない。全くの死角。
ナザンヴィアはそもそも空から敵がやって来るという認識がないのかもしれない。空からは隙だらけだ。
「空からのほうが圧倒的に楽そうね」
「うん、でもなにがあるか分からないしね。油断しないでおこう」
「おい、あれじゃないか?」
ネヴィルが指を差した方向を見ると、小山になったところへ洞窟のようになっていた。入口自体は草や木で隠されてはいたが、よく見るとそこだけが違和感がある。
「開けてみるぞ?」
ネヴィルはそう言い、こんもりと重ねられた草や木を取り除いていく。全て取り除くと人一人くらいが通れるか、というほどの入口が現れた。
なかを覗いて見ると…………
「駄目だな、ここは……」
「うん」
ネヴィルが溜め息を吐き、同じようにフェイやアンニーナも溜め息を吐いた。
その入口は少しだけ窪みがあっただけで、なかは土砂崩れでも起こったかのように崩れ、とてもじゃないが人が通れる通路ではなかった。
三人とも脱力したように溜め息を吐き、顔を見合せる。
「とりあえず戻るか。リュシュたちのほうはいけたかもしれないし」
「だね、戻ろう」
その隠し通路は諦め、早々に戻った三人だが、集合場所にはリュシュたちの姿はなかった。
「なにかあったのかしら」
しばらく待ってみても戻らないリュシュたち。
「とりあえずもう一つの隠し通路に行ってみよう」
フェイはなにやら不安を覚え、急ぎリュシュたちが向かった隠し通路に向かう。森を素早く駆け抜け、地面に不自然に枯れ葉がない場所を発見する。
「これか!」
ネヴィルはその扉に手を掛け開こうとするがビクともしない。
「!? なんだ!? どうなってやがる!? 開かねーぞ!!」
「「!?」」
「どういうことよ!? リュシュたちは!?」
アンニーナが不安げな顔をする。フェイは顎に手をやり考え込む。
「罠?」
「「!?」」
フェイの言葉にアンニーナもネヴィルもギョッとした顔。
「そんな!! 扉をこじ開けましょ!! どいて!!」
アンニーナが掌を扉に向ける。
「炎で燃やしてしまえば良いのよ!!」
「ちょっと待って!!」
今にも魔法を放ちそうになったアンニーナをフェイが止めた。手首をグッと抑えられ、驚き魔力を抑え込む。
「なんでよ!? リュシュたちが!!」
「罠だとしたら今こじ開けないほうが良い。僕らも捕まってしまったら意味がない。それよりも……」
「万が一のほうの作戦か?」
「うん」
ネヴィルの言葉にフェイは頷いた。
隠し通路へ向かう前に作戦を立てた。
まずは二ヶ所の隠し通路を探索する。その通路を確認次第、集合場所に戻り情報を共有し対策を立てる。隠し通路が有効ならばその道を通り城内へ侵入。あの術が行われているであろう部屋を探す、という段取りだった。
だが、万が一にもどちらかが敵に見付かった場合、もしくはどちらも敵に見付かった場合、その場を突破出来れば良いが万が一捕まった場合でも、お互いのチームを探さない。
助けることを優先しない。まずは城へ侵入、あの術を止めることを優先だ。
それが全員で決めたルールだった。
どちらかになにかあった場合は、隠し通路ではなく空からの侵入へ作戦変更。そのままあの術の部屋を探索。もう一つのチームを助けるのは術を止めてから、もしくは作戦続行に支障がない場合のみ。
「分かってる! 分かってるけど……このまま見捨てるの?」
アンニーナは泣きそうな顔だ。
「大丈夫だよ。リュシュは俺たちよりも最強の魔力に精霊王も付いているじゃないか。きっと自力でなんとかするはず」
フェイは自分に言い聞かせるように拳を握り締め言った。
「リュシュが決めたことだしな。自分が助けられるよりもあの術を止めるほうを優先したいんだろ。行こう!」
ネヴィルも悲痛な顔だが、しかし、自分を奮い立たせるように立ち上がった。
「アンニーナ」
フェイに手を差し伸べられ、立ち上がったアンニーナは自分の頬を両手で打ち付けた。そして前を見据える。
「分かったわよ! 行きましょう!!」
0
お気に入りに追加
547
あなたにおすすめの小説
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜
I.G
ファンタジー
神様と名乗るおじいさんに転生させられること3521回。
レベル、ステータス、その他もろもろ
最強の力を身につけてきた服部隼人いう名の転生者がいた。
彼の役目は異世界の危機を救うこと。
異世界の危機を救っては、また別の異世界へと転生を繰り返す日々を送っていた。
彼はそんな人生で何よりも
人との別れの連続が辛かった。
だから彼は誰とも仲良くならないように、目立たない回復職で、ほそぼそと異世界を救おうと決意する。
しかし、彼は自分の強さを強すぎる
が故に、隠しきることができない。
そしてまた、この異世界でも、
服部隼人の強さが人々にばれていく
のだった。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる