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第三章《苦悩〜目覚め》編
第百四話 残された者たち
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「リュシュ、大丈夫かしら……」
アンニーナが涙ぐみながら呟いた言葉にフェイとディアンは無言だった。
「まさかこんなことになるなんて……」
フェイも信じられないといった顔。ディアンも頷き、悲痛な表情だった。
城ではリュシュが去ったあと、竜騎士たちや竜たちが何事かと演習場に集まった。
地面にはヒビが入り、魔法陣は砕け、ログウェルたちの悲痛な表情。
あまりの異様な光景にヤグワルですら怪訝な顔になる。
「一体なにがあったんだ」
ヤグワルはログウェルに聞いた。ログウェルはクフィアナに話したときと同様にヤグワルに話す。
ヤグワルだけでなく、周りにいた全ての者たちが驚愕の顔になり、アンニーナは泣いた。
演習場は整備のために使用不可状態となり、急遽休暇となった。
竜たちにも話が広がり、不安げになるものも現れた。自分もキーアのようになるのではないか、と。
育成課の皆はそれを宥めるために総動員となった。
ヒューイは何も言葉にしなかった。ただの一言も、一切、言葉はなかった……。
「リュシュは戻ってくるかしら……」
「…………どうかな…………」
「俺は…………戻って来るって信じたい…………」
ディアンが呟いた言葉にアンニーナもフェイも静かに頷いた。
「ログウェル、リュシュのことはどうするの?」
泣き腫らした顔のまま、竜を宥めるルニスラは同じ竜舎の中にいるログウェルに声を掛けた。
「どうしようも出来ないよ……リュシュは自分から出て行った……あいつは耐えられなかった。無理に引き止めてもきっと続かない……」
「そうだろうけど……」
こんなことになってしまったことを後悔しているログウェルに、どう声をかけたら良いのか分からなくなる。ルニスラはログウェルの辛さが分かるだけに下手な慰めは出来なかった。
「でも…………俺は、あいつを待ちたい……」
ログウェルが小さく呟いた声に、育成課のメンバーは各々悲しみを胸に抱きながらも、静かに頷いたのだった。
クフィアナはリュシュと別れたあと、自分がどうやって城まで戻ったのか分からなかった。
何も考えられなかった。リュシュの苦しみが辛かった。
リュシュには幸せな人生を送ってもらいたかったのに……クフィアナは悔しさを滲ませた。
「彼は何者なんです?」
執務室に戻るとマクイニスに問い詰められる。
「彼のあの気配……まさか」
「違う。リュシュは彼が幼いころに会ったことがあるだけだ……」
クフィアナは過去にリュシュと会ったことがあると白状したが、それを問い詰めるような空気ではないことは理解していたマクイニス。
しかし彼のあの気配はマクイニスが知るものととてもよく似ていた。今まで感じなかったのに突然感じたあの気配。
マクイニスはそれを確認したいのだが、クフィアナは答えるつもりが一切なさそうだ。こうなってしまうと、一切譲らないのがクフィアナだ。
「はぁぁ、仕方ないですね。私は演習場の様子を見て来ます。クフィアナ様は仕事をしていてください」
マクイニスは小さく溜め息を吐くと、ビビを連れて執務室をあとにした。おそらく仕事にはならないだろうが……。
「クフィアナ様、大丈夫かしら……」
ビビも同様にあの気配を感じ、クフィアナの様子に不安げな顔をする。
マクイニスはそれに対しての答えは持っていなかった。クフィアナにとってあの方は特別だから……。クフィアナが一切語ろうとしない以上、こちらからは何も言えない。マクイニスは深い溜め息を吐くのだった。
クフィアナは二人が出て行った扉を見詰め悲痛な表情を浮かべる。そして窓に目をやり、空を眺めた。
「ルド……」
呟いた言葉は誰の耳に届くこともなく消えた……。
アンニーナが涙ぐみながら呟いた言葉にフェイとディアンは無言だった。
「まさかこんなことになるなんて……」
フェイも信じられないといった顔。ディアンも頷き、悲痛な表情だった。
城ではリュシュが去ったあと、竜騎士たちや竜たちが何事かと演習場に集まった。
地面にはヒビが入り、魔法陣は砕け、ログウェルたちの悲痛な表情。
あまりの異様な光景にヤグワルですら怪訝な顔になる。
「一体なにがあったんだ」
ヤグワルはログウェルに聞いた。ログウェルはクフィアナに話したときと同様にヤグワルに話す。
ヤグワルだけでなく、周りにいた全ての者たちが驚愕の顔になり、アンニーナは泣いた。
演習場は整備のために使用不可状態となり、急遽休暇となった。
竜たちにも話が広がり、不安げになるものも現れた。自分もキーアのようになるのではないか、と。
育成課の皆はそれを宥めるために総動員となった。
ヒューイは何も言葉にしなかった。ただの一言も、一切、言葉はなかった……。
「リュシュは戻ってくるかしら……」
「…………どうかな…………」
「俺は…………戻って来るって信じたい…………」
ディアンが呟いた言葉にアンニーナもフェイも静かに頷いた。
「ログウェル、リュシュのことはどうするの?」
泣き腫らした顔のまま、竜を宥めるルニスラは同じ竜舎の中にいるログウェルに声を掛けた。
「どうしようも出来ないよ……リュシュは自分から出て行った……あいつは耐えられなかった。無理に引き止めてもきっと続かない……」
「そうだろうけど……」
こんなことになってしまったことを後悔しているログウェルに、どう声をかけたら良いのか分からなくなる。ルニスラはログウェルの辛さが分かるだけに下手な慰めは出来なかった。
「でも…………俺は、あいつを待ちたい……」
ログウェルが小さく呟いた声に、育成課のメンバーは各々悲しみを胸に抱きながらも、静かに頷いたのだった。
クフィアナはリュシュと別れたあと、自分がどうやって城まで戻ったのか分からなかった。
何も考えられなかった。リュシュの苦しみが辛かった。
リュシュには幸せな人生を送ってもらいたかったのに……クフィアナは悔しさを滲ませた。
「彼は何者なんです?」
執務室に戻るとマクイニスに問い詰められる。
「彼のあの気配……まさか」
「違う。リュシュは彼が幼いころに会ったことがあるだけだ……」
クフィアナは過去にリュシュと会ったことがあると白状したが、それを問い詰めるような空気ではないことは理解していたマクイニス。
しかし彼のあの気配はマクイニスが知るものととてもよく似ていた。今まで感じなかったのに突然感じたあの気配。
マクイニスはそれを確認したいのだが、クフィアナは答えるつもりが一切なさそうだ。こうなってしまうと、一切譲らないのがクフィアナだ。
「はぁぁ、仕方ないですね。私は演習場の様子を見て来ます。クフィアナ様は仕事をしていてください」
マクイニスは小さく溜め息を吐くと、ビビを連れて執務室をあとにした。おそらく仕事にはならないだろうが……。
「クフィアナ様、大丈夫かしら……」
ビビも同様にあの気配を感じ、クフィアナの様子に不安げな顔をする。
マクイニスはそれに対しての答えは持っていなかった。クフィアナにとってあの方は特別だから……。クフィアナが一切語ろうとしない以上、こちらからは何も言えない。マクイニスは深い溜め息を吐くのだった。
クフィアナは二人が出て行った扉を見詰め悲痛な表情を浮かべる。そして窓に目をやり、空を眺めた。
「ルド……」
呟いた言葉は誰の耳に届くこともなく消えた……。
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